内 容
中世・ルネサンス時代には相容れないとされた恋愛と結婚を、直線的に結びつける眼差しが、近世都市社会の成立過程で誕生した。本書は、この眼差しが発展するあり様を、ラブレターを描き込んだオランダ風俗画、〈毀れ瓶〉の民衆歌、人生段階図など幅広い資料から領域横断的に跡づける。
目 次
はじめに
第Ⅰ編 描かれたラブレター
序 —— ラブレターの系譜
第1章 手紙とオランダ社会
オランダ風俗画と手紙
日常性のなかの文化
第2章 オランダのラブレター
絵の中のラブレター
オランダのレター・マニュアル
オランダ市民風とフランス宮廷風
第3章 フランスの書簡マニュアルと宮廷社会
第4章 情念論とのつながり
第5章 17世紀オランダの娘たちと恋
恋する娘たちのモラル
恋する娘と両親
第Ⅱ編 恋と〈毀れ瓶〉
序
第1章 〈毀れ瓶〉の起源
〈水瓶は毀れるまでの井戸通い〉
〈毀れ瓶〉の読み替え
瓶と娘
第2章 豊饒の瓶 —— 古代の瓶の再生と存続
古代の瓶の再生
瓶の民衆的伝統
第3章 〈毀れ瓶〉と世間 —— 中世後期の恋の歌
世俗歌への非難
恋を歌う世俗歌の系譜
第4章 16世紀の〈毀れ瓶〉
〈シュヴァーベン男に娘がいた〉
悪しき女の後退と父の力の登場
第5章 〈毀れ瓶〉の変容 —— 嘲笑から警告へ
都市の繁栄と恋愛熱
街なかの小夜曲
母娘関係の変容
教訓の洗練
女性像の変容
第Ⅲ編 結婚と人生段階図
序
第1章 中世都市民の人生観と女性観
第2章 イギリス民衆詩の人生モラル
第3章 中世末の人生段階図と〈死の舞踏〉
人生段階図の変容
〈死の舞踏〉図の女性像
二極的女性像とその解体
第4章 エラスムスとヴィーヴェスの結婚観
結婚をめぐる議論
エラスムスの結婚観
ヴィーヴェスの結婚観
第5章 男性と女性の人生段階図
十段階人生図の登場
2つの〈人生の階段〉図とその社会背景
女性の人生段階図の登場
ともに歩む〈人生の階段〉
おわりに
あとがき
注
参考資料・文献
人物・作品索引
事項・概念索引