内 容
ポンドはなす術もなく凋落したのか。ユーロダラーの発展と国際金融市場シティの隆盛も視野に、戦後ポンドの役割を再評価、基軸通貨交代の知られざる意義を描きだす。福祉国家化による国内均衡優先へと舵をきったイギリスの政策転換をも捉えて、一面的な衰退史像を大きく書き換える。
目 次
序 章 ポンドの戦後史
1 ポンドは単に衰退しただけなのか —— 問題の所在
2 ポンドから見えてくる戦後国際通貨体制 —— 本書の意義
3 戦後ポンド史の内面へ —— 本書の方法
4 ポンド残高累積からスターリング協定廃止まで —— 本書の構成
5 前史 —— 第二次大戦の勃発へ
第1章 ポンド残高の累積とブレトン・ウッズ会議
—— 戦後苦境乗り切り構想の挫折
はじめに
1 ポンド残高の増大
2 戦後の国際収支見通しと「国際清算同盟案」の作成
3 ブレトン・ウッズ会議と為替管理権の放棄
おわりに
第2章 英米金融協定の締結とイングランド銀行の国有化
—— 戦後ポンド政策の前提条件と執行態勢
はじめに
1 英米金融協定の締結
2 1946年イングランド銀行法の制定
3 1946年イングランド銀行法の性格
4 1946年イングランド銀行法と1998年イングランド銀行法
おわりに
第3章 交換性回復の失敗と為替管理再強化
—— スターリング地域維持とポンド擁護
はじめに
1 大戦終了直後のイギリス経済
2 交換性回復とその挫折
3 為替管理再強化とスターリング地域維持
おわりに
第4章 1949年のポンド切下げ
—— ポンド復権を目指して
はじめに
1 交換性回復失敗後=切下げ前のイギリス経済
2 切下げの準備と実施
3 切下げの効果
おわりに
第5章 ヨーロッパ決済同盟と交換性回復
—— 復権から危機へ
はじめに
1 EPU 設立とポンド
2 EPU の機能とポンド
3 交換性回復とポンドの地位
おわりに
第6章 ユーロダラー市場の発展とシティの復活
—— ポンドからユーロダラーへ
はじめに
1 ユーロダラー市場の起源と取引態様
2 ロンドンにおけるユーロダラー市場の発展
3 当局のユーロダラー市場認識と対応
4 シティの復活
おわりに
第7章 1967年切下げとヨーロッパ経済共同体加盟
—— ポンド政策の動揺・混迷・「収斂」
はじめに
1 ポンド危機の深化とポンド政策への懐疑
2 ポンド切下げとポンド政策の動揺
3 EEC への接近とポンド政策の混迷化
4 EEC 加盟決定後のポンド政策の「収斂」
おわりに
終 章 ポンドの衰退と譲位
1 国際通貨ポンドの存続
2 凋落に潜む譲位の側面 —— 国際通貨ポンドと福祉国家の対立
3 維持から譲位への転換過程
4 ポンドから見えてきた戦後国際通貨体制
あとがき
参考文献
図表一覧
索 引
書 評
『経済科学』(第64巻第2号、2016年9月、評者:前田直哉氏)
『金融経済研究』(第38号、2016年3月、評者:菅原歩氏)
『社会経済史学』(第81巻第2号、2015年8月、評者:春井久志氏)
『歴史と経済』(第225号、2014年10月、評者:矢後和彦氏)