内 容
世界的にも稀な大規模で信頼性の高い子育て実態調査の結果を、過去の調査と比較し つつ丹念に分析。ここ20数年間での子育ての急速な変貌とその課題を明らかにする。 精神科思春期臨床の視点やストレス理論、心の発達理論なども踏まえ、母親に必要な支援および子ども虐待の予防策を探る。
目 次
はじめに
プロローグ
1 母子保健の歴史と現在の課題 —— 「大阪レポート」と「兵庫レポート」の位置
2 子育て支援ボランティア活動と精神科思春期臨床の視点
3 「大阪レポート」が明らかにしたもの
4 先行研究「大阪レポート」があるが故に、より意義深い「兵庫レポート」
第Ⅰ章 精神科思春期臨床から見た「子ども・親・家族」
Ⅰ-1 思春期・青年期の諸問題をどのように考え、どのように予防するか
Ⅰ-1-1 この20数年間で急増した思春期での不登校
Ⅰ-1-2 多発する少年事件や子どもの犯罪被害
Ⅰ-1-3 深刻化する子ども虐待とその予防
Ⅰ-2 日本社会の変貌と途絶える育児の伝承
Ⅰ-2-1 子育て支援、次世代育成支援の出発点
Ⅰ-2-2 劇的に変わった日本人のライフコース
Ⅰ-2-3 心とからだの発達の順序が逆転した現代日本人
Ⅰ-3 青年期の若者の諸問題と少子化
Ⅰ-3-1 少子化の原因は、晩婚化、非婚化
Ⅰ-3-2 国民の10人に1人が「パラサイト・シングル」という異常
Ⅰ-4 子どもの目から見た家・家族
Ⅰ-4-1 「子どもの食卓」の風景から見る家族
Ⅰ-4-2 描画にあらわれた子どもの心の中の家・家族
Ⅰ-5 現代の子育ては、なぜストレスが高いのか
—— ストレス理論から考える
Ⅰ-5-1 現代社会は、なぜ精神的ストレスが高いのか —— マズローの欲求の階層論
Ⅰ-5-2 乳幼児を知らないことが育児でのストレスを高めている
Ⅰ-6 地域の子育て力、教育力を育てよう
Ⅰ-6-1 学齢期の「いじめ」の後遺症が、子育て中の親同士のコミュニケーションを
阻害している!?
Ⅰ-6-2 「子どもの心の発達」と「地域の問題解決能力」という2つの視点
Ⅰ-6-3 「いじめ」の事実は、まわりの保護者はよく知っている。これが突破口に
なり得るのでは!?
第Ⅱ章 変わる親子、変わる子育て
——「大阪レポート」から23年後の子育て実態調査「兵庫レポート」が
示すもの
Ⅱ-1 「大阪レポート」、「兵庫レポート」とは何か
—— 調査体系と調査対象
Ⅱ-1-1 「兵庫レポート」の調査体系と調査対象、回答率、調査内容等
Ⅱ-1-2 「大阪レポート」の調査体系と調査対象、回答率、調査内容等
Ⅱ-1-3 調査地域の地域特性
Ⅱ-2 環境に大きく影響される子どもの発達
Ⅱ-2-1 子どもの発達スクリーニング項目とその分類
Ⅱ-2-2 統計データおよびクロス集計結果の見方・考え方
Ⅱ-2-3 環境に大きく影響される子どもの発達
Ⅱ-3 母子を取り巻く環境
—— 孤立化が進む中、子育て仲間を求める母親たち
Ⅱ-3-1 住居形態と居住年数
Ⅱ-3-2 家族構成
Ⅱ-3-3 母親の就労
Ⅱ-3-4 経済状態 —— 子育て家庭への経済的支援の必要性
Ⅱ-3-5 育児する上でのモデルの有無
Ⅱ-3-6 育児の手助け
Ⅱ-3-7 母親の近所の話し相手と子育て仲間の有無
Ⅱ-3-8 子どもの遊び相手
Ⅱ-3-9 子育て仲間を求める母親たち —— グループ子育てに再び “希望の灯” を見て
Ⅱ-3-10 ほんとうに効果のある子ども虐待予防とは?
