2022年度書評一覧

『西洋史学論集』 [第60号、2023年3月] から(評者:藤内哲也氏)

近世東地中海の形成
マムルーク朝・オスマン帝国とヴェネツィア人

近世東地中海の形成

堀井優著『近世東地中海の形成』が、『西洋史学論集』(第60号、2023年3月、九州西洋史学会発行)で紹介されました。古くから東西交易の要衝として栄えた「レヴァント」。中世から近世への転換のなか、イスラーム国家とヨーロッパ商人の「共生」を支えてきた秩序の行方は? オスマン条約体制や海港都市アレクサンドリアのありようから、異文化接触の実像を明らかにするとともに、東アジアに及ぶ「治外法権」の淵源をも示した力作。

堀井 優 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・240頁
ISBN978-4-8158-1053-5 C3022
在庫有り


『図書新聞』 [2023年4月8日号、第3586号] から(評者:森周子氏)

失業を埋めもどす
ドイツ社会都市・社会国家の模索

失業を埋めもどす

森宜人著『失業を埋めもどす』が、『図書新聞』(2023年4月8日号、第3586号、武久出版発行)で紹介されました。失業はいかにして発見され、社会政策の中心課題になったのか。繰り返し大量失業に悩まされたドイツにおいて、都市が国家に先駆けてセーフティネット構築をはかる姿を初めて解明、慈善団体や国家との対抗/連携の過程も鮮やかに捉えて、労働をめぐるモダニティの大転換を、現代も視野に描き出します。

“…… このようにして発見された失業が、失業対策という制度として社会に「再埋め込み」されていく際のライヒ(国家)の役割については、先行研究が数多く存在するが、本書は、都市の役割に着目し、詳細な分析を行っている点に独自性がある。主にハンブルク(一部ベルリン)の事例を用いて、失業の「再埋め込み」の仕方をめぐる都市とライヒのせめぎ合いを活写しており、福祉関連の給付に際して国家とそれ以外の主体の連携がどうあるべきかえを考える上で、有益な示唆を与える。また、都市が「社会的課題」の解決を目指そうとする、いわゆる「社会都市」と呼ばれる側面について、失業という、一見国家がその解決の主体とみなされそうな課題に焦点を当てて論じている。それにより、都市ガバナンスに焦点をあてた都市史研究の新たな側面をも開拓している。……”(第3面)

森 宜人 著
税込7,480円/本体6,800円
A5判・上製・396頁
ISBN978-4-8158-1103-7 C3022
在庫有り


『図書新聞』 [2023年4月8日号、第3586号] から(評者:中山弘明氏)

変革する文体
もう一つの明治文学史

変革する文体

木村洋著『変革する文体』が、『図書新聞』(2023年4月8日号、第3586号、武久出版発行)で紹介されました。新たな文体は新たな社会をつくる ——。小説中心主義を脱し、政論・史論から翻訳・哲学まで、徳富蘇峰を起点にして近代の「文」の歩みを辿りなおし、新興の洋文脈と在来の和文脈・漢文脈の交錯から、それまでにない人間・社会像や討議空間が形づくられる道程をつぶさに描いた意欲作。

“…… 本書の画期的な点は、なによりも「政治と文学」という、我々が二項対立的に認識している事態を根源的に問う戦略にあると言ってよいだろう。
「戦略」と書いたが、本書は極めて明晰かつ野心的な戦略性を持っている。それは「個人的な問題」が公的社会的問題を形成するという事態である。その基軸となるのが徳富蘇峰の言説である。Ⅰ部で蘇峰の言論人としての出発から、彼の新しい欧文直訳体の文体が精査され、その人物論の影響圏が追跡される。蘇峰という「哲学者、詩人、宗教家としての顔」を兼ね備えたハイブリッドな存在を基軸とすることにより、「政治と文学」が実は「地続き」の問題系であったという見取り図が、文体論的にすっきりと解き明かされていくことになる。考えてみれば、蘇峰は常に面妖な存在として君臨する一個の「謎」と言えるだろう。彼は常に戦争とともにあった。平民主義を唱えつつ、「帝国主義」の言説に鞍替えした事実だけでなく、戦時下に「詔書」の起草などにも関わり、『近世日本国民史』という膨大な「事業」を自ら進めた、きわめて政治的な存在である事実は誰もが知るところだ。本書はそのタブーに敢えて挑戦する。従って本書が示す「蘇峰と樋口一葉」「蘇峰と国木田独歩」という、文体的系譜の解明に、恐らく多くの読者は戸惑いを隠せぬはずだ。それは蘇峰が示した、旧来の「慷慨型の政治」に代わる「憐れみ型の政治」というい新しい言説が、「論述主体の内なる発熱」を読者に実感させ、「文学」がこうした「内的志向」の存在、「知識人」の型を生成したという構図である。「精神的開国」と言われた所以である。前著以来、著者が強調する「文学熱」の問題が、本書に至ってより鮮明になり「もう一つの明治文学史」を描き出すことに成功している。Ⅱ部では、俗語の問題、ユーゴー受容、志賀重昴『日本風景論』、田口卯吉『日本開化小史』などが、次々に論じられていく。著者は、文学研究がしばしば陥る「小説中心主義」を排し、「雑多な文の集合体」として広義の「文学」を定位し網羅的に探査する方法をとる。……”(第6面)

木村 洋 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・358頁
ISBN978-4-8158-1108-2 C3095
在庫有り


『東洋史研究』 [第81巻第4号、2023年3月] から(評者:水羽信男氏)

愛国とボイコット
近代中国の地域的文脈と対日関係

愛国とボイコット

吉澤誠一郎著『愛国とボイコット』が、『東洋史研究』(第81巻第4号、2023年3月、東洋史研究会発行)で紹介されました。中国ナショナリズムの実像 ——。時に暴力をともなう激しい対日ボイコットはなぜ繰り返されたのか。たんなる外交懸案の解決でも自国工業の振興でもない、それぞれの運動が生じた異なる地域事情と利害・思想を詳らかにするとともに、それらが愛国主義へとつながっていくメカニズムを捉えた力作。

吉澤誠一郎 著
税込4,950円/本体4,500円
A5判・上製・314頁
ISBN978-4-8158-1048-1 C3022
在庫有り


『経営史学』 [第57巻第4号、2023年3月] から(評者:米山高生氏)

ピアノの日本史
楽器産業と消費者の形成

ピアノの日本史

田中智晃著『ピアノの日本史』が、『経営史学』(第57巻第4号、2023年3月、経営史学会発行)で紹介されました。富裕層の専有物であったピアノが人々に親しまれるようになった由来を、明治~現代の歴史からたどり、その普及を可能にした意外な原動力を示します。斜陽産業化の危機を超えるメカニズムをはじめてとらえ、音楽教室とともに世界へと拡がった日本の鍵盤楽器産業の全体像を描ききった意欲作。

田中智晃 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・400頁
ISBN978-4-8158-1029-0 C3021
在庫有り


『経営史学』 [第57巻第4号、2023年3月] から(評者:四方田雅史氏)

緑の工業化
台湾経済の歴史的起源

緑の工業化

堀内義隆著『緑の工業化』が、『経営史学』(第57巻第4号、2023年3月、経営史学会発行)で紹介されました。植民地下の台湾は、たんに帝国の食糧供給基地にとどまったのではなかった。見過ごされてきた工業化の契機を、豊かな農産品の加工・商品化と、それに伴う機械化・電動化に見出し、小零細企業が叢生する農村からの発展経路を実証、戦後台湾経済の原型をとらえた注目の成果。

“…… 本書は台湾の工業化のこれまで看過されてきた面を鮮やかに描き出し、冒頭で述べたように評者にとって刺激的であった。同書を下敷きにしながら東アジア全体の経済成長・工業化や大日本帝国なるものについて考えるための題材を提供してくれており、それをさらに敷衍させ工業化のグローバル・ヒストリーや比較史にも誘ってくれると評することもできよう。少なくとも工業化には複数の経路があり、その1つが同書で論証している戦前台湾的な「緑の工業化」だと言えるのは確かであろう。”(p.60)

堀内義隆 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・286頁
ISBN978-4-8158-1032-0 C3033
在庫有り


『芸術新潮』 [2023年4月号] から

共和国の美術
フランス美術史編纂と保守/学芸員の時代

共和国の美術

藤原貞朗著『共和国の美術』が、『芸術新潮』(2023年4月号、新潮社発行)で紹介されました。王なき世俗国家で人々は芸術に何を求めたのか。戦争に向かう危機の時代に、中世宗教美術や王朝芸術から、かつての前衛までを包摂するナショナルな歴史像が、刷新された美術館を舞台に創られていく。その過程を、担い手たる学芸員=「保守する人」とともに描き、芸術の歴史性を問い直します。

“あまりに斬新で当初は嘲笑された印象派が、やがて保守派のアカデミズムに逆転勝利する —— そんな筋書きは、どうやら一面的すぎるようだ。1930年代、第三共和制後期のフランスにおけるある種ナショナリスティックな価値観の形成を、本書は同時代資料から浮かび上がらせる。当時、マネや印象派が19世紀フランス絵画の代表として担ぎ上げられたのは、なんと「古典」や「伝統」という観点から保守的なポイントが付与されたため。この国はレオナルドやベラスケス、レンブラントといった天才がいないかわりに一貫したレアリテの潮流があり、人間性を重視した高水準の芸術を生み続けてきたとされ、フランス絵画の通史も再編された。「19世紀フランス絵画の勝利」と同国美術の「連続性」は、その生成過程が忘却されることで、デフォルトの史観みたいな顔をして、今に至るというわけである。”(p.127)

藤原貞朗 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・454頁
ISBN978-4-8158-1110-5 C3071
在庫有り


『経済セミナー』 [2023年4・5月号] から(評者:秋朝礼恵氏)

社会をつくった経済学者たち
スウェーデン・モデルの構想から展開へ

社会をつくった経済学者たち

藤田菜々子著『社会をつくった経済学者たち』が、『経済セミナー』(2023年4・5月号、日本評論社発行)で紹介されました。不況・戦争など直面する危機を乗り越え、福祉先進国の礎を築いた経済学者たち。ケンブリッジ学派と双璧をなしたスウェーデン経済学の全体像を、彼らの政治・世論との深いかかわりとともに初めて解明、福祉国家への合意を導いた決定的役割と、現代におけるその変容までを鮮やかに描き出します。

“著者は、経済学者らの理論や思想のみならず、膨大な資料を活用して人物像、人間関係、政治や社会との関係についても分析し、それらを丹念に鮮やかに描きだすことに成功している。本書は、世代の異なる経済学者たちの思想面での対立と政策面での知的遺産の継承を経糸に、同時代に生きた経済学者の交流を緯糸にして緻密に編まれた重厚な織物のようだ。……
本書を読むと、思想や理論や政策はおよそ真空から生まれるものではないことを改めて確認する。他者との対話やときに激しい議論を経て形づくられるのだ。まさに、この手間暇かかるプロセスこそが、政治過程において合意や市民の支持を調達する仕掛けでもある。……
本書はスウェーデン経済学史を詳細に扱った日本で初めての本であるが、政治学的分析が主流の福祉国家研究においてもその意義は大きい。経済学からの通史的研究は、スウェーデン福祉国家やスウェーデン・モデル理解へのミッシング・リンクを埋めるものであり、地域研究にも多大な貢献である。「独自性あるスウェーデン社会の歴史的形成過程に関心をもってきた」(p.413)という著者の圧倒的な研究成果である。ぜひ、手に取っていただきたい。」”(p.121)

藤田菜々子 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・438頁
ISBN978-4-8158-1097-9 C3033
在庫有り


『月刊美術』 [2023年4月号] から

共和国の美術
フランス美術史編纂と保守/学芸員の時代

共和国の美術

藤原貞朗著『共和国の美術』が、『月刊美術』(2023年4月号、サン・アート発行)で紹介されました。王なき世俗国家で人々は芸術に何を求めたのか。戦争に向かう危機の時代に、中世宗教美術や王朝芸術から、かつての前衛までを包摂するナショナルな歴史像が、刷新された美術館を舞台に創られていく。その過程を、担い手たる学芸員=「保守する人」とともに描き、芸術の歴史性を問い直します。

藤原貞朗 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・454頁
ISBN978-4-8158-1110-5 C3071
在庫有り


『アジア経済』 [第64巻第1号、2023年3月] から(評者:村田雄二郎氏)

愛国とボイコット
近代中国の地域的文脈と対日関係

愛国とボイコット

吉澤誠一郎著『愛国とボイコット』が、『アジア経済』(第64巻第1号、2023年3月、ジェトロ・アジア経済研究所発行)で紹介されました。中国ナショナリズムの実像 ——。時に暴力をともなう激しい対日ボイコットはなぜ繰り返されたのか。たんなる外交懸案の解決でも自国工業の振興でもない、それぞれの運動が生じた異なる地域事情と利害・思想を詳らかにするとともに、それらが愛国主義へとつながっていくメカニズムを捉えた力作。

“…… 本書の貢献としてまず挙げるべきは、資料の博捜に加えて、近年の研究成果を丹念に拾い上げ、研究史の総括を丁寧に行っていることである。中国近代史の研究書である以上、日本語や中国語で書かれた多くの先行研究がくまなく参照されるのはいうまでもない。著者は大陸中国の最新の研究動向に触れるだけではなく、台湾や香港で出された成果にも周到な目配りを欠かさない。また、英語圏の研究状況にも精通し、その成果の吸収も怠らない。このことは、充実した巻末の注をみれば、一目瞭然である。今後、中国ナショナリズムや日中関係に関心をもつ後学にとって、本書がまたとない手引書になることは疑いない。
内容の面でいえば、著者独自の着眼点や評価は、本書のそこかしこにさりげなく語られるが、…… ここでは2点に絞って論じたい。
第1は、…… 都市部の大衆的な排日運動の地域性に注目したことである。本書では、各都市の愛国運動の盛り上がりや大衆運動(労働運動を含む)の持続が、全国レベルのボイコットや抗議運動に連動しつつも、それぞれの都市や地域の事情で異なったあらわれ方をし、運動の性格にローカルな色彩を付与していたことを重視する。…… 「ローカル」と「ナショナル」なボイコットの結びつきを個別・具体的に解明したことは、近現代中国におけるナショナリズムの研究を一歩前に進めるものである。
第2に、…… 大衆運動がはらむ正義と暴力の関係という、中国研究でこれまで相対的に軽視されてきた視点をクリアに提示したことである。……”(pp.33-34)

吉澤誠一郎 著
税込4,950円/本体4,500円
A5判・上製・314頁
ISBN978-4-8158-1048-1 C3022
在庫有り


「中日新聞」 [2023年3月4日付夕刊、「ほんの裏ばなし」] から

名古屋大学の歴史 1871~2019(上下巻)

名古屋大学の歴史1871-2019

名古屋大学編『名古屋大学の歴史 1871~2019』(上下巻)の執筆者の一人・吉川卓治先生による紹介文が、「中日新聞」(2023年3月4日付夕刊)の「ほんの裏ばなし」に掲載されました。「名大」に歴史あり ——。どのように生まれ、変化してきたのか。教育・研究・大学生活・キャンパスの変遷を、組織の沿革とともに一望できる通史。

“本書は、名古屋大が2019年に創立80周年を迎えたのに合わせて企画されました。前回大きな大学史を編んだのは、創立50周年(1989年)のとき。私は当時も編纂作業に関わりました。もともとは、次は百年史を目標にしていたのですが、この間に大学を取り巻く環境がものすごく変わったこともあり、このあたりで一度作ろうかという話になったのです。
今回の特徴は、対象読者を学外の一般の人まで広げた内容にしたこと。写真を多数入れたり文章を平易にしたりと、手に取りやすいよう気を配りました。女子マラソンの鈴木亜由子選手や将棋棋士の藤井聡太さんといった、名大ゆかりの著名人も取り上げています。大学組織の記録の要素が強かった五十年史を思うと、隔世の感です。…… 90年代以降、日本の大学には改革の波が押し寄せました。本書には、この30年間で日本の大学教育が経験した変革の全体像や、未来の展望が描き出されているとも言えます。……
1990年代の、教養部の廃止から情報文化学部ができたころを取り上げた章は、個人的に力が入りました。文部省(当時)に蹴られながらもいろいろな案を出していく学内の機運が、ダイナミックで面白い。後の参考となるように、失敗したこともかなり書き残しています。……”(第4面)

名古屋大学 編
税込各2,970円/本体各2,700円
A5判・並製・上284頁+下320頁
ISBN 上:978-4-8158-1063-4 下:978-4-8158-1064-1
C0000
在庫有り


「UTokyo BiblioPlaza」 [2023年3月3日公開、自著紹介] から

原典 イタリア・ルネサンス芸術論【下巻】

原典イタリアルネサンス芸術論下

『原典 イタリア・ルネサンス芸術論 下』(池上俊一監修)の訳者のひとりである日向太郎先生による自著紹介が、「UTokyo BiblioPlaza」(2023年3月3日公開、東京大学)に掲載されました。ヨーロッパ芸術の黄金時代はイメージや言葉をめぐる「論」の時代でもあった。新たな芸術観を切り拓いた重要テクストが今、原典からの翻訳によってよみがえる ——。下巻には、代表的な文学・音楽・演劇論から、コレクション論や図像論、遠近法論や比例論、さらには反芸術論までを収録。

池上俊一 監修
税込9,900円/本体9,000円
A5判・上製・506頁
ISBN978-4-8158-1027-6 C3070
在庫有り


『西洋史学』 [第274号、2022年12月] から(評者:薩摩真介氏)

海のロシア史
ユーラシア帝国の海運と世界経済

海のロシア史

左近幸村著『海のロシア史』が、『西洋史学』(第274号、2022年12月、日本西洋史学会発行)で紹介されました。第一次グローバリゼーションのもと、東アジアの海とヨーロッパの海を結んだ長距離航路と、義勇艦隊が果たした役割とは。政治と経済が混然一体となった海洋戦略により、極東を含む帝国の辺境を統合、国際的経済闘争への参入を試みる姿を捉え、ロシア史をグローバルヒストリーに位置づけます。

“……[本書の]最大の意義は、タイトルが端的に示すように、広大な領土を有する「陸の帝国」のイメージのある近代のロシア帝国を、海運という、これまで十分に検討されてこなかった観点から実証的に検討したことにある。…… 本書は、19世紀後半から20世紀初頭にかけて、ロシア政府は実際には海運業育成にも熱心に取り組んでいたことを示すことにより、従来のロシア帝国像の修正を迫っている。また、政府の海運政策の背後には、経済的動機だけではなく、イギリスへの対抗などの政治的意図も強く働いていたことを明らかにしており、その点も本書の高く評価されるべき点である。これにより本書は経済史のみならず、政治史や外交史にも対話の扉を開いているからである。さらに付言するならば、義勇艦隊を含むロシアの商船会社がしばしば兵士や移民、巡礼者などを輸送していたという点は、人の移動の歴史に注目する諸研究との接合の可能性も感じさせる。……”(pp.68-69)

左近幸村 著
税込6,380円/本体5,800円
A5判・上製・354頁
ISBN978-4-8158-1008-5 C3022
在庫有り


『西洋史学』 [第274号、2022年12月] から(評者:根占献一氏)

転生するイコン
ルネサンス末期シエナ絵画と政治・宗教抗争

転生するイコン

松原知生著『転生するイコン』が、『西洋史学』(第274号、2022年12月、日本西洋史学会発行)で紹介されました。古今の時間を自在に行き来し、「像」と「アート」の汽水域にたゆたうシエナ派絵画。イタリア戦争と宗教改革にともなう波乱のなか、「聖母の都市」を守護する古きイコン=聖画像はいかに動員され、新たな使命を獲得したのか。繊細なシエナ美術に秘められたダイナミズムを析出し、イメージ論の新地平を切り拓きます。

“…… 最後に、作者は16世紀半ばのシエナ戦争勃発に続く1555年のシエナ共和国の滅亡の時に立ち返り、最新の学術成果に基づきながら独自の用語を駆使して、時代の相貌明示に努める。イコンの転生における「パリンプセスト」化の手続きからシエナ美術の生命力を語るのだが、その際、画家兼軍事技師ジョルジョ・ディ・ジョヴァンニという魅力的な人物を掘り起こしている。さらにはメディチ統治時代にも叙述の筆を伸ばし、イコンの転生を追究して筆を擱いている。シエナをよく知る者はパリオやサンタ・マリア・スカーラ施療院にも、転生テーマを旨とする本書故に言及を期待するだろう。大丈夫である。期待に応えるに充分である。こうしてシエナの美術文化が壮大にパノラミックに呈示されている。これだけのシエナの歴史風景が展望できたのは、作者が若い頃から聖母都市に親しんてきたためであり、本書はその記念碑となった。……”(p.75)

松原知生 著
税込12,980円/本体11,800円
A5判・上製・652頁
ISBN978-4-8158-1007-8 C3071
在庫有り


『西洋史学』 [第274号、2022年12月] から(評者:長野壮一氏)

言論と経営
戦後フランス社会における「知識人の雑誌」

言論と経営

中村督著『言論と経営』が、『西洋史学』(第274号、2022年12月、日本西洋史学会発行)で紹介されました。メディア企業の生き方とは ——。言論によって民主主義に奉仕すると同時に、私企業として資本主義のなかで動くジャーナリズム。戦後フランスに生まれ、サルトルはじめ知識人を結集する一方、市場で稀有な成功を収めたニューズマガジンの歴史を、変容する社会とともに捉え、その思想と身体を見つめた俊英の力作。

“…… 本書は、狭義にはフランスにおけるジャーナリズム史、知識人史、左翼史の学統に掉さす。同時に、言論誌の政治的ないし経済的自立の条件を検証する本書は、近代社会が内包する民主主義と資本主義におけるジャーナリズムの立場を問うがゆえに、社会科学的な問いに答えることを志向しているという。本書が「言論」と「経営」の語句を表題に掲げる所以である。ただし、本書の潜在的な射程はこれを超えたところにある。…… 著者は、本書において『N.O.』[ル・ヌーヴェル・オプセルヴァトゥール]という対象を通じて、フランス現代社会の全体史を描き出そうと試みているのだ。というのも、社会・文化・政治の多方面における行為主体であった『N.O.』をめぐる精神史を辿ることで、必然的に同時代の文学・思想・芸術を論じることができる。……「フランス人よりフランス人をよく知っているイギリス人」とも評されたゼルディンが行ったように、異邦人の目線からフランスの歴史と文化を広く、なおかつ深く観察してみせた本書は、今後も広範な分野に亘る研究史において長く残る業績となろう。……”(pp.97-98)

中村 督 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・442頁
ISBN978-4-8158-1022-1 C3036
在庫有り


『図書新聞』 [2023年3月11日号、第3582号] から(評者:塩野麻子氏)

ツベルクリン騒動
明治日本の医と情報

ツベルクリン騒動

月澤美代子著『ツベルクリン騒動』が、『図書新聞』(2023年3月11日号、第3582号、武久出版発行)で紹介されました。欧米では「フィーバーからスキャンダルへ」と化した、コッホによる「結核新治療薬」。日本社会はそれをどのように受け止めたのか。多様な医療雑誌による「情報」の伝達・普及・切り分けを軸に、近代日本の医学・医療の風土が形成される転換期の実相を描き、今日への示唆に富む労作。

“…… 医学史研究の立場から見た場合、本書の特筆すべき点は「ツベルクリン騒動」をめぐる本書の議論が、臨床実験をめぐる倫理的問題に及んでいることである。「ツベルクリン」は国家の主導で初めて集団的な技術評価が実施された医薬である。その医薬をめぐる技術評価の過程で「研究に使用される身体」(341頁)の処遇をめぐる様々な問題が浮上していた。第7章で紹介されているように、臨床実験に際して「ツベルクリン」投与の対象となった患者が強い拒否感を示し、なかには「泣きながら逃げ廻る」患者もいたことを新聞紙が報じている。これらの報道は、治療効果が確証されておらず、死亡の可能性すらあった新薬を患者に投与することをめぐる倫理的問題を露わにしたともいえる。
また第8章では、内務省の監督下で行われた臨床実験に関する内部文書において「ツベルクリン」投与による「死亡」の数が抹消され、新薬が患者を死に至らしめる可能性がある点が公的記録として残されなかったことを指摘している。これは、本書における重要な論点のひとつである。
殊に結核をめぐる日本の歴史研究においては、医学的権威による「伝説」が未だに先行研究として温存されており、検証が十分に行われていないのが現状である。こうしたなか刊行された本書の意義は非常に大きい。「ツベルクリン騒動」というある事件を通じて描かれた壮大な歴史像は、著者による史資料の丹念な読み込みと地道な検証がもたらしたものである。本書は、著者の研究の集大成であるとともに、日本医学史研究のひとつの到達点として位置づけられるべき大作である。”(第3面)

月澤美代子 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・504頁
ISBN978-4-8158-1101-3 C3021
在庫有り


『社会経済史学』 [第88巻第4号、2023年2月] から(評者:村上衛氏)

塩とインド
市場・商人・イギリス東インド会社

塩とインド

神田さやこ著『塩とインド』が、『社会経済史学』(第88巻第4号、2023年2月、社会経済史学会発行)で紹介されました。植民地統治の影に隠された内部からの巨大な変化とは? 近世の主要財源にして後の抵抗運動の象徴ともなった塩に注目し、消費や環境、金融も視野に、勃興するベンガル地域市場と現地商人が生み出すダイナミズムを示して、近代への転換を摑みだす。インド史を書き換える瞠目の成果。

神田さやこ 著
税込6,380円/本体5,800円
A5判・上製・384頁
ISBN978-4-8158-0859-4 C3022
在庫有り


『社会経済史学』 [第88巻第4号、2023年2月] から(評者:桃木至朗氏)

世界史のなかの東南アジア(上下巻)
歴史を変える交差路

世界史のなかの東南アジア

アンソニー・リード著『世界史のなかの東南アジア』(太田淳・長田紀之監訳、上下巻)が、『社会経済史学』(第88巻第4号、2023年2月、社会経済史学会発行)で紹介されました。世界史を動かし続けた東南アジアを、先史から現代に至る全体史として描くとともに、豊かな多様性を生み出す人びとの姿に迫る決定版。

アンソニー・リード 著
太田 淳・長田紀之 監訳
税込各3,960円/本体各3,600円
A5判・上製・上398頁+下386頁
ISBN 上:978-4-8158-1051-1 下:978-4-8158-1052-8
C3022
在庫有り


『社会経済史学』 [第88巻第4号、2023年2月] から(評者:高見典和氏)

経済学のどこが問題なのか

経済学のどこが問題なのか

ロバート・スキデルスキー著/鍋島直樹訳『経済学のどこが問題なのか』が、『社会経済史学』(第88巻第4号、2023年2月、社会経済史学会発行)で紹介されました。モヤモヤしている人のために ——。「科学」の地位を得るために、経済学は様々な数学やモデルを使ってきた。しかし、それらは本当に有効なのか。現実から離れた想定によって視野を狭めているのではないか。スタンダードな経済学の考え方を再検討し、今後に向けての処方箋を提示する話題作。

ロバート・スキデルスキー 著
鍋島直樹 訳
税込3,960円/本体3,600円
A5判・上製・288頁
ISBN978-4-8158-1088-7 C3033
在庫有り


『大原社会問題研究所雑誌』 [2023年3月号、第773号] から(評者:熊沢透氏)

技能形成の戦後史
工場と学校をむすぶもの

技能形成の戦後史

沢井実著『技能形成の戦後史』が、『大原社会問題研究所雑誌』(2023年3月号、第773号、法政大学大原社会問題研究所発行)で紹介されました。高度成長期の高校進学率上昇が職業教育・職業訓練に与えたインパクトとは? 企業内養成施設、公共職業訓練所、工業高校、各種学校などで起こった劇的な変遷を分析。「役に立つ」「即戦力」を歴史的に問い直し、実践に根ざした教養教育を考えます。

“…… 内容はきわめて濃密で、この領域における新しいスタンダードとして受けとめるに相応しい。これまでも類書は少なくないとはいえ、本書が目配りする対象の領域の充実度と実証の深度は特筆されるべきものであると思う。……
優れた歴史研究にはそれじたいの意義と役割がある。分野固有の関心をもって読む読者はその本によってファクトとパースペクティヴが明確になることをまずは求める。しかし、その歴史研究がもつ今日的な含意も決して軽視されない。先の引用と文意は重複するけれども本書冒頭の言明を引こう。「『即戦力』『役に立つ』ことが自明のものとされる今日と比較して、意外に、高度成長期の工業高校、企業内養成教育、各種学校などは戦前来継承してきた教養教育の役割を尊重し、すぐに『役に立つ』事の問題に自覚的であった」とし、「職業教育と職業訓練における『教養』の役割を考察することは、高度成長期以後の日本社会における職業と教育の歴史的位相を考えること」(p.12)と著者はいう。だから著者の問題関心と主張の意義は戦前と戦後の連続面と断絶面を複層的に把握することでより深く理解できる。読者にはあらためて、前著『日本の技能形成』と併せて本書を通読されることをお奨めしたい所以である。”(p.66、69-70)

沢井 実 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・258頁
ISBN978-4-8158-1038-2 C3033
在庫有り


『企業家研究』 [第21号、2023年2月] から(評者:松本雄一氏)

技能形成の戦後史
工場と学校をむすぶもの

技能形成の戦後史

沢井実著『技能形成の戦後史』が、『企業家研究』(第21号、2023年2月、企業家研究フォーラム発行)で紹介されました。高度成長期の高校進学率上昇が職業教育・職業訓練に与えたインパクトとは? 企業内養成施設、公共職業訓練所、工業高校、各種学校などで起こった劇的な変遷を分析。「役に立つ」「即戦力」を歴史的に問い直し、実践に根ざした教養教育を考えます。

“…… 本書は戦後から現代までの技能教育のあり方について、文献を丁寧に読み込み、データを丹念にまとめた上で、緻密な記述によって明らかにしている。その大きな歴史的意義ともたらされる示唆もさることながら、現代の教養教育や即戦力志向に対する問題提起も行われている。日本の製造業や技能伝承を語るうえで、欠かせない背景知識にあふれた労作である。……”(p.66)

沢井 実 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・258頁
ISBN978-4-8158-1038-2 C3033
在庫有り


『アジア研究』 [第69巻第1号、2023年1月] から(評者:黒杭良美氏)

南シナ海問題の構図
中越紛争から多国間対立へ

南シナ海問題の構図

庄司智孝著『南シナ海問題の構図』が、『アジア研究』(第69巻第1号、2023年1月、アジア政経学会発行)で紹介されました。中国の急速な台頭により国際政治の焦点となった危機の構造を、主要な当事者であるベトナム・フィリピンやASEANの動向をふまえて解明、非対称な大国と向きあう安全保障戦略をとらえ、米中対立の枠組みにはおさまらない紛争の力学を浮かび上がらせて、危機の行方を新たに展望します。

庄司智孝 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・344頁
ISBN978-4-8158-1054-2 C3031
在庫有り


『科学史研究』 [2023年1月号、第Ⅲ期第61巻] から(評者:綾部広則氏)

イノベーション概念の現代史

イノベーション概念の現代史

ブノワ・ゴダン著『イノベーション概念の現代史』(松浦俊輔訳/隠岐さや香解説)が、『科学史研究』(2023年1月号、第Ⅲ期第61巻、日本科学史学会発行)で紹介されました。統現代社会のキーワードとして君臨する「イノベーション」。いかにして考え出され、政策や経営に組み込まれていったのか。また、研究はどのように商業化に巻き込まれたのか。国際機関や省庁・企業の実務家たちに焦点を合わせ、科学・技術の「有用性」を問い直す、私たちの時代の概念史。

“…… 本書を読んであらためて気づかされるのは、イノベーションが、あらゆる要素を飲み込む魔力をもった概念だという点である。ここであらゆる要素を飲み込む魔力をもっているというのは、アクター、概念、政策といったあらゆる要素がイノベーションと関連づけられ、その中に取り込まれることで、それら個々の要素は、イノベーションを構成する要素の一つでしかなくなるということである。「イノベーションをめぐる言説が科学をめぐる言説よりも成功したのは、それが包摂的だったからである」(p.133)という著者の診断も、こうしたイノベーションがもつ特性のなせる業だと解釈できるのではないか。
こう考えれば、定義や概念の曖昧さを理由にイノベーションを単なる「バズワード」(p.44)として考察の対象外とすることはできないだろう。まさにその曖昧さ、解釈の柔軟性が多様な要素を巻き込む力を生み出すとともに、あらゆる要素を方向づける力をもつことになっているのである。とりわけ、イノベーションに対して過剰ともいえるほど肯定的評価が与えられている現状に鑑みれば、こうしたイノベーションの特性を念頭においた上で、そうしたイノベーションが導く方向性が我々にとって本当に望ましいものであるかを批判的に吟味する必要があるといえる。本書は、著者がめざす「オルタナティブな歴史記述」(p.5)というねらいを超えて、そうした視座を切り開く可能性をもった作品であるといえる。”(p.389)

ブノワ・ゴダン 著
松浦俊輔 訳/隠岐さや香 解説
税込3,960円/本体3,600円
四六判・上製・216頁
ISBN978-4-8158-1046-7 C3036
在庫有り


『週刊ダイヤモンド』 [2023年3月4日号] から(評者:佐藤優氏)

ニュースピークからサイバースピークへ
ソ連における科学・政治・言語

ニュースピークからサイバースピークへ

スラーヴァ・ゲローヴィチ著『ニュースピークからサイバースピークへ』(大黒岳彦訳/金山浩司校閲・解説)が、『週刊ダイヤモンド』(2023年3月4日号、ダイヤモンド社発行)のブックレビュー欄「知を磨く読書」(佐藤優氏)で紹介されました。統制的国家において、科学はいかにふるまうのか? 空疎なイデオロギー話法を乗り越える、厳密で普遍的な科学言語として期待されたサイバネティックス。この「自由の道具」が、数学・生物学・生理学・言語学などソ連科学界を席巻した末に、社会の科学的管理をめざして体制化していく道程をヴィヴィッドに描きだします。それは彼方の世界か、あるいは我らの鏡か?

