内 容
過剰な期待と歪んだ批判の狭間で、実像とかけ離れたイメージが作られてきた日教組。膨大な非公開史料や関係者へのインタビューに基づき、学術的にその歴史を徹底検証 ——。上巻では、戦後の労働運動での立ち位置から、独自の教育理念や「教師の倫理綱領」の作成まで、初期の模索を跡づける。
執筆者
(執筆順)
広田照幸 松嶋哲哉
古賀 徹 長嶺宏作
宇内一文 德久恭子
布村育子 冨士原雅弘
高木加奈絵 香川七海
目 次
はじめに
第Ⅰ部 結成と模索
序 章 日教組の歴史を検証する …………… 広田照幸
1 日教組の歴史をどう見ていくか
2 本巻の視点と構成
第1章 総評結成前の立ち位置の選択 …………… 広田照幸・古賀 徹・宇内一文
はじめに
1 日教組内部の人事・方針決定の様子
2 労働戦線の中における日教組の立ち位置
おわりに
第2章 1949年度中央執行委員の分類 …………… 布村育子・高木加奈絵・広田照幸
はじめに
1 執行部の交代や分裂を経験しなかった日教組
2 職能団体的志向性の存在
3 1949年度日教組中執の分類のための作業
4 分類をもとにした事例分析の例
おわりに
第3章 労働戦線分裂と政治情勢変化の中で …………… 高木加奈絵・古賀 徹・宇内一文
松嶋哲哉・長嶺宏作
はじめに
1 国内・国際的な労働戦線の状況と分析の視点
2 労働戦線分裂の情勢分析と路線選択
3 1949年前半の混乱する労働戦線と路線選択
4 1949年後半の労働戦線の決定過程
5 塩原大会の議案の作成
おわりに
第4章 法的地位の変化とその影響 …………… 德久恭子
はじめに
1 公務員制度改革をめぐる4つの立場
2 公務員制度改革をめぐる政治過程 —— 労働組合から職員団体へ
3 労働組合と職能団体という2つの顔
4 投影される日教組
おわりに
第5章 マッカーサー書簡、政令201号と日教組 …………… 高木加奈絵
はじめに
1 マ書簡、政令201号発出の背景と労働戦線の状況
2 マ書簡・政令201号への積極的な対応
3 方針の見直し
おわりに
第6章 スローガン「教え子を再び戦場に送るな」の誕生 …………… 布村育子
はじめに
1 当事者の証言
2 「教え子」フレーズの登場
3 フレーズの活用
4 「教え子」スローガンの誕生 —— 第8回定期大会
おわりに
第7章 「教師の倫理綱領」の作成過程 …………… 広田照幸・冨士原雅弘・香川七海
はじめに
1 倫理綱領草案の作成
2 草案の修正過程
3 倫理綱領の普及
4 「解説」の作成
おわりに
結論に代えて …………… 広田照幸
1 「日教組=共産党支配」像の誤り
2 主流派をどう見るか
3 交渉力を奪われていった中での闘い
4 日教組独自の理念の形成
5 1950年代の日教組を理解するために
初出一覧
参考文献
索 引
執筆者一覧
【下巻主要目次】
第Ⅱ部 混迷と和解
序 章 社会の変化と日教組
第1章 1980年代の労働戦線統再編の中で
第2章 「400日抗争」の過程
第3章 1989年の分裂
第4章 文部省との「歴史的和解」の政治過程
第5章 1990年代の路線転換と21世紀ビジョン委員会
第6章 1995年の運動方針転換への合意形成過程
結論に代えて
あとがき
初出一覧
参考文献
索 引
執筆者一覧
書 評
『大原社会問題研究所雑誌』(789号、2024年7月号、評者:仁平典宏氏)
『教育学研究』(第88巻第3号、2021年9月、評者:乾彰夫氏)
『教育史フォーラム』(第16号、2021年6月、富山仁貴氏による書評と編者からのリプライ)
『歴史学研究』(2021年11月号、第1016号、評者:岡田一郎氏)
『日本教育行政学会年報 47』(2021年10月、評者:水本徳明氏)
『同時代史研究』(第14号、2021年9月、評者:山本公徳氏)
『教育學雑誌』(第57号、2021年3月、評者:冨士原雅弘氏)
『みすず』(2021年1・2月合併号、読書アンケート特集、評者:酒井哲哉氏)
『図書新聞』(2021年1月1日号、第3477号、評者:金馬国晴氏)
西日本新聞(2020年9月6日付、広田先生のインタビュー記事)
『歴史としての日教組』
著者の既刊書
『士族の歴史社会学的研究』 園田英弘・濱名 篤・廣田照幸 著