Ⅱ-4 子どもの毎日の生活と親の具体的かかわり
Ⅱ-4-1 子どもの睡眠について
Ⅱ-4-2 食事について
Ⅱ-4-3 テレビについて
Ⅱ-4-4 入浴
Ⅱ-4-5 トイレットトレーニングに見る時代の変化
Ⅱ-4-6 子どもの事故(けが・やけどなど)
Ⅱ-4-7 歩行器の使用状況
Ⅱ-4-8 4か月の赤ちゃんへのかかわり
Ⅱ-4-9 天気の良い日の遊び場所
Ⅱ-4-10 育児に費やす時間
Ⅱ-4-11 親の子どもへの話しかけ
Ⅱ-5 母親について
—— まったく子どもを知らないまま親になる日本の母親たち
Ⅱ-5-1 現代の母親はどのような時代に育ったのか
Ⅱ-5-2 ますます増える乳幼児をまったく知らないまま親になる母親たち
Ⅱ-5-3 「育児経験」「子どもとの接触経験」は、子育てを楽にする
Ⅱ-5-4 母親の関心事
Ⅱ-5-5 母親の子どもの要求の理解度と子育て
Ⅱ-5-6 子どもとのかかわり方に迷い、育児に自信がもてない母親たち
Ⅱ-5-7 イメージと現実の育児のギャップに悩む母親たち
Ⅱ-5-8 今緊急に求められる、「親育て」プログラムの実践
Ⅱ-6 父親について
Ⅱ-6-1 父親の育児参加
Ⅱ-6-2 父親の子育て参加が母親に及ぼす影響
Ⅱ-6-3 父親と子ども
Ⅱ-7 育児における母親の心配・不安
Ⅱ-7-1 育児で最も心配だった時期は? —— 育児不安は内容を変え、消えること
なく続く
Ⅱ-7-2 母親の具体的心配事とその特徴
Ⅱ-7-3 増大する育児不安とその解決度
Ⅱ-7-4 親の育児不安と子どもの発達
Ⅱ-7-5 心配なときの相談相手および最も頼りにできる人 —— 増える母親の肉親の
支援
Ⅱ-7-6 『大阪レポート』で挙げられた育児不安の原因は、改善されたか
Ⅱ-7-7 現代の育児不安の原因とその特徴
Ⅱ-7-8 育児不安とは相関関係がなかった質問項目 —— 人間関係の希薄化
Ⅱ-8 親子関係と体罰、子どもの虐待予防
Ⅱ-8-1 親子関係のパターンの変化とその特徴 ——「不安と支配」傾向の増大
Ⅱ-8-2 新しい質問による親子関係図と親子関係とのクロス集計結果の図
Ⅱ-8-3 日本の親たちの強い体罰指向は改善されているのだろうか
Ⅱ-8-4 体罰を用いている母親の特徴
Ⅱ-8-5 体罰の原因と子ども虐待予防方策について
Ⅱ-8-6 誰か、私の子ども虐待に気づいて欲しい ——「子どもと離れたい!」は、
母親のSOSか!?
