内 容
近世以来の伝統をもとに多彩な製品群を生み出し、輸出産業化・機械制大工業の成立を経て飛躍的発展を遂げた近代日本の陶磁器業を、瀬戸・東濃・名古屋・京都・有田など主要産地の構造変化を捉えて実証的に描き出し、近代化へと至る多様な発展経路の存在を示した産業史研究の画期的成果。
目 次
はしがき
序 章 「在来産業」論から複層的生産組織論へ
はじめに
1 「在来産業」論の意義と限界
2 生産組織の複層性
3 本書の構成
第1章 歴史的および技術的前提
1 磁器の登場まで
2 磁器の製造工程
第2章 近代日本陶磁器業の概観
—— マクロデータから
1 生産動向
2 製品市場
3 主要産地の特徴
第3章 美術陶磁器輸出の隆盛と挫折
—— 起立工商会社への政府融資を事例として
はじめに
1 起立工商会社の概観
2 ウィーン万博を機にした会社設立
3 政府融資の開始
4 経営の悪化と融資資金の焦げ付き
5 起立工商会社への貸与金の推算
小 括
第4章 近代日本陶磁器業と小零細経営
はじめに
Ⅰ 京都陶磁器業と高級品生産
1 近世末から明治前半の京都陶磁器業
2 京都陶磁器業の高付加価値戦略
Ⅱ 東濃陶磁器業と経営戸数の増大
3 近世末期から明治初期の東濃陶磁器業
4 明治中期における東濃陶磁器業の概況
5 東濃陶磁器業における小零細経営の特徴
6 窯屋の実態
7 窯屋の独立
8 窯屋独立の条件(1) 仕送窯
9 窯屋独立の条件(2) 下請け・周辺産業
小 括
補 論 東濃における陶磁器問屋の機能
第5章 近代日本陶磁器業と中小経営
—— 瀬戸陶磁器業を事例として
はじめに
1 瀬戸陶磁器業と製品販売市場
2 商品流通と金融 —— 瀬戸における問屋の機能
3 生産技術の変化
4 窯屋の経営規模
5 瀬戸陶磁器業の発展
小 括
第6章 近代日本陶磁器業における技術導入
—— 石炭窯の普及を事例として
はじめに
1 日本陶器における石炭窯導入と瀬戸・東濃
2 登り窯の短所
3 登り窯から石炭窯への転換
4 松村式石炭窯の完成と普及
小 括
第7章 先駆的な機械制大工業化の失敗
—— 有田・京都・名古屋の事例
はじめに
1 〈中〉による技術移植 —— 精磁会社
2 他人資本による会社設立 —— 京都陶器会社
3 問屋による垂直統合 —— 名古屋陶磁器業
4 製造と販売の両立に失敗した問屋 —— 瀧藤商店
5 製造に特化していった問屋 —— 松村商店
小 括
第8章 近代日本陶磁器業における大企業の成立
—— 森村組の活躍と日本陶器の設立
はじめに
1 森村組の誕生と人的資源
2 御用商売とセーフティーネット
3 見込取引とリスク管理
4 森村組による垂直統合の開始
5 森村組と白素地 —— 日本陶器成立前史
6 日本陶器合名会社の経営安定化への道筋
小 括
第9章 両大戦間期における日本陶磁器業の変質
はじめに
1 名古屋における機械制大工業と製造問屋の成長
2 瀬戸陶磁器業の二分化
3 東濃陶磁器業の名古屋への接近
4 第一次世界大戦ブーム後における生産システム
小 括
終 章 近代日本の生産システムと陶磁器業
1 近代の日本陶磁器業
2 総括と展望
あとがき
注
文献一覧
附 表
図表一覧
索 引