内 容
価値の多元化が進むなか、リベラルな民主主義は相対主義や排外主義に抗して自らを正当化できるのか。疑いの目で見られがちな真理概念を、C・S・パースに依拠しながら政治と道徳の世界に呼び戻し、真理探究者の共同体としての社会と、そこで経験や熟議が持つ意義を描き直した、私たちがいま必要とする一冊。
著者紹介
シェリル・ミサック
(Cheryl Misak)
カナダに生まれ、1988年にオックスフォード大学で博士号(D. Phil)を取得。1990年よりトロント大学哲学科教授。プラグマティズムや分析哲学史に関する著作が多数あり、リチャード・ローティ以後の21世紀のプラグマティズム研究の旗手として注目される。本書以外の単著に、Frank Ramsey: A Sheer Excess of Powers(2020)、Cambridge Pragmatism: From Peirce and James to Ramsey and Wittgenstein(2016)、The American Pragmatists(2013)(加藤隆文訳『プラグマティズムの歩き方』上下巻、2019年)など。
(所属などは本邦訳刊行時のものです。)
目 次
日本語版に寄せて
序 論
第1章 正当化の問題
カール・シュミットと、実質的な同質性という目標
ローティと、正当化の放棄
ロールズ —— 政治的であり、形而上学的ではない
調和と、熟議の長所
ハーバーマス、アーペル、そして超越論的論証
第2章 真理、探究、経験
—— プラグマティズムの認識論
パース、真理、探究の終局
哲学、実践、対応
プラグマティズムと引用符解除論
プラグマティズム、超主張可能性、真理の多元主義
二値性
探究における真理の役割
経験 —— 真剣に受けとめる
ホーリズムと根本的ホーリズム
道徳的探究
収斂と探究の終局
第3章 道徳的熟議
真理の追求と理由の付与
中立性 —— 3つの意味
中立性原理
公的/私的
慎みと哲学者
対立、差異、共同体
多元主義、決定不全性、挫かれた理由
シュミット、抑圧、いつ十分話し合ったことになるのか
結 論
注
謝 辞
訳者あとがき
参考文献
索 引
書 評
『図書新聞』(2023年10月21日号、第3611号、評者:中西亮太氏)
『週刊読書人』(2023年7月21日号、第3498号、評者:大賀祐樹氏)
関連書
『チャールズ・テイラーの思想』 ルース・アビィ 著/梅川佳子 訳
『自由の余地』 ダニエル・C. デネット 著/戸田山和久 訳