内 容
1950年代初頭、西側世界の同盟相手として中東は再発見された。盟友イギリスの思惑や、勃興するアラブ・ナショナリズムと交差しつつ、米国はいかにして中東政治への関与を深めていったのか。膨大な一次史料を読み解き、知られざる地域構想の運命を鮮やかに描き出した一大叙事詩。
目 次
凡 例
序 章
1 国際システムの変容と中東
2 先行研究の諸問題と本書のアプローチ
3 本書の構成
第Ⅰ部 地域的政策の生成
第1章 英国の非公式帝国と米国の中東への関与の始まり
1 中東における英国の非公式帝国
2 第二次世界大戦後の英国の中東政策の形成
3 米国の中東への関与の始まり
4 戦後ヨーロッパ秩序の形成と米英関係
5 ペンタゴン協議と米英協調の成立
6 非公式帝国再編の蹉跌
第2章 西側統合政策の形成
—— 中東コマンド構想とその遺産
1 中東政策の停滞
2 全面戦争プランと朝鮮戦争
3 中東コマンド構想の生成と変容
4 西側統合政策の結晶化
第3章 協調的石油秩序への道程
1 中東石油と米国
2 中東石油開発の枠組みの模索
3 戦後世界と中東石油
4 動的・開放的な石油秩序構想の挫折 —— 利益折半協定への道
第4章 イラン石油国有化紛争と協調的石油秩序
1 石油国有化の背景
2 米英の基本的立場の形成
3 ナショナリズムとの邂逅
4 ぎこちない同盟
5 新たな常態への復帰
補 論 —— 動的な石油秩序に開かれた窓と出光興産のイラン進出
第Ⅱ部 西側統合政策の展開
第5章 アイゼンハワー政権と西側統合政策
1 「ニュールック」の射程
2 アイゼンハワー政権と中東政策
3 西側統合政策の継承
第6章 西側統合政策の展開(1)
—— 1953-54年
1 イラン —— 非合法介入と西側統合政策
2 トルコ・パキスタン協定
3 対イラク軍事援助
4 スエズ基地交渉と対エジプト援助問題
第7章 西側統合政策の確認と定着
1 NSC 5428 の策定
2 米英の中東軍事戦略の変容
第8章 西側統合政策の展開(2)
—— 1954年後半
1 ヌーリー・サイードと英・イラク条約改定問題
2 トルコ・パキスタン協定とイラン
3 エジプトと西側統合政策
4 アルファ計画の始動
第9章 バグダード条約の成立と西側統合政策の再編
1 アラブ内冷戦の始まり
2 バグダード条約の成立
3 米・英・土3か国軍事協議
4 域内政治の分極化の進行
5 西側統合政策プログラムの再編
6 英国のバグダード条約加盟と西側統合政策
第10章 西側統合政策の迷走と停滞
1 地域的政策の再検討作業
2 親西側諸国の対米不信の高まり
3 アルファ計画の迷走
4 米英政治・軍事協議とハッバーニヤ軍事協議
(下巻内容)
第Ⅲ部 西側統合政策の変容と崩壊
第11章 エジプト・ソ連武器取引の衝撃 —— アイゼンハワー・ドクトリンからシリア危機へ
第12章 西側統合政策の変質 —— オメガ・メモランダムとスエズ危機
第13章 西側統合政策の行き詰まりと崩壊
第14章 地域的政策の空位時代
第15章 オフショア・バランシング政策への移行
第Ⅳ部 協調的石油秩序の黄昏
第16章 協調的石油秩序の限界
第17章 新たな中東石油政策の生成
第18章 産油国・消費国関係の質的変容
終 章
参考文献
あとがき
索 引
受 賞
書 評
『イスラーム地域研究ジャーナル』(第10号、2018年10月、評者:松田拓也氏)
『アメリカ研究』(第52号、2018年5月、評者:小濵祥子氏)
『アメリカ史評論』(第35号、2018年1月、評者:青野利彦氏)
『史林』(第100巻第6号、2017年11月、評者:菅英輝氏)
『アメリカ学会会報』(第194号、2017年7月、評者:倉科一希氏)
『アメリカ太平洋研究』(第17号、2017年4月、評者:池田亮氏)
『図書新聞』(第3267号、2016年8月13日付、評者:泉淳氏)
『週刊東洋経済』(2016年6月18日号、評者:渡邊啓貴氏)
『幻の同盟』
関連書
『星条旗 1777〜1924』 S・M・グインター 著/和田光弘・山澄 亨・久田由佳子・小野沢 透 訳
『グローバル冷戦史』 O・A・ウェスタッド 著/佐々木雄太 監訳/小川浩之・益田 実・三須拓也・三宅康之・山本 健 訳
『戦争国家イギリス』 デービッド・エジャトン 著/坂出 健 監訳/松浦俊輔ほか訳