“…… 資本主義社会から遮断されていたソビエト連邦で知識人がどのように西側の学知を吸収していたかが分かる好著だ。〈一次資料に物理的にも概念的にもアクセスできないことに、ソヴィエトの批評家が頭を悩まされることはなかった。彼らは、必要な情報をすべて過去の批判的レビューから抽き出し、イデオロギー的な言説の一般的ルールを適用して議論を展開できたからである〉。評者は、ソ連時代にモスクワ国立大学哲学部で科学的無神論を勉強したが、学生は西側のキリスト教神学について正確な知識を持っていた。ソ連で刊行された無神論の論文から巧みに情報を取り出していたのだ。……”(p.86)

スラーヴァ・ゲローヴィチ 著
大黒岳彦 訳/金山浩司 校閲・解説
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・358頁
ISBN978-4-8158-1115-0 C3022
在庫有り


「毎日新聞」 [2023年2月25日付] から(評者:伊藤亜紗氏)

共和国の美術
フランス美術史編纂と保守/学芸員の時代

共和国の美術

藤原貞朗著『共和国の美術』が、「毎日新聞」(2023年2月25日付)で紹介されました。王なき世俗国家で人々は芸術に何を求めたのか。戦争に向かう危機の時代に、中世宗教美術や王朝芸術から、かつての前衛までを包摂するナショナルな歴史像が、刷新された美術館を舞台に創られていく。その過程を、担い手たる学芸員=「保守する人」とともに描き、芸術の歴史性を問い直します。

“…… 他国にはない「フランス的なもの」とは何か。それは《ジル》がまさに象徴しているところの、素朴な人間らしさである。見た目だけの喜怒哀楽を演じているのでも、過度に解剖学的な描写に偏るのでもない、無造作で穏やかな人間性を描き出した肖像画。それこそ時代をこえたフランス美術の定数であり、《ジル》と、たとえばルノワールの《桟敷席》(1874年)をつなぐ原理である。
著者は、学芸員をあらわすフランス語「コンセルヴァトゥール」の語義に「保守」が含まれることに注意を促す。彼らの中には、マネや印象派のような革新的表現を、保守の美術史へと再回収しようとする修正主義的な動機がある。政府の命令に従うのでも、個人の信条を通すのでもない、国家公務員たちが作り出していく美術の歴史。官僚的というと否定的に響くが、「フランスらしさ」が編み上がっていくさまは、トップダウンでないからこそのダイナミズムやちょっと強引な筋書きに満ちている。最高にスリリングである。”(第11面)

藤原貞朗 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・454頁
ISBN978-4-8158-1110-5 C3071
在庫有り


「読売新聞」 [2023年2月26日付] から(評者:遠藤乾氏)

国際法を編む
国際連盟の法典化事業と日本

国際法を編む

高橋力也著『国際法を編む』が、「読売新聞」(2023年2月26日付)で紹介されました。大国中心の法創造プロセスに風穴をあけ、初めて幅広い主体に国際法を開いた国際連盟の法典化事業。特に積極的な貢献をみせた日本を軸に、失敗とされたハーグ会議の意義を再評価、国益の追求にとどまらない法律家の実像を活写し、国際法の歴史を外交史的アプローチもふまえて描き直します。

“……「法」という代物はのっぺらぼうに映るかもしれない。それをだれがどんな思いで作っているのかをふだん意識することはなく、外から課される無機質な枷くらいのイメージだろうか。ましてや国際法は市井の人には縁遠い。
しかしそれは、生身のひとが各々の出身国と国際法への思いを緊張含みで抱え、時に友情を介し、時に一言をめぐり激しく対立しながら、手作業で産み落とす紛争管理のツールだ。著者のまなざしは、その「法を編む」国際法学者と外交官、「国際法マフィア」に注がれる。…… ここに外交史、国際法(史)、国際機構研究の3つが交錯する豊かな歴史が紡がれた。日本と国際社会のかかわりに関心がある人にも響く作品だ。”(第13面)

高橋力也 著
税込9,900円/本体9,000円
A5判・上製・546頁
ISBN978-4-8158-1111-2 C3032
在庫有り


『図書新聞』 [2023年3月4日号、第3581号] から(評者:石田隆太氏)

哲学者たちの天球
スコラ自然哲学の形成と展開

哲学者たちの天球

アダム・タカハシ著『哲学者たちの天球』が、『図書新聞』(2023年3月4日号、第3581号、武久出版発行)で紹介されました。宇宙の原理をめぐるハイブリッドな「知」の生成を描く ——。科学革命までの学問を一千年以上にわたり支配したアリストテレス主義。アラビア哲学を介して発展させられた、天と大地をめぐる教説とはいかなるものであり、キリスト教世界の中でどのように受け止められたのか。言語と文明圏をまたいだ自然哲学の展開を、つぶさに解明した気鋭の力作。

アダム・タカハシ 著
税込6,380円/本体5,800円
A5判・上製・318頁
ISBN978-4-8158-1100-6 C3010
在庫有り


『図書新聞』 [2023年2月18日号、第3579号] から(評者:浜口尚氏)

クジラ捕りが津波に遭ったとき
生業の人類学

クジラ捕りが津波に遭ったとき

森田勝昭著『クジラ捕りが津波に遭ったとき』が、『図書新聞』(2023年2月18日号、第3579号、武久出版発行)で紹介されました。鯨びと、鯨の町、鯨の海 ——。うち続く逆境のなか、命をかけてクジラと闘うのはなぜか。解剖部隊の伝説的リーダーや老いたる船の若き船長、部下と地域の未来を背負う社長らの語りに耳を傾け、捕鯨という「仕事」が織りなす厳しくも豊かな世界を見つめる渾身の力作。「生きてあること」とは。

森田勝昭 著
税込3,520円/本体3,200円
四六判・上製・376頁
ISBN978-4-8158-1104-4 C0039
在庫有り


『人文地理』 [第74巻第4号、2022年] から(評者:平井松午氏)

絵図の史学
「国土」・海洋認識と近世社会

絵図の史学

杉本史子著『絵図の史学』が、『人文地理』(第74巻第4号、2022年、人文地理学会発行)で紹介されました。近世期、高度に成熟した表現を獲得した国絵図、鳥瞰図などの絵図の役割を、色彩・材料などのモノや、制作者や人々の想像力から新たに捉え、近代地図への発展史観が見落とした全体像を提示、海図など海洋の視点も導入して、近代移行期の社会空間をめぐる理解を書き換える、絵図研究の決定版。

杉本史子 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・440頁
ISBN978-4-8158-1062-7 C3021
在庫有り


『CLASSY』 [2023年1月14日配信] から(紹介者:上野千鶴子氏)

男同士の絆
イギリス文学とホモソーシャルな欲望

男同士の絆

イヴ・K・セジウィック著『男同士の絆』(上原早苗・亀澤美由紀訳)が、『CLASSY』(2023年1月14日配信、光文社発行)で紹介されました。シェイクスピアからディケンズにいたるイギリス文学の代表的テクストを読み解くことによって、近代における欲望のホモソーシャル/ヘテロセクシュアルな体制と、その背後に潜む「女性嫌悪」「同性愛恐怖」を掴み出し、文学・ジェンダー研究に新生面を拓いた画期的著作。

イヴ・K・セジウィック 著
上原早苗・亀澤美由紀 訳
税込4,180円/本体3,800円
A5判・上製・394頁
ISBN978-4-8158-0400-8 C3098
在庫有り


『みすず』 [2023年1・2月合併号、読書アンケート特集] から

『みすず』(2023年1・2月合併号、みすず書房発行)の読書アンケート特集で、以下の図書が紹介されました。

【佐藤文隆氏による紹介】
岡本拓司著
『近代日本の科学論 —— 明治維新から敗戦まで』

“…… 特に興味を持ったのは戦前昭和期の学生「思想問題」への文部省の対応ぶりである。一歩遅れて技術官僚中心に植民地経営と戦争準備の「帝国科学」の科学技術振興策が俄にうちだされ、思想問題で科学偏重を排斥していた文部省路線は混乱する。それでも大幅な理工系の学生増を打ち出し、これが戦後の Japan as no.1 の時代の布石になった気がする。科学者文部大臣橋田邦彦の自殺に終わった2つの路線の絡みがあった気がする。貴重な基礎文献である。……”(p.11)

【小澤実氏による紹介】
アダム・タカハシ著
『哲学者たちの天球 —— スコラ自然哲学の形成と展開』

“…… イブン・ルシュドとアルベルトゥス・マグヌスを導き手として、難解で無味乾燥と避けられがちなスコラ思想の構造と性質にわけいった労作。多神教のギリシア世界で天球の構造を追求したアリストテレスの自然哲学を、一神教世界を代表する知識人がどのように理解しようとしたのかを、彼らの施した注釈を通じて明らかにしようとする。読み替えられながら連鎖する思想の生命を読者に提示するタカハシの手つきは、哲学専攻ならずとも魅了される。……”(p.20)

【白石直人氏による紹介】
稲葉肇著
『統計力学の形成』

“…… 等重率の原理やボルツマンの原理、各種アンサンブルの使用は、統計力学の講義では天下りに習うものだが、統計力学の黎明期にはどのように正当化され、受け入れられたのだろうか。本書はギブスを中心に、統計力学の基礎付けをめぐる紆余曲折の歴史をたどる。”(p.46)

【酒井哲哉氏による紹介】
西平等著
『グローバル・ヘルス法 —— 理念と歴史』

“…… 技術的手段により特定の感染症の根絶を目指す生物医学的保健理念と生活環境の改善によって全体的な健康状態の向上を目指す社会医学的保健理念との対立を軸に、グローバル・ヘルス法の歴史展開を検討した力作。名著『法と力』で示された著者の法と政治の臨界を読みぬく能力は、本書でも遺憾なく発揮されている。”(p.70)

【上村忠男氏による紹介】
イヴァン・ジャブロンカ著/田所光男訳
『私にはいなかった祖父母の歴史 —— ある調査』
イヴァン・ジャブロンカ著/真野倫平訳
『歴史は現代文学である —— 社会科学のためのマニフェスト』


「中日新聞」 [2023年2月10日付、夕刊 文化・芸能欄] から

詩文と経世
幕府儒臣の十八世紀

詩文と経世

『詩文と経世』の著者である山本嘉孝先生の、第15回「日本古典文学学術賞」受賞を紹介する記事が、「中日新聞」(2023年2月10日付、夕刊 文化・芸能欄)に掲載されました。【本書の概要】江戸時代の漢詩文制作はどのように政治と結びつき、古来の言葉に何が託されたのか。これまで注目されてこなかった幕府儒臣に焦点を当て、漢詩・漢文書簡・建議などの多彩な表現を読み解くとともに、武家の学問論や民間の技芸論をも視野に入れて、近世日本における「文」の行方を問い直す。

“…… 現代でも、政治家など権力者のさまざまな不祥事が絶えない。耳の痛い正論を言う側近を遠ざけ、「空気」を読む人だけをそばに置く。それは諫言が軽視された江戸期の、主君と儒者の関係を想起させる。
江戸期の儒者の多くは、無力だったが、自分や社会にとって何が大切かを意識し、為政者とは距離を保って活動した。山本さんは「儒者らの姿勢に、今の時代だからこそ学ぶべきなのではないか」。自由な発言が禁じられた封建時代とは異なる民主主義の世に、儒者の精神が生きると信じている。“(第5面)

山本嘉孝 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・440頁
ISBN978-4-8158-1043-6 C3095
在庫有り


「朝日新聞」 [2023年2月11日付] から(評者:犬塚元氏)

イギリス思想家書簡集 アダム・スミス

イギリス思想家書簡集アダムスミス

篠原久・只腰親和・野原慎司訳『イギリス思想家書簡集 アダム・スミス』(シリーズ監修者 田中秀夫・坂本達哉)が、「朝日新聞」(2023年2月11日付)で紹介されました。親密圏と公共圏のあいだで、知的コミュニケーションの場として決定的位置をしめた手紙。知られざる論点、新たなアイディアが書物とは異なるかたちで問いかけられ表明され、人々を動かしていく。『国富論』など主著には現れない見解からヒュームとの交友まで、精彩に富むスミス書簡の初の全訳。

篠原 久・只腰親和・野原慎司 訳
(シリーズ監修者 田中秀夫・坂本達哉)
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・502頁
ISBN978-4-8158-1107-5 C3010
在庫有り


『ペディラヴィウム』 [第77号、2022年12月] から(評者:川島重成氏)

ホメロスの逆襲
それは西洋の古典か

ホメロスの逆襲

小川正廣著『ホメロスの逆襲』が、『ペディラヴィウム』(第77号、2022年12月、ペディラヴィウム会発行)で紹介されました。「西/東」を超えて ——。最古・最大の「西洋古典」とされるホメロス。だが、創造と受容のいずれも西洋の枠組みには収まっていなかった。実際に西方に伝わったものとその行方を明確にする一方、オリエントの神話・宗教からビザンツの年代記やオスマンの歴史書まで探査し、巨大な実像を初めて捉えた画期的労作。

“…… 本書のタイトル『ホメロスの逆襲』は、近年におけるホメロスの顕著な再評価の動向と著者自身の挑戦的なホメロス研究を含意している。そのことと関わって、ホメロスが西洋古典(ギリシア語・ラテン語文化圏)における源泉として誰もが認める言語的所産であるにもかかわらず、キリスト教西洋においては、ウェルギリウスの叙事詩『アエネイス』の陰に隠れて実質的には名前だけの存在となり、その傾向は近年にまで及んだのは、何故なのか —— その点を実に大掛かりに描いて見せる第Ⅳ部(第10章~14章)は、本書の白眉と称してよいであろう。そのことを論じるのに、小川氏はウェルギリウスはもちろんのこと、平家物語、ダンテ、ビザンツ中世における年代記から、さらにはスラヴ世界とオスマン帝国におけるホメロス溶暗の実態にまで視野を広げていく。加えて現代におけるホメロス再発見の証言者としてシモーヌ・ヴェーユの名をあげる —— この小川氏の該博な知識と柔軟な学際的姿勢にまず心からの敬意を表したい。……“(pp.28-29)

小川正廣 著
税込9,900円/本体9,000円
A5判・上製・634頁
ISBN978-4-8158-1050-4 C3098
在庫有り


「北海道新聞」 [2023年2月5日付] から(評者:根井雅弘氏)

社会をつくった経済学者たち
スウェーデン・モデルの構想から展開へ

社会をつくった経済学者たち

藤田菜々子著『社会をつくった経済学者たち』が、「北海道新聞」(2023年2月5日付)で紹介されました。不況・戦争など直面する危機を乗り越え、福祉先進国の礎を築いた経済学者たち。ケンブリッジ学派と双璧をなしたスウェーデン経済学の全体像を、彼らの政治・世論との深いかかわりとともに初めて解明、福祉国家への合意を導いた決定的役割と、現代におけるその変容までを鮮やかに描き出します。

藤田菜々子 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・438頁
ISBN978-4-8158-1097-9 C3033
在庫有り


『週刊読書人』 [2023年2月3日号、第3475号] から(評者:小村優太氏)

哲学者たちの天球
スコラ自然哲学の形成と展開

哲学者たちの天球

アダム・タカハシ著『哲学者たちの天球』が、『週刊読書人』(2023年2月3日号、第3475号、読書人発行)で紹介されました。宇宙の原理をめぐるハイブリッドな「知」の生成を描く——。科学革命までの学問を一千年以上にわたり支配したアリストテレス主義。アラビア哲学を介して発展させられた、天と大地をめぐる教説とはいかなるものであり、キリスト教世界の中でどのように受け止められたのか。言語と文明圏をまたいだ自然哲学の展開を、つぶさに解明した気鋭の力作

“…… 著者のタカハシ氏がアフロディシアスのアレクサンドロス、イブン・ルシュド(アヴェロエス)、アルベルトゥス・マグヌスという3名の哲学者の思想を取り扱う手触りはきわめて丁寧であり、予備知識のない読者も一歩一歩読み進めることで、著者の描き出す哲学史を享受することができるだろう。
本書の大きな特徴として、以下の二点を挙げることができるだろう。第一に、アレクサンドロス、イブン・ルシュド、アルベルトゥスという、これまでの中世哲学史では十分に注目を浴びることのなかった人物に焦点を当てているという点。…… とりわけ本書は、これまで「ラテン・アヴェロエス主義」などの観点から批判の対象としてのみ取り扱われることが多かったイブン・ルシュドの原典に立ち返り、曇りのない視点でその思想を解説しているという点が特筆すべきであろう。第二に、本書が中心テーマとして取り上げているのが自然学であるという点である。…… 欧米では自然学研究が盛り上がりを見せており、アラビア哲学においても自然学にかんする研究書が近年多く出版されている。…… 自然学は中世哲学研究において、「熱い」ジャンルなのである。つまり本書は、中世哲学史においてこれまで光が当てられてこなかった(しかしきわめて重要な)観点から、自然学という現在活発に研究活動が行われている分野にかんする、世界レベルの研究を日本の読者に届けるという難事業を成し遂げているのである。
さらに付言すると、このようなきわめて専門的で、ややもすると煩瑣な作業になりがちな論証を、著者は丁寧で分かりやすい文章で綴っており、この手の学術書として格段の読みやすさを誇っている点も見逃せない。……”(第4面)

アダム・タカハシ 著
税込6,380円/本体5,800円
A5判・上製・318頁
ISBN978-4-8158-1100-6 C3010
在庫有り


『週刊エコノミスト』 [2023年2月7日号] から(評者:服部茂幸氏)

社会をつくった経済学者たち
スウェーデン・モデルの構想から展開へ

社会をつくった経済学者たち

藤田菜々子著『社会をつくった経済学者たち』が、『週刊エコノミスト』(2023年2月7日号、毎日新聞出版発行)で紹介されました。不況・戦争など直面する危機を乗り越え、福祉先進国の礎を築いた経済学者たち。ケンブリッジ学派と双璧をなしたスウェーデン経済学の全体像を、彼らの政治・世論との深いかかわりとともに初めて解明、福祉国家への合意を導いた決定的役割と、現代におけるその変容までを鮮やかに描き出します。

藤田菜々子 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・438頁
ISBN978-4-8158-1097-9 C3033
在庫有り


「上毛新聞」 [2023年1月22日付] 他から(評者:新美貴資氏)

クジラ捕りが津波に遭ったとき
生業の人類学

クジラ捕りが津波に遭ったとき

森田勝昭著『クジラ捕りが津波に遭ったとき』が、「上毛新聞」(2023年1月22日付)はじめ計14地方紙で紹介されました。鯨びと、鯨の町、鯨の海 ——。うち続く逆境のなか、命をかけてクジラと闘うのはなぜか。解剖部隊の伝説的リーダーや老いたる船の若き船長、部下と地域の未来を背負う社長らの語りに耳を傾け、捕鯨という「仕事」が織りなす厳しくも豊かな世界を見つめる渾身の力作。「生きてあること」とは。[上毛新聞・新潟日報・山陽新聞・徳島新聞・愛媛新聞・熊本日日新聞:2023年1月22日付、信濃毎日新聞・京都新聞・宮崎日日新聞:2023年1月21日付、琉球新報:2023年1月15日付、福島民友・北日本新聞・山陰中央新報・沖縄タイムス:2023年1月14日付]

“…… 半世紀以上に及ぶ捕鯨を巡る国際的議論や国策に翻弄されながらも、鮎川のクジラ捕りたちは、鯨肉を供給する生業に誇りを持ちいそしんできた。小型捕鯨の復興は、彼らにとって日常をかたちづくる「生活世界」の再興であり、それは経済的な活動の復活だけでなく、生きることを取り戻そうとする人間の本能であると、筆者は理解した。
人間とは、生きる意味を生み出すため仕事に取り組む存在である ——。この答えを著者は、クジラ捕りの語りから導き出している。人間存在の確かな証しといえる生きる喜びは、自然や他者を相手にする仕事でしか経験できない。人間はみなさまざまな「人生という仕事」を生きている。”(「上毛新聞」第14面)

森田勝昭 著
税込3,520円/本体3,200円
四六判・上製・376頁
ISBN978-4-8158-1104-4 C0039
在庫有り


東京財団政策研究所ウェブサイト [自著紹介、2023年1月26日公開] から

グローバル・ヘルス法
理念と歴史

グローバル・ヘルス法

西平等著『グローバル・ヘルス法』の自著紹介が、東京財団政策研究所ウェブサイトに掲載されました(2023年1月26日公開)。国際的な保健協力が目指す「健康」とは何か。その実現のために、どのような法や制度が創出されてきたのか。従来の国際法学を超えて、「社会医学」と「生物医学」の対抗関係を軸に、現在の世界保健機関(WHO)にいたるグローバルな「健康」体制のあり方を問い直す。パンデミックの時代に必読の書。

西 平等 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・350頁
ISBN978-4-8158-1056-6 C3032
在庫有り


「読売新聞」 [2023年1月22日付] から(評者:苅部直氏)

変革する文体
もう一つの明治文学史

変革する文体

木村洋著『変革する文体』が、「読売新聞」(2023年1月22日付)読書欄で紹介されました。新たな文体は新たな社会をつくる ——。小説中心主義を脱し、政論・史論から翻訳・哲学まで、徳富蘇峰を起点にして近代の「文」の歩みを辿りなおし、新興の洋文脈と在来の和文脈・漢文脈の交錯から、それまでにない人間・社会像や討議空間が形づくられる道程をつぶさに描いた意欲作。

“…… 木村洋の新著は、テクストの本文だけでなく、目次や広告の画像など多くの資料を活用しながら、思想史の大胆な書き換えにに挑戦する。蘇峰が若くして言論界に衝撃を与えたのは、文学・哲学・宗教といった「精神的道徳の文明」の確立を唱え、哲学的な随筆を量産し、雑誌『国民之友』を文学者の活躍の場にも提供したからであった。
従来の文学史の叙述では、政治や社会から独立して人間の内面を語ることが「近代文学」の成立と語られてきた。だが、北村透谷や国木田独歩による「内面」の語りや、「社会の罪」を暴きだす写実主義・自然主義の志向は、そもそも蘇峰の影響圏から分かれ出たものだったのである。それは同時に、「人生」をめぐる問題を「社会」の内で討議する空間を作ろうとする試みでもあった。木村は泉鏡花や平塚らいてうも含め、文学者たちの営みをそう読み直している。……”(第10面)

木村 洋 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・358頁
ISBN978-4-8158-1108-2 C3095
在庫有り


「河北新報」 [2023年1月22日付、「東北の本棚」] から

クジラ捕りが津波に遭ったとき
生業の人類学

クジラ捕りが津波に遭ったとき

森田勝昭著『クジラ捕りが津波に遭ったとき』が、「河北新報」(2023年1月22日付)の「東北の本棚」で紹介されました。鯨びと、鯨の町、鯨の海 ——。うち続く逆境のなか、命をかけてクジラと闘うのはなぜか。解剖部隊の伝説的リーダーや老いたる船の若き船長、部下と地域の未来を背負う社長らの語りに耳を傾け、捕鯨という「仕事」が織りなす厳しくも豊かな世界を見つめる渾身の力作。「生きてあること」とは。

“…… 著者は2012年から約5年間、石巻に足を運び、同社[鮎川捕鯨]の遠藤恵一社長(当時)ら約30人がインタビューに応じた。クジラとの関わりや震災後の生き方、悩みなど腹蔵なく語られる言葉に、著者が鮎川地区の歴史や学術的な分析と意味付けを加えるユニークな構成だ。著者と取材対象者の間に強い信頼関係が感じられ、文章に説得力がある。
甚大な被害に遭いながら、不屈の闘志で会社の再生に挑む社長と社員。社屋を再建、不安を抱えつつ前を向き始めたさなか、粉骨砕身してきた遠藤社長が15年に急逝する。「ここにはこれしかありませんから」と、経営を切り盛りした心中は察するに余りある。
後を継いだ伊藤信之新社長は「鯨食文化を継承し、従業員の幸福と地域の発展を追求する」などの企業理念を制定。社の可能性を広げるため、食品加工と販売の強化に乗り出す。「血の小便しながらやんなきゃなんない」。社業の復興への覚悟が伝わってくる。”

森田勝昭 著
税込3,520円/本体3,200円
四六判・上製・376頁
ISBN978-4-8158-1104-4 C0039
在庫有り


「UTokyo BiblioPlaza」 [2023年1月19日公開、自著紹介] から

愛国とボイコット
近代中国の地域的文脈と対日関係

愛国とボイコット

吉澤誠一郎著『愛国とボイコット』の自著紹介が、「UTokyo BiblioPlaza」(2023年1月19日公開、東京大学)に掲載されました。中国ナショナリズムの実像 ——。時に暴力をともなう激しい対日ボイコットはなぜ繰り返されたのか。たんなる外交懸案の解決でも自国工業の振興でもない、それぞれの運動が生じた異なる地域事情と利害・思想を詳らかにするとともに、それらが愛国主義へとつながっていくメカニズムを捉えた力作。

吉澤誠一郎 著
税込4,950円/本体4,500円
A5判・上製・314頁
ISBN978-4-8158-1048-1 C3022
在庫有り


『季刊経済理論』 [第59巻第4号、2023年1月] から(評者:瀬尾崇氏)

経済学のどこが問題なのか

経済学のどこが問題なのか

ロバート・スキデルスキー著/鍋島直樹訳『経済学のどこが問題なのか』が、『季刊経済理論』(第59巻第4号、2023年1月、経済理論学会発行)で紹介されました。モヤモヤしている人のために ——。「科学」の地位を得るために、経済学は様々な数学やモデルを使ってきた。しかし、それらは本当に有効なのか。現実から離れた想定によって視野を狭めているのではないか。スタンダードな経済学の考え方を再検討し、今後に向けての処方箋を提示する話題作、待望の邦訳。

ロバート・スキデルスキー 著
鍋島直樹 訳
税込3,960円/本体3,600円
A5判・上製・288頁
ISBN978-4-8158-1088-7 C3033
在庫有り


『経営史学』 [第57巻第3号、2022年12月] から(評者:矢後和彦氏)

言論と経営
戦後フランス社会における「知識人の雑誌」

言論と経営

中村督著『言論と経営』が、『経営史学』(第57巻第3号、2022年12月、経営史学会発行)で紹介されました。メディア企業の生き方とは ——。言論によって民主主義に奉仕すると同時に、私企業として資本主義のなかで動くジャーナリズム。戦後フランスに生まれ、サルトルはじめ知識人を結集する一方、市場で稀有な成功を収めたニューズマガジンの歴史を、変容する社会とともに捉え、その思想と身体を見つめた俊英の力作。

“…… 本書からは、いくつもの「筋」が読み取れる。N.O.[「ル・ヌーヴェル・オプセルヴァトゥール」Le Nouvel Observateur]への幅広い寄稿者からは戦後フランス社会における知識人の系譜が浮き彫りになり、N.O.が関与した政治過程からはマンデス・フランスからミッテランに至るフランス社会主義・社会民主主義の興亡が明らかになる。68年の「5月危機」を含めてN.O.が向き合ったフランス社会の変動は、「知識人」「政治参加」が日常化・メディア化されていく過程を体現しており、2020年に逝去した編集長ダニエルの軌跡はそのまま戦後フランスの言論史に重なる。本書は、これら複数の「筋」を通じて戦後フランスの「全体」を描くことに成功している。本書ではまた、損益計算書、職員の給与表、広告収入や経費など、経営の計数や企業としてのN.O.の諸相も周到に触れられている。……”(p.24)

中村 督 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・442頁
ISBN978-4-8158-1022-1 C3036
在庫有り


