内 容
野生動物と近代品種とをつなぐ在来家畜は、家畜化過程の本質を考える上で重要であるとともに、品種造成の遺伝資源としても有用である。本書は、永年の アジア全域での実地調査を軸に、農学以外にも人類学・考古学等の知見を盛込み体系的に記述した、世界に類を見ない書。12家畜種の系譜の全体像に迫る。
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執筆者一覧
天野 卓 西田隆雄
岡本 新 西堀正英
黒澤弥悦 野澤 謙
佐野晶子 野村こう
田中和明 橋口 勉
田中一栄 前田芳實
田名部尚子 万年英之
田名部雄一 山縣高宏
角田健司 山本義雄
並河鷹夫
目 次
まえがき
第Ⅰ部 家畜化と家畜
Ⅰ-1 家畜とはなにか? 在来家畜とは?
(1)家畜とは
(2)在来家畜とは
Ⅰ-2 動物家畜化に至る要因
(1)環境要因
(2)動物の側の要因
(3)ヒトの側の要因
Ⅰ-3 野生動物と家畜とをつなぐもの
(1)選択狩猟
(2)野生動物の餌付け
(3)野生原種から家畜への遺伝子流入
(4)家畜の再野生化
(5)アジアゾウ
(6)トナカイ
Ⅰ-4 家畜化による生物学的変化
(1)家畜化の遺伝学的意味
(2)経済形質
(3)遺伝負荷の排除
(4)毛色変異
(5)タンパク変異
(6)繁殖構造
(7)遺伝変異の分子的および発生学的基礎
(8)分化時間と進化速度
Ⅰ-5 近現代における新家畜造成
(1)偶蹄類の新たな家畜化
(2)ダチョウの家畜化
Ⅰ-6 比喩としての家畜・家畜化
第Ⅱ部 家畜種各論
Ⅱ-1 ウシ —— 多源的家畜化
(1)ウシの家畜化
(2)ミトコンドリアDNAから見た遺伝的多様性と分化
(3)近縁野生種と東南アジア在来牛
(4)血液タンパク多型に基づくアジアの家畜ウシの遺伝的多様性
Ⅱ-2 スイギュウ —— 2大系統の起源と地域分化
(1)野生原種と家畜化
(2)家畜スイギュウの分布と分類
(3)家畜スイギュウの系統分化
(4)遺伝資源としての各国のスイギュウ
(5)これからの利用
Ⅱ-3 ウマ —— 日本在来馬の由来
(1)家畜化と東アジアの馬産
(2)日本在来馬の起源と系統に関する諸説
(3)日本と東アジア在来馬の系統
(4)DNAを標識とする東アジア在来馬の系統
Ⅱ-4 ブタ —— 多源的家畜化と系統・地域分化
(1)イノシシ属(Sus)の系統分類とブタの原種
(2)イノシシの家畜化
(3)アジアの在来ブタの系統分化
(4)わが国のブタ飼養史
Ⅱ-5 ヒツジ —— アジア在来羊の系統
(1)家畜化の起源
(2)家畜化による形態変化
(3)東アジアにおけるヒツジの系統
(4)東方への伝播拡散
Ⅱ-6 ヤギ —— 東アジアの在来ヤギ
(1)ヤギの野生種と家畜化
(2)家畜ヤギの分類とアジアにおける伝播経路
(3)家畜ヤギの系統
(4)家畜ヤギの多様性と起源
Ⅱ-7 イヌ —— 日本とアジア犬種の系統
(1)ヒトとの相利共生
(2)イヌの祖先種としてのオオカミ
(3)イヌの成立とその移動
(4)イヌの品種の成立とその過程
(5)東アジアのイヌの形態比較
(6)日本犬
Ⅱ-8 ネコ —— 東アジアの feral cats
(1)ネコの家畜化と品種分化
(2)日本の feral cats における毛色などの形態遺伝学的多型
(3)多型の時間的変遷
(4)日本と東南アジアの feral cats の系譜
Ⅱ-9 ニワトリ —— 原種から家禽へ
(1)ヤケイ4種の動物分類学的位置と分布および特徴
(2)ヤケイの家畜化
(3)Gallus属の系統遺伝学的研究
(4)日本鶏の渡来ルートと定着
Ⅱ-10 アヒル —— 東アジアにおける家禽化と品種分化
(1)家禽化
(2)東アジアにおける主要品種とその特色
(3)系統分化
Ⅱ-11 ウズラ —— 家禽化の歴史と現状
(1)ウズラの分類と分布
(2)わが国のウズラ文化
(3)家禽化の歴史
(4)家禽ウズラの系譜
(5)遺伝資源としての家禽ウズラ
Ⅱ-12 ジャコウネズミ —— 実験動物(スンクス)の創成
(1)分類と分布
(2)生物学的特徴と地理的変異
(3)ジャコウネズミの家畜化(実験動物化)
(4)遺伝的変異から見たスンクスの起源と分化
(5)実験動物としての研究利用
在来家畜研究会現地調査の概要
あとがき
索 引