内 容
揺れ動く金融政策。何が正しいのか。前人未到の長期安定を実現したアメリカ中央銀行総裁が中央銀行制を嫌っていたのは何故か。神話の陰に隠れたその思想と行動を初めて経済学的に解明、現代経済学の枠組みを再設定した画期的労作。上巻では、若き日の遍歴から「大平準」までをたどる。
目 次
凡 例
はじめに
グリーンスパンという神話
リバタリアンの中央銀行家?
背景としての大陸経済学
本書の構成とねらい
第Ⅰ部 グリーンスパンのアイン・ランド・コネクション
第1章 我あり、ゆえに我思う
1 マンハッタン・マン
輪中都市に生まれて
音楽と数学に魅かれて
2 我あり、ゆえにわれ思う
アイン・ランドとは誰か
ランド哲学の要諦
理性の復権
人間の本源的利己性
取引者がつくる資本主義社会
3 資本主義はまだ成立していない
経済学者の裏切り
部族主義なる古代の遺物
4 葬儀屋の反デカルト的転回
自分の存在を疑う葬儀屋
葬儀屋とランドの対立と融和
批判からランドを護るグリーンスパン
第2章 中央銀行を嫌う中央銀行家の肖像
1 ニューヨークのリバタリアン・コネクション
ニューヨークに集う大陸知識人たち
NBI(ブランデン研究所)
オーストリア学派とランド
2 「自由社会の経済学」の反連邦準備論
師グリーンスパン
「自由社会の経済学」講義
3 「金と経済的自由」の金本位制論
論文「金と経済的自由」
大恐慌を生んだ連邦準備
金本位制と福祉国家の二律背反
中央銀行が大嫌いな未来の中央銀行総裁
4 パークスとの対話
フェドスピークと日常語
そんなことを聞きたがる人間はいませんよ
5 ロン・ポールとの議会討論
擬似金本位制
オーストリア学派を讃えるグリーンスパン
第3章 グリーンスパンの資本理論
1 商学的経済学
経済分析への船出
ユニークなマクロ経済学観
2 利子率と景気循環
中世から続く利子理論の伝統
ABCT の概要
3 論文「株価と資本価値評定」
将来割引率
論文「株価と資本価値評定」
4 グリーンスパンとケインズの距離
流動性選好と資本の限界効率
ケインズと違う株価決定論
ケインズと違う完全雇用仮定
5 ミーゼス理論と「株価と資本価値評定」
グリーンスパンの資本理論
ABCT 発展の試み
補論1 二つの経済学
1 二つの限界原理
従来の経済学史の盲点
限界革命における視点の相違
メンガーの革新性
2 限界革命の革命限界
等価交換など存在しない
アリストテレスの呪縛
限界革命における主観性の欠如
ワルラスの場合
限界革命の革命限界
3 均衡した循環、ERE(均等循環経済)
英米経済学の単期合理性と静態効率
一般一時均衡を超えて一般恒久均衡を確立した ERE
4 ABCT(オーストリア学派景気循環論)
貨幣に限界原理を適用するという問題
不況期の無妨害市場と妨害市場
第Ⅱ部 ワシントンでの二十一年
第4章 CEA と臨床経済学
1 福祉国家と CEA
アメリカの国難と CEA
グリーンスパン、CEA 委員長に就任する
2 EMMT(有効貨幣変動論)
論文「金融理論の応用」
議論の背景と要点
3 1974年の景気後退と週間 GNP
1974年に起きたこと
グリーンスパンの診断
4 大膨張下のフォードノミクス
大膨張と投資の短期化
ケインズは生まれる前に論駁されていた
フォードノミクス
5 フォード時代にあった新自由主義の起源
フォードに信頼されるグリーンスパン
響き合うフォードとグリーンスパン
6 宿題としての金融政策
グリーンスパンの大膨張分析
政府や FRB を批判し代案を示す CEA 委員長
第5章 大平準
1 予防的利上げと大平準
大平準とは?
FOMC での議論と予防的利上げ
2 大平準とフリードマンの問い
フリードマン、敗北を認める
途方に暮れています
3 マンキューの評価
驚くべき安定性
グリーンスパン不在のグリーンスパン論
4 テイラー・ルールのパラドクス
線形式型ルール論の盲点
数値は何を語るか?
注
(下巻主要目次)
第Ⅱ部 ワシントンでの二十一年(承前)
第6章 「根拠なき熱狂」講演の根拠
補論2 政策適用による経済学の科学性の検証
第Ⅲ部 第二次大恐慌と中央銀行制の限界
第7章 第二次大恐慌
第8章 企業の固定資本投資と擬似金本位制
第9章 中央銀行のパラドクス
補論3 現代を近代より退行させた大恐慌
注
あとがき
参考文献
初出一覧
図表一覧
索 引
『グリーンスパンの隠し絵』
書 評
『経済学論集』(第82巻第4号、2019年10月、評者:西川純子氏)
『歴史と経済』(第240号、2018年7月、評者:秋元英一氏)
『社会と倫理』(第33号、2018年11月、評者:山口臨太郎氏)
『図書新聞』(第3327号、2017年11月18日付、評者:髙橋亘氏)