内 容
それが存在しない世界に ——。科学的な実証知が勃興し、旧来の人文教養が失墜した世紀末の憂鬱の只中で、それでも「文学に賭ける」決断を下したプルースト。作家が格闘した、『失われた時を求めて』誕生以前の文の地形を明らかにすることを通して、その出現の意味を探る労作。
目 次
はじめに 文学に賭ける —— マルセル・プルーストの選択
凡 例
序 章 世紀末の憂鬱 —— 2つの〈文学的病〉
1 新たなる「世紀病」——〈書く病〉
2 旧き教養人の愉しみ ——〈読む病〉
3 2つの「文学的病」から瘉えるために
第Ⅰ部 文学の位置
—— 時代といかに闘うか
第1章 文学教養
——〈読むこと〉と〈書くこと〉の不純な関係
第2章 〈教養小説〉を読む方法
1 〈教養〉から〈習得〉へ
——『失われた時を求めて』は〈教養小説〉か
2 人と作品 ——〈教養小説〉、あるいは近代批評の自画像の誕生
第3章 マルセル・プルーストの修業時代
第Ⅱ部 小説の可能性
第1章 時代と闘う二つの美学
—— 前衛的であったということ
1 世紀末のゲーテの弟子たち
2 水脈をたどって —— 世紀末からの脱出を図る美学の干渉
第2章 〈鏡映〉の美学を超えて
—— レアリスムとの闘い
1 『シクスティーヌ』、あるいは世紀末小説の鏡
2 ユベールよりももっと先へ ——『パリュード』
第3章 反=日記あるいは「文学生活」批判
1 〈生きること〉と〈書くこと〉の曖昧な関係
2 生という作品
第4章 歴史は物語ではない
—— 小説的真実のゆくえ
第Ⅲ部 近代批評と小説
——『サント=ブーヴに逆らって』の射程
第1章 サント=ブーヴの喪が明けて
第2章 テーヌの未完の小説
——〈教養小説〉が不可能になるところ
第3章 サント=ブーヴをパロディ化する
1 「ある朝の思い出」—— サント=ブーヴ的舞台装置の構築
2 「マルタンヴィルの鐘塔」考 ——〈生成小説〉のミニアチュール
3 錬金術あるいはルモワーヌの夢から醒めるために
第4章 近代「生成批評」のその後
第Ⅳ部 プルースト小説の地平
第1章 『ジャン・サントゥイユ』から『失われた時を求めて』へ
——〈書けない主人公〉 の誕生
第2章 「天職の物語」の終わりかた
第3章 『見出された時』を読む
—— 作家はいつ書き終えるか
終 章
あとがき
初出一覧
註
索 引
書 評
『週刊読書人』(2014年12月19日号、評者:塚本昌則氏)