内 容
事実史と記憶史の統合 ——。貨幣や懐中時計から、エフェメラ・古文書、そして記念碑まで、植民地期・革命期の歴史や英雄像を紡ぐモノ史料と、歴史研究に新しい知見をもたらすデジタル史料。アトランティック・ヒストリーの視点も踏まえつつ、両者を駆使した画期的なアプローチにより近世アメリカ像を再構築する。
目 次
序 章
第一部 記録 —— 当時のモノ
Ⅰ 近世大西洋世界の諸相
第1章 近世大西洋世界のなかの貨幣
—— 硬貨・大陸紙幣・軍票
1 国境を越える貨幣
2 植民地時代の貨幣
3 独立革命期の貨幣
4 近世大西洋世界の遺産
5 コネティカット邦軍票の分析
第2章 物語るエフェメラ
—— 一紙文書から見る近世大西洋世界
1 手稿史料のテクスチャーとテクスト
2 差押え関連史料のテクストの分析 —— 時間を紡ぐ一紙文書
3 エフェメラより見るワシントンの親族 —— 受領証と小切手
4 史料のテクスチャーの分析
5 史料のテクストの分析
第3章 「完全なる植民地ジェントルマン」をめざして
—— 近世大西洋世界のソフトウェア
1 メリーランド植民地におけるプランター・ジェントリと火曜倶楽部
2 ワシントンの礼儀作法
Ⅱ デジタル史料とモノ史料のなかのワシントン
第4章 ワシントンの帝国
—— 独立革命期における「帝国」の語の使用に関する一考察
1 デジタル史料と「アメリカ革命」
2 問題の所在
3 独立革命期のデジタル史料
4 独立革命期における帝国の語の使用
5 ワシントンに関するデジタル史料
6 ワシントンによる帝国の語の使用
第5章 ワシントンの懐中時計
—— モノによる日常世界復元の試み
1 時計と史料集合
2 ワシントン家の懐中時計
3 大陸軍と懐中時計
4 コクラン少佐の懐中時計 —— その返却をめぐる書簡のネットワーク
5 パリのガヴァニア・モリスと懐中時計
6 装うワシントン
第6章 ワシントンの告別演説
—— その日付に関する一考察
1 2つの日付の謎 —— 問題の所在
2 7か9か
3 6日間の再現(1)—— 関連史料の提示
4 6日間の再現(2)—— 何が起きたのか
5 その後
第二部 記憶 —— 後代のモノ
Ⅲ 創られる記憶空間
第7章 植民地時代の記憶
1 アメリカにおける史跡と記念碑
2 「最初の植民地」の記念碑(1)—— 失われた植民地ロアノーク
3 「最初の植民地」の記念碑(2)—— 最初の恒久的植民地ジェイムズタウン
第8章 独立革命の記憶
1 南部における独立戦争の史跡
2 ムーアズクリークの戦い
3 キングズマウンテンの戦い
4 カウペンズの戦い
5 ギルフォード・コートハウスの戦い
6 ヨークタウンの戦い
Ⅳ 英雄たちの記憶
第9章 英雄の血脈
—— ポカホンタスとワシントン
1 新旧両世界のポカホンタス
2 目覚める死者 —— ワシントン家の家族墓所
3 ワシントン以前のプレジデント
4 記念されるワシントン —— メダル・カメオ・『ワシントン伝』
第10章 建国のアイコン
—— ベッツィとリヴィア
1 2つの問い
2 星条旗誕生の神話 —— アイコンとしてのベッツィ・ロス
3 英雄ポール・リヴィアの生成
あとがき
註
初出一覧
図表一覧
索 引
書 評
『史学雑誌』(第126編第11号、2017年11月、評者:遠藤寛文氏)
『社会経済史学』(第83巻第3号、2017年11月、評者:伊澤正興氏)
『アメリカ学会会報』(第194号、2017年7月、評者:石川敬史氏)
『歴史学研究』(第960号、2017年8月、評者:鰐淵秀一氏)
著者の既刊書
『星条旗 1777〜1924』 S・M・グインター 著/和田光弘・山澄 亨・久田由佳子・小野沢 透 訳
『記念碑の語るアメリカ』 ケネス・E・フット 著/和田光弘・森脇由美子・久田由佳子・小澤卓也・内田綾子・森 丈夫 訳
『アトランティック・ヒストリー』 バーナード・ベイリン 著/和田光弘・森 丈夫 訳