『経営史学』 [第57巻第3号、2022年12月] から(評者:岩間剛城氏)

戦前日本のユニバーサルバンク
財閥系銀行と金融市場

戦前日本のユニバーサルバンク

粕谷誠著『戦前日本のユニバーサルバンク』が、『経営史学』(第57巻第3号、2022年12月、経営史学会発行)で紹介されました。証券市場が高度に発達した戦前日本において、三井、三菱、住友など財閥系銀行はいかにしてその隔絶した地位を築きえたのか。見過ごされてきた証券・国際業務を軸に、近世来の両替商がユニバーサルバンクへと発展する姿を鮮やかに示し、巨大銀行と金融市場の関係に新たな光を投げかけます。

“…… 本書は、近年における近代日本金融史・銀行史研究の動向を反映しつつ、新たな展開を示している。本書は、銀行について明治前期から考察するのではなく、前史となる江戸期の金融の意義に注目している。また本書では、証券業務や国際業務も含めて戦前期の財閥系銀行が金融市場に関与したあり方を実証的に明らかにしつつ、長期的で詳細な検討が行われている。多角化を実現するための人的資源管理についても、興味深い知見が提示されている。
21世紀の日本の銀行業においては、金融ビッグバンの進展にともないメガバンクが出現し、銀行業務と証券業務の垣根は低くなってきている。このような現状を踏まえつつ、戦後における都市銀行や地方銀行の業態を所与の前提とはしない視点から、財閥系銀行をはじめとする戦前日本の諸金融機関についての歴史的再考が求められていることを、本書を通じて改めて実感させられた。……”(pp.48-49)

粕谷 誠 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・390頁
ISBN978-4-8158-1004-7 C3033
在庫有り


『経営史学』 [第57巻第3号、2022年12月] から(評者:中西聡氏)

海のロシア史
ユーラシア帝国の海運と世界経済

海のロシア史

左近幸村著『海のロシア史』が、『経営史学』(第57巻第3号、2022年12月、経営史学会発行)で紹介されました。第一次グローバリゼーションのもと、東アジアの海とヨーロッパの海を結んだ長距離航路と、義勇艦隊が果たした役割とは。政治と経済が混然一体となった海洋戦略により、極東を含む帝国の辺境を統合、国際的経済闘争への参入を試みる姿を捉え、ロシア史をグローバルヒストリーに位置づけます。

“…… 本書は、ロシア帝国が東アジアの海とヨーロッパの海を結んだ海洋帝国でもあったことを示して、グローバル・ヒストリー研究に重要な一石を投じた。…… 本書の魅力は、義勇艦隊・ロシア東亜汽船会社・北方汽船会社・ロシア商業汽船社などの競争構造にロシア政府やロシア経済がどのように関わったかを論じた躍動感あふれる記述にある。世界海運は、主にイギリス汽船会社やアメリカ汽船会社を中心に論じられてきたが、ロシア航路をめぐって多くの汽船会社が競争を繰り広げたことを、本書から大いに学んだ。……”(p.52, 54)

左近幸村 著
税込6,380円/本体5,800円
A5判・上製・354頁
ISBN978-4-8158-1008-5 C3022
在庫有り


『経営史学』 [第57巻第3号、2022年12月] から(評者:小堀聡氏)

災後日本の電力業
歴史的転換点をこえて

災後日本の電力業

橘川武郎著『災後日本の電力業』が、『経営史学』(第57巻第3号、2022年12月、経営史学会発行)で紹介されました。東日本大震災と原発事故は、日本電力業のすがたを根底から変えてしまった。福島への補償から電源エネルギー構成の再編、10電力体制の終焉まで、政策と経営戦略の包括的検討により原発事故前後25年の実態を解明、真の課題のありかを特定し、電力業の歴史的再生へむけた道筋を示します。

“…… 本書の最大の意義は、橘川(2004)[『日本電力業発展のダイナミズム』]の続編が物されたことそれ自体にあろう。これら2冊を通じて、1883~2021年という実に約140年に及ぶ日本電力業史が、「自律性」という一貫した分析視角によって提示されたのである。この長期的歴史叙述と、それを踏まえて提言を行う姿勢は、電力・エネルギー史以外の研究者にも多くの示唆を与えるものであり、経営史学の社会的貢献のあり方の一つとしても高く評価されよう。
この際、橘川(2004)[『日本電力業発展のダイナミズム』]が各地域の共通性と差異の双方を追究したのと同様に、本書でも10電力体制の動向が各社の共通性と差異の双方から追跡されているのも、大きな特長である。すなわち本書は、10電力各社が自由化圧力や需要の飽和にそろって直面する状況を描くと同時に、加圧水型原発(特に九州・四国両社)の沸騰水型原発に対する優位性、北海道全域のブラックアウト、JERAのゼロ・エミッション火力方針表明など、日本電力業で生じた多様な事実を随所で指摘している。特に送電事業への注目は、本書が踏み込んだ分析を行っていない再生可能エネルギーや新電力の今後を占うことにも資するだろう。……”(p.60)

橘川武郎 著
税込4,950円/本体4,500円
A5判・上製・244頁
ISBN978-4-8158-1015-3 C3033
在庫有り


『都市問題』 [2023年1月号、第114巻第1号] から

失業を埋めもどす
ドイツ社会都市・社会国家の模索

失業を埋めもどす

森宜人著『失業を埋めもどす』が、『都市問題』(2023年1月号、第114巻第1号、後藤・安田記念東京都市研究所発行)で紹介されました。失業はいかにして発見され、社会政策の中心課題になったのか。繰り返し大量失業に悩まされたドイツにおいて、都市が国家に先駆けてセーフティネット構築をはかる姿を初めて解明、慈善団体や国家との対抗/連携の過程も鮮やかに捉えて、労働をめぐるモダニティの大転換を、現代も視野に描き出します。

“…… 第二次大戦後、西ドイツは高度経済長を遂げる。冷戦構造のなかでこの「経済の奇跡」を支えたのは、競争とともに社会保障を不可欠とする社会的市場経済の理念である。石油危機で再び大量失業問題を抱え新たな大転換の時代を迎えるが、就労による自立支援は一環して基本原則となっている。ドイツ諸都市が社会問題解決に変革をもたらす空間であり続けた経験は、日本の都市にも大きな示唆を与えている。”(p.110)

森 宜人 著
税込7,480円/本体6,800円
A5判・上製・396頁
ISBN978-4-8158-1103-7 C3022
在庫有り


「日本経済新聞」 [2023年1月7日付] から(評者:澤宮優氏)

クジラ捕りが津波に遭ったとき
生業の人類学

クジラ捕りが津波に遭ったとき

森田勝昭著『クジラ捕りが津波に遭ったとき』が、「日本経済新聞」(2023年1月7日付)で紹介されました。鯨びと、鯨の町、鯨の海 ——。うち続く逆境のなか、命をかけてクジラと闘うのはなぜか。解剖部隊の伝説的リーダーや老いたる船の若き船長、部下と地域の未来を背負う社長らの語りに耳を傾け、捕鯨という「仕事」が織りなす厳しくも豊かな世界を見つめる渾身の力作。「生きてあること」とは。

“2011年の東日本大震災の津波で、捕鯨を地場産業とする宮城県石巻市鮎川浜が壊滅的な被害を受けた。クジラという拠り所を奪われた地域はどう立ち上がるのか、著者は震災の翌年から現地で5年取材を行った。その成果が本書に余すことなく描かれた。…… 著者は、鮎川浜の人々の強さを実感し、〈みなさんは津波よりはるかに大きい〉と記す。人が支え合うことで、苦境をも乗り越え、津波前よりも大きく復興した町になれるという実例が示される。
戦後の国際的な反捕鯨の嵐の中で、生き抜いた鮎川浜を知ることは、コロナ禍の苦境にいかに地域や組織が力を取り戻してゆくのか、大きな希望となるに違いない。”(第30面)

森田勝昭 著
税込3,520円/本体3,200円
四六判・上製・376頁
ISBN978-4-8158-1104-4 C0039
在庫有り


『日本歴史』 [2023年1月号、第896号] から(評者:橋口勝利氏)

日本綿業史
徳川期から日中開戦まで

日本綿業史

阿部武司著『日本綿業史』が、『日本歴史』(2023年1月号、第896号、日本歴史学会編/吉川弘文館発行)で紹介されました。明治の産業革命をリードし瞬く間に世界市場を制覇した日本綿紡績・織物業の競争力の源泉とは。近代的大紡績企業と、近世から続く農村織物産地や流通を担う問屋・商社などの連携による成長過程を初めて解明、衰退に向かう戦後も視野に、巨大産業の興隆を圧倒的な密度とスケールで描く決定版。

“本書は、約40年間にわたる著者の日本綿業に関する諸研究を体系的にまとめただけでなく、最新の国内外の研究にも細かく目を配り、今後の研究展望へと結びつけた大著である。注記にも興味深い見解がいくつも展開され、付録の資料紹介も貴重で最後まで気を抜けない。いうまでもなく、日本綿業史だけでなく、経済史研究を目指すものには必読の書である。……”(pp.139-140)

阿部武司 著
税込7,920円/本体7,200円
A5判・上製・692頁
ISBN978-4-8158-1059-7 C3033
在庫有り


『中国研究月報』 [2022年12月号、第76巻第12号] から(評者:真水康樹氏)

現代中国 内政と外交

現代中国内政と外交

毛里和子著『現代中国 内政と外交』が、『中国研究月報』(2022年12月号、第76巻第12号、中国研究所発行)で紹介されました。世界政治の焦点 ——。強勢外交と権威主義政治は切り離せない。グローバル大国化した中国の内政と外交を同時にとらえ、国家資本主義から「周縁」問題まで、両者のネクサスに照準を合わせつつ、革命後の70年をふまえて現在の姿を浮き彫りにした、第一人者によるエッセンシャルな一冊。

“…… 序章では日本における中国研究の見取り図が示されており、評者も含めて多くの中国研究者が、もう一度、自分の立ち位置と課題を確認する上で、参考になる「案内図」となっている。分析上の着眼点として「三つの挑戦」は示唆的であり、中国知識人を縛る「二つの呪縛」と「三つの神話」という指摘には説得力がある。
終章では「中華人民共和国」の行く末を見つめる上で、貴重な分析ツールや理念型が提示されている。中国で常用される「協商民主」の本質を、「討議デモクラシー」ではなく、洗練された権威主義にすぎない「協議型権威主義」であると見極める視点は的確である。……”(p.41)

毛里和子 著
税込3,960円/本体3,600円
A5判・上製・240頁
ISBN978-4-8158-1035-1 C3031
在庫有り


100分de名著 2023新春スペシャル「100分 de フェミニズム」 [2023年1月2日放送、Eテレ] から(紹介者:上野千鶴子氏)

男同士の絆
イギリス文学とホモソーシャルな欲望

男同士の絆

イヴ・K・セジウィック著『男同士の絆』(上原早苗・亀澤美由紀訳)が、「100分de名著 2023新春スペシャル『100分 de フェミニズム』」(2023年1月2日放送、Eテレ、紹介者:上野千鶴子氏)で紹介されました。シェイクスピアからディケンズにいたるイギリス文学の代表的テクストを読み解くことによって、近代における欲望のホモソーシャル/ヘテロセクシュアルな体制と、その背後に潜む「女性嫌悪」「同性愛恐怖」を掴み出し、文学・ジェンダー研究に新生面を拓いた画期的著作。

イヴ・K・セジウィック 著
上原早苗・亀澤美由紀 訳
税込4,180円/本体3,800円
A5判・上製・394頁
ISBN978-4-8158-0400-8 C3098
在庫有り


『史学雑誌』 [第131編第11号、2022年11月] から(評者:大久保翔平氏)

世界史のなかの東南アジア(上下巻)
歴史を変える交差路

世界史のなかの東南アジア

アンソニー・リード著『世界史のなかの東南アジア』(太田淳・長田紀之監訳、上下巻)が、『史学雑誌』(第131編第11号、2022年11月、史学会発行)で紹介されました。世界史を動かし続けた東南アジアを、先史から現代に至る全体史として描くとともに、豊かな多様性を生み出す人びとの姿に迫る決定版。

“…… 読者は徐々に東南アジアを多元的で多様ながら共通性をもった世界として認識することだろう。加えて、著者が論じる、地域間の結節点としての東南アジアが、近世のグローバルな商業の興隆や近代性の誕生に貢献し、世界史上で「決定的に重要な交差路(Critical Crossroads)」であったという点も首肯しやすくなっている。現代世界は、東南アジアのユニークな歴史に学べることが多いと思わせてくれる。……”(pp.110-111)

アンソニー・リード 著
太田 淳・長田紀之 監訳
税込各3,960円/本体各3,600円
A5判・上製・上398頁+下386頁
ISBN 上:978-4-8158-1051-1 下:978-4-8158-1052-8
C3022
在庫有り


『日本労働社会学会年報』 [第33号、2022年12月] から(評者:王昊凡氏)

建設労働と移民
日米における産業再編成と技能

建設労働と移民

惠羅さとみ著『建設労働と移民』が、『日本労働社会学会年報』(第33号、2022年12月、日本労働社会学会発行)で紹介されました。オリンピックや相次ぐ再開発を控え、高齢化と人手不足が著しい建設現場にいち早く導入されてきたベトナム人などの外国人技能実習生たち。安価な移民労働力の利用とする画一的理解をこえて、日米の比較から産業再編成と技能継承をめぐる課題に迫り、建設労働移民のグローバルな文脈を示します。

惠羅さとみ 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・370頁
ISBN978-4-8158-1020-7 C3036
在庫有り


『歴史評論』 [2022年12月号、第872号] から(評者:老川慶喜氏)

東アジアのなかの満鉄
鉄道帝国のフロンティア

東アジアのなかの満鉄

林采成著『東アジアのなかの満鉄』が、『歴史評論』(2022年12月、第872号、歴史科学協議会発行)で紹介されました。帝国拡大の原動力となり、世界でも最高水準を誇った満鉄の鉄道技術はいかにして伝播していったのか。見過ごされてきた本業・鉄道業の姿をはじめて解明、その経済的・技術的インパクトを数量的に位置づけるとともに、東アジア鉄道システムの形成から、戦後再編の新たな全体像を描き出します。

林 采成 著
税込8,580円/本体7,800円
A5判・上製・638頁
ISBN978-4-8158-1013-9 C3022
在庫有り


「岐阜新聞」 [2022年12月25日付、読書欄特集「今年の収穫 」] 他から(評者:稲垣諭氏)

哲学者たちの天球
スコラ自然哲学の形成と展開

哲学者たちの天球

アダム・タカハシ著『哲学者たちの天球』が、「岐阜新聞」(2022年12月25日付、読書欄特集「今年の収穫」)はじめ計4地方紙で紹介されました。宇宙の原理をめぐるハイブリッドな「知」の生成を描く——。科学革命までの学問を一千年以上にわたり支配したアリストテレス主義。アラビア哲学を介して発展させられた、天と大地をめぐる教説とはいかなるものであり、キリスト教世界の中でどのように受け止められたのか。言語と文明圏をまたいだ自然哲学の展開を、つぶさに解明した気鋭の力作。[岐阜新聞:2022年12月25日付、北日本新聞・宮崎日日新聞:2022年12月24日付、下野新聞:2022年12月11日付]

“…… 西側諸国の価値観と言われるが、その西側とは何なのか。古代ギリシャに遡る西洋哲学の伝統は単線的につながってはいない。12世紀以降、アラビアの研究者による翻訳運動と知的交流がこれを支えた。…… 西洋がそもそも混交的であることを自然哲学の受容として明らかにする。……”(「下野新聞」2022年12月11日付、第17面)

アダム・タカハシ 著
税込6,380円/本体5,800円
A5判・上製・318頁
ISBN978-4-8158-1100-6 C3010
在庫有り


「読売新聞」 [2022年12月25日付、読書欄特集「読書委員が選ぶ「2022年の3冊」」] から(評者:牧野邦昭氏)

社会をつくった経済学者たち
スウェーデン・モデルの構想から展開へ

社会をつくった経済学者たち

藤田菜々子著『社会をつくった経済学者たち』が、「読売新聞」(2022年12月25日付)の読書欄特集「読書委員が選ぶ「2022年の3冊」」で紹介されました。不況・戦争など直面する危機を乗り越え、福祉先進国の礎を築いた経済学者たち。ケンブリッジ学派と双璧をなしたスウェーデン経済学の全体像を、彼らの政治・世論との深いかかわりとともに初めて解明、福祉国家への合意を導いた決定的役割と、現代におけるその変容までを鮮やかに描き出します。

“…… 知られざる経済学大国・スウェーデンの経済学者たちの福祉国家形成への貢献を描く。経済学(者)の持つ力を実感できる一冊。”(第21面)

藤田菜々子 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・438頁
ISBN978-4-8158-1097-9 C3033
在庫有り


『週刊読書人』 [2022年12月23日付、2022年回顧総特集] から(評者:檜垣立哉氏)

哲学者たちの天球
スコラ自然哲学の形成と展開

哲学者たちの天球

アダム・タカハシ著『哲学者たちの天球』が、『週刊読書人』(2022年12月23日号、読書人発行)の特集「2022年回顧総特集」で紹介されました。宇宙の原理をめぐるハイブリッドな「知」の生成を描く ——。科学革命までの学問を一千年以上にわたり支配したアリストテレス主義。アラビア哲学を介して発展させられた、天と大地をめぐる教説とはいかなるものであり、キリスト教世界の中でどのように受け止められたのか。言語と文明圏をまたいだ自然哲学の展開を、つぶさに解明した気鋭の力作。

“…… アリストテレスから引き続く自然哲学の系譜を、むしろアラビア・スコラ哲学に重点をおくかたちで中世哲学史を個性的に描ききるというあまりにスケールの大きな著作。相当の労作とおもわれるが、この手の出版が現今の出版事情を考えるにかなりの厳しさがあることはわかり、それが可能であることにある種まだ日本も捨てたものではないとの感をいだかせる。……”(第8面)

アダム・タカハシ 著
税込6,380円/本体5,800円
A5判・上製・318頁
ISBN978-4-8158-1100-6 C3010
在庫有り


『アジア経済』 [第63巻第4号、2022年12月] から(評者:北波道子氏)

緑の工業化
台湾経済の歴史的起源

緑の工業化

堀内義隆著『緑の工業化』が、『アジア経済』(第63巻第4号、2022年12月、ジェトロ・アジア経済研究所発行)で紹介されました。植民地下の台湾は、たんに帝国の食糧供給基地にとどまったのではなかった。見過ごされてきた工業化の契機を、豊かな農産品の加工・商品化と、それに伴う機械化・電動化に見出し、小零細企業が叢生する農村からの発展経路を実証、戦後台湾経済の原型をとらえた注目の成果。

“…… 本書の特徴は、中小零細工業の勃興と発展に注目し、農村からの経済発展経路を実証することに焦点が絞られている点である。これまで、台湾の植民地工業化を論ずるときに主要な位置におかれた製糖業や、1930年代以降の軍需工業化のアプローチではなく、小・零細事業者の経済活動にスポットライトを当てて、その動態から植民地台湾の根底で進行していた工業化過程の実態解明を試みたという点で、挑戦的な意欲作である。具体的な「工業化社会」への変容を描写するために、『工場名簿』や『商工統計』などのデータを丁寧に吟味し、「社会的分業」の深化を工場数や職工数などの変化から説明するという方法がとられている。中小零細工業の数は膨大であり、業種や形態も多種多様にわたる。とくに第Ⅰ部では、当時の台湾の零細工業の動向をマクロ的に把握するのみならず、家内工業の発展までをこれに包摂する。加えて当時の総督府の調査資料などを丁寧に読み込み、零細工業の全体像を可能なかぎり詳細に肉づけし、描写するという大きな課題に取り組んでいる……”(p.81)

堀内義隆 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・286頁
ISBN978-4-8158-1032-0 C3033
在庫有り


『アジア経済』 [第63巻第4号、2022年12月] から(評者:末廣昭氏)

世界史のなかの東南アジア(上下巻)
歴史を変える交差路

世界史のなかの東南アジア

アンソニー・リード著『世界史のなかの東南アジア』(太田淳・長田紀之監訳、上下巻)が、『アジア経済』(第63巻第4号、2022年12月、ジェトロ・アジア経済研究所発行)で紹介されました。世界史を動かし続けた東南アジアを、先史から現代に至る全体史として描くとともに、豊かな多様性を生み出す人びとの姿に迫る決定版。

“この本は素晴らしい作品である。まず原著がよい。これまでの「東南アジア通史」のどれよりも独創性に富んでおり、歴史を描くことはすぐれて構想力の産物であることを彷彿とさせてくれる。次に翻訳が秀逸である。2名の監訳者、3名の訳者だけでなく、東南アジア史研究に携わってきた大勢の日本人の研究成果が惜しみなく投入されている。……”(p.102)

アンソニー・リード 著
太田 淳・長田紀之 監訳
税込各3,960円/本体各3,600円
A5判・上製・上398頁+下386頁
ISBN 上:978-4-8158-1051-1 下:978-4-8158-1052-8
C3022
在庫有り


『日医ニュース』 [2022年12月20日号] から

ツベルクリン騒動
明治日本の医と情報

ツベルクリン騒動

月澤美代子著『ツベルクリン騒動』が、『日医ニュース』(2022年12月20日号、日本医師会発行)で紹介されました。欧米では「フィーバーからスキャンダルへ」と化した、コッホによる「結核新治療薬」。日本社会はそれをどのように受け止めたのか。多様な医療雑誌による「情報」の伝達・普及・切り分けを軸に、近代日本の医学・医療の風土が形成される転換期の実相を描き、今日への示唆に富む労作。

月澤美代子 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・504頁
ISBN978-4-8158-1101-3 C3021
在庫有り


『図書新聞』 [2022年12月24日号、第3572号、特集「22年下半期読書アンケート」] から

『図書新聞』(2022年12月24日号、第3572号、武久出版発行)の特集「22年下半期読書アンケート」で、以下の図書が紹介されました。

【坂野徹氏、中金聡氏、山本貴光氏による紹介】
アダム・タカハシ著
『哲学者たちの天球 —— スコラ自然哲学の形成と展開』

“…… 中世ヨーロッパにおけるアリストテレス主義の再発見は12世紀ルネサンスと呼ばれる。本書はイブン・ルシュド(アヴェロエス)とアルベルトス・マグヌスを中心に、アラビア語、ギリシア語からラテン語への翻訳運動をきっかけに、中世自然哲学が形成される過程を描き出す。”(坂野徹氏、第6面)

“…… アヴェロエスの知性単一説はアリストテレス『霊魂論』の曲解などではなく、その要約であったという指摘に虚を衝かれる。アクィナスのアヴェロエス主義批判はもちろん、ルネサンス期の自然主義的アリストテレス主義の解釈にも根本的な見直しを迫る力作だ。……”(中金聡氏、第7面)

“…… アリストテレスの哲学は、アラビアを媒として西洋諸学の基礎となった。という大きな流れに対して、その実態はとなると覚束ない。本書は、具体的なテクストの読解を通じて、幾筋もの糸が複雑に絡み合う知の迷宮を案内してくれる。書名も素晴らしい。……”(山本貴光氏、第8面)

【中金聡氏による紹介】
J・G・A・ポーコック著/田中秀夫訳
『野蛮と宗教Ⅱ —— 市民的統治の物語』

“…… 五賢帝時代にローマの最盛期をみてビザンツ帝国を嫌ったギボンが、ユスティニアヌス帝の立法者としての功績を高く評価したのはなぜか。18世紀のさまざまな小さい啓蒙の輻輳がヨーロッパの文明化という「大きな物語」となる過程を『ローマ帝国衰亡史』に見て圧巻。本シリーズの白眉である。……”(第7面)

【石原俊氏による紹介】
東 栄一郎著/飯島真里子・今野裕子・佐原彩子・佃陽子訳
『帝国のフロンティアをもとめて —— 日本人の環太平洋移動と入植者植民地主義』

“…… 米国(ハワイを含む)への移住経験をもつ日系人たちが、イデオロギー・技術・実践などあらゆるレベルで、日本の植民政策を主導していく過程を描き出す。主に英帝国の模倣とみなされてきた日本帝国が、著者が唱える入植者植民地主義セトラー・コロニアリズム(移植民主義)という観点からみるとき、北海道に始まり、台湾・南洋群島・満洲などを経て、敗戦後の南米移民に至るまで、米入植者帝国の流用・再解釈だった側面が明るみになる。移民史と植民史、日系アメリカ人研究と日本帝国史研究の間に横たわる学術制度上の壁を越境する労作。…… ”(第12面)


『社会経済史学』 [第88巻第3号、2022年11月] から(評者:梶谷懐氏)

毛沢東論
真理は天から降ってくる

毛沢東論

中兼和津次著『毛沢東論』が、『社会経済史学』(第88巻第3号、2022年11月、社会経済史学会発行)で紹介されました。その男は中国に何をもたらしたのか ——。大躍進政策や文化大革命によって大量の犠牲者を出しながら、現在なお大陸で英雄視される稀代の指導者。「秦の始皇帝+マルクス」とも言われる、その思想と行動を冷静かつ大胆に分析。中国経済研究をリードしてきた碩学が、現代中国の核心に迫ります。

中兼和津次 著
税込3,960円/本体3,600円
四六判・上製・438頁
ISBN978-4-8158-1023-8 C3022
在庫有り


『社会経済史学』 [第88巻第3号、2022年11月] から(評者:今井就稔氏)

愛国とボイコット
近代中国の地域的文脈と対日関係

愛国とボイコット

吉澤誠一郎著『愛国とボイコット』が、『社会経済史学』(第88巻第3号、2022年11月、社会経済史学会発行)で紹介されました。中国ナショナリズムの実像 ——。時に暴力をともなう激しい対日ボイコットはなぜ繰り返されたのか。たんなる外交懸案の解決でも自国工業の振興でもない、それぞれの運動が生じた異なる地域事情と利害・思想を詳らかにするとともに、それらが愛国主義へとつながっていくメカニズムを捉えた力作。

吉澤誠一郎 著
税込4,950円/本体4,500円
A5判・上製・314頁
ISBN978-4-8158-1048-1 C3022
在庫有り


『社会経済史学』 [第88巻第3号、2022年11月] から(評者:島西智輝氏)

技能形成の戦後史
工場と学校をむすぶもの

技能形成の戦後史

沢井実著『技能形成の戦後史』が、『社会経済史学』(第88巻第3号、2022年11月、社会経済史学会発行)で紹介されました。高度成長期の高校進学率上昇が職業教育・職業訓練に与えたインパクトとは? 企業内養成施設、公共職業訓練所、工業高校、各種学校などで起こった劇的な変遷を分析。「役に立つ」「即戦力」を歴史的に問い直し、実践に根ざした教養教育を考えます。

沢井 実 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・258頁
ISBN978-4-8158-1038-2 C3033
在庫有り


「毎日新聞」 [2022年12月3日付] から(評者:中村桂子氏)

ツベルクリン騒動
明治日本の医と情報

ツベルクリン騒動

月澤美代子著『ツベルクリン騒動』が、「毎日新聞」(2022年12月3日付)で紹介されました。欧米では「フィーバーからスキャンダルへ」と化した、コッホによる「結核新治療薬」。日本社会はそれをどのように受け止めたのか。多様な医療雑誌による「情報」の伝達・普及・切り分けを軸に、近代日本の医学・医療の風土が形成される転換期の実相を描き、今日への示唆に富む労作。

“結核感染の判定薬として知られるツベルクリンが、当初コッホが開発した治療薬として「過剰な期待感に満ちた集団的な動き」、つまり騒動を引き起こした経緯が、医療「情報」の伝達、普及、切り分けという面から示される。著者は「情報」の伝達のされ方と同時に、内容の「選択」と「切り分け」とに注目する。「21世紀の技術革新がもたらした社会」は「『切り分け』が誰の目にも見えにくくなっている」ことが問題であり、その解決には歴史家の参加が必要と考えているからである。…… 事実を通して医療史を考える見事な例だ。”(「毎日新聞」2022年12月3日付、第13面)

月澤美代子 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・504頁
ISBN978-4-8158-1101-3 C3021
在庫有り


『週刊新潮』 [2022年12月8日号] から(評者:田中秀臣氏)

社会をつくった経済学者たち
スウェーデン・モデルの構想から展開へ

社会をつくった経済学者たち

藤田菜々子著『社会をつくった経済学者たち』が、『週刊新潮』(2022年12月8日号、新潮社発行)で紹介されました。不況・戦争など直面する危機を乗り越え、福祉先進国の礎を築いた経済学者たち。ケンブリッジ学派と双璧をなしたスウェーデン経済学の全体像を、彼らの政治・世論との深いかかわりとともに初めて解明、福祉国家への合意を導いた決定的役割と、現代におけるその変容までを鮮やかに描き出します。

“…… スウェーデン経済学の歴史を扱った日本最初の本となる。世界的にもまれで、その学術的な意義は高い。ただし専門知識は無用で、著者の文章のうまさもあり、すいすい読める。
著者が展開する視野も広い。コロナ禍やウクライナ戦争に直面している世界での、国境をまたいだ「福祉世界」の確立を目指すものだ。一国の利害をどのように超克するか、まさに現代の重要課題だろう。またドラマの豊富なスウェーデンの近現代史としても読めるお得感がある。……”(『週刊新潮』2022年12月8日号、p.95)

藤田菜々子 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・438頁
ISBN978-4-8158-1097-9 C3033
在庫有り


『国際安全保障』 [第50巻第2号、2022年9月] から(評者:段瑞聡氏)

大陸反攻と台湾
中華民国による統一の構想と挫折

大陸反攻と台湾

五十嵐隆幸著『大陸反攻と台湾』が、『国際安全保障』(第50巻第2号、2022年9月、国際安全保障学会発行)で紹介されました。米中両大国のはざまで見落とされてきた台湾の「大陸反攻」をはじめて解明。大陸奪還と中国統一を目標に展開された軍事・外交政策の実像とその変容を、「蔣経国日記」など最新の資料から浮き彫りにするとともに、今日の東アジア国際政治の最大の焦点となっている台湾海峡危機の全体像を歴史的視野で描き出します。

五十嵐隆幸 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・400頁
ISBN978-4-8158-1034-4 C3031
在庫有り


『日本台湾学会報』 [第24号、2022年6月] から(評者:門間理良氏)

大陸反攻と台湾
中華民国による統一の構想と挫折

大陸反攻と台湾

五十嵐隆幸著『大陸反攻と台湾』が、『日本台湾学会報』(第24号、2022年6月、日本台湾学会発行)で紹介されました。米中両大国のはざまで見落とされてきた台湾の「大陸反攻」をはじめて解明。大陸奪還と中国統一を目標に展開された軍事・外交政策の実像とその変容を、「蔣経国日記」など最新の資料から浮き彫りにするとともに、今日の東アジア国際政治の最大の焦点となっている台湾海峡危機の全体像を歴史的視野で描き出します。

