内 容
「税は公平であるべきだ」と多くの人が言う。しかし、税については、税率や税負担の割り当て方などについての「熱い」議論が先行しがちであり、その意味を倫理的次元も含めて広く深く考えることは難しかった。本書は、現代正義論の観点から、これまでの租税理論を根本的に再検討したうえで、課税ベース、累進性、相続、差別といった具体的論点に説きおよび、アメリカで大きな反響を呼び起こした話題作。
目 次
序 言
第1章 序 論
第2章 租税の公平性に関する伝統的基準
Ⅰ 租税政策における政治道徳 —— 公 正
Ⅱ 垂直的公平 —— 税負担の分配
Ⅲ 利益原理
Ⅳ 支払い能力 —— 才 能
Ⅴ 支払い能力 —— 平等な犠牲
Ⅵ 平等主義的な考えとしての支払い能力
Ⅶ 日常生活に潜む自由至上主義の問題点
Ⅷ 水平的公平
第3章 政治理論における経済的正義
Ⅰ 政治的正統性
Ⅱ 帰結主義と義務論
Ⅲ 公共財
Ⅳ 個人にたいする利益
Ⅴ 効率性と功利主義
Ⅵ 分配的正義、公正、最悪の状況にある人々の優先
Ⅶ 機会の平等
Ⅷ 正当な手段と個人の責任
Ⅸ 報酬と懲罰
Ⅹ 自由と自由至上主義
Ⅺ 市場の道徳的重要性
Ⅻ 個人の動機と政治的価値 —— 道徳的分業
XIII 結 論
第4章 再分配と公的提供
Ⅰ 課税の二つの機能
Ⅱ 公共財に対する支払い
Ⅲ どの財が公共的か
Ⅳ 再分配
Ⅴ 移転か提供か
Ⅵ 公共的義務
Ⅶ 結 論
第5章 課税ベース
Ⅰ 効率性と正義
Ⅱ 負担ではなく結果が問題
Ⅲ 消費ベースと貯蓄家にたいする公正
Ⅳ 平等な自由としての公正
Ⅴ 正当な功績と資本の蓄積 ——「共通のプール」
Ⅵ 富と厚生
Ⅶ 富と機会
Ⅷ 才能と自律の価値
Ⅸ 除外と税控除
Ⅹ 移 行
第6章 累進性
Ⅰ 段階、累進、帰着、結果
Ⅱ 結果の評価
Ⅲ 最適課税
Ⅳ 税制改革
第7章 相 続
Ⅰ いわゆる「相続税」
Ⅱ 受贈者と相続人の課税ベース
Ⅲ 贈与者・被相続人にたいして控除を認めない点
Ⅳ 詳論と反論
Ⅴ 平等な機会と移転課税
Ⅵ 結 論
第8章 税制上の差別
Ⅰ 差別的な取り扱いの正当化
Ⅱ 一つの事例 —— 結婚にたいするペナルティー
Ⅲ 誘因効果と恣意性
第9章 結 論 —— 政 治
Ⅰ 理論と実践
Ⅱ 正義と自己利益
Ⅲ 妥当と考えられる政策
Ⅳ 有効な道徳的考え
訳者あとがき
注
参考文献
索 引
書 評
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