内 容
香港は本当に中国に飲み込まれたのか? 返還以前の多くの悲観的予測を裏切り、安定した中国・香港関係が生み出されたメカニズムを、一国二制度下の政治・経済・社会情勢の推移から明快に分析、「高度な自治」と中港融合の実像を鋭く描き出す。中国政治と香港の行方を考える必読の1冊。
目 次
序 章 「小さな冷戦」としての中港関係と「一国二制度」
1 問題の所在 —— 悲観論と予想外の現実
2 中港関係への視角 ——「小さな冷戦」と「一国二制度」
3 「一国二制度」下の中港関係の特徴
4 本書の資料と構成
第1章 「港人治港」の実態
—— 香港政治エリートに対する中央政府の統制力
1 香港の政治勢力と中央政府との関係
2 政治エリートの選出
3 政策決定権の配分
4 「中央の圧力」と香港政治エリートの反応
第2章 民主化問題
——「デモクラシー」から「中国の特色ある民主」へ
1 返還前の民主化問題 —— イギリスによる民主化と中国の反発
2 返還初期 —— 香港内部での静かな民主化論争
3 2007年・2008年選挙問題の展開 —— 中央政府の主導権掌握
4 中央政府主導下の民主化問題の展開 ——「中国の特色ある民主」へ
第3章 「防壁」の中の自由
—— 香港メディアに見る「疑似国境」の政治性
1 「一国二制度」と「擬似国境」
2 大陸と香港の報道の自由 ——「一国二制度」のメディア
3 香港メディアへの大陸の影響力とその限界
4 香港メディアの大陸への浸透
5 香港メディアの越境現象の影響力
第4章 「繁栄と安定」
—— 中港関係の政治経済学
1 「繁栄と安定」のコンセンサス
2 返還過渡期 ——「防壁」としての「一国二制度」
3 返還当初の「一国二制度」——「防壁」性と「障壁」性の交錯
4 2003年7月1日のデモと中央政府の干渉解禁
第5章 「愛国者論争」
—— 香港人意識と愛国心
1 香港人意識と中国人意識
2 中国人意識の政治的作用
3 2004年「愛国者論争」の展開
終 章 「一国二制度」の中港関係
1 「良好な中港関係」に寄与した「一国二制度」の構造
2 返還後の中港関係の展開
3 中港関係の将来
注
あとがき
索 引
受 賞
書 評
『レヴァイアサン』(第50号、2012年、評者:松本充豊氏)
朝日新聞(2009年12月27日付、「書評委員お薦め『今年の3冊』」、評者:天児慧氏)