内 容
「長い19世紀」に確立し、現代世界をも決定づける中道自由主義のインパクトと、それに対抗する反システム運動の勃興を詳述、近代世界システムにおける自由主義国家の成立とその広範な影響を初めてとらえ、19世紀史を書き換える。著者のライフワークにして最高傑作、待望の新刊。
『近代世界システムⅠ—— 農業資本主義と「ヨーロッパ世界経済」の成立』はこちら
『近代世界システムⅡ—— 重商主義と「ヨーロッパ世界経済」の凝集 1600-1750』はこちら
『近代世界システムⅢ——「資本主義的世界経済」の再拡大 1730s-1840s』はこちら
著者紹介
イマニュエル・ウォーラーステイン
(Immanuel Wallerstein)
1930年ニューヨーク生まれ。アメリカの社会学者。研究対象としていた現代アフリカの状況から、「低開発」の歴史的生成過程に関心をもち、従属理論に接近した。他方では、ブローデルを中心とするフランス・アナール学派の歴史認識、とくに「世界経済」の着想に啓発され、「一体化した現代世界」の歴史的形成過程を分析、歴史学や社会科学一般に絶大な影響を与えている。ニューヨーク州立大学ビンガムトン校の「経済・史的システム・文明研究のためのフェルナン・ブローデル・センター」長(1976-99年)、国際社会学会会長(1994-98年)などをつとめた。
目 次
凡 例
序 章 『近代世界システム』全巻の構成
『近代世界システム』における本巻の位置
第Ⅰ巻の構成
第Ⅱ巻と「ヘゲモニー国家」の概念
第Ⅲ巻 —— イギリスのヘゲモニーへ
第Ⅳ巻
第1章 イデオロギーとしての中道自由主義
フランス革命と保守主義
自由主義とは何か
ギゾーとベンタム
社会主義
「変化の常態化」への三つの対応
歴史の主役は誰か
三つのイデオロギーと国家
自由主義と社会主義の同盟
保守主義の自由主義への接近
唯一のイデオロギーとしての自由主義
第2章 自由主義国家の建設
—— 1815年から1830年まで
英仏抗争の終結 —— 自由主義国家モデルの共有
主権在民というスローガン
秩序崩壊の危機感を共有した英仏
誰が国民なのか —— 労働者の排除
フランスでも進んだ工業化
イギリス —— 工業収益率の低下を補う海外投資益
大差のなかった英仏の経済実績
「ヨーロッパ協調体制」
イギリスのヘゲモニー確立に必要だったフランスのリハビリ
労働運動の抑圧
フランスにおける自由主義の確立
ジオカルチャーとしての自由主義
海外での社会変革 —— 自由主義者の立場
ギリシアの独立運動
ヨーロッパの起源はギリシアかエジプトか
自由主義による労働運動の抑圧
七月王政 —— 自由主義国家の勝利
ベルギーのフランスへの併合
ポーランド反乱の意味
イギリスにおけるカトリックの解放
1830年になぜイギリスに革命がなかったのか
英仏などにおける中道自由主義国家の成立
第3章 自由主義国家と階級闘争
—— 1830年から1875年まで
中道自由主義国家の確立
英仏両国の労働運動
英仏友好協商体制の成立
フランス国家の脆弱性
ボナパルティスム —— フランスとイタリア
イギリスの対外干渉
穀物法の廃止
レッセ・フェールという神話
フランスの成熟
イギリスの銀行論争とフランスの金融事情
改革をすすめるイギリス国家
フランスの場合
インターステイト・システムの作用
自由貿易帝国の形成
自由貿易の功罪
フランスの自由主義と帝国 —— クリミア戦争の意味
英仏による世界支配の動揺 —— アメリカとドイツの台頭
労働者の市民への組み込み
「危険な階級」の台頭
自由主義の完成形としての保守主義
第4章 自由主義国家の市民
フランス革命と市民権の概念
包摂と排除 ——「市民」とは?
