内 容
社会の自然的基礎を廃棄したとき、人間にいかなる歴史が可能なのか。—— 人間の内的自然(本性)と外的自然世界をめぐるルソーの徹底した思考を、18世紀ヨーロッパ思想のコンテクストに位置づけることによって浮き彫りにするとともに、その「哲学」の全体構想を初めて明らかにした労作。
目 次
序 章
第Ⅰ部 『人間不平等起源論』について
第1章 啓蒙哲学と神学的正統
1 正統と異端 —— ルソーとディジョン・アカデミー
2 自然状態と創世記
3 自然的善性と原罪
4 むすび —— 比例的平等主義
第2章 自然状態論の虚構性
1 はじめに —— 定義のプロブレマティーク
2 実在としての自然状態 —— ロック、ホッブズとルソー
3 詩人の虚構としての自然状態 —— ヒュームとルソー
4 虚構または実在としての自然状態 —— プーフェンドルフとルソー
5 未開としての自然状態 —— モンテスキューとルソー
第3章 自然法と歴史
1 はじめに —— ヴォーンとドゥラテ
2 自然法の原理 —— 自己愛と憐憫
3 自然法の歴史化
4 自然法と動物
5 自然人と自由
第4章 「ルソー問題」としての人間本性論
1 はじめに —— 社交性原理問題
2 カッシーラーのルソー論
3 むすび —— ルソーのジレンマ
第Ⅱ部 『言語起源論』について
第5章 言語の起源 —— 自然と制度
1 はじめに —— ルソーとソシュール
2 言語(ラング)以前
第6章 言語起源のアポリア
1 言語約束説
2 言語神授説
第7章 言語と社会の成立過程
1 自然状態 ——『不平等論』と『言語起源論』
2 情念起源論 —— ルソーとコンディヤック
3 南北起源論 —— 情念と欲求
4 言語形成能力
5 「南方諸言語の形成」の問題点
第Ⅲ部 「サヴォワ人助任司祭の信仰告白」(『エミール』)について
第8章 認識論
1 はじめに —— ルソーの哲学原論
2 二元論の証明
3 物質的世界の存在証明
4 能動的主体と感覚論
5 判断と誤謬 —— 感情原理
6 むすび —— ルソーとディドロ
第9章 良心論
1 はじめに ——「良心に聞け」
2 ルソーと〈有徳な無神論者〉
3 道徳の相対主義・功利主義批判
4 良心と感情
5 良心の発生的構造
第10章 理神論 —— ルソーとヴォルテール
1 はじめに —— 理神論とは何か?
2 建設的理神論 —— 神の存在証明
3 地上の悪 —— 弁神論問題
4 批判的理神論 —— 啓示批判
5 むすび —— 歴史的展望
第11章 弁神論
1 はじめに —— ルソーとオプティミズム
2 オプティミズムへの注釈
3 「信仰告白」の弁神論
4 むすび —— ルソーの未来構想
回想風のあとがき
注
人名索引
関連書
『セレブの誕生』 アントワーヌ・リルティ 著/松村博史・井上櫻子・齋藤山人 訳