『質的研究の考え方』(大谷尚著)細目次
『質的研究の考え方』(大谷尚著)細目次
はじめに
本書の著者の研究的背景
第Ⅰ部 質的研究のデザイン、方法、パラダイム
第1章 質的研究とは何か
—— いくつかの基本概念とその検討
1 質的研究とは何か
1.1 質的研究の今日の普及
1.2 量的研究と測定
1.3 量的測定になじまない、あるいは量的測定からこぼれ落ちてしまうもの
1.4 質的な研究が「研究」であるための要件
1.5 質的研究の構造
1.6 質的研究の多様な思想的系譜と手法的系譜
1.7 質的研究におけるパラダイムの重要性
1.8 質的研究の「樹」
—— 質的研究の生起と展開の場としての「日常」の重要性
1.9 質的研究で用いられる諸概念
2 質的研究「方法」と質的研究「方法論」
2.1 研究方法と研究方法論の同一視あるいは混乱によって生じる深刻な問題
2.2 研究「方法」≠ 研究「方法論」
2.3 研究方法「論」= 研究方法「学」
2.4 研究方法「論」を認識することの重要性
2.5 質的「データ分析手法」≠ 質的「研究法」
2.6 研究「方法論」を理解せず研究「方法」を真似ることの問題
2.7 このような問題についての具体的な指摘
3 記録とコード化
3.1 コード化としての言語記録化
3.2 コード化としての数量化
3.3 コード化としての数量化による情報の縮約
3.4 コード化としての言語記録化による情報の縮約
4 質的研究における主観と客観
4.1 質的研究ではどのように主観性が保持されるか
4.2 質的研究における「主-客」と「内-外」
4.3 量的・実証的研究における主観性の排除と洗浄
4.4 質的研究における主観性の保持
4.5 質的研究における主体的解釈とは何か
5 質的研究の評価規準としての客観性、信頼性、妥当性
5.1 質的研究に客観性、信頼性、妥当性はあるのかという問い
5.2 相互に独立した概念としての信頼性と妥当性
5.3 質的研究の測定の信頼性と妥当性
5.4 質的研究の分析の信頼性と妥当性
5.5 量的研究と質的研究の「的」の違い
5.6 質的研究の客観性
6 「母集団とサンプル」概念の再考
6.1 量的研究における母集団とサンプル
6.2 質的研究における結果の一般化可能性
6.3 質的研究でも「母集団とサンプル」という考え方は有益か
6.4 そもそもサンプルとは何か —— サンプルに対する操作的定義から
6.5 質的研究の研究参加者とはどういう人々か
6.6 研究で得られた知見の適用の範囲と方向性
6.7 質的研究における「一般化可能性」再考
7 質的研究における結果の再現性
第2章 リサーチ・クエスチョンの設定
1 質的研究のリサーチ・クエスチョン
1.1 量的研究では得られない知見を得る
1.2 「どうなっているか」と「どうすればいいか」
1.3 「記述的問い」と「処方的問い」
1.4 処方的問いを記述的問いに書き直す
1.5 記述的知見・理論から処方的知見・理論を得るには
2 リサーチ・クエスチョンの評価
2.1 リサーチ・クエスチョンの評価規準としての FINER クライテリア
2.2 論文化された研究の評価への FINER クライテリアの適用
2.3 F, I, N, E, R を各要素のバランスの検討のために使う
2.4 研究者の専門性とリサーチ・クエスチョンの関係
第3章 研究デザイン
1 質的研究の研究デザイン
1.1 質的研究に類型はあるか
1.2 研究プロセスの非定向性 —— 質的研究の循環的なプロセス
1.3 質的データを採取して分析すればすべて質的研究と呼べるか
1.4 介入の効果や経験の影響を検証する質的研究はできるか
1.5 研究の規模 —— どんな大きさの研究をするべきか
2 質的研究のためのガイドライン
第4章 データ採取
1 質的研究の研究参加者
1.1 研究「対象者」から研究「参加者」へのパラダイムシフト
1.2 研究参加者の主体性の尊重
