『「就社」 社会の誕生』: 第54回 「日経・経済図書文化賞」 選評
吉川洋氏 (東京大学教授) の総評より 【2011年11月3日付日本経済新聞より】
……多くの人は学校を卒業して就職した会社でかなりの期間働き続ける。一方、企業も新卒者を中心に毎年採用を行う。『「就社」 社会の誕生』 (菅山真次著) は、明治時代にホワイトカラーの幹部社員で発生した 「就社」 社会が戦中・戦後の混乱期を経て、高度成長期にブルーカラーを含む正規社員にまで広まっていくプロセスを丹念に跡付けた歴史書である。特にファクトファインディングに傑出しており、この分野で今後必読文献となるべき著作といえよう。……
斎藤修氏(一橋大学名誉教授)による選評 【2011年11月3日付日本経済新聞より】
「採用行動 解明した大著」
…… 本書は通常 「終身雇用」 と称されるこの特質を雇用継続の問題として捉えるのではなく、入り口の問題、すなわち就職が一回限りの選択によって決まる 「就社」 であるという点に求め、企業の採用行動を様々な資料から解明した大著である。…… (中略) ……
…… 定説に大きな変更を迫る斬新なものである。それに加え、従来の見解の根拠となっていた調査個票を再吟味し、その結論を覆してゆく記述や、組織ぐるみで就職斡旋を行っていた学校と事実上従業員の選抜を学校に委ねていた企業とのやりとり、高度成長の時代を全速力で駆け抜けてきた職安の営為と思い入れを叙述する部分などは読み応えがある。…… (中略) ……
……今後は誰しも著者が見いだした事実から出発せざるを得ない。そういう意味で本書は画期的な研究成果といえよう。