内 容
多数のネイションを抱える大衆社会で「民主制」はいかに維持されたのか —— 。中欧の新興国として出発し議会制民主主義体制を安定化させた共和国が、経済危機と権威主義体制による競合という困難な時代を迎え、「実効力」ある独自の民主制を構想していく過程を、はじめて実証的に分析。ヨーロッパ史のみならず、今日の民主主義のあり方を考える上でも示唆に富む労作。
目 次
序 章 課題と分析視角
1 戦間期という時代、中央ヨーロッパという空間
2 研究史
3 分析視角
4 史 料
5 本書の構成
第1章 共和国の建国
—— 政党による議会制民主主義体制の成立
第1節 政党と政党システムの発展
1 政党による大衆的社会の部分利益の組織化
2 多ネイション国家の政党システム
第2節 独立と議会制民主主義体制の選択
第3節 赤緑連合の形成
1 全国民連合 —— 対立から崩壊へ
2 赤緑連合
第2章 全国民連合とピェトカ
—— 原理的野党と全国民連合の対峙
第1節 赤緑連合の崩壊と官僚内閣
1 赤緑少数派政権
2 チェルニー官僚内閣 —— 赤緑連合の崩壊と多数派連合形成の困難
3 ピェトカの成立と全国民連合
4 ベネシュ半議会、半専門家内閣
第2節 全国民連合政権
1 シュヴェフラ全国民連合内閣
2 全国民連合の崩壊
3 全国民連合の評価
第3章 ブルジョワ連合政権
—— ネイション横断政権の多数派支配
第1節 関税多数派からブルジョワ連合政権へ
1 官僚内閣
2 関税多数派の成立
3 ブルジョワ連合政権の形成
第2節 ブルジョワ連合政権
1 ブルジョワ連合政権の政策決定過程
2 ブルジョワ連合の終焉と拡大連合の成立
第4章 ウドゥルジャル拡大連合政権
—— 利益対立の激化と合意形成手法の制度化
第1節 政策合意形成上の課題
第2節 ウドゥルジャル拡大連合政権の停滞
1 農業党の要求の拡大と連合内対立
2 ウドゥルジャル政権の停滞
第3節 マリペトル政権の形成
第4節 恐慌下の拡大連合合意形成
第5章 マリペトル新政権の模索
—— 転換の年、1933年
第1節 マリペトル新政権の積極的危機打開政策
1 マリペトルの政治指導
2 経済危機への積極的対応
3 政策の限界 —— 連合内の経済利益対立
第2節 実効性のある「民主主義」
1 隣国の政変と国内のナチズム、ファシズムの動向
2 民主的共和国の防衛
3 授権法
4 授権法導入の意義
5 経済政策の改革
6 ドイツ二政党の活動停止
7 シュヴェフラの死
第6章 「赤緑連合」への転換
—— 1934年
第1節 2つの転換 —— 経済政策と連合政治
1 経済政策の転換
2 連合政治の転換 ——「赤緑連合」の成立
第2節 民主主義をめぐる体制改革諸構想
1 1934年の初頭の状況
2 『民主中道』の改革構想
3 新体制の諸構想
4 農業党と社民党の体制観
5 経済の国家管理と議会制民主主義
第3節 経済介入をめぐる合意
1 穀物専売制
2 社会経済政策
3 経済介入手法をめぐる合意
第7章 「農民と労働者の民主主義」
—— ネイションの一体性か、部分利益連合か
第1節 ネイションの一体性
1 ズデーテンドイツ郷土戦線
2 「国民統一」の成立
第2節 部分利益諸政党の対応
1 政治変容の可能性
2 社民党の対応
3 農業党の揺らぎ
第3節 1935年選挙
——「農民と労働者の民主主義」の「勝利」と「敗北」
1 農業党の新経済政策構想
2 農業者同盟と郷土戦線の対立
3 1935年5月選挙
4 1935年選挙 ——「農民と労働者の民主主義」の「勝利」と「敗北」
第8章 「第一共和国」の終焉
第1節 ズデーテンドイツ党の登場と政党システムの変化
第2節 ホジャ連合政権
1 ホジャ首相と経済民主主義
2 連合内の亀裂
3 外交政策の対立
第3節 国内マイノリティ問題と外交政策の隘路
1 可能性の模索
2 独墺合邦からミュンヘンへ
第4節 第一共和国の終焉
終 章
1 第二共和国
2 チェコスロヴァキアの議会制民主主義体制
3 1930年代の危機への対応と革新
あとがき
注
文献・史料目録
索 引
書 評
『史学雑誌』(第122編 第7号、2013年、評者:平田武氏)
関連書
『イタリア20世紀史』 シモーナ・コラリーツィ 著/村上信一郎 監訳