内 容
「論」から「学」へ ——。成熟した中国経済研究からエッセンスをつかみ出し、所有・市場からガバナンスやイノベーション、対外援助、さらには腐敗・格差まで、生動する独自の経済システムを、トータルに、かつ長期的なパースペクティブのなかで、明解に説き明かした待望の書。
目 次
序 章 中国経済学への招待
—— 中国研究のさらなる進化を目指して
1 「論」から「学」への進化
2 本書の目的
3 本書の特徴
4 本書の構成
第Ⅰ部 基礎篇
第1章 「曖昧な制度」とは何か
—— 制度の内生的変化の視点
1 制度をどう捉えるか
2 なぜ制度に注目するか
3 「曖昧な制度」をどう捉えるか
第2章 「曖昧な制度」はいかに形成されたか
—— 歴史、風土と社会主義の実験
1 「曖昧な制度」を育んだ中国の歴史と風土
2 「曖昧な制度」と社会の結合原理
3 歴史の中に現れた「曖昧な制度」
4 社会主義の実験と「曖昧な制度」
第Ⅱ部 応用篇
第3章 進化する土地の集団所有
—— 請負制から土地株式合作社へ
1 集団経済という「曖昧な制度」
2 土地における所有と経営の分離
3 土地株式合作社の出現
4 進化を続ける土地の集団所有
第4章 市場なき市場競争のメカニズム
—— 成長至上主義からの脱却
1 郷村政府による企業経営
2 企業経営から都市経営へ
3 地方政府間競争の功罪
4 新しい政府間競争の姿を求めて
第5章 混合所有企業のガバナンス
—— ナショナル・チャンピオンを創り出す
1 「国進民退」は進んだか
2 混合所有企業はなぜ効率的に経営できるか
3 国有企業改革の現段階
4 ナショナル・チャンピオンは生まれるか
第6章 中国式イノベーション
——「曖昧な制度」が促進する技術革新
1 躍進する新興産業
2 中国式イノベーションの独特の「仕組み」
3 中国式イノベーションが生まれた理由
4 中国式イノベーションの行方
第7章 対外援助の中国的特質
—— グローバル・スタンダードへの挑戦
1 グローバル化の中の中国経済
2 対外援助の実績とその評価
3 中国の対外援助はグローバル・スタンダードへの挑戦か
補 論 「曖昧な制度」としての「対口支援」
第Ⅲ部 課題篇
第8章 腐敗の政治経済学
——「曖昧な制度」がもたらした成長と腐敗
1 深刻化する腐敗の実態
2 腐敗は成長を阻害したか
3 習近平政権の腐敗撲滅の取り組みをどう評価するか
4 成長と腐敗の並存は続く
第9章 中国の格差問題を考える
——「曖昧な制度」は格差を拡大したか
1 格差の歴史的トレンドを読む
2 中国における格差の実態
3 格差を引き起こした要因を考える
4 「曖昧な制度」と格差の行方
終 章 中国経済学の展望
1 資本主義の多様性、再論
2 「中国的なるもの」をめぐって
3 中国経済学の到達点と展望
付 論 若き中国研究者へ
—— 赤の女王の走りと異邦人のまなざし
1 自分自身の研究史を振り返る
2 地域研究と異邦人のまなざし
参考文献
あとがき
図表一覧
索 引
受 賞
書 評
『中国研究月報』(2018年12月号、第72巻第12号、評者:松村史穂氏)