書籍の内容
恋愛と開化はなぜ似るか。――吸引する謎、勧誘する人々、そそのかしと思いがけぬ心、催眠術と感化の不思議……。理論と実作をつらぬく独自の〈心〉を めぐる探究に、漱石文学の隠された〈鍵〉を見いだし、同時代の知的文脈との対照からその世界性を明証する力作。
「暗示(あんし)」とは
本書は、夏目漱石の文学的営為の背後に、「暗示(あんし)」の理論と方法を読みとり、それが漱石の理論と実作の総体をつらぬく鍵であったことを明らかにするものである。この「暗示」の理論は、漱石が、当時の欧米における心理学的思考の発展を踏まえつつも、独自に考案したものであり、集合的な次元から個人的次元にまで、言い換えれば「開化」から「恋愛」にまでいたる、心の伝達、心の変化、無意識(的記憶)などの現象を説明するものであった。それのみならず、漱石の初期作品から晩年の『心』や『明暗』までの実作においても様々なかたちで方法的に実践され、文学の作用の核心にあるものとして位置づけられていたのである。本書では、この暗示の理論と実践を漱石のテキストの丹念な読解と、同時代の知的コンテキストの復元によって示し、漱石研究に新紀元を開く力作である。
書籍の目次
第1章 吸引する漱石/先生
第2章 勧誘する人々
第3章 暗示とは何か
第4章 『心』と『明暗』
第5章 シェイクスピア的そそのかし
第6章 ギュイヨー、ベルクソンを読む
第7章 若年の翻訳「催眠術」
第8章 「開化ハsuggestionナリ」
第9章 『文学論』の世界史的意義
第10章 実験小説と俳句・連句