五十嵐隆幸 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・400頁
ISBN978-4-8158-1034-4 C3031
在庫有り


『歴史評論』 [2022年10月号、第870号] から(評者:江口布由子氏)

戦争障害者の社会史
20世紀ドイツの経験と福祉国家

戦争障害者の社会史

北村陽子著『戦争障害者の社会史』が、『歴史評論』(2022年10月号、第870号、歴史科学協議会発行)で紹介されました。二度の大戦により、300万人におよぶ大量の戦争障害者を生み出したドイツで、国家に奉仕した「英雄」はどのようなその後を生きたのか。公的支援や医療の発達、義肢や盲導犬などの補助具の発展と、他方での差別や貧困、ナチへの傾倒などの多面的な実態を丁寧に描き、現代福祉の淵源を示します。

北村陽子 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・366頁
ISBN978-4-8158-1017-7 C3022
在庫有り


『史学雑誌』 [第131編第10号、2022年10月] から(評者:星乃治彦氏)

政治的暴力の共和国
ワイマル時代における街頭・酒場とナチズム

政治的暴力の共和国

原田昌博著『政治的暴力の共和国』が、『史学雑誌』(第131編第10号、2022年10月、史学会発行)で紹介されました。苛烈な暴力を許容する社会はいかにして生まれたのか ——。議会制民主主義を謳うワイマル共和国。だが、街頭は世論を左右する新たな公共圏として、ナチスや共産党のプロパガンダの場となり、酒場を拠点とした「暴力のサブカルチャー」が形成されていく。実像を初めて描きだした力作。

“…… 本書の醍醐味は、緻密で圧倒的な実態の解明である。付された注だけでも78頁にわたり、全体を通して、26に及ぶ表の一つ一つが膨大な文書館史料を背景にまとめられている。「表15 ベルリンにおける発砲事件(1932年)」「表16 ベルリンにおける政治的街頭闘争に関する警察日報(1932年)」といった表題からだけでも分かるように、警察史料という限界はあるものの、精緻な表が提供されているし、「表7 相対的安定期のベルリンで発生した政治的暴力の事例」に関しては、日付、場所、暴力形態、概要といった詳細に至るまでの記述がなされ、読者に暴力の現場をリアルに想像させる。本著45-6ページにかけてまとめられた、28年から33年まで68回にわたるベルリン・シュポルトパラストでのナチ党関係の集会の一覧表は、演説者やその集会の性格をかみ砕くことができる。……”(『史学雑誌』第131編第10号、p.91)

原田昌博 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・432頁
ISBN978-4-8158-1039-9 C3022
在庫有り


『説話文学研究』 [第57号、2022年9月] から(評者:鈴木耕太郎氏)

神仏融合の東アジア史

神仏融合の東アジア史

吉田一彦編『神仏融合の東アジア史』が、『説話文学研究』(第57号、2022年9月、説話文学会)で紹介されました。日本独自の宗教現象だと考えられてきた「神仏習合」。しかし、神信仰と仏教の融合はアジア各地域で広く見られる。インド・中国から北東・東南アジアまで多岐にわたる「神仏融合」の実態を解き明かし、一国史的な認識を超えて新たに日本の宗教文化を捉え直します。

“…… 本書は、脱「神仏習合」論の一つの画期を意味するだけでなく、さらに研究を深化させるための大きな手引書にもなり得るといえよう。”(『説話文学研究』第57号、p.260)

吉田一彦 編
税込7,920円/本体7,200円
A5判・上製・726頁
ISBN978-4-8158-1021-4 C3021
在庫有り


Japanese Journal of Religious Studies [Volume 49 Issue 1, 2022] から(評者:Mark Teeuwen氏)

神仏融合の東アジア史

神仏融合の東アジア史

吉田一彦編『神仏融合の東アジア史』が、Japanese Journal of Religious Studies(Volume 49 Issue 1, 2022, 南山宗教文化研究所)で紹介されました。日本独自の宗教現象だと考えられてきた「神仏習合」。しかし、神信仰と仏教の融合はアジア各地域で広く見られる。インド・中国から北東・東南アジアまで多岐にわたる「神仏融合」の実態を解き明かし、一国史的な認識を超えて新たに日本の宗教文化を捉え直します。

吉田一彦 編
税込7,920円/本体7,200円
A5判・上製・726頁
ISBN978-4-8158-1021-4 C3021
在庫有り


『布団の中から蜂起せよ』 [高島鈴著、人文書院 2022年10月25日発行] から

歴史家と少女殺人事件
レティシアの物語

歴史家と少女殺人事件

イヴァン・ジャブロンカ著/真野倫平訳『歴史家と少女殺人事件』が、『布団の中から蜂起せよ』(高島鈴著、人文書院 2022年10月25日発行)で紹介されました。18歳の女性が誘拐・殺害された「三面記事」事件。だが、大規模な捜査と政治の介入によって、それはスキャンダラスな国家的事件となった。作者=歴史家は自ら調査を進め、被害者の生の物語を語り始める。そこから明らかになる「真実」とは ——。メディシス賞、ル・モンド文学賞受賞作。

イヴァン・ジャブロンカ 著
真野倫平 訳
税込3,960円/本体3,600円
四六判・上製・400頁
ISBN978-4-8158-0993-5 C3022
在庫有り


『図書新聞』 [2022年11月19日号、第3567号] から(評者:佐々木豊氏)

グローバル開発史
もう一つの冷戦

グローバル開発史

サラ・ロレンツィーニ著『グローバル開発史』(三須拓也・山本健訳)が、『図書新聞』(2022年11月19日号、第3567号、武久出版発行)で紹介されました。開発はなぜ、いかにしてなされたのか。米・ソ・欧・中の対抗関係を軸にした実践と、国際機関や私的アクターの国境をこえた活動を描き出し、旧植民地・途上国との相克も視野に、20世紀初頭の「開発」の誕生から冷戦後までの、無数の思惑が交錯する複雑な歴史を初めてトータルに把握します。

“…… 本書の最大の特色は、開発に関わったアクターの関係の動態的把握、つまり諸アクター間・内部の交渉/協力/共生/吸収/緊張/対立を含む錯綜した関係が丹念に解明されている点に求められよう。その結果、安全保障、経済成長、貧困削減、環境保護、人権といった様々な要素が積み重なる形で変遷しつつ形成された開発目的やその効果をめぐって、援助側も被援助側もしばしば失望や不満、フラストレーションを経験した様が、説得力を持って論じられている。……”(『図書新聞』2022年11月19日号、第3面)

サラ・ロレンツィーニ 著
三須拓也・山本 健 訳
税込3,740円/本体3,400円
A5判・上製・384頁
ISBN978-4-8158-1090-0 C3022
在庫有り


『図書新聞』 [2022年11月19日号、第3567号] から(評者:渡邊純子氏)

日本綿業史
徳川期から日中開戦まで

日本綿業史

阿部武司著『日本綿業史』が、『図書新聞』(2022年11月19日号、第3567号、武久出版発行)で紹介されました。明治の産業革命をリードし瞬く間に世界市場を制覇した日本綿紡績・織物業の競争力の源泉とは。近代的大紡績企業と、近世から続く農村織物産地や流通を担う問屋・商社などの連携による成長過程を初めて解明、衰退に向かう戦後も視野に、巨大産業の興隆を圧倒的な密度とスケールで描く決定版。

“本書はまずその迫力に圧倒される。約650頁に及ぶ厚さもであるが、長年、綿業史を研究の一環として手がけてきた経済史・経営史学界の泰斗が集大成というべき決定版を刊行したからである。…… 綿業の発展の概観や学界での論点、関係者のオーラル・ヒストリー、参考文献・統計書の説明も付されており、かつて日本経済をけん引した主要産業の一つである綿業を一望する入門書としても広く活用できる。…… 本書の魅力は、体系的な分析視角とそこから導き出される結論だけではなく、その結論に至るまでの緻密な実証、発掘された史料・史実のディティールにもある。綿業という産業とその担い手たちに注がれた著者の熱い目線と愛着がこの本をより豊かで深いものにしている。……”(『図書新聞』2022年11月19日号、第5面)

阿部武司 著
税込7,920円/本体7,200円
A5判・上製・692頁
ISBN978-4-8158-1059-7 C3033
在庫有り


『技術教育研究』 [第81号、2022年7月] から(評者:永田萬享氏)

技能形成の戦後史
工場と学校をむすぶもの

技能形成の戦後史

沢井実著『技能形成の戦後史』が、『技術教育研究』(第81号、2022年7月、技術教育研究会発行)で紹介されました。高度成長期の高校進学率上昇が職業教育・職業訓練に与えたインパクトとは? 企業内養成施設、公共職業訓練所、工業高校、各種学校などで起こった劇的な変遷を分析。「役に立つ」「即戦力」を歴史的に問い直し、実践に根ざした教養教育を考えます。

沢井 実 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・258頁
ISBN978-4-8158-1038-2 C3033
在庫有り


『中国研究月報』 [2022年10月号、第76巻第10号] から(評者:湊照宏氏)

緑の工業化
台湾経済の歴史的起源

緑の工業化

堀内義隆著『緑の工業化』が、『中国研究月報』(2022年10月号、第76巻第10号、中国研究所発行)で紹介されました。植民地下の台湾は、たんに帝国の食糧供給基地にとどまったのではなかった。見過ごされてきた工業化の契機を、豊かな農産品の加工・商品化と、それに伴う機械化・電動化に見出し、小零細企業が叢生する農村からの発展経路を実証、戦後台湾経済の原型をとらえた注目の成果。

堀内義隆 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・286頁
ISBN978-4-8158-1032-0 C3033
在庫有り


『歴史学研究』 [2022年8月号、第1025号] から(評者:都留俊太郎氏)

緑の工業化
台湾経済の歴史的起源

緑の工業化

堀内義隆著『緑の工業化』が、『歴史学研究』(2022年8月号、第1025号、歴史学研究会編)で紹介されました。植民地下の台湾は、たんに帝国の食糧供給基地にとどまったのではなかった。見過ごされてきた工業化の契機を、豊かな農産品の加工・商品化と、それに伴う機械化・電動化に見出し、小零細企業が叢生する農村からの発展経路を実証、戦後台湾経済の原型をとらえた注目の成果。

“…… 一般に工業化といえば農業部門の縮小を想定するが、「緑の工業化」というシンボリックな表現をもって色鮮やかに描き出されるのは、小農社会の広大な裾野に立脚した工業発展である。主役には、内地資本の製糖会社や軍需産業ではなく、台湾人の経営になる中小零細工業をすえる。本書は、通念を裏切る工業化の生成過程を公刊統計の分析によって跡づけ、戦後の著しい経済発展の起源を解明するものである。 …… 植民地統計を縦横に活用して分析することで、歴史に埋もれていった無数の人びとの姿が経ち現れた。「緑の工業化」は、これまでの型通りの植民地工業化論を彩り豊かに描きなおすだけではない。従来の植民地政治史が問いきれなかった、生計・生業の力学の探究に私たちを誘う。経済史と政治・社会史を架橋する新たな台湾史研究の端緒はここに開かれたといえる。”(『歴史学研究』2022年8月号、pp.53-54、56)

堀内義隆 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・286頁
ISBN978-4-8158-1032-0 C3033
在庫有り


『日本の教育史学』 [第65集、2022年10月] から(評者:西山伸氏)

戦時期日本の私立大学
成長と苦難

戦時期日本の私立大学

伊藤彰浩著『戦時期日本の私立大学』が、『日本の教育史学』(第65集、2022年10月、教育史学会発行)で紹介されました。それは成長の時代でもあった。—— 高まる進学熱のなか、国公立を超えてマジョリティを占めるようになった私立大学。一方的な統制だけではなかった政府との関係もふくめ、そのたくましい経営行動を軸に当時の実態に迫り、長期的な視野のもとで、多様な私学の全体像を初めて捉えた労作。

“…… 本書の意義としてまず挙げられるのは、本書が戦時期私立大学研究の実証レベルを飛躍的に引き上げたことである。本書で明らかにされた知見は、第6章のみならず従来ほとんど指摘されてこなかったものであり、それらを時に推論を交えながらも確実に論証していった意義は高く評価されるべきである。その結果導き出された私立大学の「成長期」としての戦時期(そしてそれが戦後につながっていく)、部分的統制主義から同化主義(公共性・国家性を有する事業として規制と助成の対象とする)への一時的移行の時期として戦時期末期を捉える、という指摘はいずれも説得力を有しているといえる。……”(『日本の教育史学』第65集、pp.193-194)

伊藤彰浩 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・338頁
ISBN978-4-8158-1024-5 C3037
在庫有り


『科学史研究』 [2022年10月号、第Ⅲ期第61巻第303号] から(評者:原塑氏)

専門知を再考する

専門知を再考する

H・コリンズ/R・エヴァンズ著『専門知を再考する』(奥田太郎監訳/和田慈・清水右郷訳)が、『科学史研究』(2022年10月号、第Ⅲ期第61巻第303号、日本科学史学会発行)で紹介されました。<専門家 vs 素人>を超えて ——。科学技術の浸透した世界で物事を決めるとき、専門家を無視することも、絶対的に信頼することもできない。では専門知とは何か。会話や「農民の知」から、査読や科学プロジェクト運営まで、専門知の多様なあり方を初めてトータルに位置づける。対話型専門知の可能性に光をあて、現代社会に展望をひらく名著。

H・コリンズ/R・エヴァンズ 著
奥田太郎 監訳/和田 慈・清水右郷 訳
税込4,950円/本体4,500円
A5判・上製・220頁
ISBN978-4-8158-0986-7 C3030
在庫有り


『日本台湾学会報』 [第24号、2022年6月] から(評者:清水美里氏)

緑の工業化
台湾経済の歴史的起源

緑の工業化

堀内義隆著『緑の工業化』が、『日本台湾学会報』(第24号、2022年6月、日本台湾学会発行)で紹介されました。植民地下の台湾は、たんに帝国の食糧供給基地にとどまったのではなかった。見過ごされてきた工業化の契機を、豊かな農産品の加工・商品化と、それに伴う機械化・電動化に見出し、小零細企業が叢生する農村からの発展経路を実証、戦後台湾経済の原型をとらえた注目の成果。

“……『緑の工業化』というタイトルはなんとも目を引き、かつ本書の議論と見事に合致していた。それでいて、緑から農業や農村をイメージさせつつも、分析対象は製糖業や缶詰工場といった大企業ではなく、中小零細企業という、一見「地味な」領域に果敢に踏み込み新たな地平を開いている。単純に事例として中小零細企業を取り上げるのではなく、大きな枠のなかで台湾経済における中小零細企業のインパクトを論じ、読者に農村の中小零細企業に着目する重要性を理解させた。先入観を取り除き資料に向き合い、先行研究では見過ごされがちであった側面に焦点を当て、新たな歴史像を浮かびあがらせた、歴史研究の醍醐味を感じることのできる書籍である。……”(『日本台湾学会報』第24号、p.198)

堀内義隆 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・286頁
ISBN978-4-8158-1032-0 C3033
在庫有り


「朝日新聞」 [2022年11月5日付] から(評者:犬塚元氏)

野蛮と宗教Ⅱ
市民的統治の物語

野蛮と宗教Ⅱ

J・G・A・ポーコック著/田中秀夫訳『野蛮と宗教Ⅱ』が、「朝日新聞」(2022年11月5日付)読書欄で紹介されました。西洋史の大きな物語 —— 古典古代の崩壊にともなう「野蛮と宗教」の時代から、洗練された習俗・商業・主権国家に基づく「ヨーロッパ」へ —— はいかにして形成されたのか。聖史を脱して博学と哲学を統合する多様な「啓蒙の語り」を読み解き、ギボンの知的文脈と独自性に迫るライフワーク。好評の第Ⅰ巻に続く、歴史叙述をめぐる思想史。

J・G・A・ポーコック 著
田中秀夫 訳
税込7,480円/本体6,800円
A5判・上製・424頁
ISBN978-4-8158-1096-2 C3022
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『図書新聞』 [2022年11月12日号、第3566号] から(評者:中山大将氏)

帝国のフロンティアをもとめて
日本人の環太平洋移動と入植者植民地主義

帝国のフロンティアをもとめて

東栄一郎著『帝国のフロンティアをもとめて』(飯島真里子・今野裕子・佐原彩子・佃陽子訳)が、『図書新聞』(2022年11月12日号、第3566号、武久出版発行)で紹介されました。環太平洋の各地へと展開した日本人移植民の知られざる相互関係を、入植者植民地主義の概念を用いて一貫して把握。移民排斥を受けた日系アメリカ人によって帝国内外へ移転された人流、知識、技術、イデオロギーの衝撃を初めて捉え、見過ごされたグローバルな帝国の連鎖を浮かび上がらせます。

“…… 巻末「訳者解説」には重要語の訳語決定過程や英語圏の関連研究状況も述べられており参考になる。そこでも指摘されているように、「有色人種の帝国」日本の研究は、近代帝国という現象を、西洋近代に特殊な現象ではなく、近代世界に普遍的な現象として理解するためにも重要であり、本書はそのための一書である。”(『図書新聞』2022年11月12号、第5面)

東 栄一郎 著
飯島真里子・今野裕子・佐原彩子・佃 陽子 訳
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・430頁
ISBN978-4-8158-1092-4 C3021
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『IDE現代の高等教育』 [2022年11月号、第645号] から(評者:吉岡知哉氏)

イノベーション概念の現代史

イノベーション概念の現代史

ブノワ・ゴダン著『イノベーション概念の現代史』(松浦俊輔訳/隠岐さや香解説)が、『IDE現代の高等教育』(2022年11月号、第645号、IDE大学協会発行)で紹介されました。現代社会のキーワードとして君臨する「イノベーション」。いかにして考え出され、政策や経営に組み込まれていったのか。また、研究はどのように商業化に巻き込まれたのか。国際機関や省庁・企業の実務家たちに焦点を合わせ、科学・技術の「有用性」を問い直す、私たちの時代の概念史。

“…… 著者が示すように、イノベーションの語は同時代のさまざまな概念/観念をひきつけ、変容しながら普遍的な価値を装い続ける。教育研究機関である大学もこの概念から自由ではない。ではイノベーションの概念に包摂されることなく、人間の社会的活動を捉えるにはどうすれば良いのだろうか。それを探求すること自体が、大学の重要な社会的役割にほかならない。”(『IDE現代の高等教育』2022年11月号、p.73)

ブノワ・ゴダン 著
松浦俊輔 訳/隠岐さや香 解説
税込3,960円/本体3,600円
四六判・上製・216頁
ISBN978-4-8158-1046-7 C3036
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『史林』 [第105巻第4号、2022年7月] から(評者:林淳氏)

神仏融合の東アジア史

神仏融合の東アジア史

吉田一彦編『神仏融合の東アジア史』が、『史林』(第105巻第4号、2022年7月、史学研究会発行)で紹介されました。日本独自の宗教現象だと考えられてきた「神仏習合」。しかし、神信仰と仏教の融合はアジア各地域で広く見られる。インド・中国から北東・東南アジアまで多岐にわたる「神仏融合」の実態を解き明かし、一国史的な認識を超えて新たに日本の宗教文化を捉え直します。

吉田一彦 編
税込7,920円/本体7,200円
A5判・上製・726頁
ISBN978-4-8158-1021-4 C3021
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『図書新聞』 [2022年11月5日号、第3565号] から(評者:小峯敦氏)

経済学のどこが問題なのか

経済学のどこが問題なのか

ロバート・スキデルスキー著/鍋島直樹訳『経済学のどこが問題なのか』が、『図書新聞』(2022年11月5日号、第3565号、武久出版発行)で紹介されました。モヤモヤしている人のために ——。「科学」の地位を得るために、経済学は様々な数学やモデルを使ってきた。しかし、それらは本当に有効なのか。現実から離れた想定によって視野を狭めているのではないか。スタンダードな経済学の考え方を再検討し、今後に向けての処方箋を提示する話題作、待望の邦訳。

ロバート・スキデルスキー 著
鍋島直樹 訳
税込3,960円/本体3,600円
A5判・上製・288頁
ISBN978-4-8158-1088-7 C3033
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『図書新聞』 [2022年11月5日号、第3565号] から(評者:増田都希氏)

村の公証人
近世フランスの家政書を読む

村の公証人

ニコル・ルメートル著『村の公証人』(佐藤彰一・持田智子訳)が、『図書新聞』(2022年11月5日号、第3565号、武久出版発行)で紹介されました。 勤勉な農夫、貪欲な高利貸し、病を癒す魔術師 ——。公証人テラード一族の家長たちは、宗教戦争を経て訪れたあらたな時代を記録する。彼らが生きた物質的・精神的世界とその変容を、農村から都市にひろがる人々の繫がりとともに活写しながら、公証人が持つ「書くこと」の力に迫る。

“…… 史料から読み解かれる事象を丁寧に重ねていく本書は、茫漠としたイメージしかない16、17世紀フランス農村の生活に質感を与えてくれる。一族の面々の会話や言い争い、セージ主体の薬草の特有の匂い、紙にペンを走らせる音が漏れ伝わる。ただし、家政書に彼らの日常が生々しく綴られていると思ってはならない。必要事項のみが淡々と列記された無味乾燥の書き物であるのが常で、「孤立した記録に血を通わせた」のは(訳者あとがき)、近世フランス農村史に通暁する著者の手腕以外の何ものでもない。……”(『図書新聞』2022年11月5日号、第5面)

ニコル・ルメートル 著
佐藤彰一・持田智子 訳
税込6,380円/本体5,800円
A5判・上製・380頁
ISBN978-4-8158-1089-4 C3022
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『鉄道史学』 [第40号、2022年10月] から(評者:三木理史氏)

東アジアのなかの満鉄
鉄道帝国のフロンティア

東アジアのなかの満鉄

林采成著『東アジアのなかの満鉄』が、『鉄道史学』(第40号、2022年10月、鉄道史学会編)で紹介されました。帝国拡大の原動力となり、世界でも最高水準を誇った満鉄の鉄道技術はいかにして伝播していったのか。見過ごされてきた本業・鉄道業の姿をはじめて解明、その経済的・技術的インパクトを数量的に位置づけるとともに、東アジア鉄道システムの形成から、戦後再編の新たな全体像を描き出します。

林 采成 著
税込8,580円/本体7,800円
A5判・上製・638頁
ISBN978-4-8158-1013-9 C3022
在庫有り


『週刊エコノミスト』 [2022年11月1日号] から(評者:服部茂幸氏)

明代とは何か
「危機」の世界史と東アジア

明代とは何か

岡本隆司著『明代とは何か』が、『週刊エコノミスト』(2022年11月1日号、毎日新聞出版発行)で紹介されました。現代中国の原型をかたちづくるとともに、東アジア史の転機ともなった明代。世界的危機の狭間で展開した財政経済や社会集団のありようを、室町期や大航海時代との連動もふまえて彩り豊かに描くとともに、民間から朝廷まで全体を貫く構造を鋭くとらえ、新たな時代像を提示します。

岡本隆司 著
税込4,950円/本体4,500円
A5判・上製・324頁
ISBN978-4-8158-1086-3 C3022
在庫有り


『日本物理学会誌』 [2022年10月号、第77巻第10号] から(評者:白石直人氏)

統計力学の形成

統計力学の形成

稲葉肇著『統計力学の形成』が、『日本物理学会誌』(2022年10月号、第77巻第10号、日本物理学会発行)で紹介されました。アナロジーから基礎づけへ ——。時間的に可逆であるミクロな多数の要素と、不可逆なマクロとを関係づける、統計力学。マクスウェルやボルツマンによる気体運動論との差異を踏まえつつ、その歴史と意義を丹念に追跡。アンサンブル概念はいかに誕生・発展し、フォン・ノイマンによる量子統計に到ったか?

稲葉 肇 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・378頁
ISBN978-4-8158-1036-8 C3040
在庫有り


「朝日新聞」 [2022年10月16日付、「日曜に想う」] から

明代とは何か
「危機」の世界史と東アジア

明代とは何か

岡本隆司著『明代とは何か』が、「朝日新聞」(2022年10月16日付)の「日曜に想う」で紹介されました。現代中国の原型をかたちづくるとともに、東アジア史の転機ともなった明代。世界的危機の狭間で展開した財政経済や社会集団のありようを、室町期や大航海時代との連動もふまえて彩り豊かに描くとともに、民間から朝廷まで全体を貫く構造を鋭くとらえ、新たな時代像を提示します。

岡本隆司 著
税込4,950円/本体4,500円
A5判・上製・324頁
ISBN978-4-8158-1086-3 C3022
在庫有り


「朝日新聞」 [2022年10月9日付、「日曜に想う」] から

政治的暴力の共和国
ワイマル時代における街頭・酒場とナチズム

政治的暴力の共和国

原田昌博著『政治的暴力の共和国』が、「朝日新聞」(2022年10月9日付)の「日曜に想う」で紹介されました。苛烈な暴力を許容する社会はいかにして生まれたのか ——。議会制民主主義を謳うワイマル共和国。だが、街頭は世論を左右する新たな公共圏として、ナチスや共産党のプロパガンダの場となり、酒場を拠点とした「暴力のサブカルチャー」が形成されていく。実像を初めて描きだした力作。

原田昌博 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・432頁
ISBN978-4-8158-1039-9 C3022
在庫有り


『アジア・アフリカ地域研究』 [第22-1号、2022年9月] から(評者:中尾世治氏)

奴隷貿易をこえて
西アフリカ・インド綿布・世界経済

奴隷貿易をこえて

小林和夫著『奴隷貿易をこえて』が、『アジア・アフリカ地域研究』(第22-1号、2022年9月、京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科発行)で紹介されました。豊かな消費市場として発展を始めたアフリカが、18・19世紀の世界経済の興隆に果たした役割とは。奴隷貿易史観をこえ、現地の動向からインド綿布への旺盛な需要がもたらしたインパクトを実証、グローバル化の複数の起源を解き明かし、西アフリカの人々の主体的活動に新たな光をなげかけます。

“…… 本書の最大の貢献は、インド製綿布の貿易に関連する一次資料を用いて、イギリスとフランスの商人を媒介とした西アフリカと南アジアの連関を明らかにしたという点にある。西アフリカ沿岸部で奴隷、あるいはパームオイルやアラビアゴムなどの入手のために、西アフリカで需要の高かったインド製綿布を輸出する必要があったこと、特に西アフリカの消費者が綿布の品質に大きな関心をもっていたことを明らかにしたことは、西アフリカの消費者のエージェンシーを明解に示している。また、本書は西アフリカの「合法的」貿易についての概観とともに、脚注に最新の研究を含む膨大な先行研究を明示しており、異分野の研究者や初学者にとって、この分野の研究の現状を知るための基盤を提供している。……”(『アジア・アフリカ地域研究』第22-1号、p.111)

小林和夫 著
税込6,380円/本体5,800円
A5判・上製・326頁
ISBN978-4-8158-1037-5 C3022
在庫有り


『同志社時報』 [第154号、2022年10月] から

近世東地中海の形成
マムルーク朝・オスマン帝国とヴェネツィア人

近世東地中海の形成

堀井優著『近世東地中海の形成』の自著紹介文が、『同志社時報』(第154号、2022年10月、学校法人同志社発行)に掲載されました。古くから東西交易の要衝として栄えた「レヴァント」。中世から近世への転換のなか、イスラーム国家とヨーロッパ商人の「共生」を支えてきた秩序の行方は? オスマン条約体制や海港都市アレクサンドリアのありようから、異文化接触の実像を明らかにするとともに、東アジアに及ぶ「治外法権」の淵源をも示した力作。

堀井 優 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・240頁
ISBN978-4-8158-1053-5 C3022
在庫有り


『IDE現代の高等教育』 [2022年10月号、第644号] から

名古屋大学の歴史 1871~2019(上下巻)

名古屋大学の歴史1871-2019

名古屋大学編『名古屋大学の歴史 1871~2019』(上下巻)の執筆者の一人・伊藤彰浩先生による紹介文が、『IDE現代の高等教育』(2022年10月号、第644号、IDE大学協会発行)に掲載されました。「名大」に歴史あり ——。どのように生まれ、変化してきたのか。教育・研究・大学生活・キャンパスの変遷を、組織の沿革とともに一望できる通史。

名古屋大学 編
税込各2,970円/本体各2,700円
A5判・並製・上284頁+下320頁
ISBN 上:978-4-8158-1063-4 下:978-4-8158-1064-1
C0000
在庫有り


『現代中国』 [第96号、2022年9月] から(評者:熊本史雄氏)

愛国とボイコット
近代中国の地域的文脈と対日関係

愛国とボイコット

吉澤誠一郎著『愛国とボイコット』が、『現代中国』(第96号、2022年9月、日本現代中国学会発行)で紹介されました。中国ナショナリズムの実像 ——。時に暴力をともなう激しい対日ボイコットはなぜ繰り返されたのか。たんなる外交懸案の解決でも自国工業の振興でもない、それぞれの運動が生じた異なる地域事情と利害・思想を詳らかにするとともに、それらが愛国主義へとつながっていくメカニズムを捉えた力作。

“…… 本書での精緻な検証と、その結果として結ばれた重層的で多様な歴史像には、大いに魅了された。「愛国」と「ボイコット」との間にはらむ緊張が溶け合って融合し、やがてそれらが「ナショナリズム」としての全国的な対外運動へと昇華されていく様が描出されている点に、魅せられたのである。
では、なぜ、本書はそうした魅力をたたえるに至ったのだろうか。それは、ボイコット運動の内実の解明を試みる、著書の分析手法にあると言えよう。本来、複雑で多様な動態を有していたはずの対外ボイコット運動だが、従来の研究は、ともするとそれを「中国ナショナリズム」という “便利な” 一言で括りがちであった。その点を問題視する著者は、運動を次のように分節化して検証する。すなわち、①運動の担い手(学生、知識人、商工業者、労働者)ごとの言説と運動形態の違いに注目し、②地域的偏差に留意しつつ、③各運動が工業発展もしくは外交懸案のどちらの問題性を抱えながら展開されていたのだろうか、という視角でもって対外ボイコット運動の内実に迫ろうとするのである。一見すると迂遠に思えるが、これこそが従来の歴史像を乗り越えるために不可欠な方法論であったと言えよう。……”(『現代中国』第96号、p.176)

吉澤誠一郎 著
税込4,950円/本体4,500円
A5判・上製・314頁
ISBN978-4-8158-1048-1 C3022
在庫有り


『経済学史研究』 [第64巻第1号、2022年7月] から(評者:池田毅氏)