1.3 研究参加者の保護の優先性
2 観察やインタビューの中立性の再考 —— 観察の理論負荷性
3 サンプリングとサンプルサイズ
3.1 サンプリングの類型
3.2 サンプリングと「理論的飽和」の問題
3.3 サンプルサイズと知見の一般性の検討
4 観察と観察記録
4.1 参加観察と非参加観察
4.2 観察時に注意すべきこと
4.3 観察記録の書き方
5 個別インタビュー
5.1 個別インタビューの類型
5.2 インタビューガイドの十分な検討とそれに拘束されないことの重要性
5.3 インタビューの導入の重要性 —— きっかけを開くことば
5.4 インタビューでは聴き取れない発話や理解できない内容を残さないこと
5.5 インタビューの文字起こし作業と録音を繰り返し聴くこと
5.6 誰がインタビュイーとして適しているか
5.7 インタビューによる子どもからのデータ採取
6 フォーカス・グループ
6.1 フォーカス・グループの機能と意義
6.2 フォーカス・グループと他のデータ採取方法との組み合わせ
6.3 グループの構成
6.4 グループの人数
6.5 フォーカス・グループのための専用施設
7 文書研究・文書分析
7.1 文書研究、文書分析、質的文書分析
7.2 文書研究・文書分析のメリットとデメリット
7.3 実際の文書研究・文書分析の例
7.4 文書研究・文書分析についてその他
8 人工物研究・人工物分析
9 アートを用いたデータ採取
第5章 データ分析
1 カテゴリー分析(テーマ分析)とシークエンス分析
2 分析的枠組みとしての概念的・理論的枠組みの適用
2.1 分析的枠組み(概念的・理論的枠組み)とは何か
2.2 概念的・理論的枠組みを分析にどう利用するのか
2.3 できるだけ近い研究領域からの概念的・理論的枠組みの採用
2.4 研究者の研究的背景領域からの概念的・理論的枠組みの採用
2.5 複数の概念的・理論的枠組みを同時に利用することについて
2.6 採用すべき概念的・理論的枠組みはどの時点で決定されるのか
3 質的データ分析手法の必要性
3.1 質的データ分析に必要な省察可能性と反証可能性
3.2 標準化コーディングと生成的コーディング
3.3 グラフィカルな質的データ分析
3.4 インタビューと発話の解釈
—— 発話に含まれる無自覚や自己欺瞞の可能性
3.5 氷山の一角としてのインタビュイーの語り
3.6 メンバー・チェッキングの可能性の問題
4 「分析の妥当性を高めるためのスーパービジョン」の問題
4.1 そのスーパーバイザーの資質、経験、能力と具体的関与が不明である
4.2 それは研究組織の秘匿(ゴースト・オーサーシップ)に相当する
4.3 質的研究は権威を肯定しない
4.4 そう書かなければならない本当の理由は何か
第6章 理論化とモデル化
1 質的研究における理論化
2 質的研究におけるモデル化
第7章 質的研究の結果の表象
1 質的研究論文のタイトル
1.1 修辞的でプレイフルなタイトル
1.2 名句のもじり(パロディ、本歌取り)によるタイトル
1.3 インタビューでの発話の引用によるタイトル
1.4 質的研究論文のタイトルと「読む人の心を動かす力」
2 質的研究論文の執筆形式(IMRaD と質的研究)
3 Reflexivity の記述
4 アートを含む多様な表象
第8章 質的研究の研究倫理
1 研究倫理への深い配慮の必要性
2 「研究参加しないことは不利益にならない」という説明の問題
—— 研究倫理は研究デザインで保証する
3 教育研究に合った研究倫理はあり得るか
4 研究参加者名の実名表記について —— 実名表記と匿名表記の判断
5 研究参加者がインフォームド・コンセントを超えるデータ採取を望んだら
6 質的研究における研究参加の同意の撤回について
6.1 量的研究と質的研究における同意の撤回の意味の違い
6.2 この問題の解決方法はあるか
7 解釈的な研究と研究倫理
8 データの改ざんとねつ造は何をもたらすのか
