内 容
「民本主義」対「国家主義」の単純な枠組みに収まりきらない、近代社会科学最大のライバルの共通基盤と真の分水嶺はどこにあったのか。ドイツ経験などの見過ごされた契機も手掛かりに、近代日本政治の現実の焦点を捉え、デモクラシーと帝国をめぐる議論に新たな地平を拓く。
目 次
凡 例
序 章 大正デモクラシーとドイツ政治論の競演
1 日本の比較対象としてのドイツ
2 吉野作造と上杉愼吉 —— ドイツ政治論の黎明
3 先行研究の問題点
第1章 明治日本のドイツ的近代化
1 幕末維新期の「獨逸學」の勃興
2 日本政治への「獨逸學」の影響
第2章 「獨逸學」との格闘 1898-1906年
序 東京帝国大学法科大学 ——「官学アカデミズム」の権威と自由
1 上杉愼吉の「獨逸學」への没頭
2 吉野作造の「獨逸學」への順応
第3章 洋 行 1906-1914年
序 ドイツ留学 —— 日本人エリートの試煉
1 上杉愼吉のドイツ学界との格闘
2 吉野作造のドイツ学界の敬遠
第4章 欧州大戦の論評 1914-1918年
序 日独戦争 —— 師弟対決の勃発
1 吉野作造による対独正戦論の鼓吹
2 上杉愼吉の対独正戦論への懐疑と民本主義論争の勃発
第5章 「大正グローバリゼーション」への対応 1918-1926年
序 アメリカかドイツか日本か —— 日本社会の欧米化と日本主義の擡頭
1 吉野作造のアメリカ礼讚とヴァイマール共和国擁護
2 上杉愼吉のヴァイマール共和国批判と日本主義の強化
第6章 崩壊前の最期 1926-1933年
序 大正デモクラシーから総力戦体制へ
1 上杉愼吉の叶わぬ「大化の改新」の夢
2 吉野作造の「東洋モンロー主義」への帰着
第7章 終わりなき闘争 1933-2018年
序 2つの権威から1つの権威へ
1 吉野作造 —— ブルジョワ言論人か戦後民主主義の先駆者か
2 上杉愼吉 —— 保守反動かマルクス主義者か
終 章 2つの権威主義の相克
1 世界の知的階層における日本の位置
2 西洋(西欧)派日本ナショナリズム
3 対西洋(西欧)自立のための日本回帰
注
後 記 大崎平野から駒込、そしてハイデルベルグへ
参考文献
引用図版一覧
索 引
受 賞
書 評
『日本史研究』(第692号、2020年4月、評者:林尚之氏)