カルドア 技術革新と分配の経済学
一般均衡から経験科学へ

カルドア技術革新と分配の経済学

木村雄一著『カルドア 技術革新と分配の経済学』が、『経済学史研究』(第64巻第1号、2022年7月、経済学史学会発行)で紹介されました。シュンペーターとケインズの融合や格差問題など、現代的領域の先駆者として理論に革新をもたらす一方、国連職員、開発経済学者、イギリス労働党顧問などのさまざまな顔を通じて社会に深くかかわり、現実に即した経済学の必要を訴え続けた稀代のエコノミストの全体像を提示します。

“…… カルドア経済学の全貌を明らかにするという本書の試みは、困難を極めたであろうことは想像に難くない。まずは何よりも本書を纏められた筆者の努力に大きな敬意を表したい。とりわけ、比較的よく知られているカルドアの分配・成長論やその後の累積的因果連関と収穫逓増論といったトピック以外にも、これまで焦点を当てられることが少なかったカルドアのLSE時代の理論的貢献、すなわち不完全競争論や補償原理、景気循環論といったトピックについても詳細に論じられている点は、既存研究と比較しても本書の際立つ優れた点であろう。また、本書の構成は、カルドアの理論的貢献を概ね時系列的に並べる形となっており、目次を一瞥するだけでも、カルドア経済学の展開と変遷をおおまかに把握することが可能となっている。……”(『経済学史研究』第64巻第1号、p.85)

木村雄一 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・256頁
ISBN978-4-8158-1006-1 C3033
在庫有り


『季刊経済理論』 [第58巻第2号、2021年7月] から(評者:内藤敦之氏)

カルドア 技術革新と分配の経済学
一般均衡から経験科学へ

カルドア技術革新と分配の経済学

木村雄一著『カルドア 技術革新と分配の経済学』が、『季刊経済理論』(第58巻第2号、2021年7月、経済理論学会編)で紹介されました。シュンペーターとケインズの融合や格差問題など、現代的領域の先駆者として理論に革新をもたらす一方、国連職員、開発経済学者、イギリス労働党顧問などのさまざまな顔を通じて社会に深くかかわり、現実に即した経済学の必要を訴え続けた稀代のエコノミストの全体像を提示します。

“…… 本書の特徴は、第一に、日本におけるカルドアについての評伝としても評価しうる本格的な研究書であるという点である。すなわち、カルドアの全体像が提示されており、実際に扱われている項目も非常に多岐に渉っている。とはいえ、単に羅列されているのではなく、カルドアの経済学がどのようなものであるかが充分に伝わってくる構成となっている。…… 第二に理論的な面に関しては、初期のカルドア、すなわち、LSEにおける新古典派、あるいはオーストリー学派的研究についても、詳細に取り上げている点である。…… 第三に、カルドアの理論に対する解釈としては、技術革新を強調し、進化経済学的な視点から評価している点である。…… 第四に、農工二部門モデルを評価している点である。……”(『季刊経済理論』第58巻第2号、pp.87-88)

木村雄一 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・256頁
ISBN978-4-8158-1006-1 C3033
在庫有り


『西日本社会学会年報』 [第19-20合併号、2022年] から(評者:高畑幸氏)

引揚・追放・残留
戦後国際民族移動の比較研究

引揚・追放・残留

蘭信三・川喜田敦子・松浦雄介編『引揚・追放・残留』が、『西日本社会学会年報』(第19-20合併号、2022年、西日本社会学会発行)で紹介されました。日本人引揚やドイツ人追放をはじめとする戦後人口移動の起源を、ギリシア=トルコの住民交換を画期とする近代国際政治の展開から解明するとともに、東西の事例を冷戦やソ連の民族政策もふまえて世界史上に位置づけ、地域や帝国の枠組みをこえた引揚・追放・残留の知られざる連関を浮かび上がらせます。

“…… 本書の一番の魅力は、時代と地域を超えて民族マイノリティの強制移動の全体像が描かれることである。編者の川喜田は「誤解を恐れずに言えば、引揚は、世界史の流れから切り離され、あたかもそのようなもの —— その時期に移動していたのはあたかも日本人だけだったかのように —— として日本の中だけで語られてきたのではないか」と書いている。日本国内での敗戦直後の困窮と苦労話と併せて逃避行としての引揚が語られる中、困難を引き受けた「日本人」が焦点化される余り、その出来事の普遍性は忘れられがちであった。そこを俯瞰して考える契機を与えるのが本書である。……”(『西日本社会学会年報』第19-20合併号、p.96)

蘭 信三・川喜田敦子・松浦雄介 編
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・352頁
ISBN978-4-8158-0970-6 C3031
在庫僅少


「保険毎日新聞」 [2022年10月5日付] から(評者:松嶋隆弘氏)

モラル・リスクと保険
詐欺請求をめぐる失権法理の展開

モラル・リスクと保険

王学士著『モラル・リスクと保険』が、「保険毎日新聞」(2022年10月5日付、保険毎日新聞社発行)で紹介されました。不実申告・過大請求から保険金殺人まで、急増するモラル・リスクをいかに抑止すべきか。日本での2008年保険法制定による変化を踏まえ、詐欺請求時に給付免責が可能とする法理と、その場合の判断基準について、同様の問題を抱えた英米豪での判例・学説も精査し、初めて明確に提示。

“…… 保険実務に携わる者にとって、本書は理論的のみならず、実務的有用性をも備えた、まさに垂ぜんの書ともいうべきものといい得る。重大事由解除についての裁判例の蓄積がいまだ十分でない現状下では、主張・立証に際し、諸外国の関連裁判例を渉猟することが有益であるものの、それは語学の障壁もあり容易なことではない。かような折、本書は主たるケースについて、事実の概要と判旨を要領よく紹介し、かつそれらを積み上げた規範の全体像まで紹介している。本書を活用することにより、調査の労力は大幅に軽減されるであろう。……”(「保険毎日新聞」2022年10月5日付、第12面)

王 学士 著
税込9,680円/本体8,800円
A5判・上製・454頁
ISBN978-4-8158-1098-6 C3032
在庫有り


『書標』 [2022年10月号、自著紹介] から

宇宙開発をみんなで議論しよう

宇宙開発をみんなで議論しよう

『宇宙開発をみんなで議論しよう』の編著者である伊勢田哲治先生による自著紹介が、『書標』(2022年10月号、丸善ジュンク堂書店発行)に掲載されました。有人宇宙探査の新たな計画、商業化、軍事化、新興国の台頭 …… 近年、宇宙開発は大きく転換しつつある。市民がそこに関わる必要性をわかりやすく説き、そのための基礎知識や科学技術コミュニケーションの手法、議論のスキルを提供する初めての本。

呉羽 真・伊勢田哲治 編
税込2,970円/本体2,700円
A5判・並製・256頁
ISBN978-4-8158-1091-7 C3040
在庫有り


『経営史学』 [第57巻第2号、2022年9月] から(評者:兒玉州平氏)

東アジアのなかの満鉄
鉄道帝国のフロンティア

東アジアのなかの満鉄

林采成著『東アジアのなかの満鉄』が、『経営史学』(第57巻第2号、2022年9月、経営史学会発行)で紹介されました。帝国拡大の原動力となり、世界でも最高水準を誇った満鉄の鉄道技術はいかにして伝播していったのか。見過ごされてきた本業・鉄道業の姿をはじめて解明、その経済的・技術的インパクトを数量的に位置づけるとともに、東アジア鉄道システムの形成から、戦後再編の新たな全体像を描き出します。

林 采成 著
税込8,580円/本体7,800円
A5判・上製・638頁
ISBN978-4-8158-1013-9 C3022
在庫有り


『社会経済史学』 [第88巻第2号、2022年8月] から(評者:八谷舞氏)

ピアノの日本史
楽器産業と消費者の形成

ピアノの日本史

田中智晃著『ピアノの日本史』が、『社会経済史学』(第88巻第2号、2022年8月、社会経済史学会発行)で紹介されました。富裕層の専有物であったピアノが人々に親しまれるようになった由来を、明治~現代の歴史からたどり、その普及を可能にした意外な原動力を示します。斜陽産業化の危機を超えるメカニズムをはじめてとらえ、音楽教室とともに世界へと拡がった日本の鍵盤楽器産業の全体像を描ききった意欲作。

“…… 楽器の中でもとりわけピアノの歴史が描かれる際には、その主な購買層である中間層の台頭と拡大が背景として描かれることが常であった。しかし本書はあくまでもピアノの製造・流通・販売に焦点を絞り、ピアノの「モノ/財/コモディティ」としての側面に集中する。ピアノの歴史を扱う上で、本書が取るアプローチは斬新なものであり、これまで看過されてきた視点であることは間違いない。また、楽器を教える職業や習える場を創出し、積立制度などの購買を後押しするシステムを作るなど、ただ楽器を製造・販売するだけでなく「音楽に関わる消費行動」(88頁)を全方面からバックアップする体制を整えた点は日本の楽器メーカーのオリジナリティであり、この点を描き出したことが本書の白眉であると言える。……”(『社会経済史学』第88巻第2号、2022年8月、p.87)

田中智晃 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・400頁
ISBN978-4-8158-1029-0 C3021
在庫有り


『日本歴史』 [2022年10月号、第893号] から(評者:細川周平氏)

ピアノの日本史
楽器産業と消費者の形成

ピアノの日本史

田中智晃著『ピアノの日本史』が、『日本歴史』(2022年10月号、第893号、日本歴史学会編/吉川弘文館発行)で紹介されました。富裕層の専有物であったピアノが人々に親しまれるようになった由来を、明治~現代の歴史からたどり、その普及を可能にした意外な原動力を示します。斜陽産業化の危機を超えるメカニズムをはじめてとらえ、音楽教室とともに世界へと拡がった日本の鍵盤楽器産業の全体像を描ききった意欲作。

“…… ピアノは「楽器の王様」と呼ばれる、高価であるのに加えて、ステイタス・シンボルであるからだ。その存在感なればこその驚くべき経済的ダイナミズムを描き出している。私はこれまで音楽史の立場から日本の西洋楽器に興味をもってきたが、経営史という見方があることを教わった。その初めて聞く理論には、素人ながら納得させられた。ただちに音楽史に組み入れるヒントは思いつかないものの、この楽器についての認識を深めたことは間違いない。……”(『日本歴史』2022年10月号、pp.102-103)

田中智晃 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・400頁
ISBN978-4-8158-1029-0 C3021
在庫有り


『史学雑誌』 [第131編第8号、2022年8月] から(評者:長谷川敬氏)

フランク史Ⅰ クローヴィス以前

フランク史Ⅰクローヴィス以前

佐藤彰一著『フランク史Ⅰ クローヴィス以前』が、『史学雑誌』(第131編第8号、2022年8月、史学会発行)で紹介されました。ヨーロッパのもう一つの起源 ——。欧州はギリシア・ローマからまっすぐに生まれたのではない。世界システムの大変動後、遠隔地交易、ローマ帝国との対抗、民族移動などを経て誕生した、500年にわたるフランク国家。「自由なる民」の淵源から王朝断絶までをたどる初めての通史。本巻では、初代王にいたる波乱の歴史を描きます。

佐藤彰一 著
税込7,920円/本体7,200円
A5判・上製・400頁
ISBN978-4-8158-1030-6 C3022
在庫有り


『化学史研究』 [第49巻第3号、2022年9月] から(評者:杉山滋郎氏)

近代日本の科学論
明治維新から敗戦まで

近代日本の科学論

岡本拓司著『近代日本の科学論』が、『化学史研究』(第49巻第3号、2022年9月、化学史学会発行)で紹介されました。科学の営みや社会との関係をめぐる言説は、維新から対米戦までの歴史の流れに呼応し、劇的に変転した。本書は、文明開化、教養主義の時代を経て、科学を標榜し革命を起こしたマルクス主義の衝撃と、それを契機に誕生した日本主義的科学論をふくむ多様な議論の展開を、初めて一望します。

岡本拓司 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・552頁
ISBN978-4-8158-1019-1 C3010
在庫有り


『化学史研究』 [第49巻第3号、2022年9月] から(評者:大野誠氏)

原典 ルネサンス自然学(上下巻)

原典ルネサンス自然学

池上俊一監修『原典 ルネサンス自然学』(上下巻)が、『化学史研究』(第49巻第3号、2022年9月、化学史学会発行)で紹介されました。万物をめぐる知の総体を集成 ——。身体から宇宙まで、本邦初訳テキストと貴重図版により「科学的人文主義」の精華をつたえる待望のアンソロジー。

池上俊一 監修
税込各10,120円/本体各9,200円
菊判・上製・上650頁+下656頁
ISBN 上:978-4-8158-0880-8 下:978-4-8158-0881-5
C3010
在庫有り


『タクサ』 [第53号、2022年8月] から(評者:島野智之氏)

世界の発光生物
分類・生態・発光メカニズム

世界の発光生物

大場裕一著『世界の発光生物』が、『タクサ』(第53号、2022年8月、日本動物分類学会発行)で紹介されました。発光バクテリアからツキヨタケ、ホタル、そしてチョウチンアンコウなどの脊椎動物まで ——。現在知られているすべての発光生物について、第一人者が分子生物学的知見を含めて紹介。光る生き物たちを通して見える世界と、そこに至る進化の道筋を描き出します。

大場裕一 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・456頁
ISBN978-4-8158-1057-3 C3045
在庫有り


『アフリカレポート』 [第60号、2022年9月] から(評者:佐藤章氏)

奴隷貿易をこえて
西アフリカ・インド綿布・世界経済

奴隷貿易をこえて

小林和夫著『奴隷貿易をこえて』が、『アフリカレポート』(第60号、2022年9月、アジア経済研究所発行)で紹介されました。豊かな消費市場として発展を始めたアフリカが、18・19世紀の世界経済の興隆に果たした役割とは。奴隷貿易史観をこえ、現地の動向からインド綿布への旺盛な需要がもたらしたインパクトを実証、グローバル化の複数の起源を解き明かし、西アフリカの人々の主体的活動に新たな光をなげかけます。

小林和夫 著
税込6,380円/本体5,800円
A5判・上製・326頁
ISBN978-4-8158-1037-5 C3022
在庫有り


「毎日新聞」 [2022年9月10日付] から(評者:鹿島茂氏)

村の公証人
近世フランスの家政書を読む

村の公証人

ニコル・ルメートル著『村の公証人』(佐藤彰一・持田智子訳)が、「毎日新聞」(2022年9月10日付)で紹介されました。 勤勉な農夫、貪欲な高利貸し、病を癒す魔術師 ——。公証人テラード一族の家長たちは、宗教戦争を経て訪れたあらたな時代を記録する。彼らが生きた物質的・精神的世界とその変容を、農村から都市にひろがる人々の繫がりとともに活写しながら、公証人が持つ「書くこと」の力に迫る。

“…… 中央山塊北西側のバ・リムーザンの隔絶した寒村フレスリーヌにはアンリ四世の時代から三代にわたって公証人を営むテラード家の家政書(経理出納帳)が保存されていた。本書はこれを深く読み込むことで公証人一族のミクロストリアを復元し、同時に、そこから近世フランスというマクロストリアまで浮かび上がらせることに成功した傑作である。…… 興味深い事実が無味乾燥な家政書から明らかにされる。歴史家って凄いなと思わせる一冊である。”(「毎日新聞」2022年9月10日付、第14面)

ニコル・ルメートル 著
佐藤彰一・持田智子 訳
税込6,380円/本体5,800円
A5判・上製・380頁
ISBN978-4-8158-1089-4 C3022
在庫有り


『史林』 [第104巻第6号、2021年11月] から(評者:阿古智子氏)

闘う村落
近代中国華南の民衆と国家

闘う村落

蒲豊彦著『闘う村落』が、『史林』(第104巻第6号、2021年11月、史学研究会発行)で紹介されました。互いに武力闘争を繰り返す城塞化した村落 ——。それは王朝交替や辛亥革命などを経ても変わらぬ、明末以来の基層社会の姿であり、共産主義へと向かう農民運動の凄惨な暴力に極まる。宣教師文書を駆使しつつ、初めてその生成・展開・終焉を跡づけ、新たな中国史像を提示した渾身の力作。

蒲 豊彦 著
税込7,920円/本体7,200円
A5判・上製・504頁
ISBN978-4-8158-0998-0 C3022
在庫有り


『史林』 [第104巻第6号、2021年11月] から(評者:小林道彦氏)

「国家総動員」の時代
比較の視座から

「国家総動員」の時代

森靖夫著『「国家総動員」の時代』が、『史林』(第104巻第6号、2021年11月、史学研究会発行)で紹介されました。第一次大戦後、大正デモクラシー下の日本において模索された民間主体の国家総動員構想を解明、同時代の英米で展開された政策も初めて精査して、その驚くべき重なりを跡づける。ファシズムや軍部独裁をその必然的帰結とみなす通説を大きく書き換え、近代史理解の新たな地平を拓く。

森 靖夫 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・432頁
ISBN978-4-8158-0975-1 C3031
在庫有り


『週刊東洋経済』 [2022年9月3日号] から(評者:中山智香子氏)

経済学のどこが問題なのか

経済学のどこが問題なのか

ロバート・スキデルスキー著/鍋島直樹訳『経済学のどこが問題なのか』が、『週刊東洋経済』(2022年9月3日号、東洋経済新報社発行)で紹介されました。モヤモヤしている人のために ——。「科学」の地位を得るために、経済学は様々な数学やモデルを使ってきた。しかし、それらは本当に有効なのか。現実から離れた想定によって視野を狭めているのではないか。スタンダードな経済学の考え方を再検討し、今後に向けての処方箋を提示する話題作、待望の邦訳。

“…… 経済学を諦めない。本書は最良の経済学教育の指南書である。これを得て読者が一歩踏み出すなら、本書は最大の価値を発揮するだろう。”(『週刊東洋経済』2022年9月3日号、p.90)

ロバート・スキデルスキー 著
鍋島直樹 訳
税込3,960円/本体3,600円
A5判・上製・288頁
ISBN978-4-8158-1088-7 C3033
在庫有り


『週刊エコノミスト』 [2022年9月6日号] から(評者:上川孝夫氏)

グローバル開発史
もう一つの冷戦

グローバル開発史

サラ・ロレンツィーニ著『グローバル開発史』(三須拓也・山本健訳)が、『週刊エコノミスト』(2022年9月6日号、毎日新聞出版発行)で紹介されました。開発はなぜ、いかにしてなされたのか。米・ソ・欧・中の対抗関係を軸にした実践と、国際機関や私的アクターの国境をこえた活動を描き出し、旧植民地・途上国との相克も視野に、20世紀初頭の「開発」の誕生から冷戦後までの、無数の思惑が交錯する複雑な歴史を初めてトータルに把握します。

サラ・ロレンツィーニ 著
三須拓也・山本 健 訳
税込3,740円/本体3,400円
A5判・上製・384頁
ISBN978-4-8158-1090-0 C3022
在庫有り


『アジア研究』 [第68巻第3号、2022年7月] から(評者:森巧氏)

大陸反攻と台湾
中華民国による統一の構想と挫折

大陸反攻と台湾

五十嵐隆幸著『大陸反攻と台湾』が、『アジア研究』(第68巻第3号、2022年7月、アジア政経学会発行)で紹介されました。米中両大国のはざまで見落とされてきた台湾の「大陸反攻」をはじめて解明。大陸奪還と中国統一を目標に展開された軍事・外交政策の実像とその変容を、「蔣経国日記」など最新の資料から浮き彫りにするとともに、今日の東アジア国際政治の最大の焦点となっている台湾海峡危機の全体像を歴史的視野で描き出します。

五十嵐隆幸 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・400頁
ISBN978-4-8158-1034-4 C3031
在庫有り


『週刊読書人』 [2022年8月26日号、第3454号] から(評者:菅谷憲興氏)

村の公証人
近世フランスの家政書を読む

村の公証人

ニコル・ルメートル著『村の公証人』(佐藤彰一・持田智子訳)が、『週刊読書人』(2022年8月26日号、第3454号、読書人発行)で紹介されました。勤勉な農夫、貪欲な高利貸し、病を癒す魔術師 ——。公証人テラード一族の家長たちは、宗教戦争を経て訪れたあらたな時代を記録する。彼らが生きた物質的・精神的世界とその変容を、農村から都市にひろがる人々の繫がりとともに活写しながら、公証人が持つ「書くこと」の力に迫ります。

ニコル・ルメートル 著
佐藤彰一・持田智子 訳
税込6,380円/本体5,800円
A5判・上製・380頁
ISBN978-4-8158-1089-4 C3022
在庫有り


『図書新聞』 [2022年9月3日号、第3557号] から(評者:高田実氏)

戦争国家イギリス
反衰退・非福祉の現代史

戦争国家イギリス

デービッド・エジャトン著『戦争国家イギリス』(坂出健監訳/松浦俊輔ほか訳)が、『図書新聞』(2022年9月3日号、第3557号、武久出版発行)で紹介されました。20世紀イギリスは、衰退に苦しむ福祉国家などではなかった。エキスパートが権力を握り産業界と手を結びつつ科学技術の開発に熱を上げた「闘志あふれる」国家を描き、現代史の神話をラディカルに破壊。ジェントルマン中心の歴史観が見過ごしてきた実像を明るみに出す野心作。

“……本書の意義は、次の3点にある。第一に、イギリス国家を、「戦争国家」としての連続性の視点で理解することを可能にするとともに、「衰退論」を再検討する視点を提示した。第二に、その担い手としてテクノクラートとエキスパートの役割を前面に押し出し、軍産学複合体の力を明示した。第三に、1920年代から1960年代の連続性を強調し、第二次世界大戦の画期性を相対的に低下させた。イギリス現代史の通説では、1930年代と1960年代に国家と社会の段階区分を設けているが、本書はこれを戦争国家の面から跡付ける。こうして、本書は従来のイギリス現代史理解で看過された部分に挑戦的に光をあて、きわめて重要な論点を提起したのである。……”(『図書新聞』2022年9月3日号、第3面)

デービッド・エジャトン 著
坂出 健 監訳/松浦俊輔ほか訳
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・470頁
ISBN978-4-8158-0874-7 C3022
在庫有り


『日本物理学会誌』 [2022年8月号、第77巻第8号] から(評者:正木祐輔氏)

超伝導接合の物理

超伝導接合の物理

田仲由喜夫著『超伝導接合の物理』が、『日本物理学会誌』(2022年8月号、第77巻第8号、日本物理学会発行)で紹介されました。ジョセフソン効果をはじめとした、超伝導界面に現れ得るさまざまな現象は、アンドレーエフ束縛状態という視点から統一的に説明できる。超伝導のもつ対称性や接合先によって界面での挙動が変わる様子を、見通しよく整理。トポロジカル超伝導の背景を深く理解する上でも必読の書。

田仲由喜夫 著
税込6,380円/本体5,800円
A5判・上製・356頁
ISBN978-4-8158-1028-3 C3042
在庫有り


『ドイツ研究』 [第56号、2022年3月] から(評者:河合信晴氏)

戦争障害者の社会史
20世紀ドイツの経験と福祉国家

戦争障害者の社会史

北村陽子著『戦争障害者の社会史』が、『ドイツ研究』(第56号、2022年3月、日本ドイツ学会発行)で紹介されました。二度の大戦により、300万人におよぶ大量の戦争障害者を生み出したドイツで、国家に奉仕した「英雄」はどのようなその後を生きたのか。公的支援や医療の発達、義肢や盲導犬などの補助具の発展と、他方での差別や貧困、ナチへの傾倒などの多面的な実態を丁寧に描き、現代福祉の淵源を示します。

北村陽子 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・366頁
ISBN978-4-8158-1017-7 C3022
在庫有り


『西洋史学』 [第273号、2022年6月] から(評者:秋田茂氏)

近代世界の誕生(上下巻)
グローバルな連関と比較 1780-1914

近代世界の誕生

C.A.ベイリ著『近代世界の誕生』(上下巻、平田雅博・吉田正広・細川道久訳)が、『西洋史学』(第273号、2022年6月、日本西洋史学会編集兼発行)で紹介されました。一国史や地域史を超えて、グローバルな相互連関から「近代世界」の成り立ちを解明。革命の時代から第一次世界大戦にいたる「長い19世紀」を中心に、西洋近代化とは異なる視点で世界史を問い直し、政治・経済から人々の衣食住まで、新しい全体史を描ききるグローバル・ヒストリーの代表作。

“…… 本書の最大の魅力は、「長期の19世紀」における「グローバルな統一性の増大を追求」し、世界的な諸事件の相互依存関係、連結と過程の歴史を、ヨーロッパと非ヨーロッパ世界との双方向的な相互作用(bilateral interactions)として描き切った点にある。その変化の原動力は、経済・イデオロギー構築・国家機構の三者から構成される「複雑な力の平行四辺形」に求められている。ウォーラーステイン的な世界経済重視の経済決定論ではなく、近世から近代につながる国家(帝国)論や、政治思想・宗教面での「思想のグローバルヒストリー」も組み込んだ、多面的かつ包括的な考察が展開されている。国家・宗教・政治・経済それぞれの相互作用は、同時に、変化の原動力の多元性にもつながる。世界史の変化の起源は、一貫して多中心的、複数で、相互に連関していたという多元性の主張が、本書の基調となっている……”(『西洋史学』第273号、p.49)

C.A.ベイリ 著
平田雅博・吉田正広・細川道久 訳
税込各4,950円/本体各4,500円
A5判・上製・上356頁+下408頁
ISBN 上:978-4-8158-0929-4 下:978-4-8158-0930-0
C3022
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『西洋史学』 [第273号、2022年6月] から(評者:山本航平氏)

外交と移民
冷戦下の米・キューバ関係

外交と移民

上英明著『外交と移民』が、『西洋史学』(第273号、2022年6月、日本西洋史学会編集兼発行)で紹介されました。人の移動がもたらす力 ——。ワシントン、ハバナ、そしてマイアミ。衝撃はキューバ危機だけではなかった。移民とその社会が生みだす三つ巴のダイナミズムを捉え、グローバルな冷戦の現場と、アメリカ、キューバの国内政治の連関を、アクセス困難な史料から鮮やかに描きだした俊英の力作。

“……「移民」がもたらす国際関係の変容に注目する上は、従来の外交史のアプローチに人の移動という視点を取り入れ、キューバから米国への人の移動が両国の関係にどのような影響をおよぼしたのかという問いを立てる。そして、両国の対立の構図を解明するために、著者は革命政権(ハバナ)と米国政府(ワシントン)の二国間外交だけに焦点をあてるのではなく、在米キューバ人社会(マイアミ)という第三項のアクターを設定する。その作業により、マイアミこそが両国の「対立」と「紐帯」の結節点であったことが示されていく。両国の政府間外交はマイアミの動向と連動していたのであり、ハバナ、ワシントン、マイアミの「三角関係」を描くことなしに両国の対話を読み解くことはできないという上の主張には、首肯せざるをえない。……”(『西洋史学』第273号、pp.54-55)

上 英明 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・366頁
ISBN978-4-8158-0948-5 C3022
在庫有り


『西洋史学』 [第273号、2022年6月] から(評者:瀬戸口明久氏)

知識経済の形成
産業革命から情報化社会まで

知識経済の形成

ジョエル・モキイア著『知識経済の形成』(長尾伸一監訳/伊藤庄一訳)が、『西洋史学』(第273号、2022年6月、日本西洋史学会編集兼発行)で紹介されました。経済成長やイノベーションを持続させるものは何か。——「有用な知識」を軸に科学・技術と経済の歴史を架橋することで、ビッグ・クエスチョンに鮮やかな解を提示、西欧近代の再定位を図ると同時に、現代社会の行く末をも展望する注目の書。

ジョエル・モキイア 著
長尾伸一 監訳/伊藤庄一 訳
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・410頁
ISBN978-4-8158-0957-7 C3033
在庫有り


『西洋史学』 [第273号、2022年6月] から(評者:黒田祐我氏)

辺境の生成
征服=入植運動・封建制・商業

辺境の生成

足立孝著『辺境の生成』が、『西洋史学』(第273号、2022年6月、日本西洋史学会編集兼発行)で紹介されました。とめどなく生み出される無数の「辺境」—— そこではなにが生起するのか。中世イベリア半島を舞台に、従来のレコンキスタの図式を排して、征服=入植運動、封建制、商業の展開プロセスを実証的に解明。遍在する「辺境」から、ラテン・ヨーロッパをも見通す新たなモデルを導き出します。

“…… 著者が披露したのは、「中心」をあらかじめ想定して、そこへの同化過程あるいは逸脱模様を問おうとする辺境論ではない。ミクロな次元で取り交わされた膨大な証書史料群から、当時の「辺境」に関与する人々の活動と彼らの思惑をゼロから再構成し、そのうえで「辺境」が生み出すエネルギーの総体の意味を問う、いうなれば「地に足のついた辺境論」である。さらに著者はそれだけでは飽き足らず、「辺境」という場のもっていたダイナミズムの再構成を通じて、「封建制」「封建社会」という西欧中世社会概念の全面的再考へ我々を導こうとしている。…… 決して完全なかたちで残存することがあり得ず、また事実をそのままのかたちで語ることができない当時の証書群の分析の過程と内容解釈の根拠を補論で披瀝しながら、かくも生き生きと当事者たちの活動を抽出することに成功している著者に、敬服の念を抑えることができない。単純な封建制論でもなく、商業史研究でもなく、イスラーム世界との接触に伴う対立や融和の諸相を現代社会に提示するだけのエッセイでもない。…… 専門としている地域と時代を問わず、歴史研究者それぞれの興味関心の琴線に触れる示唆を、必ずや得られる良書である。”(『西洋史学』第273号、p.65、67)

足立 孝 著
税込10,780円/本体9,800円
A5判・上製・612頁
ISBN978-4-8158-0962-1 C3022
在庫有り


『西洋史学』 [第273号、2022年6月] から(評者:中島弘二氏)

エコロジーの世紀と植民地科学者
イギリス帝国・開発・環境

エコロジーの世紀と植民地科学者

水野祥子著『エコロジーの世紀と植民地科学者』が、『西洋史学』(第273号、2022年6月、日本西洋史学会編集兼発行)で紹介されました。新たな知はどこで生まれ、何をもたらしたのか。—— 20世紀における科学・開発・環境の関係を問い、生態環境をめぐる知の生成と帝国ネットワークによる循環から、植民地開発の思想と実践、国際開発援助への展開をたどり、植民地科学者を軸に「エコロジーの世紀」の成り立ちを描く力作。

“…… イギリスの生物学者E.B.ワージントンが「エコロジーの世紀」と呼んだ20世紀における環境保護主義思想は、一般的には1960~1970年代の公害や環境破壊に対する危機感の高まりやエコロジー運動の台頭によってもたらされたとみなされることが多い。それに対して本書は、そうした環境保護主義思想の起源を、西欧列強の植民地開発の思想と実践、植民地科学の展開を通じた環境に関する新たな知の生産とネットワークの形成、そしてそうしたネットワークに基づいて構築された第二次世界大戦後の国際的な開発援助体制、これら三者の歴史的なつながりの中に見出そうとする。
環境保護主義の起源を近代ヨーロッパの植民地に求める視点は近年の環境史研究において広く共有されているものであるが、本書のユニークさはそれを単に近代植民地主義という歴史的文脈に限定するのではなく、第二次世界大戦後における生態学的な環境保護主義思想の展開がアフリカの開発問題や国際開発援助体制の形成とも密接な関連を有することを明らかにすることで、科学的な知を媒介として開発と環境保護主義とが表裏一体のものとして展開したことを明らかにした点にある。……”(『西洋史学』第273号、p.70)

