内 容
富裕層の専有物であったピアノが人々に親しまれるようになった由来を、明治~現代の歴史からたどり、その普及を可能にした意外な原動力を示す。斜陽産業化の危機を超えるメカニズムをはじめてとらえ、音楽教室とともに世界へと拡がった日本の鍵盤楽器産業の全体像を描ききった意欲作。
目 次
序 章 ピアノ産業と消費者の創造
—— 構造的制約を超えて
1 ピアノへの憧れと普及の始まり
2 ピアノ産業の構造的制約
3 経済学・経営学からの視点
4 先行研究
5 構成と資料
第1章 西洋楽器の流通構造の形成
—— 三木楽器とヤマハ
はじめに
1 音楽教育の進展と楽器流通
2 製造会社による流通統制
おわりに —— 流通系列化と卸商
第2章 卸商オリジナルピアノの成立と製販攻防
—— 三木楽器と河合
はじめに
1 河合小市製造の三木ピアノとその流通
2 戦後の三木ピアノをめぐる卸商と製造会社の戦略
おわりに —— 卸商の歴史的役割
第3章 大量生産されるピアノ
—— ヤマハと河合の発展
はじめに
1 日本ピアノ産業の誕生
2 ヤマハによるピアノ製造技術の進化 —— コスト削減と品質向上の狭間で
3 量産メーカーによる最高性能の追求 —— ヤマハと河合楽器の試み
おわりに —— 大量生産から大量流通へ
第4章 ヤマハ音楽教室の誕生
—— 高度経済成長と個人市場の形成
はじめに
1 学校販売の隆盛とヤマハ音楽教室の誕生
2 河合楽器による予約販売の開始とヤマハの代理店組織
おわりに —— 個人市場に対応した製販協業体制
第5章 中小ピアノメーカーの蹉跌
—— 松本ピアノと流通という参入障壁
はじめに
1 戦前期の松本ピアノ製造
2 戦後の松本ピアノ工場の競争劣位
おわりに —— 流通という参入障壁
第6章 電子楽器の登場
—— コルグとヤマハ
はじめに
1 国産初のリズムマシンからシンセサイザーへ
2 シンセサイザーをめぐる外部環境変化
おわりに —— 製品開発能力と流通による参入障壁
第7章 成熟市場の中のヤマハ音楽教室
—— 特約店政策の効用と限界
はじめに
1 ピアノ市場成熟化に対する戦略
2 音楽教室をめぐる特約店政策の変化
おわりに —— 成熟市場での技術変化と系列組織
第8章 斜陽産業化への対応
—— 世界市場への展開と新たなピアノの開発
はじめに
1 ヤマハによる海外市場への挑戦
2 海外ビジネスの発展と国内事業の再編
3 市場成熟化に抗する製品開発 —— ヤマハ製自動演奏ピアノ
おわりに —— 過渡期におけるグローバル化と技術革新
終 章 鍵盤楽器産業のゆくえ
はじめに
1 ピアノ産業を流通史から考える
2 今後の展望
注
あとがき
参考文献
図表一覧
索 引
受 賞
書 評
『経営史学』(第57巻第4号、2023年3月、評者:米山高生氏)
『社会経済史学』(第88巻第2号、2022年8月、評者:八谷舞氏)
『日本歴史』(2022年10月号、第893号、評者:細川周平氏)
『企業家研究』(第20号、2022年7月、評者:西尾久美子氏)
『電子キーボード音楽研究』(第16号、2022年、評者:金銅英二氏)
『週刊読書人』(2021年9月3日号、第3405号、評者:小宮正安氏)