受動的市民と能動的市民
女性の排除
黒人(解放奴隷)の排除
労働者の排除
社会的統合と二項対立概念の存続
1848年の世界革命
排除を切り崩す —— 社会革命とナショナリズム
労働・社会運動
労働運動の起点
ブルジョワとプロレタリア
職人から労働者へ
急進主義(社会主義)の台頭
イギリスの新組合主義
労働運動と社会主義政党
フランスの場合 —— すべての道は改良主義へ
社会主義者の国政関与
アメリカ —— 民族・国籍による労働者の排除
社会主義にとっての植民地問題
女性・フェミニスト運動
プロレタリアの反フェミニズム
「ファミリ・ウェイジ」を拒否したフェミニストたち
社会主義政党とフェミニストたち —— ドイツとフランスの場合
イタリアその他の場合
反奴隷制運動と女性 —— イギリスの場合
サン=シモン主義とフーリエ主義
1848年が生んだ成果
公共圏のジェンダー
政治的フェミニスト —— 女性参政権運動
社会的フェミニストと優生学の対立
平和運動と女性
民族・人種運動
女性の権利と黒人の権利
保守化するフェミニズム
人種主義の強化
有機体としての国民 —— 他者排除の装置
排除を正当化する科学
第5章 社会科学としての自由主義
激変する世界をどう認識するか —— 社会科学の成立
「二つの文化」の発明
近代世界システムの成立と知
社会科学の誕生
社会運動としての社会科学
英米における社会科学の運動
講壇社会主義 —— ドイツの場合
社会科学における専門化と価値中立性
「価値からの自由」
社会生物学から優生学へ
科学的歴史学の創出
歴史学の科学化 ——史料批判
中道自由主義国家にとっての歴史学の意味
法則定立的な学の創出
三位一体の社会科学
政治経済学から経済学へ
デュルケームとフランス社会学
A・スモールとアメリカの社会学
ブートミとシアンス・ポ
コロンビア大学政治学部
ウェブ夫妻とLSE
西洋以外の世界
「残りの世界」—— 人類学と東洋学の対象
中道自由主義に奉仕する学
ヨーロッパ文化の起源
エジプトかギリシアか
ドイツのインド学・中国学
人類複数起源説 —— 人類学と人種差別
第6章 再 論
訳者解説
参考文献
索 引
『近代世界システム』(全4巻)
『近代世界システムⅠ—— 農業資本主義と「ヨーロッパ世界経済」の成立』
『近代世界システムⅡ—— 重商主義と「ヨーロッパ世界経済」の凝集 1600-1750』
『近代世界システムⅢ——「資本主義的世界経済」の再拡大 1730s-1840s』
書 評
日本経済新聞(2021年7月3日付、読書欄「リーダーの本棚」、紹介者:平野博文氏)
朝日新聞(2019年12月16日付、文化の扉「地球規模の新・世界史」)
『週刊東洋経済』(2019年12月7日号、特集「ビジネスマンのための世界史&宗教」)
朝日新聞(2019年10月5日付、読書欄「ひもとく」、評者:山下範久氏)
『合本 AERAの1000冊』(AERA MOOK、2015年10月30日発行、評者:出口治明氏)
『週刊ダイヤモンド』(2015年10月17日号、評者:出口治明氏)
『社会経済史学』(第80巻第4号、2015年2月、評者:木谷名都子氏)
著者・訳者の書籍
『資本主義世界経済Ⅰ』 I.ウォーラーステイン 著/藤瀬浩司・麻沼賢彦・金井雄一 訳
『資本主義世界経済Ⅱ』 I.ウォーラーステイン 著/日南田靜眞 監訳
『西洋近現代史研究入門[第3版]』 望田幸男・川北 稔ほか編
関連書
『近代世界の誕生』 C.A.ベイリ 著/平田雅博・吉田正広・細川道久 訳
『ジェントルマン資本主義の帝国Ⅰ』 P.J.ケインほか著/竹内幸雄ほか訳
『ジェントルマン資本主義の帝国Ⅱ』 P.J.ケインほか著/木畑洋一ほか訳
『ヨーロッパの奇跡』 E.L.ジョーンズ 著/安元 稔ほか訳
『経済成長の世界史』 E.L.ジョーンズ 著/天野雅敏ほか訳