内 容
従来スミス以前の経済学として低い評価にあったJ・ステュアート『経済の原理』全編のわが国最初の本格的研究。『国富論』による経済学誕生という通説を覆し、マルクスやケインズに囚われることなく、自由な解読を通じてこの最初の経済学体系の宿す豊かな内容と可能性を示す。
目 次
序 章 ポリティカル・エコノミーの近代的定立
(1)経済学の胎動
(2)ヒュームによる時代と社会との告知
(3)冷徹の人・ステュアート
第1章 人口と経済発展
第1節 「勤労社会」の形成
(1)『経済の原理』の構成
(2)人口増殖の命題
(3)増殖の社会的動因 —— 奢侈と貨幣
(4)勤労社会の経済主体
(5)就業と人口
第2節 適度人口論
(1)適正と過度の観念
(2)最適人口
(3)人口の適正構成、ないしは適正配分
(4)過剰人口と過少人口
(5)技術あるいは新機軸
第3節 工業化への道
(1)予備的考察
(2)初期商業の育成と外国貿易への飛躍
(3)産業立地論
(4)後進国開発論
第2章 釣り合いの理論
第1節 釣り合いあるいは均衡の社会理論
(1)「均衡」の諸理論
(2)均衡の諸理論に対するステュアートの姿勢
(3)均衡論的統治論
第2節 釣り合いの経済理論
(1)釣り合いの理論の前提的議論
(2)商人市場
(3)均衡価格の実現過程
(4)財貨とサーヴィスの一般市場
(5)商人市場と一般市場との回路
(6)短期「基本価格」の構成
第3節 不釣り合いの理論
(1)均衡の「転覆」と「復元」
(2)需給要因による不均衡
(3)貨幣的要因による不均衡
(4)長期的な経済発展に伴う不均衡
第4節 貨幣数量説批判
(1)価格決定論
(2)方法の問題
(3)貨幣数量説の命題とその批判
第3章 貨幣と鋳貨
第1節 貨幣論の新展開
(1)『原理』第三編の研究状況
(2)『原理』における貨幣と鋳貨
(3)国際貨幣、フロリン・バンコ
第2節 鋳貨をめぐる改革問題
(1)大ブリテンでの不変の価値尺度の案出
(2)鋳貨改革の原理的基準と政策的基準
(3)ハリスの鋳貨改革案に対する批判と修正
第4章 流通の理論と信用
第1節 富の均衡論 —— ストックの流通と溶解
(1)資産選択論と分配の相対的平等論
(2)象徴貨幣の創造
第2節 利子論
(1)信用の基礎的考察
(2)貸付市場の安定性と土地銀行
(3)利子率の決定論
(4)法定利子率の効果と濫用
第3節 銀行と流通
(1)諸種の銀行と信用の原理
(2)私的信用(担保)に基づく銀行と国民的流通
(3)国際収支の決済と銀行の役割
(4)アムステルダム銀行と多角的為替決済機構
(5)銀行券の流通と銀行の与信の準則
(6)国民的銀行による分化と統合
第5章 公債と租税
第1節 公信用の理論
(1)長期公債の歴史的刻印
(2)公債の作用とその経済的・社会的効果
(3)公債管理政策
第2節 租税の理論
(1)租税の定義、課税の原則、最適な税
(2)租税の経済的効果
(3)公共事業
終 章 ポリティカル・エコノミーの思想空間
(1)社会認識の転回
(2)社会の編成者・貨幣
(3)自由と権力ないしは制度
(4)市場と国家による二重統合
(5)経済学の創成
あとがき
人名索引
受 賞
関連書
『経済の原理 —— 第1・第2編』 J.ステュアート 著/小林 昇 監訳/竹本 洋ほか訳
『経済の原理 —— 第3・第4・第5編』 J.ステュアート 著/小林 昇 監訳/竹本 洋ほか訳
『アダム・スミス 哲学論文集』 アダム・スミス 著/アダム・スミスの会 監修/水田 洋ほか訳