水野祥子 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・268頁
ISBN978-4-8158-0971-3 C3022
在庫有り


『西洋史学』 [第273号、2022年6月] から(評者:坂野正則氏)

宣教と適応
グローバル・ミッションの近世

宣教と適応

齋藤晃編『宣教と適応』が、『西洋史学』(第273号、2022年6月、日本西洋史学会編集兼発行)で紹介されました。異文化と出会った〈普遍〉の使者たち ——。大航海時代から啓蒙時代にかけて、アジアやアメリカに派遣されたイエズス会士らは、現地社会に適応することで布教を試みる。だが、それは今日なお解決しえない難問の蓋を開けることだった。異文化適応を軸にキリスト教の世界宣教の全体像に迫ります。

齋藤 晃 編
税込7,480円/本体6,800円
A5判・上製・554頁
ISBN978-4-8158-0977-5 C3022
在庫有り


『西洋史学』 [第273号、2022年6月] から(評者:仲田公輔氏)

十字軍国家の研究
エルサレム王国の構造

十字軍国家の研究

櫻井康人著『十字軍国家の研究』が、『西洋史学』(第273号、2022年6月、日本西洋史学会編集兼発行)で紹介されました。〈キリスト教対イスラーム〉を超えて、多様な人々からなる社会の全体像へ ——。第1回十字軍によって生まれた「聖地防衛国家」は、内と外の異教徒とともになぜ存続しえたのか。祈る人、戦う人、働く人が都市と農村で形づくる王国の姿を、ヨーロッパとの関係も含め、精緻な史料分析から初めて解明した画期的労作。

“…… これまでの研究の潮流では、(中世、そして現代の)「西欧」と「現地」との対比のなかでいかに十字軍国家を理解すべきかという、二項対立を前提とした議論が繰り広げられていたのである。…… これに対して本書は、そういった二項対立的なモデルを離れ、一貫して視点をエルサレム王国を中心とする十字軍国家それ自体、いわば十字軍国家の「現地」に置き、その実態に迫ることを目的としている。その際、ヨーロッパからやってきたごく少数のラテン・カトリックのキリスト教徒たちが、周囲をムスリム含む圧倒的多数の他者に囲まれつつ建国した十字軍国家は、その特殊性ゆえに第一義的に「聖地防衛国家」だったと位置づけられる。そして絶えず変化する十字軍国家を取り巻く情勢を踏まえ、その生存戦略、即ち「生き残るための努力」がどのように国家構造に反映されていたのか、動態的に明らかにしようとする試みが本書を通して行われている。……”(『西洋史学』第273号、p.82)

櫻井康人 著
税込9,680円/本体8,800円
A5判・上製・744頁
ISBN978-4-8158-0991-1 C3022
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『西洋史学』 [第273号、2022年6月] から(評者:桃木至朗氏)

歴史教育の比較史

歴史教育の比較史

近藤孝弘編『歴史教育の比較史』が、『西洋史学』(第273号、2022年6月、日本西洋史学会編集兼発行)で紹介されました。「歴史認識」を語る前に ——。なぜ歴史をめぐって国どうしが争うのか。世界各地で歴史はどのように教えられてきたのか。歴史家と教育学者の共同作業により、自国史と世界史との関係を軸に、四つの地域の現在までの「歴史教育」の歴史を跡づけ、歴史とは何か、教育とは何かを問い直す、未曾有の試み。

“…… 歴史学側のトピックを挙げれば、古代から近現代に及ぶ中国の歴史教育の叙述は、現代世界が広く理解すべき ……「中国とは何か」を理解するうえで、貴重な材料を提供している。近年、日本の学界のレベル向上がめざましいオスマン帝国/トルコ共和国史の研究を背景にもつ第3章も同様で、そこで示された現在の世界史への向き合い方の中国との対照性は、もともと似た構造を持っていた清朝とオスマン帝国の支配地域が経験した近現代史のコントラストというグローバルな問題への関心を誘う。ヴァイマル期の歴史教育が「帝政時代の内容からホーエンツォレルンの賛美という要素を取り除いただけの歴史理解を再生産」したという第4章の記述は、「戦後日本」の日本史教育の内容(たとえば「国風文化」や武家政権と戦国大名、幕末維新史)とそれが国民の政治意識に与えた影響を強く思い出させるし、アメリカで「家庭性」と「公共性」を両立させようとした建国後の女子教育が、その後の教科書のスタイルや教師の性別など大きな影響を後世に残した点など、ジェンダー視点で学ぶ内容もあった。……”(『西洋史学』第273号、pp.94-95)

近藤孝弘 編
税込4,950円/本体4,500円
A5判・上製・328頁
ISBN978-4-8158-1011-5 C3022
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『西洋史学』 [第273号、2022年6月] から(評者:中野智世氏)

戦争障害者の社会史
20世紀ドイツの経験と福祉国家

戦争障害者の社会史

北村陽子著『戦争障害者の社会史』が、『西洋史学』(第273号、2022年6月、日本西洋史学会編集兼発行)で紹介されました。二度の大戦により、300万人におよぶ大量の戦争障害者を生み出したドイツで、国家に奉仕した「英雄」はどのようなその後を生きたのか。公的支援や医療の発達、義肢や盲導犬などの補助具の発展と、他方での差別や貧困、ナチへの傾倒などの多面的な実態を丁寧に描き、現代福祉の淵源を示します。

“…… 本書の意義としてまず指摘しておきたいのは、本書が、戦争障害者という一般にはあまりなじみのない歴史事象について広範かつ詳細な知見をもたらしてくれる点である。…… 膨大な研究文献と史料に基づいた具体的な描写に富む本書は、今後、この分野における基礎的文献となり、比較研究にも有益な材料を提供することになるだろう。
そのうえで本書の特徴として評者が特に着目するのは、本書がこの問題をドイツ社会国家の形成過程の一局面として位置づけている点である。既存の研究はその多くが第一次世界大戦期に集中しているのに対し、本書は2つの世界大戦を含む長い分析射程をとり、帝政期、共和国期、ナチ期、戦後ドイツといった時期区分ごとの断絶の局面ではなく、連続的な制度の発展過程に光をあてた。そして、「労働による自立」と就労支援といったモチーフが、さまざまな政治体制下にあっても一貫して継承されていったことを実証的に跡付けた。……”(『西洋史学』第273号、pp.101-102)

北村陽子 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・366頁
ISBN978-4-8158-1017-7 C3022
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『週刊エコノミスト』 [2022年8月30日号] から(評者:服部茂幸氏)

経済学のどこが問題なのか

経済学のどこが問題なのか

ロバート・スキデルスキー著/鍋島直樹訳『経済学のどこが問題なのか』が、『週刊エコノミスト』(2022年8月30日号、毎日新聞出版発行)で紹介されました。モヤモヤしている人のために ——。「科学」の地位を得るために、経済学は様々な数学やモデルを使ってきた。しかし、それらは本当に有効なのか。現実から離れた想定によって視野を狭めているのではないか。スタンダードな経済学の考え方を再検討し、今後に向けての処方箋を提示する話題作、待望の邦訳。

ロバート・スキデルスキー 著
鍋島直樹 訳
税込3,960円/本体3,600円
A5判・上製・288頁
ISBN978-4-8158-1088-7 C3033
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『日本歴史』 [2022年9月号、第892号] から(評者:佐川享平氏)

戦時期日本の私立大学
成長と苦難

戦時期日本の私立大学

伊藤彰浩著『戦時期日本の私立大学』が、『日本歴史』(2022年9月号、第892号、日本歴史学会編)で紹介されました。それは成長の時代でもあった。—— 高まる進学熱のなか、国公立を超えてマジョリティを占めるようになった私立大学。一方的な統制だけではなかった政府との関係もふくめ、そのたくましい経営行動を軸に当時の実態に迫り、長期的な視野のもとで、多様な私学の全体像を初めて捉えた労作。

伊藤彰浩 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・338頁
ISBN978-4-8158-1024-5 C3037
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「朝日新聞」 [2022年8月20日付] から(評者:藤野裕子氏)

帝国のフロンティアをもとめて
日本人の環太平洋移動と入植者植民地主義

帝国のフロンティアをもとめて

東栄一郎著『帝国のフロンティアをもとめて』(飯島真里子・今野裕子・佐原彩子・佃陽子訳)が、「朝日新聞」(2022年8月20日付)読書欄で紹介されました。環太平洋の各地へと展開した日本人移植民の知られざる相互関係を、入植者植民地主義の概念を用いて一貫して把握。移民排斥を受けた日系アメリカ人によって帝国内外へ移転された人流、知識、技術、イデオロギーの衝撃を初めて捉え、見過ごされたグローバルな帝国の連鎖を浮かび上がらせます。

東 栄一郎 著
飯島真里子・今野裕子・佐原彩子・佃 陽子 訳
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・430頁
ISBN978-4-8158-1092-4 C3021
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「中日新聞」 [2022年8月13日付、夕刊] から

経済学のどこが問題なのか

経済学のどこが問題なのか

ロバート・スキデルスキー著/鍋島直樹訳『経済学のどこが問題なのか』が、「中日新聞」(2022年8月13日付、夕刊)文化・芸能欄で紹介されました。モヤモヤしている人のために ——。「科学」の地位を得るために、経済学は様々な数学やモデルを使ってきた。しかし、それらは本当に有効なのか。現実から離れた想定によって視野を狭めているのではないか。スタンダードな経済学の考え方を再検討し、今後に向けての処方箋を提示する話題作、待望の邦訳。

“…… 本書では、現代の主流派経済学の方法を根本から問い直し、処方箋を示す。「科学」であろうとして数式やモデルを駆使することで、かえって現実離れしているといった問題提起も多い。日頃、エコノミストの言説にもやもやしている人に贈る一冊。…… ”(「中日新聞」2022年8月13日付夕刊、第4面)

ロバート・スキデルスキー 著
鍋島直樹 訳
税込3,960円/本体3,600円
A5判・上製・288頁
ISBN978-4-8158-1088-7 C3033
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「朝日新聞」 [2022年8月13日付] から(評者:藤原辰史氏)

グローバル開発史
もう一つの冷戦

グローバル開発史

サラ・ロレンツィーニ著『グローバル開発史』(三須拓也・山本健訳)が、「朝日新聞」(2022年8月13日付)読書欄で紹介されました。開発はなぜ、いかにしてなされたのか。米・ソ・欧・中の対抗関係を軸にした実践と、国際機関や私的アクターの国境をこえた活動を描き出し、旧植民地・途上国との相克も視野に、20世紀初頭の「開発」の誕生から冷戦後までの、無数の思惑が交錯する複雑な歴史を初めてトータルに把握します。

サラ・ロレンツィーニ 著
三須拓也・山本 健 訳
税込3,740円/本体3,400円
A5判・上製・384頁
ISBN978-4-8158-1090-0 C3022
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『東アジア近代史』 [第26号、2022年6月] から(評者:櫻井良樹氏)

愛国とボイコット
近代中国の地域的文脈と対日関係

愛国とボイコット

吉澤誠一郎著『愛国とボイコット』が、『東アジア近代史』(第26号、2022年6月、東アジア近代史学会編)で紹介されました。中国ナショナリズムの実像 ——。時に暴力をともなう激しい対日ボイコットはなぜ繰り返されたのか。たんなる外交懸案の解決でも自国工業の振興でもない、それぞれの運動が生じた異なる地域事情と利害・思想を詳らかにするとともに、それらが愛国主義へとつながっていくメカニズムを捉えた力作。

“…… さまざまな傷や飾りのようなものがまとわり付きやすいために見えにくく、またそのために簡単には説明が難しい民衆意識と運動の推移を、わかりやすく筋道を立てて説明している。本書では、これまでの中国におけるナショナリズムの展開と対日ボイコット運動研究をふまえながらも、その複雑でとらえにくい様々な要素・要因を、同時・総合的に描いていくのではなく、運動の詳細に立ち入って、運動を進める主体・立場の違い(利害の違い)や運動が行われた地域的な偏差などに注目するとともに、章ごとに取り上げる地域、運動の主体を変えながら説明している。そして運動がそれぞれの段階において、さまざまな主体や動機によって行われていること、またそれを批評する見方もさまざまであったことを描き出し、それでいて結果的には一つのまとまったもの(「中国ナショナリズム」と後に呼ばれるもの)が段階を追って醸成されていく過程を復元させることに成功している……”(『東アジア近代史』第26号、p.154)

吉澤誠一郎 著
税込4,950円/本体4,500円
A5判・上製・314頁
ISBN978-4-8158-1048-1 C3022
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『東南アジア研究』 [60巻1号、2022年7月] から(評者:初鹿野直美氏)

建設労働と移民
日米における産業再編成と技能

建設労働と移民

惠羅さとみ著『建設労働と移民』が、『東南アジア研究』(60巻1号、2022年7月、京都大学東南アジア地域研究研究所発行)で紹介されました。オリンピックや相次ぐ再開発を控え、高齢化と人手不足が著しい建設現場にいち早く導入されてきたベトナム人などの外国人技能実習生たち。安価な移民労働力の利用とする画一的理解をこえて、日米の比較から産業再編成と技能継承をめぐる課題に迫り、建設労働移民のグローバルな文脈を示します。

惠羅さとみ 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・370頁
ISBN978-4-8158-1020-7 C3036
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「中日新聞」 [2022年7月30日付、夕刊、文化・芸能欄] から

宇宙開発をみんなで議論しよう

宇宙開発をみんなで議論しよう

呉羽真・伊勢田哲治編『宇宙開発をみんなで議論しよう』が、「中日新聞」(2022年7月30日付、夕刊)の文化・芸能欄で紹介されました。有人宇宙探査の新たな計画、商業化、軍事化、新興国の台頭 …… 近年、宇宙開発は大きく転換しつつある。市民がそこに関わる必要性をわかりやすく説き、そのための基礎知識や科学技術コミュニケーションの手法、議論のスキルを提供する初めての本。

“小惑星探査機「はやぶさ2」が持ち帰った砂の分析結果など、宇宙の話題に事欠かない昨今。近年の宇宙開発は、科学研究の域を超え、民間宇宙飛行のような商業化や軍事化、新興国の台頭が進む。山口大講師の呉羽と京都大教授の伊勢田の2編者は、この新たな局面で生じた課題には、市民を巻き込んだ意思決定が必要だと説く。望ましい宇宙開発の在り方を考えるための、手引きとなる一冊。”(「中日新聞」2022年7月30日付夕刊、第4面)

呉羽 真・伊勢田哲治 編
税込2,970円/本体2,700円
A5判・並製・256頁
ISBN978-4-8158-1091-7 C3040
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『週刊東洋経済』 [2022年8月6日号] から

明代とは何か
「危機」の世界史と東アジア

明代とは何か

岡本隆司著『明代とは何か』が、『週刊東洋経済』(2022年8月6日号、東洋経済新報社発行)の「ブックレビュー」で紹介されました。現代中国の原型をかたちづくるとともに、東アジア史の転機ともなった明代。世界的危機の狭間で展開した財政経済や社会集団のありようを、室町期や大航海時代との連動もふまえて彩り豊かに描くとともに、民間から朝廷まで全体を貫く構造を鋭くとらえ、新たな時代像を提示します。

“…… 天子による社会の直接支配、北による南の支配、華夷秩序に基づく朝貢一元体制を明朝の特質と規定する。建国当初は機能したこうした理念や体制が、しだいに実態と乖離し崩壊するまでの過程を、経済や社会の構造変化、文化の変遷を含めて彩り豊かに描く。……”(『週刊東洋経済』2022年8月6日号、p.83)

岡本隆司 著
税込4,950円/本体4,500円
A5判・上製・324頁
ISBN978-4-8158-1086-3 C3022
在庫有り


「UTokyo BiblioPlaza」 [2022年7月25日公開、自著紹介] から

〈叫び〉の中世
キリスト教世界における救い・罪・霊性

〈叫び〉の中世

後藤里菜著『〈叫び〉の中世』の自著紹介が、「UTokyo BiblioPlaza」(2022年7月25日公開、東京大学)に掲載されました。中世ヨーロッパは叫び声に満ちていた ——。修道士や「敬虔な女性たち」の内心の叫びから、異界探訪譚が語る罪人の悲鳴、さらには少年十字軍や鞭打ち苦行運動に伴う熱狂まで、キリスト教世界に響き渡る多様な〈声〉に耳を傾け、霊性史・感情史の新生面を切り拓く気鋭の力作。

後藤里菜 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・364頁
ISBN978-4-8158-1040-5 C3022
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『科学史研究』 [第61巻第302号、2022年7月号] から(評者:金山浩司氏)

近代日本の科学論
明治維新から敗戦まで

近代日本の科学論

岡本拓司著『近代日本の科学論』が、『科学史研究』(第61巻第302号、2022年7月号、日本科学史学会発行)で紹介されました。科学の営みや社会との関係をめぐる言説は、維新から対米戦までの歴史の流れに呼応し、劇的に変転した。本書は、文明開化、教養主義の時代を経て、科学を標榜し革命を起こしたマルクス主義の衝撃と、それを契機に誕生した日本主義的科学論をふくむ多様な議論の展開を、初めて一望する。

岡本拓司 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・552頁
ISBN978-4-8158-1019-1 C3010
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『科学史研究』 [第61巻第302号、2022年7月号] から(評者:安孫子誠也氏)

統計力学の形成

統計力学の形成

稲葉肇著『統計力学の形成』が、『科学史研究』(第61巻第302号、2022年7月号、日本科学史学会発行)で紹介されました。アナロジーから基礎づけへ ——。時間的に可逆であるミクロな多数の要素と、不可逆なマクロとを関係づける、統計力学。マクスウェルやボルツマンによる気体運動論との差異を踏まえつつ、その歴史と意義を丹念に追跡。アンサンブル概念はいかに誕生・発展し、フォン・ノイマンによる量子統計に到ったか?

稲葉 肇 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・378頁
ISBN978-4-8158-1036-8 C3040
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『日本植民地研究』 [第34号、2022年6月] から(評者:平山勉氏)

東アジアのなかの満鉄
鉄道帝国のフロンティア

東アジアのなかの満鉄

林采成著『東アジアのなかの満鉄』が、『日本植民地研究』(第34号、2022年6月、日本植民地研究会発行)で紹介されました。帝国拡大の原動力となり、世界でも最高水準を誇った満鉄の鉄道技術はいかにして伝播していったのか。見過ごされてきた本業・鉄道業の姿をはじめて解明、その経済的・技術的インパクトを数量的に位置づけるとともに、東アジア鉄道システムの形成から、戦後再編の新たな全体像を描き出します。

林 采成 著
税込8,580円/本体7,800円
A5判・上製・638頁
ISBN978-4-8158-1013-9 C3022
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『史学雑誌』 [第131編第6号、2022年6月] から(評者:清野真惟氏)

原典 イタリア・ルネサンス芸術論(上下巻)

原典イタリア・ルネサンス芸術論

池上俊一監修『原典 イタリア・ルネサンス芸術論』(上下巻)が、『史学雑誌』(第131編第6号、2022年6月、史学会発行)で紹介されました。美と知が交響する ——。西洋芸術が華やかに開花したそのとき、美術家や知識人は何を考え、どのような言葉を交わしていたのか。本邦初訳の貴重なテクストを多数含む待望のアンソロジー。

池上俊一 監修
税込各9,900円/本体各9,000円
A5判・上製・上524頁+下506頁
ISBN 上:978-4-8158-1026-9 下:978-4-8158-1027-6
C3070
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「朝日新聞」 [2022年7月23日付] から(評者:藤野裕子氏)

村の公証人
近世フランスの家政書を読む

村の公証人

ニコル・ルメートル著『村の公証人』(佐藤彰一・持田智子訳)が、「朝日新聞」(2022年7月23日付)読書欄で紹介されました。勤勉な農夫、貪欲な高利貸し、病を癒す魔術師 ——。公証人テラード一族の家長たちは、宗教戦争を経て訪れたあらたな時代を記録する。彼らが生きた物質的・精神的世界とその変容を、農村から都市にひろがる人々の繫がりとともに活写しながら、公証人が持つ「書くこと」の力に迫る。

ニコル・ルメートル 著
佐藤彰一・持田智子 訳
税込6,380円/本体5,800円
A5判・上製・380頁
ISBN978-4-8158-1089-4 C3022
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「毎日新聞」 [2022年7月23日付] から(評者:岩間陽子氏)

帝国のフロンティアをもとめて
日本人の環太平洋移動と入植者植民地主義

帝国のフロンティアをもとめて

東栄一郎著『帝国のフロンティアをもとめて』(飯島真里子・今野裕子・佐原彩子・佃陽子訳)が、「毎日新聞」(2022年7月23日付)読書欄で紹介されました。環太平洋の各地へと展開した日本人移植民の知られざる相互関係を、入植者植民地主義の概念を用いて一貫して把握。移民排斥を受けた日系アメリカ人によって帝国内外へ移転された人流、知識、技術、イデオロギーの衝撃を初めて捉え、見過ごされたグローバルな帝国の連鎖を浮かび上がらせます。

“…… 19世紀末から20世紀前半は、日本人が激しく地球上を移動した時期である。その動きの意味について本書は、かなり刺激的で挑戦的な答えを投げかけてくる。 …… 日本人の過去について、一方で「侵略」や「帝国主義」という加害者視点があり、他方で「排日移民法」や「日系人収容所」に象徴されるような、被害者視点もある。本書はこの両者を包含する視点を提示してみせる。……
これまで移民史の主たる対象から外れていた、環太平洋な動きをした社会エリートたちの歴史に光を当てたことが、本書の最大の功績だろう。私たちの記憶から消し去られていたこれらの人物は、生き生きと蘇り、戦後日本で活躍した経済人たちと重なる部分もある。…… 日本人がこの時代の過去をより深く理解するために、不可欠な出発点となる書であることは間違いない。”(「毎日新聞」2022年7月23日付)

東 栄一郎 著
飯島真里子・今野裕子・佐原彩子・佃 陽子 訳
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・430頁
ISBN978-4-8158-1092-4 C3021
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『アジア教育史研究』 [第31号、2022年3月] から(評者:茨木智志氏)

歴史教育の比較史

歴史教育の比較史

近藤孝弘編『歴史教育の比較史』が、『アジア教育史研究』(第31号、2022年3月、アジア教育史学会発行)で紹介されました。「歴史認識」を語る前に ——。なぜ歴史をめぐって国どうしが争うのか。世界各地で歴史はどのように教えられてきたのか。歴史家と教育学者の共同作業により、自国史と世界史との関係を軸に、四つの地域の現在までの「歴史教育」の歴史を跡づけ、歴史とは何か、教育とは何かを問い直す、未曾有の試み。

近藤孝弘 編
税込4,950円/本体4,500円
A5判・上製・328頁
ISBN978-4-8158-1011-5 C3022
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『歴史と経済』 [第254号、2022年1月] から(評者:松本俊郎氏)

世界史のなかの東アジアの奇跡

世界史のなかの東アジアの奇跡

杉原薫著『世界史のなかの東アジアの奇跡』が、『歴史と経済』(第254号、2022年1月、政治経済学・経済史学会発行)で紹介されました。豊かさをもたらす工業化の世界的普及は、日本をはじめとする「東アジアの奇跡」なしにはありえなかった。それは「ヨーロッパの奇跡」とは異なる、分配の奇跡だった。地球環境や途上国の行方も見据え、複数の発展径路の交錯と融合によるダイナミックな世界史の姿を提示する、渾身のライフワーク。

“…… 貧困や格差は消滅せず、近年は問題が深刻化している。アプリオリに夢を語ることは歴史学の課題ではない。杉原氏もこうした問題を熟慮してきたに違いない。それでもなお氏は、経済発展の軌道修正と格差の縮小について可能性を語る。多様な問題を腑分けしながら展開される文明史的な歴史解釈は、刺激的な問題提起と発見事実に溢れている。東アジア型発展径路をも相対化し、地球的規模で発展の道を模索する前向きな提言には心が救われる思いがする。”(『歴史と経済』第254号、p.75)

杉原 薫 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・776頁
ISBN978-4-8158-1000-9 C3022
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『企業家研究』 [第20号、2022年7月] から(評者:西尾久美子氏)

ピアノの日本史
楽器産業と消費者の形成

ピアノの日本史

田中智晃著『ピアノの日本史』が、『企業家研究』(第20号、2022年7月、企業家研究フォーラム発行)で紹介されました。富裕層の専有物であったピアノが人々に親しまれるようになった由来を、明治~現代の歴史からたどり、その普及を可能にした意外な原動力を示します。斜陽産業化の危機を超えるメカニズムをはじめてとらえ、音楽教室とともに世界へと拡がった日本の鍵盤楽器産業の全体像を描ききった意欲作。

“…… 複数の関連企業の社史編纂の経験を有する著者によって丹念に収集された資料と多くの業界関係者への聞き取り調査、それらをもとに日本でピアノがどのように普及し楽器産業として成長したのかについて、メーカーと流通の代表的な企業の足跡を丹念にたどりながらまとめられた労作である。
ピアノは高額で、弾くための付随サービスが必須の合成財である。また、大きな技術変化が見込めない製品であるため、買い替えの需要はほとんどない。したがって、ピアノが一定率普及するといずれそれ以上の伸びは期待できなくなる。市場の飽和に直面することが避けがたいということは、市場の拡大が順調であればあるほどその壁が迫ってくるスピードが速くなることを意味する。このジレンマを抱える楽器業界の模索を掬い取ろうとする本書は、読みごたえのある良書である。……”(『企業家研究』第20号、p.11)

田中智晃 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・400頁
ISBN978-4-8158-1029-0 C3021
在庫有り


『電子キーボード音楽研究』 [第16号、2022年] から(評者:金銅英二氏)

ピアノの日本史
楽器産業と消費者の形成

ピアノの日本史

田中智晃著『ピアノの日本史』が、『電子キーボード音楽研究』(第16号、2022年、日本電子キーボード音楽学会発行)で紹介されました。富裕層の専有物であったピアノが人々に親しまれるようになった由来を、明治~現代の歴史からたどり、その普及を可能にした意外な原動力を示します。斜陽産業化の危機を超えるメカニズムをはじめてとらえ、音楽教室とともに世界へと拡がった日本の鍵盤楽器産業の全体像を描ききった意欲作。

田中智晃 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・400頁
ISBN978-4-8158-1029-0 C3021
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「中日新聞」 [2022年7月8日付、文化欄] から

「中日新聞」(2022年7月8日付)の文化欄に、当会の創立40周年を紹介する記事が掲載されました。“名古屋大学出版会 創立40周年 名学術書 復刊に力”


「毎日新聞」 [2022年7月6日付、地方版] から

名古屋大学の歴史 1871~2019(上下巻)

名古屋大学の歴史1871-2019

名古屋大学編『名古屋大学の歴史 1871~2019』(上下巻)が、「毎日新聞」(2022年7月6日付)の地方版で紹介されました。「名大」に歴史あり ——。どのように生まれ、変化してきたのか。教育・研究・大学生活・キャンパスの変遷を、組織の沿革とともに一望できる通史。

名古屋大学 編
税込各2,970円/本体各2,700円
A5判・並製・上284頁+下320頁
ISBN 上:978-4-8158-1063-4 下:978-4-8158-1064-1
C0000
在庫有り


『中国研究月報』 [2022年6月号、第76巻第6号] から(評者:八塚正晃氏)

毛沢東時代の経済
改革開放の源流をさぐる

毛沢東時代の経済

中兼和津次編『毛沢東時代の経済』が、『中国研究月報』(2022年6月号、第76巻第6号、中国研究所発行)で紹介されました。現代中国のブラックボックスを開く ——。破壊的だったとされる毛沢東時代。ではなぜその後、急速な発展をなしえたのか。人民公社、重化学工業優先、三線建設など、当時の制度・政策の効果をはかり、現在への「遺産」を問う。歴史的視野のもと、冷静な経済学的分析をくわえた画期的著作。

“…… まず、各章の執筆者が現状利用できる資料を駆使して高い水準で毛沢東時代の社会・経済の実相を丁寧に描いていることは評価に値しよう。毛沢東時代の経済は、公的な統計の信頼性が不十分な中で実態の解明が困難との印象があるが、こうした制約の中にあっても、新たに発掘されたマクロ・ミクロな統計データや推計のモデルを駆使することで解明が一定程度可能であることを本書は示している。…… また、各章の多角的な視点が明確な問題意識で束ねられていることによって、本書は毛沢東時代に対する体系的な理解を促す。…… さらに本書で問題意識として語られていないものの、灌漑事業の方法(第4章)、重化学工業の「156プロジェクト」(第7章)など毛沢東時代の経済においてソ連の多面的な影響が見られたことも興味深かった。この他にも、読者は、本書の各章を読み進めるうちに毛沢東時代の経済に共通する様々な要素を発見することになるであろう。……”(『中国研究月報』2022年6月号、p.41)

中兼和津次 編
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・312頁
ISBN978-4-8158-1031-3 C3033
在庫有り


『中国研究月報』 [2022年6月号、第76巻第6号] から(評者:黄偉修氏)

大陸反攻と台湾
中華民国による統一の構想と挫折

大陸反攻と台湾

五十嵐隆幸著『大陸反攻と台湾』が、『中国研究月報』(2022年6月号、第76巻第6号、中国研究所発行)で紹介されました。米中両大国のはざまで見落とされてきた台湾の「大陸反攻」をはじめて解明。大陸奪還と中国統一を目標に展開された軍事・外交政策の実像とその変容を、「蔣経国日記」など最新の資料から浮き彫りにするとともに、今日の東アジア国際政治の最大の焦点となっている台湾海峡危機の全体像を歴史的視野で描き出します。

“…… 評者は以下の理由で、本書を高く評価している。第一は、大陸反攻をめぐる蔣介石・蔣経国政権の軍事戦略を総合的に分析している点である。…… 1949~91年の中華民国の軍事戦略、とくに大陸反攻の内容とその変遷、さらに大陸反攻から現在の「守勢防衛」に至るプロセスを総合的に分析した、日本のみならず中華圏においても最初の専門書である。第二は、「蔣経国日記」をはじめ、最新の史料や著者によるインタビューなど一次資料を用い、米国や蔣介石政権の立場だけではなく、大陸反攻をめぐる蔣介石、蔣経国、高級将校の間の矛盾・対立を生き生きと描き、体系的に分析している点である。…… 第三は、…… これまでの1950、60年代における台湾の軍事戦略、米中・米台・中台関係をめぐるいくつかの通説を、軍事の観点から蔣介石による政権運営の全体像を描くことで見事に覆している点である。これらの指摘は、将来の米中・米台・中台関係の研究をさらに進展させるものと思われる。……”(『中国研究月報』2022年6月号、p.44)

