内 容
「史上最大」とも称される国外追放政策は、移民社会に何をもたらすのか。米国とメキシコをつなぐ画期的な調査を通して、取締り・収容から帰国後のさらなる困難、分断される家族、再移動の試みまで、一国に限定された視野では捉えきれない強制送還の全容を力強く描き出し、移民論の新領域を拓く。
目 次
序 章 アメリカとメキシコにおける越境と送還
1 移動の権利と移民管理レジーム
2 6つの越境経験
3 強制送還後の移民たち —— 本書の視角
4 本書の構成
第1章 強制送還をトランスナショナルに把握する
—— 分析枠組みと方法
はじめに
1 トランスナショナリズム研究の理論的視座と課題
2 移民規制の厳格化をめぐる研究の理論的視座と限界
3 分析枠組みと研究方法
4 調査者としての立場性
おわりに
第2章 米国移民管理レジームの形成
—— 移民政策と刑事司法システムの接合
はじめに
1 移民管理レジームの歴史的展開
2 ジェンダー化される「移民の脅威」
3 移民政策と刑事司法システムの交差
4 移民の犯罪者化とその影響
5 「産獄複合体」と移民収容所の拡大
6 包摂される「望ましい移民」とは誰か
おわりに
第3章 緩やかなネットワークの強みと弱み
—— メキシコ都市部出身移民の帰還
はじめに
1 メキシコ都市部への帰還に社会的ネットワークが果たす役割
2 メキシコにおける都市化のプロセスと国内移住
3 都市部から米国への国際移動
4 ネサワルコヨトルから米国への移住の特徴
5 米国からネサワルコヨトルへの帰国の特徴
6 都市部出身者のネットワークが帰国局面に及ぼす影響
おわりに
第4章 「帰国者」へのまなざしと排除
—— メキシコ村落部出身移民の帰還
はじめに
1 オアハカ州における先住民の特徴と移動
2 村落部における「帰国者」へのまなざし
3 村落部における帰国をめぐる言説
おわりに
第5章 トランスナショナルな社会空間の形成と変容
—— 村落コミュニティの越境的実践と世代・ジェンダー
はじめに
1 移住の歴史的展開とトランスナショナルな社会空間の形成
2 分岐する移住経験
3 移民規制の厳格化はいかに経験されるか
おわりに
第6章 強制送還をめぐる言説と村落の価値規範
—— トランスナショナルなモラル・エコノミー
はじめに
1 移民管理レジームと村落のモラル・エコノミーの接合
2 帰国をめぐる当事者の認識と戦略的な語り
3 村落コミュニティにおける包摂と排除
おわりに
第7章 トランスナショナルな家族と越境リスクの変化
—— 移民管理レジームによるモビリティの制約
はじめに
1 越境の重罪化がもたらすモビリティへの影響
2 損なわれる社会関係資本
3 移民管理レジームによるトランスナショナルな社会空間の再編
おわりに
終 章 移民規制の厳格化は何をもたらしたのか
はじめに
1 移民管理レジームと移民の犯罪者化
2 多様な帰還のあり方
3 トランスナショナルなモラル・エコノミーにおける包摂と排除
4 監視と排除の時代における境界管理とモビリティ
5 ラティーノ移民とアメリカ社会
6 移民政策のゆくえ
参考文献
あとがき
索 引
関連書
『国際移民の時代[第4版]』 S. カースルズ,M.J. ミラー 著/関根政美・関根 薫 監訳