Ⅱ-8-7 子ども虐待の潜在的危険因子 ——「望まない妊娠・出産」と貧困
Ⅱ-9 現代母親の精神的ストレスとその新たな原因
Ⅱ-9-1 多くの母親たちは精神的には健康である
Ⅱ-9-2 育児での精神的ストレスが非常に大きくなっている
Ⅱ-9-3 育児における「イライラ」の原因は何か
Ⅱ-9-4 子ども虐待につながる育児でのイライラ感
Ⅱ-9-5 親子関係に悪影響を与える精神的ストレス
Ⅱ-9-6 育児での精神的ストレスと産後うつ病
Ⅱ-9-7 マズローの欲求の階層論と母親たちの訴え
Ⅱ-9-8 現代母親の精神的ストレスの新たな原因
Ⅱ-9-9 「自己実現」と「親役割」の狭間で悩む母親たち
Ⅱ-10 母性は育つもの、引き出されるもの
—— 母性・父性について考える
Ⅱ-10-1 母親の母性の成長・発現をうながす要因は何か
Ⅱ-10-2 少女・娘時代の子どもとの接触経験・育児経験は、母性を育てる
Ⅱ-10-3 自分自身の子育ての中でも、なお、母性は育つ
Ⅱ-10-4 母性性の発現をうながす夫の育児への参加・協力
Ⅱ-10-5 母親の母性性の発現は環境要因に大きく左右される
—— 「愛の手」欄の親子のデータより
Ⅱ-11 子ども虐待などの不適切な養育を予防するために
—— 第三次調査結果
Ⅱ-11-1 第三次調査の目的と方法
Ⅱ-11-2 第三次調査の調査項目
Ⅱ-11-3 「不適切な養育」は、何によってもたらされるのか
—— 共分散構造分析による「子ども虐待予防モデル」
Ⅱ-11-4 子育て状況と「育児負担感」との関連についての検討
Ⅱ-11-5 子育て状況と「不適切な養育」との関連についての検討
Ⅱ-11-6 子どもの発達に及ぼす影響
Ⅱ-11-7 評価尺度を使っての分析結果の読み方について
Ⅱ-11-8 現代日本社会が求めている人材は、子育てには不向きである!?
—— 少子化や子ども虐待の背景
Ⅱ-12 ここ20数年間の日本社会の大きな変貌を映し出す「兵庫レポート」
Ⅱ-12-1 大阪府I市での調査結果と「大阪レポート」「兵庫レポート」との比較
第Ⅲ章 親子の心の発達と環境
Ⅲ-1 子どもの発達に大きな影響をもつ子育て環境
Ⅲ-1-1 事実にもとづいた子育て論の大切さ
Ⅲ-1-2 乳幼児期の体験は、ほんとうに子どもの育ちに影響するのだろうか
Ⅲ-1-3 子育て支援では、早期知育教育の問題は避けて通れない
Ⅲ-1-4 幼少期の不適切な子育ては「キレる子」をつくる
Ⅲ-2 人生を成功に導くのは、「IQ」ではなく、「EQ」である
Ⅲ-2-1 時代は「IQ」に疑問を抱き、「EQ」を求めていた
Ⅲ-2-2 EQとは、心の健康度指数
Ⅲ-2-3 激動する人生をのりこえるだけの精神的な強さと柔軟さを養いたい
Ⅲ-3 子どもの心の発達には、道筋があることを知ろう
Ⅲ-3-1 赤ちゃんから思春期までを視野に入れた子育て観を!
Ⅲ-3-2 からだの発達と相呼応して、心は育つ
Ⅲ-4 子どもの心の発達、4つの特性
Ⅲ-4-1 心の発達の特性①:「個人差・性差」
—— 発達には個人差・性差があり、早い遅いが問題ではない
Ⅲ-4-2 心の発達の特性②:「積み重ね」
Ⅲ-4-3 心の発達の特性③:適時性
—— 個々の心の発達課題には、獲得しやすい時期がある
Ⅲ-4-4 心の発達の特性④:「育ちなおし」
—— 行きつ戻りつしながら心は発達していく
Ⅲ-4-5 「発達障害」について
Ⅲ-5 心の発達とバランス感覚
Ⅲ-5-1 心の健康とは何だろうか?
