内 容
血と暴力に彩られた破滅的な生涯を送りながら、深い精神性と宗教性をたたえた作品によって時代を越えて人々の心を打つカラヴァッジョ。本書は、反宗教改革期イタリアの精神風土のなか、幻視のリアリズムを実現した「呪われた画家」の芸術の本質に迫る、わが国初の本格的著作である。
目 次
はじめに
第Ⅰ部 カラヴァッジョの位置
第1章 生涯と批評
1 生涯と神話化
2 カラヴァッジョの影響と批評史
第2章 1600年前後のローマ画壇とカラヴァッジョ
1 反宗教改革と美術
2 クレメンス8世治世下のローマ画壇
3 ロンカッリとダルピーノ
4 アンニーバレ・カラッチ
5 ジョヴァン・バッティスタ・ポッツォとその他の画家たち
第Ⅱ部 カラヴァッジョ芸術の特質
第3章 回心の光
1 速やかな回心
2 天からの声
3 死からの覚醒
4 カラヴァッジョにおける回心
第4章 幻視のリアリズム
1 巡礼者たちのヴィジョン
2 ヴィジョンへの参入
3 瞑想の空間
4 バロック的ヴィジョンへ
第Ⅲ部 カラヴァッジョ作品の諸問題
第5章 真贋の森
1 カラヴァッジョの複数作品
2 最初期の作品《果物を剝く少年》の問題
第6章 カラヴァッジョの身振り
1 「マタイ論争」と身振り
2 オランスの身振り
第7章 二点の《洗礼者ヨハネ》の主題
1 カピトリーノ作品
2 カラヴァッジョにおける「不在効果」
3 ボルゲーゼ作品
4 ヨハネ=イサク=キリスト
第Ⅳ部 カラヴァッジョ逃亡
第8章 末期の相貌
1 悔恨の山 —— ラツィオ逃亡期の問題
2 切られた首の自画像 ——《ダヴィデとゴリアテ》
第9章 犠牲の血
——《洗礼者ヨハネの斬首》の図像解釈
1 マルタ騎士団
2 血の寓意
3 鍵と囚人
4 騎士団長礼賛
第10章 失われた最後の大作
1 《生誕》の位置づけ
2 カラヴァッジョのモデル使用
3 先行作例と晩年様式
4 《キリストの復活》再現の試み
あとがき
ローマ カラヴァッジョ作品案内図
カラヴァッジョの軌跡
カラヴァッジョ年譜
註
参考文献
索 引
欧文目次