内 容
市民的自由主義者から帝国主義者にわたる従来の「政治的」福澤像を清算、状況的方法と文明論的方法を二つながらに駆使して実践的な言葉を紡ぎ出し続けた巨大な知性の全体像を、「国家」「文明」「道徳」を軸に描き、「賢慮の人」としての福澤を定位した力作。思想のダイナミズムの中から重厚な批評性が甦る。
目 次
序
第1章 議論の方法
序
第1節 『文明論之概略』と方法
1 議論の本位
2 文明論と自国独立論
3 自然科学=物理学の役割
第2節 一時の彌縫策と絶対の美
1 状況的方法と文明論的方法
2 進歩の観念 ——「通俗的」理論
第2章 国家理性
序
第1節 「転向」?
1 四海兄弟と弱肉強食
2 「一身独立」と「一国独立」の併存
第2節 道理・学問・気力
1 一身と一国のメリトクラシー
2 権義を「伸る」こと
3 瘠我慢
第3節 国際政治と「腕力」
1 兵備と武力行使
2 文明化の「脅迫」と自国独立論
第3章 士 魂
序
第1節 報国心と忠義
1 文明の方便
2 内安外競
3 愚忠と大忠
4 2つの報国心 —— 平時と戦時
第2節 一国独立と武士の気風
1 磊落無頓着
2 敢為活発
3 顕勇と潜勇
第3節 名 誉
1 名誉の平等
2 世俗的名誉
3 自然の名誉
4 不羈独立の気概
第4章 智と徳
序
第1節 『概略』の道徳像
1 対儒教戦略
2 内面性と主知性
3 自主独立の精神と「大徳」
第2節 道徳論の枠組 —— 道徳の進歩
1 道徳論の三層
2 天下太平家内安全
第5章 文明の道徳 —— 道徳論の諸相
序
第1節 愛と競争
1 私徳と公徳 —— 公徳由私徳生
2 家族的ユートピア
3 「仁」と「富」—— 慈善と公共性
4 法と道徳
第2節 義務論としての道徳論
1 内の義務と外の義務
2 衣食の独立と処世の義務
3 公議輿論と道徳 —— 学者魁論
補 論 『修身要領』
第6章 文明の作法
序
第1節 文明の処世・交際法
1 言語容貌とレトリック
2 文明の礼儀作法
3 伯夷其心而柳下恵其行
4 熱心と戯
第2節 教養と作法 —— 文明人の養成
1 実学的教養と「遊芸」
2 社会的教養と交際の教養
3 紳士の資格
第3節 徳育と啓蒙
1 似我の主義
2 「魁」と啓蒙
結 語
註
あとがき
引用文献一覧
索 引