Ⅲ-5-2 心の発達とは、「バランス感覚」をグレード・アップしてく過程
Ⅲ-6 思春期になり、行き詰まる「いい子」たち
Ⅲ-6-1 子ども集団の論理を体得できない「いい子」たち
Ⅲ-6-2 集団の中での生きた生活体験の中でこそ、心は磨かれる
Ⅲ-7 「しつけ」とバランス感覚
Ⅲ-7-1 「しつけ」で問われる「親子の信頼関係」
Ⅲ-7-2 子どもにより、「しつけ」の強弱を変えることの必要性
Ⅲ-7-3 叱れない親、叱らない親の問題
Ⅲ-8 親の心の発達課題
Ⅲ-8-1 人の表面的言動のバックにあるものを理解する
Ⅲ-8-2 物事を多面的に見る能力
Ⅲ-8-3 子育てで問われる親のバランス感覚
第Ⅳ章 真に実効のある次世代育成支援、子ども虐待予防の実現のために
Ⅳ-1 森を育てるように、社会が子どもを育てよう
Ⅳ-1-1 対人サービスの本来あるべき姿とエンゼルプラン
Ⅳ-1-2 意外に知られていない「国の子ども施策の大転換」
Ⅳ-1-3 国民的コンセンサスを醸成しよう
Ⅳ-1-4 森を育てるように、子どもを育てたい —— 子育て支援の発送の転換
Ⅳ-2 子育て支援、次世代育成支援の課題とその特徴
Ⅳ-2-1 子育て支援の課題は、まったく新しい質の課題
Ⅳ-3 親たちの自己防衛としての市民活動のひろがり
—— 自主的グループ子育てに “希望の灯” を見つけて
Ⅳ-3-1 母親たちの熱い期待に支えられて
Ⅳ-3-2 “当事者主体” が時代の流れ
Ⅳ-4 市民活動と公的子育て支援との関係はどうあるべきか
—— 親を運転席に! 支援職は助手席に!
Ⅳ-4-1 母親たちの自主的な活動が消えていく
Ⅳ-4-2 なぜ、従来の事業展開方法が子育て支援では成功しないのか
Ⅳ-4-3 市民活動と公的子育て支援との関係 —— 市民活動の2つの使命
Ⅳ-5 子育て支援の基本戦略
Ⅳ-5-1 基本戦略(1):大多数の親子への支援は、市民主体の「子育てネット
ワーク」を軸に!
Ⅳ-5-2 基本戦略(2):困難事例には、専門職が前面に立って積極的にかかわる
Ⅳ-5-3 基本戦略(3):地域全体を視野に入れた「子育て支援ネットワーク」を
各市区町村につくる
Ⅳ-5-4 基本戦略(4):時代に見合った新しい園・学校づくりを!
Ⅳ-5-5 基本戦略(5):次世代の親育てを学齢期から、しっかりと!
Ⅳ-5-6 基本戦略(6):「子育てをする人生を選んで、良かった!」と言える
街づくりを!
Ⅳ-5-7 「孤立と不安、競争の子育て」から、「安心と信頼、共同の子育て」へ
Ⅳ-6 次世代育成支援を飛躍的にレベルアップするために
—— 親と親をつなぎ、親を育てるプログラムの実践
Ⅳ-6-1 「Nobody’s Perfect Japan」とは?
Ⅳ-6-2 カナダの親支援プログラム “Nobody’s Perfect” とは?
Ⅳ-6-3 なぜカナダのプログラムを使うのか、なぜ資格が必要なのか
Ⅳ-6-4 日本の親にこそ、Nobody’s Perfectを届けたい!
エピローグ
1 当事者主体の次世代育成委支援を!
—— “親を運転席に! 支援職は助手席に!”
2 親と親として育て、間接的に子どもを育てる
3 親子を孤立から解放し、親同士安心して話ができ、支えあえるグループ
子育ての推進
4 具体的育児での親のスキルアップと幅広い啓発活動
5 子どもの心身の健康な発達を保障しよう
6 現代に見合った子育てインフラの整備と支援者の質の向上
7 親がイキイキと子育てができ、しかも社会参加できる社会の実現
資料編
4か月児健診アンケート調査用紙(第二次調査)
1歳6か月児健診アンケート調査用紙(第二次調査)
1歳6か月児健診アンケート調査用紙(第三次調査)
アンケート集計結果
A.「赤ちゃんの妊娠中、お産の前後についてお聞きします。」
B.「お子さん(赤ちゃん)の最近の様子をお聞きします。」
C.「お子さん(赤ちゃん)の育児についてお聞きします。」
D.「その他、次の事をおたずねします。」
E.「H市で現在おこなわれている「子育て支援事業」についてお聞きします。」
F.「子育てに最も必要と思われることに〇をしてください。」
G. 回答者の特性
H. 各健診での発達スクリーニング項目と発達分類
I. 子どもの発達に関するクロス集計結果
J. 第三次調査結果
調査結果一覧
索 引
書 評
【朝日新聞文化欄 大江健三郎氏紹介】
【朝日新聞書評】