五十嵐隆幸 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・400頁
ISBN978-4-8158-1034-4 C3031
在庫有り


『教養学部報』 [第637号、2022年6月] から

移り棲む美術
ジャポニスム、コラン、日本近代洋画

移り棲む美術

『移り棲む美術』の著者・三浦篤先生の自著紹介が、『教養学部報』(第637号、2022年6月、東京大学教養学部)に掲載されました。グローバルな〈美〉の往還 ——。日本から西洋へ、そして西洋から日本へと海を越えた芸術の種子。どのように移動・変容・開花したのか。「アカデミスム対前衛」の構図に囚われることなく、ジャポニスムの多面的展開から近代洋画の創出まで、フランスを中心に一望し、選択的な交雑による新たな芸術史を描きだします。

三浦 篤 著
税込6,380円/本体5,800円
A5判・上製・574頁
ISBN978-4-8158-1016-0 C3071
在庫有り


『図書新聞』 [2022年7月2日号、第3549号] から(評者:小林卓也氏)

概念と生
ドゥルーズからアガンベンまで

概念と生

多賀茂著『概念と生』が、『図書新聞』(2022年7月2日号、第3549号、武久出版発行)で紹介されました。世界が違って見える。—— 概念は、思想家の身体を通して、ある時、ある場所で生まれ、受け手の身体を通して生を変えるだろう。ドゥルーズ、フーコー、ラカン、バルト、ガタリ、アガンベンらの、真に驚くべき概念とつきあい、各々の声や文体とともに、思想の核心を読みひらいた透徹の書。

多賀 茂 著
税込3,300円/本体3,000円
四六判・上製・266頁
ISBN978-4-8158-1058-0 C3010
在庫有り


『アジア経済』 [第63巻第2号、2022年6月] から(評者:渡辺綾氏)

平和構築を支援する
ミンダナオ紛争と和平への道

平和構築を支援する

谷口美代子著『平和構築を支援する』が、『アジア経済』(第63巻第2号、2022年6月、アジア経済研究所発行)で紹介されました。リベラル平和構築論を超えて ——。15万人に及ぶ犠牲者を出し、日本も関わるアジアの代表的地域紛争の和平をいかに実現すべきか。徹底した現地調査により、分離独立紛争とその影に隠れた実態を解明、外部主導の支援の限界を示して、現地社会の視点をふまえた平和構築のあり方を考えます。

“…… ミンダナオ紛争を扱った書物は幅広い。長年、現地への支援に携わってきたNGOが出すレポートや、ミンダナオ、ムスリム社会における宗教的・構造的側面からミンダナオ紛争を説明するものなどがある。ミンダナオでの権力構造や違法経済による内戦への影響を論じた研究もあるが(Lara and Schoofs 2017)、「国家-武装勢力-クラン」の三者間関係を明示的に分析の射程に入れ内戦の動態を考察したものは、本書以外に見当たらない。三者間関係という観点から紛争の複雑な構造を明らかにし、分離独立紛争とクラン間対立による暴力発生の相互作用を明らかにした点で、本書の意義は大きい。
複雑なミンダナオ社会の成り立ちや通時的な変化を詳述し、現在に通じるミンダナオの特徴や暴力発生の根源を丁寧に描いた点でも評価される。歴史を遡り、イスラームの到来やムスリム指導者を中心としたコミュニティの形成・拡大、植民地支配、独立後の国家政策により変容するムスリム社会の成り立ちを紐解いた。これほど長期的視点をもって、現在まで通底するムスリム社会の権力構造を調べ上げた文献は、日本国外でもほとんどないと思われる。ゆえに、ミンダナオ紛争やムスリム社会を学びたいと志す者には必読の書となるだろう。……”(『アジア経済』第63巻第2号、pp.84-85)

谷口美代子 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・390頁
ISBN978-4-8158-0985-0 C3031
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「毎日新聞」 [2022年6月18日付、読書欄] から(評者:三浦雅士氏)

明代とは何か
「危機」の世界史と東アジア

明代とは何か

岡本隆司著『明代とは何か』が、「毎日新聞」(2022年6月18日付)読書欄で紹介されました。現代中国の原型をかたちづくるとともに、東アジア史の転機ともなった明代。世界的危機の狭間で展開した財政経済や社会集団のありようを、室町期や大航海時代との連動もふまえて彩り豊かに描くとともに、民間から朝廷まで全体を貫く構造を鋭くとらえ、新たな時代像を提示します。

“…… 宋代は世界史の台風の眼になったわけだが、それに比べて明代はいかにも地味である。だが、と、著者は問い直す。…… 明代は宋元代の萌芽を育んで肥大させ、今日ある中国の原型を作ったのだ。その展開の俯瞰は、宋元明清と、中国がつねに異民族支配下で安定してきたことの意味まで考えさせる。人間にとって政治とは何か、原点に引き返して考え直すべき時と思わせずにおかない本である。”(「毎日新聞」2022年6月18日付、第11面)

岡本隆司 著
税込4,950円/本体4,500円
A5判・上製・324頁
ISBN978-4-8158-1086-3 C3022
在庫有り


『週刊読書人』 [2022年6月17日号、第3444号] から(評者:谷古宇尚氏)

ゴシック新論
排除されたものの考古学

ゴシック新論

木俣元一著『ゴシック新論』が、『週刊読書人』(2022年6月17日号、第3444号、読書人発行)で紹介されました。美術史・建築史のマスター・ナラティヴに組み込まれている「ゴシック誕生」。しかし、中世ヨーロッパ建築・彫刻の多様さはその直線的な物語から排除されてきた。大聖堂を飾る人像円柱やマイクロアーキテクチャなどの豊かな造形に光を当て、時代様式を超えた新たなゴシック像を提示します。

木俣元一 著
税込8,800円/本体8,000円
A5判・上製・610頁
ISBN978-4-8158-1060-3 C3071
在庫有り


「読売新聞」 [2022年6月12日付、読書欄] から(評者:牧野邦昭氏)

東アジア国際通貨と中世日本
宋銭と為替からみた経済史

東アジア国際通貨と中世日本

井上正夫著『東アジア国際通貨と中世日本』が、「読売新聞」(2022年6月12日付)読書欄で紹介されました。貨幣、この自由にして御しがたきもの ——。宋・遼・金・元・明・日本・朝鮮など、東アジア各地に流通した宋銭は、それぞれの政権の思惑を超え、為替や紙幣を誘発しつつ、経済・社会・政治を大きく動かしていった。文献と考古学的知見を踏まえた丹念な検証により、従来の見方を一新する画期的な貨幣・金融史。

“…… 本書を通じて宋銭がもたらした影響と貨幣の複雑な性質を知ることは、国家から中立的な仮想通貨が広まりつつある現在の金融政策の課題を考えるうえでも役に立つだろう。”(「読売新聞」2022年6月12日付、第12面)

井上正夫 著
税込8,800円/本体8,000円
A5判・上製・584頁
ISBN978-4-8158-1061-0 C3033
在庫有り


「読売新聞」 [2022年6月12日付、読書欄] から(評者:河江肖剰氏)

ナイル世界のヘレニズム
エジプトとギリシアの遭遇

ナイル世界のヘレニズム

周藤芳幸著『ナイル世界のヘレニズム』が、「読売新聞」(2022年6月12日付)読書欄の「空想書店」(河江肖剰氏)で紹介されました。西洋最古のグローバル化の時代であったヘレニズム期、エジプトとギリシアという二つの高文化の交錯は何をもたらしたのか。中心都市アレクサンドリアに見るプトレマイオス朝の表象戦略から在地社会の文化変容まで、エジプトでの長期発掘調査をもとに、新たな地中海世界像を提示する労作。

“…… 調査現場の生の声とデータが豊富。ロゼッタストーンの重要性は実は書かれた内容そのものだという。”(「読売新聞」2022年6月12日付、第11面)

周藤芳幸 著
税込7,480円/本体6,800円
A5判・上製・438頁
ISBN978-4-8158-0785-6 C3022
在庫有り


「東京新聞・中日新聞」 [2022年6月4日付・5日付] から

名古屋大学の歴史 1871~2019(上下巻)

名古屋大学の歴史1871-2019

名古屋大学編『名古屋大学の歴史 1871~2019』(上下巻)が、「東京新聞・中日新聞」(2022年6月4日付・5日付)の読書欄で紹介されました。「名大」に歴史あり ——。どのように生まれ、変化してきたのか。教育・研究・大学生活・キャンパスの変遷を、組織の沿革とともに一望できる通史。

名古屋大学 編
税込各2,970円/本体各2,700円
A5判・並製・上284頁+下320頁
ISBN 上:978-4-8158-1063-4 下:978-4-8158-1064-1
C0000
在庫有り


「長崎新聞」 [2022年5月29日付、読書欄] 他から

概念と生
ドゥルーズからアガンベンまで

概念と生

多賀茂著『概念と生』が、「長崎新聞」(2022年5月29日付、読書欄)ほか計6地方紙で紹介されました。世界が違って見える。—— 概念は、思想家の身体を通して、ある時、ある場所で生まれ、受け手の身体を通して生を変えるだろう。ドゥルーズ、フーコー、ラカン、バルト、ガタリ、アガンベンらの、真に驚くべき概念とつきあい、各々の声や文体とともに、思想の核心を読みひらいた透徹の書。[高知新聞:2022年5月7日付、日本海新聞・琉球新報:2022年5月8日付、宮崎日日新聞:2022年5月14日付、下野新聞:2022年5月15日付、長崎新聞:2022年5月29日付]

多賀 茂 著
税込3,300円/本体3,000円
四六判・上製・266頁
ISBN978-4-8158-1058-0 C3010
在庫有り


『アジア研究』 [第68巻第2号、2022年4月] から(評者:やまだあつし氏)

緑の工業化
台湾経済の歴史的起源

緑の工業化

堀内義隆著『緑の工業化』が、『アジア研究』(第68巻第2号、2022年4月、アジア政経学会発行)で紹介されました。植民地下の台湾は、たんに帝国の食糧供給基地にとどまったのではなかった。見過ごされてきた工業化の契機を、豊かな農産品の加工・商品化と、それに伴う機械化・電動化に見出し、小零細企業が叢生する農村からの発展経路を実証、戦後台湾経済の原型をとらえた注目の成果。

堀内義隆 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・286頁
ISBN978-4-8158-1032-0 C3033
在庫有り


『社会経済史学』 [第88巻第1号、2022年5月] から(評者:塩谷昌史氏)

海のロシア史
ユーラシア帝国の海運と世界経済

海のロシア史

左近幸村著『海のロシア史』が、『社会経済史学』(第88巻第1号、2022年5月、社会経済史学会発行)で紹介されました。第一次グローバリゼーションのもと、東アジアの海とヨーロッパの海を結んだ長距離航路と、義勇艦隊が果たした役割とは。政治と経済が混然一体となった海洋戦略により、極東を含む帝国の辺境を統合、国際的経済闘争への参入を試みる姿を捉え、ロシア史をグローバルヒストリーに位置づけます。

左近幸村 著
税込6,380円/本体5,800円
A5判・上製・354頁
ISBN978-4-8158-1008-5 C3022
在庫有り


『大原社会問題研究所雑誌』 [第763号、2022年5月] から(評者:南修平氏)

建設労働と移民
日米における産業再編成と技能

建設労働と移民

惠羅さとみ著『建設労働と移民』が、『大原社会問題研究所雑誌』(第763号、2022年5月、法政大学大原社会問題研究所編)で紹介されました。オリンピックや相次ぐ再開発を控え、高齢化と人手不足が著しい建設現場にいち早く導入されてきたベトナム人などの外国人技能実習生たち。安価な移民労働力の利用とする画一的理解をこえて、日米の比較から産業再編成と技能継承をめぐる課題に迫り、建設労働移民のグローバルな文脈を示します。

惠羅さとみ 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・370頁
ISBN978-4-8158-1020-7 C3036
在庫有り


『アステイオン』 [96号、2022年5月] から(評者:島田英明氏)

世俗の時代(上下巻)

世俗の時代

チャールズ・テイラー著/千葉眞監訳『世俗の時代』(上下巻)が、『アステイオン』(96号、2022年5月、サントリー文化財団アステイオン編集委員会編)の「〈世界の思潮〉夜闇へのまなざし —— 本居宣長とチャールズ・テイラー」(島田英明氏)で紹介されました。彷徨える私たちの時代 ——。壮大な歴史的展望のもとに宗教・思想・哲学の曲折に満ちた展開を描き出す記念碑的大著。

チャールズ・テイラー 著
千葉 眞 監訳
税込各8,800円/本体各8,000円
A5判・上製・上548頁+下502頁
ISBN 上:978-4-8158-0988-1 下:978-4-8158-0989-8
C3010
在庫有り


『中国経済経営研究』 [第6巻第1号、2022年5月] から(評者:久保亨氏)

毛沢東時代の経済
改革開放の源流をさぐる

毛沢東時代の経済

中兼和津次編『毛沢東時代の経済』が、『中国経済経営研究』(第6巻第1号、2022年5月、中国経済経営学会発行)で紹介されました。現代中国のブラックボックスを開く——。破壊的だったとされる毛沢東時代。ではなぜその後、急速な発展をなしえたのか。人民公社、重化学工業優先、三線建設など、当時の制度・政策の効果をはかり、現在への「遺産」を問う。歴史的視野のもと、冷静な経済学的分析をくわえた画期的著作。

“…… 本書は、全体として、実証的データに基づき、毛沢東時代の中国経済がある程度の発展を記録したことを様々な角度から明らかにするとともに、それを可能にしたシステムへの考察を深めた成果といえよう。各章の執筆者は、いずれも担当する分野に関する実証研究を積み重ねてきた研究者であり、本書は、今後、統制計画経済期中国経済の総合評価を進める際、必ず顧みられるべき一書となるに違いない。……”(『中国経済経営研究』第6巻第1号、pp.50-51)

中兼和津次 編
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・312頁
ISBN978-4-8158-1031-3 C3033
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『移民政策研究』 [第14号、2022年5月] から(評者:五十嵐泰正氏)

建設労働と移民
日米における産業再編成と技能

建設労働と移民

惠羅さとみ著『建設労働と移民』が、『移民政策研究』(第14号、2022年5月、移民政策学会発行)で紹介されました。オリンピックや相次ぐ再開発を控え、高齢化と人手不足が著しい建設現場にいち早く導入されてきたベトナム人などの外国人技能実習生たち。安価な移民労働力の利用とする画一的理解をこえて、日米の比較から産業再編成と技能継承をめぐる課題に迫り、建設労働移民のグローバルな文脈を示します。

“…… 最も重要な本書の意義は、日本における移民/外国人労働者研究のステージを大きく一つ引き上げたところにある、と言うべきではなかろうか。上述の通り、再編過程のさなかにある建設業という産業領域とそこでの労働や技能、労使関係を焦点化した本書は、まずは建設業を対象とした産業社会学・労働社会学として貴重な実証研究となっており、その分析の土台の上でこそインフォーマル経済化が拡大する中での(アメリカ)、あるいは労働力不足に直面した国家政策としての(日本)、移民/外国人建設労働者の働きかたや意識、集合行動やキャリア形成が描写される。……”(『移民政策研究』第14号、pp.206-207)

惠羅さとみ 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・370頁
ISBN978-4-8158-1020-7 C3036
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『図書新聞』 [2022年5月28日号、第3544号] から(評者:大橋厚子氏)

世界史のなかの東南アジア(上下巻)
歴史を変える交差路

世界史のなかの東南アジア

アンソニー・リード著『世界史のなかの東南アジア』(太田淳・長田紀之監訳、上下巻)が、『図書新聞』(2022年5月28日号、第3544号、武久出版発行)で紹介されました。世界史を動かし続けた東南アジアを、先史から現代に至る全体史として描くとともに、豊かな多様性を生み出す人びとの姿に迫る決定版。

アンソニー・リード 著
太田 淳・長田紀之 監訳
税込各3,960円/本体各3,600円
A5判・上製・上398頁+下386頁
ISBN 上:978-4-8158-1051-1 下:978-4-8158-1052-8
C3022
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『日経サイエンス』 [2022年6月号] から

世界の発光生物
分類・生態・発光メカニズム

世界の発光生物

大場裕一著『世界の発光生物』が、『日経サイエンス』(2022年6月号、日経サイエンス社発行)の「新刊Guide」で紹介されました。発光バクテリアからツキヨタケ、ホタル、そしてチョウチンアンコウなどの脊椎動物まで ——。現在知られているすべての発光生物について、第一人者が分子生物学的知見を含めて紹介。光る生き物たちを通して見える世界と、そこに至る進化の道筋を描き出します。

“「世界の発光生物を知られるかぎり余すところなく紹介すること」が本書の目的。その発光メカニズムとは? 光る目的とは? その名がよく知られているチョウチンアンコウでさえ深海中での行動を見た人は誰もおらず、発光の目的もメカニズムも推測なのだそうだ。細菌から条鰭類(魚類の大部分)まで分子生物学の知見を含めて解説する。”(『日経サイエンス』2022年6月号、p.111)

大場裕一 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・456頁
ISBN978-4-8158-1057-3 C3045
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「読売新聞」 [2022年5月15日付、読書面「始まりの1冊」] から

近代中国と海関

近代中国と海関

岡本隆司著『近代中国と海関』の自著紹介が、「読売新聞」(2022年5月15日付)読書面の「始まりの1冊」に掲載されました。【内容】中国と西洋との交渉の場であったばかりでなく、西洋人が管理運営にも携わった海関制度を軸として、16世紀末から20世紀初にわたる中国の国家構造とその変遷を解明した力作。西洋側にとっての通商問題が、中国の財政体制と政治構造の文脈に置き換えられていく過程の叙述は本書の圧巻である。西洋近代モデルに対する実証的な批判は、ひとり中国のみならず広くアジア研究の活性化をも促すであろう。

岡本隆司 著
税込10,450円/本体9,500円
A5判・上製・700頁
ISBN978-4-8158-0357-5 C3022
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『図書新聞』 [2022年5月21日号、第3543号] から(評者:小松志朗氏)

グローバル・ヘルス法
理念と歴史

グローバル・ヘルス法

西平等著『グローバル・ヘルス法』が、『図書新聞』(2022年5月21日号、第3543号、武久出版発行)で紹介されました。国際的な保健協力が目指す「健康」とは何か。その実現のために、どのような法や制度が創出されてきたのか。従来の国際法学を超えて、「社会医学」と「生物医学」の対抗関係を軸に、現在の世界保健機関(WHO)にいたるグローバルな「健康」体制のあり方を問い直す。パンデミックの時代に必読の書。

“…… 国際社会における感染症対策の考え方もコロナを機に変わり得るし、すでに変わった部分もある。本書はその変化を正しく理解・評価するための手がかりを与えてくれる。タイトルにあるグローバル・ヘルス法とは、「ヘルスという規範的理念を、現にある世界において実現することを目的とする制度」であり、当然感染症が射程に入る。この制度の歴史的発展の過程を、本書は豊富な資料と的確な視点により鮮やかに描き出す。…… コロナのパンデミックは複雑な現象であり、日々のニュースを追うだけで精一杯という人は少なくないだろう。膨大な情報に振り回されず問題の本質をつかむには、本書のような優れた専門書を読むに限る。……”(『図書新聞』2022年5月21日号、第4面)

西 平等 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・350頁
ISBN978-4-8158-1056-6 C3032
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『週刊読書人』 [2022年4月15日号、第3436号] から(評者:河島思朗氏)

ホメロスの逆襲
それは西洋の古典か

ホメロスの逆襲

小川正廣著『ホメロスの逆襲』が、『週刊読書人』(2022年4月15日号、第3436号、読書人発行)で紹介されました。最古・最大の「西洋古典」とされるホメロス。だが、創造と受容のいずれも西洋の枠組みには収まっていなかった。実際に西方に伝わったものとその行方を明確にする一方、オリエントの神話・宗教からビザンツの年代記やオスマンの歴史書まで探査し、巨大な実像を初めて捉えた画期的労作。

“…… 紀元前8世紀頃、ホメロスと呼ばれる詩人が叙事詩『イリアス』と『オデュッセイア』を作りあげた。西洋に現存する最古の文学作品であり、2つあわせて2万7千行以上の長さをもつ。この叙事詩は西洋文明の幕開けを彩る記念碑であり、西洋に通底する文化の源流に位置づけられている。しかし本書は、この叙事詩が西洋の古典になっていく過程を紐解くことで、ホメロスを「西洋」という枠組みから解き放とうとする。「それは西洋の古典か」という副題に表される問いが「逆襲」の出発点となるのだ。…… 古代から現代へと貫かれた太い縦軸に、各時代背景や作品解釈という横軸を丁寧に折り重ねながら「逆襲の軌跡」をたどる大著だ。”(『週刊読書人』2022年4月15日号、第3面)

小川正廣 著
税込9,900円/本体9,000円
A5判・上製・634頁
ISBN978-4-8158-1050-4 C3098
在庫有り


『国際法外交雑誌』 [第120巻第4号、2022年1月] から(評者:豊田哲也氏)

法と力
戦間期国際秩序思想の系譜

法と力

西平等著『法と力』が、『国際法外交雑誌』(第120巻第4号、2022年1月、国際法学会発行)で紹介されました。「国際法 vs 現実政治」を超えて ——。第一次大戦後の国際法学の中から「国際政治学」的思考は誕生した。〈国際紛争は裁判可能なのか〉という連盟期の最重要課題を軸に、法と力の関係をダイナミックに捉える諸学説の系譜をたどることで、モーゲンソーやE・H・カーらの思想を新たに位置づけ直す力作。

“…… 本書の数々の鋭い指摘の中でも特に目を引くのは、当時の最新の学問である労働法学が国際法学に与えていた影響の大きさの指摘である。モーゲンソーが労働法学者ジンツハイマー(1875-1945)から直接の影響を受けていた経緯が興味深く、また、E.H.カーの名著『危機の二十年』の随所に労使関係と国際関係のアナロジーが見られるとの指摘(本書159-160頁)や、ブライアリが国際裁判の機能的限界を論じる際に国内法における労使紛争を念頭において論じているとの指摘(本書158-159頁)も興味深い。…… 本書の指摘する国際政治学的思考の本質とその思想史的位置付けは、国際法学と国際政治学との関係性を考えていく上で重要であり、また、戦間期の国際法学を、単に国連憲章制定の前史としてではなく、当時の文脈の中で理解するために欠かすべからざる論点を提示していると言えるであろう。……”(『国際法外交雑誌』第120巻第4号、pp.118-119)

西 平等 著
税込7,040円/本体6,400円
A5判・上製・398頁
ISBN978-4-8158-0919-5 C3032
在庫有り


Japanese Yearbook of International Law [第63号、2021年3月] から(評者:小畑郁氏)

法と力
戦間期国際秩序思想の系譜

法と力

西平等著『法と力』が、Japanese Yearbook of International Law(第63号、2021年3月、国際法協会日本支部発行)で紹介されました。「国際法 vs 現実政治」を超えて ——。第一次大戦後の国際法学の中から「国際政治学」的思考は誕生した。〈国際紛争は裁判可能なのか〉という連盟期の最重要課題を軸に、法と力の関係をダイナミックに捉える諸学説の系譜をたどることで、モーゲンソーやE・H・カーらの思想を新たに位置づけ直す力作。

西 平等 著
税込7,040円/本体6,400円
A5判・上製・398頁
ISBN978-4-8158-0919-5 C3032
在庫有り


「中日新聞」 [2022年5月2日付、夕刊文化・芸能欄] から

世界の発光生物
分類・生態・発光メカニズム

世界の発光生物

大場裕一著『世界の発光生物』が、「中日新聞」(2022年5月2日付)夕刊の文化・芸能欄で紹介されました。発光バクテリアからツキヨタケ、ホタル、そしてチョウチンアンコウなどの脊椎動物まで ——。現在知られているすべての発光生物について、第一人者が分子生物学的知見を含めて紹介。光る生き物たちを通して見える世界と、そこに至る進化の道筋を描き出します。

“ホタルやキノコ類、チョウチンアンコウなど、光を発する「発光生物」。現在世界で知られる約7000種を、第一人者でもある中部大教授の著者が網羅的に紹介する。分類別に、生態や発光の仕組み、何のために光るのか、遺伝子解析から明らかになった進化の筋道などを解説する。日本は世界的に見ても種類が豊富だという。”(「中日新聞」2022年5月2日付夕刊、第5面)

大場裕一 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・456頁
ISBN978-4-8158-1057-3 C3045
在庫有り


「朝日新聞」 [2022年5月7日付] から(評者:犬塚元氏)

グローバル・ヘルス法
理念と歴史

グローバル・ヘルス法

西平等著『グローバル・ヘルス法』が、「朝日新聞」(2022年5月7日付)読書面で紹介されました。国際的な保健協力が目指す「健康」とは何か。その実現のために、どのような法や制度が創出されてきたのか。従来の国際法学を超えて、「社会医学」と「生物医学」の対抗関係を軸に、現在の世界保健機関(WHO)にいたるグローバルな「健康」体制のあり方を問い直す。パンデミックの時代に必読の書。

西 平等 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・350頁
ISBN978-4-8158-1056-6 C3032
在庫有り


『図書新聞』 [2022年4月2日号、第3537号] から(評者:小野寺史郎氏)

愛国とボイコット
近代中国の地域的文脈と対日関係

愛国とボイコット

吉澤誠一郎著『愛国とボイコット』が、『図書新聞』(2022年4月2日号、第3537号、武久出版発行)で紹介されました。中国ナショナリズムの実像 ——。時に暴力をともなう激しい対日ボイコットはなぜ繰り返されたのか。たんなる外交懸案の解決でも自国工業の振興でもない、それぞれの運動が生じた異なる地域事情と利害・思想を詳らかにするとともに、それらが愛国主義へとつながっていくメカニズムを捉えた力作。

“本書は近代中国のナショナリズム研究をリードしてきた著者による待望の新著である。本書が扱うのは、1908年の第二辰丸事件から1925年の五卅運動に至る「都市を中心に起こった大衆的な愛国運動」(1頁)である。…… 日中英米の外交文書を博捜し、様々な新事実やエピソードを通じて、個々の運動の具体的な様相を明らかにすることを目指す。本書が特に重視するのは、学生・商工業者・労働者といった担い手、運動を論評した知識人、運動を政権奪取の手段として採用した国民党や共産党、さらにはその時々の中国政府や租界工部局、運動の対象となった日本の商人や外交官といった、立場や地域の違いによる運動への関わり方の違いである。……”(『図書新聞』2022年4月2日号、第4面)

吉澤誠一郎 著
税込4,950円/本体4,500円
A5判・上製・314頁
ISBN978-4-8158-1048-1 C3022
在庫有り


『図書新聞』 [2022年3月12日号、第3534号] から(評者:川平敏文氏)

詩文と経世
幕府儒臣の十八世紀

詩文と経世

山本嘉孝著『詩文と経世』が、『図書新聞』(2022年3月12日号、第3534号、武久出版発行)で紹介されました。江戸時代の漢詩文制作はどのように政治と結びつき、古来の言葉に何が託されたのか。これまで注目されてこなかった幕府儒臣に焦点を当て、漢詩・漢文書簡・建議などの多彩な表現を読み解くとともに、武家の学問論や民間の技芸論をも視野に入れて、近世日本における「文」の行方を問い直します。

“近世の漢詩文研究に、また新しい才能が生まれた。そんな感慨をまずは記しておきたい。…… これまで文学・思想史研究において、18世紀の漢詩文といえば、伊藤仁斎に始まる古義学派、荻生徂徠に始まる徂徠学派の時代という印象が強く、鳩巣ら朱子学派の影は非常に薄かった。本書は逆にそれを中心に据える。画期的な視点の転換と言えるであろう。…… ”(『図書新聞』2022年3月12日号、第5面)

山本嘉孝 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・440頁
ISBN978-4-8158-1043-6 C3095
在庫有り


『図書新聞』 [2022年3月5日号、第3533号] から(評者:櫻井康人氏)

〈叫び〉の中世
キリスト教世界における救い・罪・霊性

〈叫び〉の中世

後藤里菜著『〈叫び〉の中世』が、『図書新聞』(2022年3月5日号、第3533号、武久出版発行)で紹介されました。中世ヨーロッパは叫び声に満ちていた ——。修道士や「敬虔な女性たち」の内心の叫びから、異界探訪譚が語る罪人の悲鳴、さらには少年十字軍や鞭打ち苦行運動に伴う熱狂まで、キリスト教世界に響き渡る多様な〈声〉に耳を傾け、霊性史・感情史の新生面を切り拓く気鋭の力作。

“歴史を紐解く手段は様々であるが、〈叫び〉という感情を切り口にすれば、歴史により肉迫できるであろうことは想像に難くない。ただし、それを実践することは口で言うほど容易いことではなく、幅広い史料調査と史料の深い読みが必要となり、並大抵のことではなしえない。しかし、本書はそのような骨の折れる作業を克服し、従来の研究とは異なった角度から中世ヨーロッパ世界の実像とその変容を、より深く、より色鮮やかに描くことに成功している。…… トピックごとに背景・解説が加えられており、門外漢に理解しやすくなるように配慮されている点も本書の価値を高めている。……”(『図書新聞』2022年3月5日号、第5面)

後藤里菜 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・364頁
ISBN978-4-8158-1040-5 C3022
在庫有り


『週刊読書人』 [2022年2月11日号、第3427号] から(評者:中道寿一氏)

政治的暴力の共和国
ワイマル時代における街頭・酒場とナチズム

政治的暴力の共和国

原田昌博著『政治的暴力の共和国』が、『週刊読書人』(2022年2月11日号、第3427号、読書人発行)で紹介されました。苛烈な暴力を許容する社会はいかにして生まれたのか ——。議会制民主主義を謳うワイマル共和国。だが、街頭は世論を左右する新たな公共圏として、ナチスや共産党のプロパガンダの場となり、酒場を拠点とした「暴力のサブカルチャー」が形成されていく。実像を初めて描きだした力作。

“本書は、膨大かつ綿密な資料収集の下に、克明にまとめられた専門書であるが、文句なく「面白い」。400頁を超える浩瀚な歴史研究書であるが、当時の状況を明瞭に想起させ、重苦しい緊張感を与えながら、一気に読み進めさせる、気迫に満ちた書物である。……「世界で最も民主的な憲法」の下、政治的暴力が常時行使され、「暴力それ自体が異常だと感じない感覚の麻痺」により、暴力が「政治的変化の手段として社会的に受容」されたこと、そして、「労働者獲得を強く志向した唯一の非マルクス主義政党であり、運動」であったナチ党に人々が「魅力」を感じたことを示すことによって、「もう一つの共和国」の姿を見事に描いている。”(『週刊読書人』2022年2月11日号、第3面)

