内 容
現在のわが国の電力企業形態(民営9電力体制)は,欧米諸国とは異なる独特の企業形態をもって,日本経済の発展に重要な役割を果してきた。本書は,わが国電力業の一貫した自立性を実証するとともに,電力業の体現者松永安左ヱ門の足跡と役割を日本経済史・経営史に正当に位置づける。
目 次
序 章 課題と視角
第Ⅰ部 電力業経営の自立性
第1章 戦前期日本電力業の資金調達と財閥
第1節 課 題
第2節 戦前期日本電力業の資金調達
1 資金調達過程の概観
2 勃興期(1883~1918年)の資金調達
3 戦間期(1919~1938年)の資金調達
第3節 財閥と電力資本との関係
1 6大金融系統の電力金融
2 三井銀行の電力金融
3 三井銀行と東京電灯・東邦電力との関係
第4節 電力外債と電力業経営
1 電力外債と5大電力
2 米国の外国債発行市場における日本の電力外債
第2章 電力統制・国家管理と財閥・官僚
第1節 課 題
第2節 電力連盟の成立とその機能
1 成立以前の状況
2 成立過程
3 機 能
4 成立以後の状況
5 小 括
第3節 電力国家管理研究の新視角
1 事実経過
2 桜井則の所説
3 松島春海の所説
4 高橋衞の所説
5 坂本雅子の所説
6 小 括
第3章 電気事業再編成とGHQ
第1節 課 題
第2節 電気事業再編成の経過とその影響
1 占領期日本電力業の概観
2 事実経過
3 影 響
4 小 括
第3節 企業形態改変の諸プラン
1 発送配電一貫、地域分割、民営案
2 全国1社、国営案
3 発送電・配電分断案
4 小 括
第4章 民営9電力体制と通産省
第1節 課 題
第2節 1950年代前半(1951~1955年)
1 9電力発足直後の電気需給
2 公益事業委員会の廃止と電源開発株式会社の設立
3 電源開発の再開
4 原価主義にもとづく電気料金引上げ
5 労使関係の安定化
第3節 高度経済成長期(1956~1970年)
1 高度経済成長期の電気需給
2 火主水従の電源開発
3 火力発電用燃料の油主炭従化
4 原子力発電の開始
5 電気料金の長期安定
6 新電気事業法の制定
第4節 低成長期(1971~1984年)
1 低成長期の電気需給
2 経営環境の悪化と電気料金の引上げ
3 原子力発電に重点をおく電源開発
4 立地環境問題と電力行政
第5節 小 括
第Ⅱ部 松永安左ヱ門の役割
第5章 電源開発や資金調達における革新
第1節 課 題
第2節 松永と福沢桃介
—— 対照的な電源開発方針とその帰結
1 九州電灯鉄道
2 名古屋電灯
3 東邦電力と大同電力
4 小 括
第3節 東邦電力の資金調達過程
1 時期区分
2 1922~1927年
3 1928~1931年
4 1932~1934年
5 1935~1937年
6 小 括
第6章 先見的な電力統制構想と国家管理への反対
第1節 課 題
第2節 電力統制と5大電力経営者
1 電力統制問題の経過
2 臨時電気事業調査部の決議まで
3 電力連盟の結成まで
4 電力連盟の結成以降
5 小 括
第3節 松永と出弟二郎
—— 電力国家管理の成立要因
1 東邦電力の同僚としての松永と出
2 松永の電力国家管理反対論
3 出の電力国家管理賛成論
4 小 括
第7章 電気事業再編成におけるリーダーシップと再々編成問題への対応
第1節 課 題
第2節 電気事業再編成の主役は誰か
—— 民営地域別9分割案の形成過程
1 敗戦~1948年1月
2 1948年2月~同年12月
3 1949年1月~同年9月
4 1949年10月~1950年3月
5 1950年4月~同年11月
6 小 括
第3節 電気事業再々編成問題と松永
1 再々編成問題の事実経過
2 松永安左ヱ門の見解
3 小 括
終 章 総括と展望
あとがき
表・図・資料目次
事項索引
企業名索引
人名索引