内 容
今日の世界を覆う「資本主義的世界経済」の出発点となった、16世紀ヨーロッパを中心とする近代世界システムの誕生の軌跡を鮮やかに描き出す。歴史および社会諸科学の記述を大きく塗り替えて、現代の古典となった記念碑的著作の第1巻。ウォーラーステインによる新たな序文を付した新版。
*岩波書店様から刊行された2巻本の『近代世界システム』(1981年岩波現代選書、2006年岩波モダンクラシックス、原著の第Ⅰ巻に対応)は、今回刊行する新版の第Ⅰ巻にまとめられます。
『近代世界システムⅡ—— 重商主義と「ヨーロッパ世界経済」の凝集 1600-1750』はこちら
『近代世界システムⅢ——「資本主義的世界経済」の再拡大 1730s-1840s』はこちら
『近代世界システムⅣ—— 中道自由主義の勝利 1789-1914』はこちら
著者紹介
イマニュエル・ウォーラーステイン
(Immanuel Wallerstein)
1930年ニューヨーク生まれ。アメリカの社会学者。研究対象としていた現代アフリカの状況から、「低開発」の歴史的生成過程に関心をもち、従属理論に接近した。他方では、ブローデルを中心とするフランス・アナール学派の歴史認識、とくに「世界経済」の着想に啓発され、「一体化した現代世界」の歴史的形成過程を分析、歴史学や社会科学一般に絶大な影響を与えている。ニューヨーク州立大学ビンガムトン校の「経済・史的システム・文明研究のためのフェルナン・ブローデル・センター」長(1976-99年)、国際社会学会会長(1994-98年)などをつとめた。
目 次
図版出典
謝 辞
2011年版への序
序 章 社会変動の研究のために
構造とは何か
アフリカ研究から世界システム論へ
発展段階論からの脱却
分析の手法
世界システム論的分析の意義
第1章 近代への序曲
「世界経済」と「世界帝国」
封建制とは何だったのか
封建制下のヨーロッパの危機
農民反乱と人口減少
国家権力の強化
国家とは何か —— 国境線が国民意識を生む
自然現象で説明できるか
社会構造の転換
資本主義的「世界経済」の誕生 —— 地理的拡大
進出の動機 —— なぜ貴金属なのか
食糧と燃料 —— 基礎商品を求めて
貨幣素材としての地金の必要性
職業としての探検・航海・植民
なぜポルトガルが先陣を切ったのか
強力だったポルトガルの国家機構
引きこもる中国と進出するヨーロッパ
相違していた内的動機
ウェーバーの説明 —— アジアの「秩禄」制
ヨーロッパ「世界経済」と中華帝国
帝国構造が負担になった中国
第2章 新たなヨーロッパ分業体制の確立
—— 1450年頃から1640年頃まで
近代世界システムの成立時期とその位置
物価変動についてのハミルトン学説
ハミルトン批判
資本主義的「世界経済」にとっての地金
賃金と物価の格差
実質賃金低下の要因
実質賃金の低下と「世界経済」の地域構造
対外進出の重要性
「中核」「半周辺」「周辺」と労働管理の形態
近代奴隷制
換金作物栽培のための強制労働
再版農奴制もエンコミエンダも資本主義である
東欧と西欧の差異の起源
2つの「周辺」の出現
半周辺の経済活動
分益小作制
中核となった西欧、周辺となった東欧
イギリスとフランスの差異
都市と都市貧民
商人の位置づけ
「国際債務奴隷制」
商人も地主も —— 近代世界システムの資本家たち
従属派対封建派
16世紀とは何だったのか
第3章 絶対王政と国家機構の強化
国家の役割
国家機構はいかにして強化されたか
国家財政の強化
傭兵隊の整備
匪賊の横行
政府の合法性
絶対王政とナショナリズム
商業におけるナショナリズム
宗教と経済
ポーランドはなぜカトリック化したのか
国家と資本家の関係
地主・貴族・ブルジョワジーは区別できない
近代世界システムの経済と政治
第4章 セビーリャからアムステルダムへ
—— 帝国の挫折
15世紀危機から立ち上がるスペイン
スペイン帝国の形成と破綻