原田昌博 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・432頁
ISBN978-4-8158-1039-9 C3022
在庫有り


『週刊読書人』 [2022年1月28日号、第3425号] から(評者:黒古一夫氏)

水上勉
文学・思想・人生

水上勉

藤井淑禎著『水上勉』が、『週刊読書人』(2022年1月28日号、第3425号、読書人発行)で紹介されました。事実と虚構のあわいに求められた道とは ——。文明を問う「社会派推理小説」によって出発した水上勉。だが、自らの生と重ねて「寺を焼き」「竹を削り」一休・良寛の境涯を跡づけつつ、遂には芸術と救済の向こうへと歩み出す。晩年の日々まで、その文業を初めて本格的に捉えた畢生の力作。

“…… その精緻な水上作品の「読み」を基にして、書誌(資料)や先行研究、年譜などを駆使して構築された作家論と言ってよく、文学研究はかくあるべし、と思わせる出来になっている。……”(『週刊読書人』2022年1月28日号、第5面)

藤井淑禎 著
税込3,520円/本体3,200円
四六判・上製・294頁
ISBN978-4-8158-1047-4 C3095
在庫有り


『社会事業史研究』 [第61号、2022年3月] から(評者:西﨑緑氏)

戦争障害者の社会史
20世紀ドイツの経験と福祉国家

戦争障害者の社会史

北村陽子著『戦争障害者の社会史』が、『社会事業史研究』(第61号、2022年3月、社会事業史学会編)で紹介されました。二度の大戦により、300万人におよぶ大量の戦争障害者を生み出したドイツで、国家に奉仕した「英雄」はどのようなその後を生きたのか。公的支援や医療の発達、義肢や盲導犬などの補助具の発展と、他方での差別や貧困、ナチへの傾倒などの多面的な実態を丁寧に描き、現代福祉の淵源を示します。

北村陽子 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・366頁
ISBN978-4-8158-1017-7 C3022
在庫有り


『外交』 [第72号、2022年3月] から

南シナ海問題の構図
中越紛争から多国間対立へ

南シナ海問題の構図

庄司智孝著『南シナ海問題の構図』が、『外交』(第72号、2022年3月号、外務省発行)で紹介されました。中国の急速な台頭により国際政治の焦点となった危機の構造を、主要な当事者であるベトナム・フィリピンやASEANの動向をふまえて解明、非対称な大国と向きあう安全保障戦略をとらえ、米中対立の枠組みにはおさまらない紛争の力学を浮かび上がらせて、危機の行方を新たに展望します。

“南シナ海問題は、米中の大国間対立のみに還元できない。中越の「陣取り合戦」が、ASEAN諸国、米国と日本・豪州などその同盟国を巻き込み、多国間対立に拡大した ——。本書は、一党独裁維持のため「全方位」外交を展開するベトナム、民主的な政権交代で路線転換したフィリピン、そして一体性に課題を抱えるASEANが、それぞれ国際的な規範を活用する自律的なアクターとして、地域秩序に与えた影響力を浮き彫りにする。”(『外交』第72号、p.147)

庄司智孝 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・344頁
ISBN978-4-8158-1054-2 C3031
在庫有り


『日伊文化研究』 [第60号、2022年3月] から(評者:根占献一氏、加藤哲弘氏)

原典 イタリア・ルネサンス芸術論(上下巻)

原典イタリア・ルネサンス芸術論

池上俊一監修『原典 イタリア・ルネサンス芸術論』(上下巻)が、『日伊文化研究』(第60号、2022年3月、日伊協会発行)で紹介されました。美と知が交響する ——。西洋芸術が華やかに開花したそのとき、美術家や知識人は何を考え、どのような言葉を交わしていたのか。本邦初訳の貴重なテクストを多数含む待望のアンソロジー。

池上俊一 監修
税込各9,900円/本体各9,000円
A5判・上製・上524頁+下506頁
ISBN 上:978-4-8158-1026-9 下:978-4-8158-1027-6
C3070
在庫有り


『中国研究月報』 [2022年4月号、第76巻第4号] から(評者:大野太幹氏)

東アジアのなかの満鉄
鉄道帝国のフロンティア

東アジアのなかの満鉄

林采成著『東アジアのなかの満鉄』が、『中国研究月報』(2022年4月号、第76巻第4号、中国研究所発行)で紹介されました。帝国拡大の原動力となり、世界でも最高水準を誇った満鉄の鉄道技術はいかにして伝播していったのか。見過ごされてきた本業・鉄道業の姿をはじめて解明、その経済的・技術的インパクトを数量的に位置づけるとともに、東アジア鉄道システムの形成から、戦後再編の新たな全体像を描き出します。

林 采成 著
税込8,580円/本体7,800円
A5判・上製・638頁
ISBN978-4-8158-1013-9 C3022
在庫有り


『宗教研究』 [402号、2021年12月] から(評者:佐藤弘夫氏)

神仏融合の東アジア史

神仏融合の東アジア史

吉田一彦編『神仏融合の東アジア史』が、『宗教研究』(402号、2021年12月、日本宗教学会編集兼発行)で紹介されました。日本独自の宗教現象だと考えられてきた「神仏習合」。しかし、神信仰と仏教の融合はアジア各地域で広く見られる。インド・中国から北東・東南アジアまで多岐にわたる「神仏融合」の実態を解き明かし、一国史的な認識を超えて新たに日本の宗教文化を捉え直します。

吉田一彦 編
税込7,920円/本体7,200円
A5判・上製・726頁
ISBN978-4-8158-1021-4 C3021
在庫有り


『経済史研究』 [第25号、2022年1月] から(評者:見市雅俊氏)

エコロジーの世紀と植民地科学者
イギリス帝国・開発・環境

エコロジーの世紀と植民地科学者

水野祥子著『エコロジーの世紀と植民地科学者』が、『経済史研究』(第25号、2022年1月、大阪経済大学日本経済史研究所発行)で紹介されました。新たな知はどこで生まれ、何をもたらしたのか。—— 20世紀における科学・開発・環境の関係を問い、生態環境をめぐる知の生成と帝国ネットワークによる循環から、植民地開発の思想と実践、国際開発援助への展開をたどり、植民地科学者を軸に「エコロジーの世紀」の成り立ちを描く力作。

水野祥子 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・268頁
ISBN978-4-8158-0971-3 C3022
在庫有り


『経済史研究』 [第25号、2022年1月] から(評者:彭浩氏)

朝貢・海禁・互市
近世東アジアの貿易と秩序

朝貢・海禁・互市

岩井茂樹著『朝貢・海禁・互市』が、『経済史研究』(第25号、2022年1月、大阪経済大学日本経済史研究所発行)で紹介されました。朝貢体制論を超えて ——。「天下を統べる皇帝と朝貢する蕃夷諸国」という美しい理念の外形を辛うじて保っていた明代の通商外交体制も、海と陸の辺縁からの衝撃で転換を迫られ、やがて清代には互市が広がっていく。西洋とは異なる「もう一つの自由貿易」への構造変動を、日本の役割も含めて跡づけ、新たな歴史像を実証する労作。

岩井茂樹 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・432頁
ISBN978-4-8158-0984-3 C3022
在庫有り


『芸術新潮』 [2022年5月号、第869号] から

ゴシック新論
排除されたものの考古学

ゴシック新論

木俣元一著『ゴシック新論』が、『芸術新潮』(2022年5月号、第869号、新潮社発行)で紹介されました。美術史・建築史のマスター・ナラティヴに組み込まれている「ゴシック誕生」。しかし、中世ヨーロッパ建築・彫刻の驚くべき多様さはその直線的な物語から排除されてきた。大聖堂を飾る人像円柱やマイクロアーキテクチャなどの豊かな造形に光を当て、時代様式を超えた新たなゴシック像を提示します。

“ルネサンスやマニエリスムなどの時代様式なら最初の作品など特定しようもないのに、ゴシックだけは1140年前後のサン=ドニ修道院聖堂が出発点にあげられる。「この起源創出のためのレトリックは、多くの事象を隠蔽し、排除することで成り立ってきた」と著者は指摘。ロマネスクからゴシックへの移行という図式に収まらないため、あっても見ないふりをされているものを本書は拾いあげ、分野も地域も超えた交流の豊かな成果を見出す。たとえばシャルトル大聖堂の名高い人像円柱群に対し、それらの間に設置されている装飾小円柱はこれまでガン無視の仕打ち。著者はその1本1本を、はしご車まで使って撮影し、12世紀の欧州北部で膨大に作られた装飾小円柱群の中に解き放つ。草の根を丹念に掘り起こすような探求は、地道にして根源的。”(『芸術新潮』2022年5月号、p.131)

木俣元一 著
税込8,800円/本体8,000円
A5判・上製・610頁
ISBN978-4-8158-1060-3 C3071
在庫有り


『月刊美術』 [2022年5月号、第560号] から

ゴシック新論
排除されたものの考古学

ゴシック新論

木俣元一著『ゴシック新論』が、『月刊美術』(2022年5月号、第560号、サン・アート発行)の新刊案内欄で紹介されました。美術史・建築史のマスター・ナラティヴに組み込まれている「ゴシック誕生」。しかし、中世ヨーロッパ建築・彫刻の驚くべき多様さはその直線的な物語から排除されてきた。大聖堂を飾る人像円柱やマイクロアーキテクチャなどの豊かな造形に光を当て、時代様式を超えた新たなゴシック像を提示します。

“ゴシックといえば天をつくような尖塔教会や荘厳な大聖堂をイメージするが、中世ヨーロッパ建築や彫刻の多様さは、直線的に語られがちな物語では説明し尽くせない。大聖堂を飾る人像円柱やマイクロアーキテクチャなどの造形に光を当て、時代様式を超えたゴシック像を提示する。”(『月刊美術』2022年5月号、p.160)

木俣元一 著
税込8,800円/本体8,000円
A5判・上製・610頁
ISBN978-4-8158-1060-3 C3071
在庫有り


『日本労働研究雑誌』 [2022年4月号、第741号] から(評者:市原博氏)

技能形成の戦後史
工場と学校をむすぶもの

技能形成の戦後史

沢井実著『技能形成の戦後史』が、『日本労働研究雑誌』(2022年4月号、第741号、労働政策研究・研修機構発行)で紹介されました。高度成長期の高校進学率上昇が職業教育・職業訓練に与えたインパクトとは? 企業内養成施設、公共職業訓練所、工業高校、各種学校などで起こった劇的な変遷を分析。「役に立つ」「即戦力」を歴史的に問い直し、実践に根ざした教養教育を考えます。

沢井 実 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・258頁
ISBN978-4-8158-1038-2 C3033
在庫有り


『金融経済研究』 [第45号、2022年3月] から(評者:浅井良夫氏)

郵政民営化の政治経済学
小泉改革の歴史的前提

郵政民営化の政治経済学

伊藤真利子著『郵政民営化の政治経済学』が、『金融経済研究』(第45号、2022年3月、日本金融学会編)で紹介されました。戦後日本の発展と軌を一にし、隠れた福祉・再分配機能をはたした郵便貯金が、その巨大化の過程で抱え込んだ問題の核心とは。金融財政史の展開から民営化論の虚実を捉え直し、熱狂と混迷を生み出した小泉改革の歴史的位置を、政治手法やイデオロギーをめぐる議論をこえて初めて描き出します。

“…… 本書の貢献はどのような点にあるだろうか? その第1は、郵貯という戦後金融史の大きな欠落の1つを埋めたことにあると言えよう。…… 本書により、小泉改革期も含めた高度成長開始以降60年間余の郵貯の全容が明らかにされたことは、金融研究者に益するところが大きい。第2に、戦後郵貯を右肩上がりの単調な歩みとして描くのでなく、そこにダイナミックな時代の変化を見いだしている点が、歴史的説明として説得的である。…… 第3に、小泉の郵政民営化における郵貯問題を詳細に記録した点も、貢献として挙げることができよう。……”(『金融経済研究』第45号、p.103)

伊藤真利子 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・358頁
ISBN978-4-8158-0968-3 C3033
在庫有り


『週刊東洋経済』 [2022年4月30日・5月7日合併号、特集「世界激震! 先を知るための読書案内」] から(評者:服部倫卓氏)

黒海地域の国際関係

黒海地域の国際関係

六鹿茂夫編『黒海地域の国際関係』が、『週刊東洋経済』(2022年4月30日・5月7日合併号、東洋経済新報社発行)の特集「世界激震! 先を知るための読書案内」で紹介されました。世界政治のフォーカルポイント ——。西欧・ロシア・中東の狭間に位置し、歴史上つねに国際政治の焦点だった黒海。冷戦後の EU/NATO とロシアの綱引きの中、紛争や跨境性を伴いつつトルコ、ウクライナ、ジョージア、バルカン諸国等が織りなす地域の動態を、外交・経済から宗教まで多面的に分析、その全体像を描き出した本邦初の著作。

“…… NATO、EU が拡大を遂げ、ロシアも巻き返しを図り、その両者がぶつかり合うことになったのが、黒海地域であった。この本には、黒海というエリアをさまざまな角度から分析した論考が載録されている。筆者も「輸送・商品・エネルギーの経済関係 —— ロシアとウクライナの角逐を中心に」を寄稿した。ロシアとウクライナが軍事的に衝突したら国際経済にどのような打撃が及ぶか、そのヒントを示した内容になっている。”(『週刊東洋経済』2022年4月30日・5月7日合併号、p.62)

六鹿茂夫 編
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・422頁
ISBN978-4-8158-0863-1 C3031
在庫有り


『現代化学』 [2022年5月号、第614号] から

世界の発光生物
分類・生態・発光メカニズム

世界の発光生物

大場裕一著『世界の発光生物』が、『現代化学』(2022年5月号、第614号、東京化学同人発行)の「BOOK & INFORMATION」で紹介されました。発光バクテリアからツキヨタケ、ホタル、そしてチョウチンアンコウなどの脊椎動物まで ——。現在知られているすべての発光生物について、第一人者が分子生物学的知見を含めて紹介。光る生き物たちを通して見える世界と、そこに至る進化の道筋を描き出します。

大場裕一 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・456頁
ISBN978-4-8158-1057-3 C3045
在庫有り


『ミステリマガジン』 [2022年5月号、第67巻第3号] から(評者:嵩平何氏)

水上勉
文学・思想・人生

水上勉

藤井淑禎著『水上勉』が、『ミステリマガジン』(2022年5月号、第67巻第3号、早川書房発行)の「HMM BOOK REVIEW」で紹介されました。事実と虚構のあわいに求められた道とは ——。文明を問う「社会派推理小説」によって出発した水上勉。だが、自らの生と重ねて「寺を焼き」「竹を削り」一休・良寛の境涯を跡づけつつ、遂には芸術と救済の向こうへと歩み出す。晩年の日々まで、その文業を初めて本格的に捉えた畢生の力作。

“…… 丹念な読み解きを活かし、私小説的な手法を通じて人間に肉薄する水上文学から、その虚実のあわいを探ろうとする貴重な試み。初期は社会派に傾倒していた水上を、筆者の専門の一つである清張との対比を用いて、その特異性を浮き彫りにさせていく。……”(『ミステリマガジン』2022年5月号、p.209)

藤井淑禎 著
税込3,520円/本体3,200円
四六判・上製・294頁
ISBN978-4-8158-1047-4 C3095
在庫有り


『アジア研究』 [第68巻第1号、2022年1月] から(評者:高原明生氏)

毛沢東論
真理は天から降ってくる

毛沢東論

中兼和津次著『毛沢東論』が、『アジア研究』(第68巻第1号、2022年1月、アジア政経学会発行)で紹介されました。その男は中国に何をもたらしたのか ——。大躍進政策や文化大革命によって大量の犠牲者を出しながら、現在なお大陸で英雄視される稀代の指導者。「秦の始皇帝+マルクス」とも言われる、その思想と行動を冷静かつ大胆に分析。中国経済研究をリードしてきた碩学が、現代中国の核心に迫ります。

中兼和津次 著
税込3,960円/本体3,600円
四六判・上製・438頁
ISBN978-4-8158-1023-8 C3022
在庫有り


『軍事史学』 [第57巻第4号、2022年3月] から(評者:池田直隆氏)

大陸反攻と台湾
中華民国による統一の構想と挫折

大陸反攻と台湾

五十嵐隆幸著『大陸反攻と台湾』が、『軍事史学』(第57巻第4号、2022年3月、軍事史学会編)で紹介されました。米中両大国のはざまで見落とされてきた台湾の「大陸反攻」をはじめて解明。大陸奪還と中国統一を目標に展開された軍事・外交政策の実像とその変容を、「蔣経国日記」など最新の資料から浮き彫りにするとともに、今日の東アジア国際政治の最大の焦点となっている台湾海峡危機の全体像を歴史的視野で描き出します。

“…… 本書は、中華民国(台湾)が大陸奪還・中国統一を目標に展開した軍事・外交政策の実像と変容を解明し、台湾海峡危機の起源と本質に迫るものである。…… 中国語の一次史料(近年公開された「蔣経国日記」も含まれる)、研究文献と広範に渉猟すると同時に、当事者へのインタビューを実施した。巻末参考文献に掲げられた膨大なリストが、その努力の跡を物語っている。…… アメリカが台湾海峡の現状維持、すなわち事実上「二つの中国」固定に舵を切った後も、中華民国という主権国家が(実現可能性は低くとも)大陸反攻の旗を掲げ続けた経緯を検証することによって、我々は台湾史、更には米中関係史、日中関係史にも影響する新たな知見を得ることが出来るだろう。……”(『軍事史学』第57巻第4号、pp.158-159)

五十嵐隆幸 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・400頁
ISBN978-4-8158-1034-4 C3031
在庫有り


『軍事史学』 [第57巻第4号、2022年3月] から(評者:諸橋英一氏)

海のロシア史
ユーラシア帝国の海運と世界経済

海のロシア史

左近幸村著『海のロシア史』が、『軍事史学』(第57巻第4号、2022年3月、軍事史学会編)で紹介されました。第一次グローバリゼーションのもと、東アジアの海とヨーロッパの海を結んだ長距離航路と、義勇艦隊が果たした役割とは。政治と経済が混然一体となった海洋戦略により、極東を含む帝国の辺境を統合、国際的経済闘争への参入を試みる姿を捉え、ロシア史をグローバルヒストリーに位置づけます。

“…… 大陸国家として描かれるのが常であるロシアを、海という観点から捉える斬新な試みは、緻密な実証的手法によって堅固な研究成果へ結実したといえる。…… ロシア史を専門とする者だけでなく、日本を含む周辺諸国を研究する者にとっても非常に興味深い視点を提供する示唆に富む1冊である。”(『軍事史学』第57巻第4号、p.166)

左近幸村 著
税込6,380円/本体5,800円
A5判・上製・354頁
ISBN978-4-8158-1008-5 C3022
在庫有り


『軍事史学』 [第57巻第4号、2022年3月] から(評者:浜井和史氏)

戦争障害者の社会史
20世紀ドイツの経験と福祉国家

戦争障害者の社会史

北村陽子著『戦争障害者の社会史』が、『軍事史学』(第57巻第4号、2022年3月、軍事史学会編)で紹介されました。二度の大戦により、300万人におよぶ大量の戦争障害者を生み出したドイツで、国家に奉仕した「英雄」はどのようなその後を生きたのか。公的支援や医療の発達、義肢や盲導犬などの補助具の発展と、他方での差別や貧困、ナチへの傾倒などの多面的な実態を丁寧に描き、現代福祉の淵源を示します。

“…… 本書がもたらした貢献は多岐にわたるが、とりわけ19世紀から第二次世界大戦後に至るまでの長期間におよぶ戦争障害者援護の流れを通観して描き切ったことが重要である。ドイツ帝国期、ヴァイマル期、ナチ期、そして東西ドイツに分割された戦後と、政治体制が大きく変転するなかで、障害者に対する支援は変容を遂げながらも持続し、社会政策として整備されてきた。そうした歴史的な経験と蓄積があいまって福祉国家の形成につながったということを本書全体から読み取ることができる。……”(『軍事史学』第57巻第4号、p.168)

北村陽子 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・366頁
ISBN978-4-8158-1017-7 C3022
在庫有り


『中国研究月報』 [2022年3月号、第76巻第3号] から(評者:毛里和子氏)

毛沢東論
真理は天から降ってくる

毛沢東論

中兼和津次著『毛沢東論』が、『中国研究月報』(2022年3月号、第76巻第3号、中国研究所発行)で紹介されました。その男は中国に何をもたらしたのか ——。大躍進政策や文化大革命によって大量の犠牲者を出しながら、現在なお大陸で英雄視される稀代の指導者。「秦の始皇帝+マルクス」とも言われる、その思想と行動を冷静かつ大胆に分析。中国経済研究をリードしてきた碩学が、現代中国の核心に迫ります。

中兼和津次 著
税込3,960円/本体3,600円
四六判・上製・438頁
ISBN978-4-8158-1023-8 C3022
在庫有り


『アジア経済』 [第63巻第1号、2022年3月] から(評者:加藤聖文氏)

満鉄経営史
株式会社としての覚醒

満鉄経営史

平山勉著『満鉄経営史』が、『アジア経済』(第63巻第1号、2022年3月、アジア経済研究所編集兼発行)で紹介されました。満州経営の全方位的担い手とみなされた巨大植民地企業が、国策会社化の挫折と満州国成立後の解体的再編をへて、鉄道を主軸とした市場志向の企業として覚醒する姿を、株式市場への対応からとらえ、終戦まで異例の高収益企業であり続けたメカニズムを解明、日本帝国主義の先兵とする満鉄理解を大きく書き換えます。

“…… 全体を通じて本書は、満鉄史研究のなかではじめて経営史の視点から満鉄の実像を分析するものであり、いわば満鉄は「国策会社」か「株式会社」なのか、それを問うた意欲的な研究成果といえよう。これまで満鉄を「国策会社」としての側面に縛られがちであったことに対して、「株式会社」としての側面に着目して、社員や株式といった切り口からその実態解明に迫った点は満鉄史研究の新しい分野を開拓したと評価できる。……”(『アジア経済』第63巻第1号、p.87)

平山 勉 著
税込10,450円/本体9,500円
A5判・上製・504頁
ISBN978-4-8158-0945-4 C3021
在庫有り


「中日新聞」 [2022年4月8日付、夕刊、「大波小波」(文化・芸能欄)] から

ホメロスの逆襲
それは西洋の古典か

ホメロスの逆襲

小川正廣著『ホメロスの逆襲』が、「中日新聞」(2022年4月8日付)夕刊の「大波小波」(文化・芸能欄)で紹介されました。最古・最大の「西洋古典」とされるホメロス。だが、創造と受容のいずれも西洋の枠組みには収まっていなかった。実際に西方に伝わったものとその行方を明確にする一方、オリエントの神話・宗教からビザンツの年代記やオスマンの歴史書まで探査し、巨大な実像を初めて捉えた画期的労作。

“…… これはすべての読書人必読の書であると改めて思う。西洋古典とりわけラテン文学の最高峰ウェルギリウスを専門とする著者が、学者生命のすべてを注ぎ込んだと言ってもいい傑作だ。人文知が軽んじられる現代日本にあって、強烈なレジスタンス精神を見せてくれた。……”(「中日新聞」夕刊2022年4月8日付、第5面)

小川正廣 著
税込9,900円/本体9,000円
A5判・上製・634頁
ISBN978-4-8158-1050-4 C3098
在庫有り


『日本歴史』 [2022年3月号、第886号] から(評者:立本紘之氏)

近代日本の科学論
明治維新から敗戦まで

近代日本の科学論

岡本拓司著『近代日本の科学論』が、『日本歴史』(2022年3月号、第886号、日本歴史学会編集/吉川弘文館発行)で紹介されました。科学の営みや社会との関係をめぐる言説は、維新から対米戦までの歴史の流れに呼応し、劇的に変転した。本書は、文明開化、教養主義の時代を経て、科学を標榜し革命を起こしたマルクス主義の衝撃と、それを契機に誕生した日本主義的科学論をふくむ多様な議論の展開を、初めて一望します。

岡本拓司 著
税込6,930円/本体6,600円
A5判・上製・552頁
ISBN978-4-8158-1019-1 C3010
在庫有り


『史学雑誌』 [第131編第1号、2022年1月] から(評者:草生久嗣氏)

ヨーロッパ中世の想像界

ヨーロッパ中世の想像界

池上俊一著『ヨーロッパ中世の想像界』が、『史学雑誌』(第131編第1号、2022年1月、史学会編集兼発行)で紹介されました。西洋中世の人々が生きた豊穣なる世界 ——。動植物や人間から、四大や宇宙、天使や魔女、仲間と他者、さらには楽園と煉獄まで、文学・図像・伝説・夢を彩る広大な想像界を縦横無尽に論じ、その全体構造を解明する。心性史・社会史を刷新する「イマジネールの歴史学」の集大成。

池上俊一 著
税込9,900円/本体9,000円
A5判・上製・960頁
ISBN978-4-8158-0979-9 C3022
在庫有り


『西洋史学』 [第272号、2022年] から(評者:橋本順光氏)

中国芸術というユートピア
ロンドン国際展からアメリカの林語堂へ

中国芸術というユートピア

範麗雅著『中国芸術というユートピア』が、『西洋史学』(第272号、2022年、日本西洋史学会編集兼発行)で紹介されました。中華文人の生活芸術か、想像された国民芸術か ——。第二次世界大戦前、中英の協力により一大展覧会が開かれた。様々な出版や外交を伴い東西文化交流の転換点となったイベントを軸に、日本の影響深いウェイリーらの研究から、在英中国知識人の活動、パール・バックの後押しした林語堂の傑作まで、中国芸術とは何かを問いかける。

範 麗雅 著
税込12,100円/本体11,000円
菊判・上製・590頁
ISBN978-4-8158-0909-6 C3070
在庫有り

年度別書評一覧

近刊案内

2024年5月7日出来予定

中国共産党の神経系

周 俊 著
A5判・上製・478頁
税込6,930円/本体6,300円
ISBN 978-4-8158-1152-5
Cコード 3031

2024年5月10日出来予定

銀行監督の歴史

邉 英治 著
A5判・上製・416頁
税込6,930円/本体6,300円
ISBN 978-4-8158-1155-6
Cコード 3033

近刊書籍のご注文を受け付けております。ご希望の方は、上の「注文フォーム」で手続きをお願いいたします。刊行次第、商品を発送いたします。

重版案内

2024年4月1日出来

教育原理を組みなおす(第2刷)

松下晴彦・伊藤彰浩・服部美奈 編
A5判・並製・336頁
税込2,970円/本体2,700円
ISBN 978-4-8158-1045-0
Cコード 3037

2024年4月1日出来

現代アート入門(第2刷)

デイヴィッド・コッティントン 著/松井裕美 訳
四六判・並製・224頁
税込2,970円/本体2,700円
ISBN 978-4-8158-1009-2
Cコード 3070

2024年4月1日出来

科学技術をよく考える(第6刷)

伊勢田哲治・戸田山和久・調 麻佐志・村上祐子 編
A5判・並製・306頁
税込3,080円/本体2,800円
ISBN 978-4-8158-0728-3
Cコード 3040

2024年1月19日出来

アメリカの人種主義(第2刷)

竹沢泰子 著
A5判・上製・516頁
税込4,950円/本体4,500円
ISBN 978-4-8158-1118-1
Cコード 3022

2023年12月22日出来

進化倫理学入門(第2刷)

スコット・ジェイムズ 著
児玉 聡 訳
A5判・上製・336頁
税込4,950円/本体4,500円
ISBN 978-4-8158-0896-9
Cコード 3012

2023年11月30日出来

派閥の中国政治(第2刷)

李 昊 著
A5判・上製・396頁
税込6,380円/本体5,800円
ISBN 978-4-8158-1131-0
Cコード 3031

2023年11月17日出来

消え去る立法者(第3刷)

王寺賢太 著
A5判・上製・532頁
税込6,930円/本体6,300円
ISBN 978-4-8158-1120-4
Cコード 3010

2023年10月27日出来

統計学を哲学する(第5刷)

大塚 淳 著
A5判・並製・248頁
税込3,520円/本体3,200円
ISBN 978-4-8158-1003-0
Cコード 3010

2023年10月23日出来

質的研究の考え方(第7刷)

大谷 尚 著
菊判・並製・416頁
税込3,850円/本体3,500円
ISBN 978-4-8158-0944-7
Cコード 3036

2023年8月28日出来

対華二十一ヵ条要求とは何だったのか(第4刷)

奈良岡聰智 著
A5判・上製・488頁
税込6,050円/本体5,500円
ISBN 978-4-8158-0805-1
Cコード 3021

2023年8月24日出来

世界史のなかの東南アジア【上巻】(第2刷)

アンソニー・リード 著
太田 淳・長田紀之 監訳
A5判・上製・398頁
税込3,960円/本体3,600円
ISBN 978-4-8158-1051-1
Cコード 3022

2023年8月21日出来

客観性(第4刷)

ロレイン・ダストン/ピーター・ギャリソン 著
瀬戸口明久・岡澤康浩・坂本邦暢・有賀暢迪 訳
A5判・上製・448頁
税込6,930円/本体6,300円
ISBN 978-4-8158-1033-7
Cコード 3010

2023年8月10日出来

宇宙機の熱設計(第3刷)

大西 晃 他編
B5判・上製・332頁
税込19,800円/本体18,000円
ISBN 978-4-8158-1042-9
Cコード 3053

2023年7月28日出来

中央銀行はお金を創造できるか(第2刷)

金井雄一 著
A5判・上製・234頁
税込5,940円/本体5,400円
ISBN 978-4-8158-1125-9
Cコード 3033

2023年6月21日出来

キュビスム芸術史(第2刷)

松井裕美 著
A5判・上製・692頁
税込7,480円/本体6,800円
ISBN 978-4-8158-0937-9
Cコード 3071

2023年6月15日出来

科学アカデミーと「有用な科学」(第3刷)

隠岐さや香 著
A5判・上製・528頁
税込8,140円/本体7,400円
ISBN 978-4-8158-0661-3
Cコード 3040

2023年5月25日出来

統計力学の形成(第3刷)

稲葉 肇 著
A5判・上製・378頁
税込6,930円/本体6,300円
ISBN 978-4-8158-1036-8
Cコード 3040

2023年5月24日出来

明代とは何か(第2刷)

岡本隆司 著
A5判・上製・324頁
税込4,950円/本体4,500円
ISBN 978-4-8158-1086-3
Cコード 3022

2023年5月12日出来

消え去る立法者(第2刷)

王寺賢太 著
A5判・上製・532頁
税込6,930円/本体6,300円
ISBN 978-4-8158-1120-4
Cコード 3010

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