内 容
ユーラシアにおける市場経済の展開を、中世に遡る超長期的スケールと、異なる地域・時代を包摂する統一的視座で捉え、成長から自壊に至るメカニズムを、気候変動や感染症ではなく市場内部の性質から解明。歴史を理解する枠組みを大胆に刷新し、近代と経済をめぐる数々の通説に挑む。
著者紹介
B. ファン・バヴェル (Bas van Bavel)
1964年生まれ。現在、ユトレヒト大学人文学部卓越教授。2019年、経済史家としての優れた業績が認められ、オランダの傑出した科学者に与えられるスピノザ賞を受賞。経済学的な理論と緻密な実証研究のコラボレーションを通じ、経済成長と社会変容にかんする比較史的分析を多数行っている。著書に、Manors and Markets: Economy and Society in the Low Countries, 500-1600(Oxford University Press, 2010).
(所属等は邦訳初版第1刷発行時のものです)
目 次
日本語版への序
はしがき
第1章 序 論
—— 経済学および歴史学における市場
1 市場とその歴史記述、そして従来の諸前提
2 市場の近代性に関して —— 近年の歴史研究の見解
3 市場への新たなアプローチ —— 本書〔の視点〕
4 市場経済の事例
第2章 中世初期の帝国における市場
—— 500〜1100年のイラク
1 経済発展の大まかな輪郭
2 社会反乱と、5世紀~8世紀半ばにおける生産要素市場の成長
3 ダイナミックな生産要素市場と、8世紀後半~10世紀に高まる社会的不平等
4 9~11世紀に経済・政治・社会が受けた長期的影響
第3章 中世都市国家における市場
—— 1000〜1500年の中部および北イタリア
1 11~13世紀の生産要素市場の出現
2 14世紀初頭~15世紀半ばにおけるダイナミックな生産要素市場の組織・背景・
影響
3 変わりゆく市場の社会的背景 —— 15~16世紀の権力と財産
4 経済、農業、そして人口への影響
第4章 中世後期から近代初期の公国群における市場
—— 1100~1800年の低地諸国
1 12~14世紀における生産要素市場の出現およびそれ以前の社会的背景
2 13~15世紀における生産要素市場の出現
3 15世紀~16世紀半ばにおけるダイナミックな生産要素市場の機能と影響
4 16世紀半ば~17世紀におけるダイナミックな生産要素市場の影響
第5章 エピローグ 近代国家における市場
—— 1500〜2000年のイングランド、アメリカ合衆国、そして西ヨーロッパ
1 1500~1800年のイングランドと北米植民地
2 1800〜1950年におけるイングランドの衰退とアメリカ合衆国の成長
3 1950年以降の、シンクロし、生産要素市場によって支配される西洋世界
第6章 結 論
—— 市場経済と、長期的な繁栄や平等、そして意思決定への幅広い参加との間
の根本的な不和
1 サイクル
2 サイクルとその特徴的な側面、そして長期的発展の理論
3 時間と空間のサイクル
注
訳者解説
参考文献
索 引
書 評
『読書アンケート 2024(みすず)』(2025年2月、評者:斎藤修氏)
関連書
『近代世界システム Ⅰ~Ⅳ』 I. ウォーラーステイン 著/川北 稔 訳
『経済成長の世界史』 E.L.ジョーンズ 著/天野雅敏 他訳
『世界史のなかの産業革命』 R.C.アレン 著/眞嶋史叙・中野 忠・安元 稔・湯沢 威 訳
『近代世界の誕生 上・下』 C.A.ベイリ 著/平田雅博・吉田正広・細川道久 訳
『世界史のなかの東南アジア 上・下』 アンソニー・リード 著/太田 淳・長田紀之 監訳