8.1 質的研究におけるデータの改ざんとねつ造の容易さ
8.2 質的研究を非科学にする
8.3 研究参加者が読者となったときに気がつく可能性がある
8.4 さらに深い分析とそれによる発見の機会を失わせる
第9章 質的研究に関するその他の問題と課題
1 さまざまな質的研究手法の使い分けは可能か
1.1 唯一のパラダイムに依拠する量的研究
1.2 多様なパラダイムに依拠する多様な質的研究
1.3 1人の研究者の認識論と研究パラダイム
1.4 研究者の研究的習熟 —— サイエンスでありアートでもある質的研究
2 教育実践研究と質的研究
2.1 実践者にとって質的研究が着手しやすく見えることについて
2.2 実践者にできる簡単な質的研究の方法はあるか
2.3 実践報告と実践研究の違いの認識の必要性
2.4 教育研究における「説明と同意」はどのような場合に必要か
3 量的研究手法と質的研究手法の併用
3.1 mix は研究の量的部分と質的部分のそれぞれに何をもたらすか
3.2 潜在的だが重要な概念「規模」
3.3 質的研究は何人でするべきものか
4 「定性的・定量的」という表現について
5 質的研究とエビデンスレベル
6 質的研究に関する諸概念・言説をその歴史的文脈において理解する必要性
7 プログラムやシステムの開発と評価における質的研究の有効な活用の可能性
7.1 シーズ・プッシュからニーズ・プルへ
7.2 実験的妥当性の重視から生態学的妥当性の重視へ
7.3 成果 product に焦点化した評価から経過 process に焦点化した評価へ
7.4 「目標にとらわれない評価」の必要性
7.5 プログラムやシステムに関わる「人間」研究の必要性と可能性
8 質的研究のために研究者が備えておくべき知識、理解、能力とは何か
8.1 研究対象についての深い研究的理解
8.2 研究テーマの近接領域、関連領域、まったくの他領域の文献等の把握
8.3 人間に対する理解と共感
8.4 自己省察と自己受容
8.5 言語的な能力 —— とくに母語の能力
8.6 ことばに対する尊重、謙虚さ、深い関心
8.7 日常的な言語化の習慣
8.8 造語メカニズムを意識した言語使用の日常的習慣
8.9 量的研究手法を学び経験しておくことの重要性
第Ⅱ部 SCAT による質的データ分析
第10章 SCAT とは何か
—— その機能と意義
1 SCAT とは何か
2 SCAT の機能と特徴
3 諸刃の剣としての SCAT
4 質的データ分析手法としての SCAT の意義
第11章 SCAT による分析
1 SCAT のフォームを準備する
2 テクストをセグメント化してテクスト欄に記入する
3 コーディングの前にテクスト(データ)をよく読む
4 〈1〉の「テクスト中の注目すべき語句」を書く
5 〈2〉の「テクスト中の語句の言いかえ」を書く
6 〈3〉の「左を説明するようなテクスト外の概念」を書く
6.1 付したコードが別の部分にも付せないか検討する
6.2 付したコードの関連語や類義語を検討する
6.3 付したコードの対立概念を別の部分に探して変化や対照を把握する
6.4 付したコードに関連する既存の専門的概念の構造を参考にする
7 〈4〉の「テーマ・構成概念」を書く
7.1 〈4〉は必ず名詞あるいは名詞句で書く
7.2 〈1〉~〈4〉を一言で言えば
8 分析的枠組み(概念的・理論的枠組み)の利用とその際の注意点
9 〈5〉の「疑問・課題」を書く
10 「ストーリー・ライン」を書く
10.1 ストーリー・ラインとは何か
10.2 SCAT のストーリー・ラインは〈4〉のコードをすべて使って書く
10.3 必要な場合だけ主語等を最小限に補う
10.4 接続詞等を積極的に補う —— 概念間の関係性を同定する
10.5 コードの間の明確な関係性は新たなコードとして〈4〉に書く
10.6 ストーリー・ラインには〈4〉のコードを一字一句変えないで書く
