内 容
起業にあたり自力でのインフラ建設が不可避であった時代に、鉄道、港湾、電力などの整備に奮闘し、多くの土木技術者を育てた白石直治。彼を中心とする緊密な人的交流や、先進的技術も取り入れた大規模工事の実態を通じ、日本の産業化の基盤形成に民間が果たした役割を浮彫りにする。
目 次
序 章 明治期日本のインフラ・ビジネス/ビジネス・インフラと技術者
(1)近代的社会資本建設の時代
(2)土木技術者の年譜
第1章 近代土木技術者と教育
—— もう一つのインフラストラクチュア
1 土木教育の機関と制度
(1)工部省と工部大学校
(2)開成学校・東京大学
(3)帝国大学工科大学
(4)攻玉社と工手学校
2 明治前半の土木留学
(1)明治政府の留学政策
(2)初期留学者の諸相
(3)白石の海外留学
3 補 論:高等中学校
第2章 近代移行期の土木事業
—— 建設業界の構造と変遷
1 土木事業と建設工事
(1)明治政府と土木事業
(2)建設業(請負)の発展
2 鉄道事業の興隆
(1)企業勃興と鉄道ブーム
(2)鉄道建設と土木技術者
(3)九州鉄道の揺籃期と高橋
3 補 論:技術者と兵役(一年志願兵制度)
第3章 関西鉄道
—— 官の対岸の私鉄
1 建設期の概観
(1)設立の経緯
(2)白石の社長就任
(3)建設工事の進捗
2 幹線建設工事とトンネル
(1)鉄道建設におけるトンネル
(2)同時期の工事:琵琶湖疏水第一トンネル
(3)加太越え三隧道
(4)幹線の開通開業と経営危機
3 新線建設工事と橋梁
(1)名古屋、奈良への延伸
(2)鉄道建設における橋梁
(3)木曾・揖斐越え二橋梁
4 自力建設時代の終焉
(1)買収戦略と白石の社長退任
(2)高橋・広沢と関西鉄道
(3)白石後の関西鉄道
第4章 若松築港
—— 海陸連携地域開発の要
1 筑豊炭田をめぐって
(1)石炭と若松港
(2)筑豊興業鉄道
(3)三菱の動向
2 若松港の発展
(1)若松築港会社の創業
(2)製鉄所
(3)若松港拡張工事
(4)港湾設備と戸畑の開発
3 若松築港と白石
(1)社長就任の経緯
(2)白石の役割と若松港のその後
第5章 三菱の建築所
—— 近代移行期の企業内建設機能
1 ビジネス・インフラの人材確保
2 東京のビジネス・インフラ
(1)三菱為替店倉庫
(2)丸ノ内建築所
3 神戸のビジネス・インフラ
(1)神戸建築所
(2)和田建築所
(3)再度、神戸建築所と東京倉庫
4 朝鮮半島と長崎
(1)南韓鉄道調査・日韓瓦斯電気
(2)長崎造船所第三船渠
第6章 猪苗代水力電気
—— 次世代に向けてのエネルギー開発
1 水力発電時代の幕開け
(1)明治初年の電気事情
(2)猪苗代湖と地域開発
2 猪苗代水力電気と三菱
(1)日橋川の水利と新会社の発足
(2)三菱の電機事業
3 建設工事の進捗
(1)発電計画
(2)第一期工事の諸相
(3)第二期工事とその後
終 章 白石直治をめぐる世界とその時代
あとがき
関連年表
注
参考文献
図表一覧
索 引
受 賞
書 評
『歴史と経済』(第231号、2016年4月、評者:中村尚史氏)
『技術と文明』(20巻1号、2016年2月、評者:鈴木淳氏)
『経営史学』(第50巻第2号、2015年9月、評者:三木理史氏)
『国民経済雑誌』(第212巻第2号、2015年8月、評者:橋口勝利氏)