内 容
旧帝大から師範学校、専門学校まで、「遺産」の多寡も教育機関としての質も異なる学校に一斉に実施された終戦後の「大学」化。不完全さを残しつつも実現された改革は、何を成し、何を成しそこねたのか。現代のマス高等教育の礎をなした転換点に立ち戻り、問題の所在を歴史から問い直す。
目 次
第5章 新制大学像の模索
1 教員養成と学芸大学
教刷委の審議事項
「教員養成に関すること」
現実的な天野提案
曖昧な構想
「学芸大学」案への収斂
総会からの差し戻し
再度の第八特別委案
最終案の決定
2 短期大学と大学院問題
学制改革問題 —— 三年制大学
新・二年制大学論
暫定措置としての短期大学
大学院と学位制度
教刷委・大学設置委・基準協会
教刷委の大学院構想
大学基準協会の大学院構想
教刷委の敗北
3 地方移譲と国土計画
大学の地方移譲問題
第十特別委の報告と決議
GHQ の反応
委譲問題と師範学校
大学の国土計画的配置
戦時から戦後へ
「大学の整備方針」
教刷委の建議
「国土計画的配置」の第六項
4 大学自治と管理運営機構
GHQ の要請
商議会をめぐる議論
新しい大学自治を
商議会か評議会か
大学基準協会案の挫折
「大学の自由及び自治の確立について」
GHQ 案の提示へ
「大学法試案要綱」
文部省による論点整理
教刷委の決議
「試案要綱」との差異
大学法案挫折
管理運営その後
5 大学設置基準と大学基準
日高局長の文章
使節団の勧告
戦前期の設置認可制度
設置基準検討開始
協議会の性格変更
大学基準協会発足
「大学基準」の性格
学部・学科・講座
講座制と学科目制
6 教育課程編成と一般教育
教育課程編成という課題
使節団の批判
文科系分科会の主導的役割
単位の考え方
日本的な単位制度
一対二対三対
教育課程の編成基準
標準化・画一化
第Ⅲ部 新制大学の誕生
第6章 終戦処理と戦後対応
1 終戦と高等教育
高等教育の終戦処理
編入と文転問題
実業専門学校の終戦処理
大学と終戦処理
教員の復学と追放
学内民主化へ
適格審査の実態
教育研究の非軍事化
2 戦後対応の始動
帝国大学から国立総合大学へ
私立専門学校の戦後対応
私立大学と戦後対応
戦時から戦後へ
3 医専問題と女子教育刷新
医専という課題
日米の確執
女子教育刷新
女子大設立運動
女子大学連盟の結成
厳しい現実
短期大学という救済策
4 旧制度下の新設ブーム
旧制度下の大学新設
新設の専門学校群
女子専門学校ブームの背景
第7章 移行と昇格の過程
1 移行への準備
大学設置委員会の発足
委員構成へのこだわり
「属国の悲しみ」
前倒しの設置認可要請
2 設置認可への指針
「日本における高等教育の再編成」
「設置認可に関する基本要項」
12大学の抜け駆け
3 官立諸学校の再編統合
日高局長による中間報告
再編統合の方針
文部省の当初計画
再編統合計画案
CIE の異議と「十一原則」
学芸大学とリベラルアーツカレッジ
日本側「十一原則」
新制国立大学の諸類型
佐野委員の構想
複合大学と総合大学
4 移行の過程
大学設置委員会での作業
基準協会批判
教員資格の重要性
困難な教員確保
二年制大学という弥縫策
GHQ の発足延期論
国立新制大学の難題
5 設置審査の現実
審査結果の報告
具体的な事例
履行条件付き認可
6 最終的な難関
予算と国立学校設置法
設置法をめぐる議論
設置法の成立
短期大学の制度化
短大設置基準と設置認可
第8章 新制国公立大学の誕生
1 国立総合大学誕生
発足した新制大学
国立セクターの再編統合
旧帝大の総合大学化
北海道・九州・東北
一般教養課程と旧制高校
教育学部問題
中等教員の養成責任
厳しい現実
2 地方国立大学の生成 —— 旧制官立大学群
38校の「複合大学」
旧制官立大学群と「昇格」運動
北陸総合大学構想
北日本総合大学構想
広島総合大学構想
中国総合大学誘致運動
熊本総合大学・南九州大学構想
神戸経済大学と総合大学化構想
四国総合大学構想の顚末
旧・新官医大の位置づけ
3 地方国立大学の生成 —— 旧制高等学校・専門学校群
富山大学の事例
文部省・地方自治体・学校
文部省による調整
浦和高校と埼玉大学
三重農専と三重大学
秋田鉱専と秋田大学
山形大学の場合
文部省・学芸学部・静岡大学
鹿児島と山口
旧制高校という資産
文理学部と一般教育
学芸学部・教育学部と教員養成
4 単独系国立大学の登場
3つの大学群
関東連合大学構想
東京産業大学案と東京農工大学
東京教育大学への道
2校の国立女子大学
福岡県と九州工業大学
北海道と小樽商科大学
5 新制公立大学の発足
戦中・戦後期の遺産
医科大群の形成
女専と移行問題
大阪での再編
東京と兵庫
第9章 新制私立大学の誕生
1 私立学校法の成立
私学政策の大転換
私立学校法成立まで
新制私立大学の発足
2 旧制大学から新制大学へ
旧制私立大学群の移行
早稲田大学とアメリカモデル
専門部の存在
日本大学の場合
総合化と工学部
人文社会系学部の新増設
3 動乱期の「新設」旧制大学群
医専・歯専の昇格
「新設」旧制大学の困難
4 旧制私立専門学校の昇格過程
淘汰の過程
私立女子大学の誕生
東京女子大と神戸女学院
家政系の女子大学
短期大学という救済策
昇格か廃校か
薬学専門学校の昇格
キリスト教系の場合
時代の激変のなかで
再編統合問題
私立高校と「東京連合大学」構想
武蔵・成城・甲南
5 動乱期の「新設」旧制専門学校群
急造学校群その後
工学院と理事会
理事長と名城大学
新制大学のボトムライン
エピローグ
3年後のレビュー
教刷審の報告書
第二次使節団のコメント
行政当局の立場から
日高元局長の述懐
再びの学制改革論議
あとがき
参考文献
図表一覧
学校・大学・研究所名索引
人名・会議・団体名索引
【上巻主要目次】
プロローグ
第Ⅰ部 戦時体制と高等教育
第1章 戦時下の高等教育改革
第2章 高等教育の決戦体制
第Ⅱ部 戦後の高等教育改革
第3章 使節団報告書から学校教育法へ
第4章 学校教育法以後
書 評
『IDE 現代の高等教育』(第591号、2017年6月号、評者:伊藤彰浩氏)
『週刊読書人』(2016年10月14日号、第3160号、評者: 井上美香子 氏)