内 容
インドの伝統を汲む長い歴史と多様なる姿をもち、「聖なるもの」を独特のかたちで表現するチベット美術。その知られざる豊饒な世界を、学際的視野から包括的に捉え、アジアの仏教美術と文化史のなかに位置づけた画期的労作。未発表作品を含むカラー写真を中心に多数の貴重図版を掲載する。
目 次
はじめに
第Ⅰ部
第1章 チベットの地理と歴史
1 地勢と風土
2 チベット史の視点と枠組み
3 チベットの歴史概観
第2章 チベットの仏教美術概観
1 知られざる仏教美術
2 チベット仏教美術の素材と形式
3 チベット仏教のパンテオン
4 吐蕃期から13世紀までの初期の美術様式
5 氏族教団の時代
6 16世紀以降の様式
第3章 インドにおけるマンダラの成立と展開
1 マンダラとは何か
2 マンダラの出現と初期密教のマンダラ
3 中期密教
4 後期密教
第Ⅱ部
第4章 ラダック地方アルチ寺三層堂のマンダラ
1 ラダック地方の仏教
2 アルチ寺の概要
3 三層堂の全容
4 『真実摂経』に説かれる金剛界マンダラ
5 アルチ寺三層堂の10種の金剛界マンダラ
6 第二層のマンダラ配置プログラム
第5章 ペンコル・チョルテン第五層の金剛界マンダラ
1 はじめに
2 第五層におけるマンダラの配置
3 各マンダラの特徴
第Ⅲ部
第6章 マンダラ儀軌集成書『ヴァジュラーヴァリー』
1 密教儀礼の集成書
2 『ヴァジュラーヴァリー』に説かれるマンダラ
3 観想のための文献『ニシュパンナヨーガーヴァリー』
4 儀礼とマンダラ
5 三部作の持つ意義
第7章 ゴル寺の「ヴァジュラーヴァリー・マンダラ集」とその周辺
1 チベットに残るインドのマンダラ
2 プトンゆかりの作品とその周辺
3 シャーキャシュリーバドラの役割
4 ゴル寺のマンダラ・セット
5 ゴル寺のマンダラ・セットの関連作品
6 連綿たる系譜
第8章 ボストン美術館所蔵「カーラチャクラと諸尊図」
1 カーラチャクラを描いたタンカ
2 作品の概要
3 『ヴァジュラーヴァリー』との関係
4 他の作品との比較
5 「カーラチャクラ図」の意義
第9章 ミトラヨーギンの『アビサマヤ・ムクター・マーラー』
1 知られざるマンダラ集成書
2 ミトラヨーギンについて
3 『アビサマヤ・ムクター・マーラー』の概要
4 その後の展開
5 『アビサマヤ・ムクター・マーラー』の持つ意義
第Ⅳ部
第10章 集会樹に見られる宗教実践とイメージ
1 樹木に描かれたパンテオン
2 作品の概要
3 ゲルク派の2種のツォクシン
4 ツォクシンの儀礼
5 絵画としてのツォクシンの形成
6 仏の世界の表象
第11章 「五百尊図像集」に関する基本的問題
1 イメージのカタログ
2 「五百尊図像集」とは
3 各部分の内容
4 これまでの研究
5 諸本の比較
6 制作の状況
7 混乱を含む図像集
第12章 解体されるマンダラ
1 チベット仏教絵画の原理
2 マンダラからタンカへ
3 垂直軸の出現
4 情景図へ
5 何が変わったのか
あとがき
初出一覧
参考文献
図表一覧
索 引
書 評
『佛教タイムス』(2011年12月8日・15日合併号、評者:正木晃氏)