書籍の内容
現代日本経済は、高齢社会、成熟社会、ストックエコノミー、ソフト化経済など、様々に特徴づけられるが、これらはいずれも保険や年金の重要性を示唆している。本書は、リスクについての考え方を中心に、伝統的な教科書とは異なる視点を随所で提起しながら、保険と年金の経済学の基礎を平易に解説した入門書であり、めまぐるしく変わる制度の展開を根本から考えるために必読の一冊である。
書籍の目次
Ⅰ 基 礎 編
第1章 保険・年金制度の意義
1-1 保険・年金のイメージ
1-2 利子率 (収益率) と資産運用
1-3 不完全情報ゲームとしての経済活動
1-4 保険と共済
第2章 不確実性の経済学 —— 期待効用理論
2-1 不確実性とリスク
2-2 リスクの定式化
2-3 期待効用仮説
2-4 リスクに対する態度
2-5 リスク・プレミアムと危険回避度
2-6 平均-分散アプローチ
補論2-1 セント・ペテルスブルグの逆説
補論2-2 危険回避度の指標とリスクの程度
補論2-3 期待値、分散 (標準偏差)、共分散
補論2-4 機会軌跡と無差別曲線の一般的導出
第3章 期待効用理論の応用
3-1 リスク・プーリングとリスク拡散化
3-2 保険機能の数学的説明
3-3 モラルハザードと逆選択
3-4 資産価格の決定
補論3-1 アローの定理
補論3-2 現実の保険料の算定
第4章 非期待効用理論
4-1 理論の意義と限界
4-2 合理的行動の意味
4-3 非期待効用理論
4-4 プロスペクト理論
補論4-1 機会費用
第5章 非期待効用理論の応用
5-1 リスク・プレミアムは変化しないのか
5-2 為替レートと株価の決定
5-3 保険加入の動機 —— マーケティング論的アプローチとその限界
5-4 生命保険加入におけるリスク認知
5-5 今後の課題
補論5-1 あいまいさに対する態度
第6章 ライフサイクルと貯蓄 —— ストック経済の視点から
6-1 少子・高齢社会と日本経済
6-2 貯蓄・保険・年金 —— ライフサイクル仮説とその周辺
6-3 バランスシートで考える
補論6-1 新古典派成長モデルによる利子率と賃金の関係
補論6-2 開放経済下の投資収益の考え方
補論6-3 新古典派重複世代モデルの補足
Ⅱ 応 用 編
第7章 社会保障の経済学
7-1 社会保障の考え方
7-2 なぜ社会保障が必要なのか —— 公的年金を例に
7-3 医療制度改革と医療保険
7-4 医療保険制度の一本化と分権メカニズムの存続の提案
第8章 保険業の規制緩和と資産運用の問題
8-1 金融ビッグバンと保険業の規制緩和
8-2 ソルベンシー・マージンについて
8-3 これまでの資産運用の問題点
8-4 今後の資産運用の課題
補論8-1 ソルベンシー・マージン比率について
第9章 各種保険の諸問題
9-1 生命保険と損害保険の種類
9-2 自動車保険
9-3 損害賠償責任保険
9-4 地震保険の課題
第10章 退職金と企業年金
10-1 企業年金制度の最近の動向
10-2 リスク・シェアリングとしての企業年金
10-3 年金資産政策の課題
補論10-1 401kプラン
第11章 介護保険
11-1 公的介護保険制度成立の背景
11-2 公的介護保険の仕組みと問題点
11-3 介護における公民の役割分担