世界帝国をめざすフランスとスペイン —— フッガー家のゆくえ
アントウェルペンの台頭
高価につきすぎた「帝国」—— スペインの場合
フランス帝国の挫折
世界システムの転換点
スペインの没落
スペイン衰退の要因
新しいシステムの誕生
セビーリャからアムステルダムへ
ネーデルランド革命
革命の進行と宗教
ネーデルランド革命の本質
オランダの台頭
ヴェネツィアの衰退
第5章 強力な中核諸国家
—— 階級形成と国際商業
ヨーロッパにおける工業の集中
毛織物輸出国となったイギリス
イギリス国家の強化
ジェントリ論争
貴族は衰退したのか
ジェントリは勃興したのか
ジェントリの歴史的役割
新たな階級カテゴリの成立 ——「ジェントリ」
ヨーマン
農民層の分解
階級形成の問題
「ピューリタン革命」とは何だったのか
「17世紀危機」へのイギリスの対応
フランスの場合
陸上輸送から海上交易へ
フランスにおける中央対地方
「長期の16世紀」の終焉 —— 全般的危機
比較的よかった北西ヨーロッパ
テューダー朝の政策
危機に立つイギリス
イギリスの対応 —— 対外進出
イギリス革命へ
妥協しなかったフランス貴族
ブルジョワ化しにくかったフランス貴族
ゴールドマン対ムーニエ
フランスにおける17世紀危機
フランスの民衆反乱
宗教対立と地域対立
英・仏の共通性
第6章 「ヨーロッパ世界経済」
—— その周辺と外部世界
「ヨーロッパ世界経済」= 近代世界システムの範囲
ロシアは外部、ポーランドは内部
ハンガリー、ボヘミア、デンマークなどの位置
国家の役割 —— 周辺の場合
プロイセンとスウェーデン
自らの「世界経済」形成をめざしたロシア
ロシアの対外進出
ロシアにおける商人と都市
オスマン帝国も自立した世界
ポルトガルのアジア進出
アジアはヨーロッパ「世界経済」の外部
アジア経済を変えられなかったポルトガル
胡椒貿易の意味
内なる南北アメリカと外なるアジア
世界システムの構造転換
第7章 理論的総括
リアルなシステムとしての「世界システム」
近代世界システムは資本主義の「世界経済」
格差を拡大する「世界経済」
雑多な出自をもつブルジョワジーの形成
宗教改革と反宗教改革の時代
中核における国家機構の強化
近代世界システムの生誕
訳者あとがき
参考文献
索 引
『近代世界システム』(全4巻)
『近代世界システムⅡ—— 重商主義と「ヨーロッパ世界経済」の凝集 1600-1750』
『近代世界システムⅢ——「資本主義的世界経済」の再拡大 1730s-1840s』
『近代世界システムⅣ—— 中道自由主義の勝利 1789-1914』
書 評
日本経済新聞(2021年7月3日付、読書欄「リーダーの本棚」、紹介者:平野博文氏)
朝日新聞(2019年12月16日付、文化の扉「地球規模の新・世界史」)
『週刊東洋経済』(2019年12月7日号、特集「ビジネスマンのための世界史&宗教」)
朝日新聞(2019年10月5日付、読書欄「ひもとく」、評者:山下範久氏)
『合本 AERAの1000冊』(AERA MOOK、2015年10月30日発行、評者:出口治明氏)
『週刊ダイヤモンド』(2015年10月17日号、評者:出口治明氏)
著者・訳者の書籍
『資本主義世界経済Ⅰ』 I.ウォーラーステイン 著/藤瀬浩司・麻沼賢彦・金井雄一 訳
『資本主義世界経済Ⅱ』 I.ウォーラーステイン 著/日南田靜眞 監訳
『西洋近現代史研究入門[第3版]』 望田幸男・川北 稔ほか編
関連書
『近代世界の誕生』 C.A.ベイリ 著/平田雅博・吉田正広・細川道久 訳
『ジェントルマン資本主義の帝国Ⅰ』 P.J.ケインほか著/竹内幸雄ほか訳
『ジェントルマン資本主義の帝国Ⅱ』 P.J.ケインほか著/木畑洋一ほか訳
『ヨーロッパの奇跡』 E.L.ジョーンズ 著/安元 稔ほか訳
『経済成長の世界史』 E.L.ジョーンズ 著/天野雅敏ほか訳