書籍の内容
「世界システム」 論視角から資本主義史を再構成し現代社会科学にその影響力のいや増す著者のライフワーク第2巻の全訳。重商主義期ヨーロッパのヘゲモニー国家の興亡を膨大な研究史を踏まえて描き切り、新しい近世ヨーロッパ像を提起。
書籍の目次
序 章 「17世紀の危機」 は実在したか?
17世紀の意味
歴史の断絶点は16世紀か産業革命期か
世界システム論のパースペクティヴ
第1章 収縮 (B) 局面
「収縮」 の時代
通貨量・貿易・人口
「封建制の危機」 と17世紀の違い (システムの強化)
空間的な格差の確定
時期区分の問題
三十年戦争は衰退の原因か
14世紀と17世紀の対比
システムの凝集
「封建制の危機」 の意味
「危機」 からの脱出 (資本主義的世界システムの生成)
伝統的支配層の配置転換としての絶対王政
第2章 「世界経済」 におけるオランダのヘゲモニー
重商主義
「ヘゲモニー国家」 の定義
オランダのヘゲモニー
工業国としてのオランダ
海運業におけるオランダの優位
東方貿易
大西洋貿易
河川航行
コミション制度の成立
金融上の優越 (アムステルダム金融市場)
「強力な」 オランダ国家
ヘゲモニー国家の文化状況
アルミニウス派論争
ヘゲモニーの衰退へ
第3章 中核における抗争
—— 第一の局面 1651年から1689年まで
イギリスの挑戦
英・仏抗争へ
農業生産の対比
土地所有の構成
二つの農業経営者階層
工業の保護と競争
コルベール主義の意味
イギリスの海運・商業構造
輸入構造
イギリスの生命線 (造船資財と鉄)
英・仏の大西洋貿易の違い
フランスの国内市場とイギリスの北米市場
為替決済をめぐる論争
地金の輸出先 (システムの内と外)
商品としての地金
フランスの銀貨とイギリスの金貨
「強い」 国家とは何か
軍事力の問題
コルベール主義の位置
重なりあう貴族とブルジョワ (「ブルジョワ革命」 とは)
イギリス革命の歴史的意味
フランスの状況
支配層内部の妥協と民衆の抑圧
第4章 低成長期における辺境諸地域
「世界経済」 の下降局面
辺境の対応策二つ
東欧からの輸出の減少
「再版農奴制」 の成長
賦役強化の背景
「ジェントリの共和国」 の希求 (東欧の貴族と資本家)
南ヨーロッパの場合
アシエンダの成長 (スペイン領アメリカ)
銀輸出の減少
クリオーリョの困窮
強制労働から債務労働へ
アシエンダの歴史的意味
中核諸国のカリブ海への進出
バッカニアの盛衰
密貿易から砂糖へ
チェサピークの煙草とブラジルの金
アメリカにおける階級形成 (商人とプランター)
委託代理商制度
年季契約奉公人から黒人奴隷へ
第5章 岐路に立つ半辺境
半辺境とは
スペインの 「没落」
ポルトガルの併合と再独立
エリセイラ改革の崩壊 (重商主義の失敗)
スペインの中央集権化の試み
メスエン条約のもたらしたもの=半辺境化
前貸問屋制すなわち 「プロト工業」 の展開
衰退か現状維持か (「ヨーロッパの屋台骨」)
資本の域外逃避と土地への転向
上昇した国、スウェーデン
銅生産を基礎とするスウェーデンの勃興
軍制改革
鉄工業とその国際連鎖
経済帝国主義
国家機構の強化 (「譲渡」 政策から 「大削減」 へ)
半辺境への上昇
辺境にとどまったデンマークの絶対王政
対スウェーデン戦争と列強の介入
プロイセンの半辺境への上昇
「大譲歩」 =軍事力の創出
官僚制と国家機構の強化
半辺境国家オーストリアの重商主義
オーストリアとプロイセンの岐路
半辺境としての英領北アメリカ北・中部植民地
造船資材供給地か造船業の展開か
第6章 中核地域における抗争
—— 第二の局面 1689年から1763年まで
英仏抗争期 (1689~1763年)
イギリスにおける海軍派と陸軍派
三国対立から二国対立へ
イギリス・スコットランド合同の意味
パリ条約に至る英仏抗争
輸出奨励金によるイギリス農業の繁栄
フランスとの対比 (農業と農業以外の部門)
農業のイギリス・工業のフランス
砂糖と奴隷
東方貿易 (「世界経済」 の外縁部)
金融面での英仏競争 (フランスの徴税請負制度)
イギリスの財政革命
ジョン・ロー体制と南海泡沫事件
地主の時代 (オランダ資金によるイギリスの優位)
強いイギリス国家と弱いフランス国家
書評紹介
『週刊 エコノミスト』 (2012年9月11日号、評者: 草光俊雄 氏)
著者の他の書籍の紹介
『近代世界システム 1730~1840s』 I. ウォーラーステイン 著/川北 稔 訳
訳者の他の書籍の紹介
『西洋近現代史研究入門 [第3版]』 望田幸男・野村達朗・藤本和貴夫・川北 稔・若尾祐司・阿河雄二郎 編
関連書籍の紹介
『ジェントルマン資本主義の帝国Ⅰ』 P.J.ケイン 他著/竹内幸雄 他訳
『ジェントルマン資本主義の帝国Ⅱ』 P.J.ケイン 他著/木畑洋一 他訳