『日本のエネルギー革命』: 第54回 「日経・経済図書文化賞」 選評
吉川洋氏 (東京大学教授) の総評より 【2011年11月3日付日本経済新聞より】
…… 戦前から50年代後半における石炭から石油への転換、いわゆる 「エネルギー革命」 まで、日本経済の歩みをエネルギー効率の観点から分析した歴史書である。…… 重要かつユニークなテーマを深く掘り下げた好著として受賞が決まった。……
岩田一政氏(日本経済研究センター理事長)による選評 【2011年11月3日付日本経済新聞より】
「現代の日本に示唆多く」
日本は福島原発事故が発生して以来、新たなエネルギーパスへの転換を模索している。原子力依存体制から再生エネルギーを大きな柱として組み込んだ新たなエネルギー革命が実現するのかどうか、きわどい局面に立たされている。歴史を振り返ると、1950年代半ばに国内産の石炭から海外の重油への大きなエネルギー転換があった。
本書はこのエネルギー革命をエネルギー節約技術の視点に立って鋭く分析した力作である。戦前、戦中、企業をはじめ、政府、地方自治体は熱節約のため、努力を重ねてきた。特に鉄鋼業の熱管理技術に関して、戦中一時的に停滞はあったものの、戦後日本が米国やドイツなどの先進的な技術水準にいかに急速にキャッチアップしたのか、本書はその過程を活写している。
重油の石炭に対する価格面での有利さがあったことは以前から指摘されているが、熱節約技術の展開過程で、技術面から重油が選択されてゆくという技術史的な視点に、本書の分析の斬新さがある。…… (中略) ……
対象としているのは60年までだが、現在の日本にとって示唆するところの多い秀作である。