内 容
近代初の本格的対外戦争は、いかなる制度と心性のもとに遂行され、戦いと病いによる膨大な犠牲を社会はどのように受容したのか。動員体制の確立から、戦闘と占領地統治の様相、葬送・記念や仏教教団の活動まであまねく探究、「大量死の時代」が生んだ戦争協同体の構造を解明する。
目 次
地 図
序 章
1 日清戦争の開始
2 日本国民の戦争熱と「ジンゴイズム」
3 「敵愾心」・「協同心」・「忠誠心」
4 「軍国の文化」の構造
5 日清戦争の社会史的研究
6 本書の課題と内容
第Ⅰ部 第三師団の戦争と戦場の兵卒
第1章 戦時編制と動員体制
はじめに
1 日清戦争前の徴兵制と第三師団
2 兵員召集体制の構築
3 開戦直前の軍事演習
4 第三師団の戦時編制
5 兵員召集の実態
むすびに
第2章 第三師団の出征と戦闘
はじめに
1 日本軍の戦略
2 第三師団管下諸隊の出征
3 平壌の戦い
4 鴨緑江渡河とその後の戦闘
5 海城をめぐる攻防戦
6 牛荘から田庄台へ
むすびに
第3章 征清軍の凱旋と損害
はじめに
1 第三師団諸隊の帰国
2 郷里へ凱旋する兵卒
3 第三師団の損害
むすびに
第4章 兵卒たちの戦争
はじめに
1 兵卒の出征風景
2 兵卒と郷里
3 兵卒の従軍記録
4 行軍を阻むもの —— 糧秣と気候
5 疾病と衛生
6 兵卒が見た戦場の光景
むすびに
第5章 戦場における日本軍と住民
はじめに
1 日本軍の清国侵入と住民
2 安東県民政庁の開設
3 「堯舜の政」・「湯武の兵」
むすびに
第Ⅱ部 戦争と死者
第6章 将兵の死と葬送
はじめに
1 遺骸の埋葬と墓地
2 共葬墓地の設置と管理
3 戦病死者の公葬の執行
むすびに
第7章 戦病死者の招魂祭
はじめに
1 戦場における招魂祭
2 靖国神社臨時大祭
3 第三師団の招魂祭
4 表忠会と招魂祭
5 「無名無数ノ英雄」を祀ること
むすびに
第8章 戦争と仏教教団
はじめに
1 開戦と仏教教団
2 将兵への説教
3 従軍布教使の派遣とその活動
4 曹洞宗僧侶水野道秀の活動
5 戦後の仏教教団の動向
6 仏教と軍隊の関係
むすびに
第9章 仏教忠魂祠堂の建立
はじめに
1 浄土宗の戦争協力
2 建立に至る経過
3 忠魂祠堂の竣工
4 『忠魂霊名録』の編纂
むすびに
第10章 戦地における遺骨回収問題
はじめに
1 真言教団と日清戦争
2 遼東半島還付と遺骨回収問題
3 真言宗従軍布教使の遺骨収集活動
4 護国寺多宝塔・忠霊堂の建立
むすびに
第11章 「軍国」の文体
はじめに
1 招魂祭の祭文・弔文
2 祭文・弔文の文範
3 祝祭弔文集の刊行
4 日清戦争前後の軍人用書
むすびに
補論1 旧陸軍墓地の合葬墓
1 合葬墓の起源
2 豊橋旧陸軍墓地の合葬墓と個人墓
3 名古屋旧陸軍墓地の合葬墓と個人墓
4 第五師団陸軍墓地と台湾の合葬墓
註
【下巻主要目次】
第Ⅲ部 戦勝祝祭の空間
第12章 日清戦争と戦勝祭典
補論2 1890年代の国民祭典
第13章 戦勝のシンボル
第14章 鎮魂の音 —— 岐阜市権現山の戦勝記念鐘について
補論3 「軍歌の帝」明治天皇
補論4 戦争民俗考
第Ⅳ部 戦争記念碑論
第15章 軍・師団の戦争記念碑の建立
第16章 軍都の戦争記念碑 —— 豊橋第十八連隊と神武天皇銅像記念碑について
補 註 軍人記念碑の建立に関する補足
第17章 戦争記念碑の裾野 —— 郡町村の記念碑
第18章 軍夫とその招魂記念碑
第19章 戦争記念碑の系譜
補論5 記念碑建立への法的規制
第20章 中国における日清戦争の墓碑・記念碑 —— 旅順口・金州・錦州
第Ⅴ部 軍国のメディアと社会の倫理
第21章 従軍記者と戦争報道
補論6 従軍記者正岡子規と清国金州の句碑
第22章 宣伝される忠勇者たち
第23章 兵卒・遺族と地域社会
第24章 「義」の民族協同体
第25章 未来の兵士たち
終 章 「軍国主義」の起源をめぐって
註 / あとがき / 図表一覧 / 索 引
『軍国の文化』
書評等
『日本歴史』(2024年12月号、第919号、評者:一ノ瀬俊也氏)
『史学雑誌』(第133編第6号、2024年6月号、評者:小池晃弘氏)
『図書新聞』(2024年5月25日号、第3640号、評者:佐々木啓氏)