10.7 SCAT における脱文脈化と再文脈化
10.8 ストーリー・ラインにはテクストのできごとの深層の意味を書く
10.9 ストーリー・ラインの記述で初めて構成され明らかになる意味
10.10 分析の途中でストーリー・ラインがうっすらと見えてきても
11 「理論記述」を行う
11.1 「理論記述」とは何か
11.2 「理論記述」を行うには
12 「さらに追究すべき点・課題」を書く
13 その他の分析例
13.1 SCAT での分析例B「ある女性の転職キャリアに関するインタビュー」
13.2 SCAT での分析例C「水彩絵の具についての語り」
第12章 SCAT での分析の参考のために
—— SCAT の Tips & Pitfalls
1 SCAT の Tips(コツ)
1.1 コードが思い浮かばなくても苦し紛れに適切でないコードを付けない
1.2 考えた複数のコードの間の微妙な違いを検討する
1.3 複合的な語を用いて可能な限りコードを特徴化する
1.4 概念を組み合わせた新たな概念を作ってコードにする
1.5 コードとしてメタファーやモデルを用いる
1.6 熟語や外来語でないことばも積極的にコードとして使用する
1.7 コードの出現頻度は問題ではない
1.8 コードとして複合的な概念を使うべきかそれを分解すべきか
2 SCAT の Pitfalls(落とし穴)
2.1 コードとして外見的・行動的なカテゴリーを付してしまう
2.2 コードとして一般化・普遍化した概念を書いてしまう
2.3 〈1〉から〈4〉へ向かって一般化あるいは上位概念化してしまう
2.4 〈4〉までコーディングを進めないうちにコーディングを止めてしまう
2.5 〈4〉に「文」を書いてしまう
2.6 〈4〉をすべて使わずにストーリー・ラインを書いてしまう
2.7 ストーリー・ラインにもとづかない理論記述をしてしまう
第13章 SCAT の FAQ
1 コーディング以前に関する FAQ
1.1 SCAT を使った分析を「SCAT 分析」と呼ぶか
1.2 SCAT を使うのに講習を受けるなどの条件があるか
1.3 SCAT には分析のためのパソコン用ソフトウェアがあるか
1.4 SCAT は独学でも分析できるようになるか
1.5 SCAT で映像データを分析することはできるか
2 コーディングに関する FAQ
2.1 〈1〉に書き出すかわりにテクストに下線を引いても良いか
2.2 SCAT のマス目を縦や横に連結しても良いか
2.3 SCAT の行を縦方向に並べ替えて良いか
2.4 語られなかったことや観察されなかったことをコードにして良いか
2.5 どれくらいの深さまで解釈してコードを付して良いのか
2.6 SCAT では母語以外によるデータをどう分析すべきか
2.7 SCAT での分析中に概念図などを描くことは有効か
2.8 比較的大きなデータの分析は SCAT でどのように行えるか
3 ストーリー・ラインに関する FAQ
3.1 〈4〉に複数回書いたコードはその回数だけストーリー・ラインに書くのか
3.2 〈4〉に出現した順番で〈4〉のコードを書くのか
4 分析結果に関する FAQ
4.1 分析結果をサブカテゴリ―、カテゴリー、コアカテゴリー等に階層化して
良いか
4.2 異なる分析者による分析結果を突き合わせることに意味はあるか
4.3 SCAT による複数のデータの分析結果をどうまとめるべきか
結語にかえて
1 研究領域を超えた世界共通の研究言語としての質的研究
2 研究対象となる人々と社会の理解のために
2.1 ある研究プロトコル
2.2 質的研究は社会を変えるのかそれとも研究者を変えるのか
2.3 質的研究者のとるべき姿勢
2.4 質的研究の therapeutic な特性
2.5 ではこのテーマではどうすれば質的研究として成立し得るのか
謝 辞
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