内 容
ヨーロッパ中世世界の成立過程をいかに捉えるか。サン・マルタン修道院「会計文書」の体系的分析により、この文書がカバーするロワール地方を観察の場とし、史料が語る農村社会の構造と変動の様を介して、古代から中世への移行の様相をはじめて具体的に明らかにした画期的労作。
目 次
序 論 課題と方法
第Ⅰ部 聖人墓廟から修道院へ
第1章 トゥール地方の空間と自然
第2章 サン・マルタン・バシリカとガリアの修道制
第1節 「basilica sancti Martini」の起源とその初期段階(5-6世紀)
1 聖マルティヌス・バシリカの建設
2 静マルティヌス空間の独自性
第2節 変革の諸前提
第3章 教会・王権・修道院特権
第1節 修道院特権状とコロンバヌスの刷新運動
第2節 王妃バルティルドの修道院政策
第3節 サン・マルタン修道院と特権状
1 特権状獲得の時期
2 特権内容
第Ⅱ部 「会計文書」の世界
第4章 文書の伝来と史料類型
第1節 文書伝来史
第2節 史料類型と作成年代
第5章 文書群とその系譜
第1節 文書群の構成
第2節 文書群の系譜
第3節 書式集に見る都市トゥールにおける文書作成・管理の伝統
1 書式集の史料論
2 書式集の中の文書処理機構
3 文書による権利証明への強固な指向
第6章 分析と推論(1)—— 空間的枠組
第1節 領域編成 —— domus, colonica, villa, sacio
第2節 個別所領の比定とその地理的分布
第7章 分析と推論(2)—— 賦課と農民経営
第1節 制度的背景 —— agrarium とは何か
第2節 度量衡システム —— モディウス・「シスタリウム」・「クアルセスキウム」
第3節 農民負担の定性および定量的分析
1 ポワトゥ北部
2 トゥレーヌ南部
3 シャンペーニュ(Champeigne)地方
4 トゥール周辺地帯
5 東ヴァレンヌ地帯
6 ボージョワ台地
7 メーヌ南西部
第8章 分析と推論(3)—— 農業技術と農法
第1節 輪作農法についての基本問題
第2節 実務文書における農法
第9章 分析と推論(4)—— 社会構造
第1節 世帯構成の社会的特徴
1 女性世帯の問題
2 複合世帯と聖職者世帯
第2節 人名学からの寄与
第3節 ローマ系人名世帯と寡婦世帯
1 ローマ系人名世帯
2 寡婦世帯の様相
第10章 分析と推論(5)—— 賦課徴収の実態
第1節 アグラリウム徴集の「フロー・チャート」
第2節 農民の対応
第11章 実務文書記載所領の系譜
第1節 コロニカ型所領の歴史的性格
1 聖レミギウスの遺言状に見えるコロニカ
2 パリ地方のコロニカ
3 ル・マン地方の所見
4 中部ブルゴーニュ地方
5 オーヴェルニュ地方
6 リヨン・プロヴァンス地方
第2節 実務文書にあらわれたサン・マルタン領の構造
1 「単位」所領の展開
2 賦課の本質
3 中世的所領経営への展開
結 論
あとがき
付録Ⅰ 「会計文書」写真版
付録Ⅱ 「会計文書」集計表
付録Ⅲ 「会計文書」集計グラフ
史料・文献目録
略号表
図表一覧
研究者・機関名索引
事項索引
地名索引
人名索引
受 賞
関連書
『西洋中世史研究入門[増補改訂版]』 佐藤彰一・池上俊一・高山 博 編