内 容
対話し、批評するイメージたち ——。ゲーテの野心的な色彩研究において、独自の生命を宿した図版はいかなる働きを担っているのか。視覚的表象のスタイルから、認識論的な風刺、彩色技法まで緻密に読み解き、テクストだけでは見えない、単なる対立を超えたニュートンとの関係と、「知」の形成におけるイメージの能動的作用を捉える。
目 次
序 章
1 『色彩論』の図版集
2 図版の目的 —— 教示・論争・実験
3 「図像論争」としてのニュートン批判
4 イメージの自然(ピュシス)ともう一つの論争
5 本書の構成と方法
第Ⅰ部 表象と認識
第1章 「主観的実験」のための図法
—— イメージと認識のかたち
1 ニュートンの「主観的実験」
2 「図」の「ずれ」の描写
3 実験の「空間の状況」
4 投影図と「直立図」
5 観察者の目
6 図像と認識
第2章 半透明なイメージ
—— スペクトルの図像化
1 ニュートンの「基本実験」
2 断面図と図法の不統一
3 遠近法と表象の透明性
4 『色彩論』における「半透明」
5 半透明なイメージとしてのスペクトル
6 『光学』におけるスペクトルの「半影」
7 「半透明」の色彩論と光学
第Ⅱ部 戯画と風刺
第3章 点線の記号論
——『光学』の図の戯画化
1 「ニュートンの偽りのいかがわしい図」
2 円の連なりとしてのスペクトル
3 ゲーテの反論
4 スペクトルの辺の描写
5 『光学』の図における点線
6 ニュートンの図のパロディ
7 認識論的な風刺
第4章 蠅とトランプ
—— せめぎ合う光学的イメージと図像学的イメージ
1 「ニュートンの虫と均質光」
2 『光学』第一篇第一部の実験14とゲーテの反論
3 実験装置としての図版 —— 観察されるイメージ
4 風刺画としての図版 —— 解読されるイメージ
5 光学的視覚と図像学的視覚
6 文字へのまなざしとニュートン光学のアポリア
第5章 グリッドの解体
—— ニュートン光学の脱神話化
1 ゲーテのグリッド
2 『光学』第一篇第二部の命題八と図12
3 グレンと『一般学芸新聞』の図式
4 『色彩論』の図版Ⅸ・X
5 色彩の行進
6 三角形とグリッド
第Ⅲ部 イメージの受動と能動
第6章 イメージの「拷問」
—— ニュートンの図を改変するゲーテ
1 『光学』の図の改変
2 『光学』第一篇第一部の実験9とゲーテの反論
3 光線から「光像」へ
4 図の反転・回転・分解
5 ニュートンの光学研究のパロディ
第7章 行為するイメージ
—— 図像の潜勢力とその継承
1 図中の文字と「像行為」
2 ニュートンの図の行為主体性
3 ニュートンからゲーテへ —— 継承されるイメージの生命
第Ⅳ部 物質・手技・装置
第8章 色彩の現前
—— 屈折の法則をめぐる論争とイメージの物質性
1 屈折の法則をめぐる図像論争
2 ニュートンによる屈折の法則の図解
3 ゲーテの批判
4 図版の彩色技法と色彩の現前
5 ニュートンの白い紙
6 現象としてのイメージ、経験される色彩
第9章 実験者の手と職人の手
—— 科学における技芸の領分
1 実験者の手の図像
2 色彩の変容説をめぐる論争
3 職人ニュートン —— 手の礼賛
4 手品師ニュートン —— 手の侮蔑
5 イメージによる手の復権
補 章 科学と工芸
——『色彩論』の図版の彩色
1 図版の彩色という技芸
2 1800年頃の版画の彩色事情
3 ヴァイマルの公国産業社の彩色工房とゲーテ
4 『色彩論』の図版の彩色の経緯
5 「半芸術」としての染色術と彩色術
第10章 円環と回転
—— 色彩環と視覚の変容
1 色彩の円環ダイアグラム
2 ニュートンの色彩環 —— 混色の数学的法則
3 ゲーテの色彩環 —— 色彩の生成と調和の原理
4 イメージの操作性と回転性
5 円盤の回転と色彩の混合
6 「すべての色の一回り」—— ニュートンと「主観的視覚」
7 ゲーテのはずみ車と「見かけの円盤」
8 視覚の歴史における断絶と連続
終 章
1 虹をめぐる図像論争
2 デ・ドミニスとデカルト —— 光の描写と概念
3 デカルトとニュートン、ニュートンとゲーテ —— 虹の表象と認識
4 デカルト、ニュートン、ゲーテ、マイアー —— 対立の相対化
5 対話するイメージ
あとがき
初出一覧
注
参考文献
図版一覧
索 引
関連書
『客観性』 ロレイン・ダストン,ピーター・ギャリソン 著/瀬戸口明久・岡澤康浩・坂本邦暢・有賀暢迪 訳
『科学ジャーナルの成立』 アレックス・シザール 著/柴田和宏 訳/伊藤憲二 解説
『アインシュタインの時計 ポアンカレの地図』 ピーター・ギャリソン 著/松浦俊輔 訳
『リヴァイアサンと空気ポンプ』 S.シェイピン・S.シャッファー 著/吉本秀之 監訳/柴田和宏・坂本邦暢 訳
『近代科学のリロケーション』 カピル・ラジ 著/水谷 智・水井万里子・大澤広晃 訳




