内 容
地球は太陽からのエネルギーで生命圏を維持するが、一方生命圏は地球に能動的影響を与える。サブシステム間の相互作用・フィードバックの理解が、新しい地球像の構築には必須である。本書はこのシームレスなシステムの過去と現在を、観測・モデルの両面から把握する先駆的テキスト。
執筆者
(五十音順、*印は編者)
阿部 学(3.5) 佐藤 淳(1.1.2) 増田公明(1.1.4)
小川忠彦(1.1) 塩川和夫(1.1.2) 松見 豊(1.1.5)
小川泰信(1.1.3) 関華奈子(1.1.1) 松本英二(2.1)
上出洋介(1.1.4) 中村健治(1.2) 元場哲郎(1.1.5)
河合崇欣(2.3) 野澤悟徳(1.1.3) *安成哲三(序.1、3.6)
川田佳史(3.3) *檜山哲哉(1.4) 山口 靖(1.4.4)
菊池 崇(1.1.6) 藤木利之(2.2) *渡邊誠一郎(序.2、2.3、3.1、3.2、3.4)
才野敏郎(1.3)
目 次
はじめに
地質年代表
序 章 地球学:太陽-地球-生命圏相互作用系の理解
序.1 地球学とは何か
序.1.1 これまでの地球科学は何をやってきたか
序.1.2 そして地球環境問題
序.1.3 生命圏、もうひとつの地球
序.1.4 地球学の基本思想
序.2 太陽-地球-生命圏相互作用系とは何か
序.2.1 太陽
序.2.2 地球
序.2.3 生命圏
序.2.4 太陽-地球-生命圏相互作用系
序.2.5 水惑星「地球」
序.2.6 生命圏の能動的役割とガイア仮説
序.2.7 SELISの構造
序.2.8 本書の構成
第1章 太陽-地球-生命圏相互作用系の動態把握
1.1 太陽-地球系とその変動
1.1.1 太陽-地球系とは
1.1.2 太陽から地球へのエネルギー流入
1.1.3 地球周辺大気・プラズマ環境の変動
1.1.4 太陽放射・銀河宇宙線および地球磁場変動による地球大気環境の変動
1.1.5 人間活動による大気の変質
1.1.6 宇宙災害と宇宙天気研究
1.2 大気と水循環
1.2.1 水惑星「地球」
1.2.2 降水過程の概観
1.2.3 地球温暖化と降水
1.2.4 降水分布の観測法
1.2.5 今後の研究課題
1.3 地球生命圏 —— 海洋
1.3.1 海水の循環
1.3.2 海水中の生物活動
1.3.3 海洋の炭素循環
1.3.4 炭素循環の変動
1.3.5 今後の研究課題
1.4 地球生命圏 —— 陸域
1.4.1 陸域植生における生物過程の特徴
1.4.2 陸面での放射収支・熱収支・水収支・炭素収支
1.4.3 熱収支・水収支・炭素収支と気候・植生の相互作用
1.4.4 衛星リモートセンシングによる陸域植生の動態把握
第2章 古環境記録から見た太陽-地球-生命圏相互作用系
2.1 古環境復元のためのプロキシー
2.1.1 炭酸カルシウム中の酸素同位体比と微量元素比
2.1.2 黄土層の帯磁率
2.1.3 氷の酸素同位体比
2.1.4 樹木年輪の幅およびセルロースのΔ14Cとδ13C
2.1.5 今後の研究課題
2.2 花粉分析 —— 東アジアの過去約200万年間の植生変遷
2.2.1 化石花粉を用いた植生変遷の復元
2.2.2 植物分類・気候区分・植生分布
2.2.3 植生変遷の推定例
2.2.4 琵琶湖湖底堆積物の化石花粉から見た約43万年間の植生変遷史
2.2.5 バイカル湖湖底堆積物の化石花粉から見た約200万年間の植生変遷史
2.2.6 花粉分析による古植生復元の問題点
2.2.7 気候変動と植生変遷 —— 過去から現在、そして未来へ
2.2.8 今後の研究課題
2.3 陸域古環境変動解析 —— バイカル湖に見る、北東ユーラシアの環境変動
2.3.1 陸域古環境変動解析の重要性
2.3.2 バイカル湖の構造と形成史
2.3.3 バイカル湖湖底堆積物の掘削と年代決定
2.3.4 バイカル湖湖底堆積物コアから得られた環境指標
2.3.5 気候・環境変動の周期性とその変化
2.3.6 バイカル湖での生物進化
2.3.7 まとめと今後の研究課題
第3章 太陽-地球-生命圏相互作用系のモデリング
3.1 大循環モデルとシンプルモデル
3.1.1 大循環モデル
3.1.2 シンプルモデル
3.1.3 力学系モデル
3.1.4 今後の研究課題
3.2 シンプルモデルによる気候変動メカニズムの解明
3.2.1 0次元エネルギーバランスモデル
3.2.2 1次元エネルギーバランスモデル
3.2.3 変動する地球システムの特徴
3.2.4 10万年周期問題と非線形応答
3.3 海が関わる気候変化
3.3.1 気候の変化にとって海が重要な理由
3.3.2 海洋の流れを理解するために
3.3.3 熱塩循環をより深く理解する
3.3.4 海洋の炭酸系を理解するための化学的基礎
3.3.5 海洋の物質循環
3.3.6 熱塩循環と海洋炭素循環の相互作用の理解に向けて
3.3.7 まとめと今後の研究課題
3.4 生命が気候を調整する
3.4.1 デイジーワールド:アルベドを介した連関
3.4.2 長期炭素循環における生命の役割:風化を介して
3.4.3 光合成の進化と役割
3.4.4 水循環を介した気候変動と生命圏の相互作用
3.4.5 人類活動の影響
3.5 山岳上昇とアジアモンスーンの成立
3.5.1 アジアモンスーンの成立
3.5.2 GCMを用いた山岳上昇に伴うアジアの気候変動に関する研究
3.5.3 まとめと今後の研究課題
3.6 氷河時代における気候変化 —— AOGCMによる研究からの考察
3.6.1 10万年周期の氷期・間氷期サイクル
3.6.2 大気CO2濃度と熱塩循環の相互作用
3.6.3 表層水循環と深層水循環の相互作用
3.6.4 氷期・間氷期サイクルの中での人為起源の気候変化
あとがき
記号リスト
事項索引
略語索引
書 評
【『科学』書評】
関連書
『現代気候変動入門』 アンドリュー・E・デスラー 著/神沢 博 監訳/石本美智 訳