内 容
本書は、19世紀末科挙制度の崩壊に伴う儒教的大学観の崩壊から日本植民地統治下における「日本・西洋混合型」、戦後の「アメリカ型」をへて国力の増大による「独自モデル」が展開されるまでの韓国高等教育の歴史を、大学モデルの受容と変容の観点から比較史的・実証的に明らかにする。
目 次
はしがき
序 大学モデルの受容と変容
—— 比較史的考察
第Ⅰ部 近代社会と大学(1894~1945年)
第1章 旧韓末期の成均館改革
—— 儒教モデルの崩壊過程
1 旧韓末期における教育の近代化と高等教育
1 時代的背景
2 旧体制の教育的枠組
3 新制度の模索
2 成均館改革の理念と実際
1 経学科の設置
2 博士・司業制度
3 日本統治下における成均館の変遷
1 受難期の経学院
2 明倫学院の日本化過程
4 儒教的大学観の崩壊
第2章 キリスト教系私学の成長と私学規制
—— アメリカ・カレッジモデルの移植
1 近代教育の濫觴
1 小さなはじまり
2 育英公院とアメリカ人お雇い教師
2 旧韓末期におけるキリスト教系私学の拡大
1 キリスト教系私学の簇生とその特色
2 「学部」の私立学校および高等教育に対する基本方針
3 「大学部」設立とアメリカ・カレッジモデル
3 日本統治初期における私学規制とキリスト教系私学
1 朝鮮教育令下における私学規制
2 受難期のキリスト教系私学と高等教育
第3章 日本統治下における「朝鮮民立大学」設立運動
—— 民族的大学モデルの形成
1 民立大学の思想的背景
2 「併合」前後の「学会」と民間人系私学
1 「学会」活動
2 「併合」前後の民間人系私学
3 普成専門学校の発展
3 「朝鮮民立大学」設立運動の理念と実際
1 運動の展開
2 運動の挫折
4 民族的大学モデルの形成
第4章 日本型植民地大学としての京城帝国大学
——「帝大モデル」の移植課程
1 大学予備教育としての「予科」の開設
1 大学設立の背景
2 大学予科開設への道
3 予科の性格
4 予科への進学ルート
5 予科の改革
2 学部の開設とその特質
1 学部の基本的性格
2 講座制と教育・研究の特色
3 教育機会と学園生活
第Ⅱ部 現代社会と大学(1945~1993年)
第5章 米軍統治下の高等教育
—— 国立ソウル大学校の設立と「アメリカ・モデル」への転換
1 日本モデルからの脱却
1 高等教育再編の動向
2 国立ソウル大学校設立前史
2 アメリカ・モデルへの転換過程
1 国立ソウル大学校設立法
2 「国大案」紛争の経緯 —— 大学自治問題をめぐって
第6章 高等教育の再建とアメリカ教育援助
—— 第一共和国における「アメリカ・モデル」の定着過程
1 高等教育の再建
2 対韓教育援助の仕組み
1 援助機構
2 援助手続
3 高等教育援助の実際
1 大学分野への援助
2 教員養成分野への援助
4 教育援助の評価
第7章 経済開発と高等教育計画
—— 第三共和国における「自立」の模索
1 経済開発と教育計画
1 経済の計画化
2 教育の計画化
2 高等教育計画の策定
1 「大学整備調整計画」の功罪
2 「長期総合教育計画」の策定
3 「ソウル大学校総合化十か年計画」の意義
4 理工系高等教育の拡充
3 留学による人材養成と活用
1 留学政策の変遷
2 アメリカ留学の特色
3 日本留学の特色
第8章 「マス型」高等教育への挑戦
—— 1970年代における実験的改革
1 「実験大学」方式の改革
1 実験大学の背景
2 実験大学の課題
3 実験大学の方法
4 実験大学の内容
5 実験大学の問題点
2 大学入学定員政策と入学者選抜方式の改革
1 定員の量的変遷(1969-1978年)
2 定員の配分構造
3 定員と選抜方法
4 定員政策の改革課題
第9章 「ユニバーサル・アクセス型」高等教育への構造変革
—— 独自モデルの構築にむけて
1 生涯教育体制構築への戦略
1 法制面の整備 —— 憲法に「生涯教育」条項
2 高等教育システムの多様化 —— 継続教育機会の拡大
2 学術研究体制の高度化
1 二元体制の大学院拡充 —— アメリカ・モデルの韓国化
2 国際化に対応する研究体制の整備
3 韓国大学教育協議会(KCUE)の役割
1 大学連合体設立の経緯
2 協議会の事業実績
結 アジアにおける韓国高等教育の位相
初出一覧
あとがき