2009年度書評一覧

朝日新聞[2010/3/21付(日)]から(評者:苅部 直 氏)

クリティカル・モーメント
批評の根源と臨界の認識

接続された歴史

高田康成著『クリティカル・モーメント』が、朝日新聞(2010/3/21付)にて紹介されました。

 「……(略)……神の啓示という根拠が見失われた時代に人間は、みずからの知がもつ相対性という「臨界」を自覚しながら、何らかの世界観をうちたてる必要に迫られる。その課題を担ったのが、近代の「批評」である。
 だがそこには同時に、価値の絶対の根源をなす(はずの)ギリシアやローマへの憧れが、常に明滅していた。……
 ……(中略)……歴史の中での「批評」のありようを広く検証しようという意図なのだろう。表紙と各部の扉を、ギリシア・ローマの古典を題材にした絵画が飾っており、近代と古典の伝統とのつながりを暗示して、心にくい趣向である。
 しかし、ポスト・モダンの思潮が幅をきかせ、価値相対主義が自明の前提となった今日では、古典への憧れなど時代錯誤ではないか。著者はその疑問をやんわりうけいれながら、それでもなお、相対主義に「赤ランプ」をつけ、何らかの根拠をもった「批評」の可能性を示そうとする。
 ……(中略)……論理に基づく議論による対決を避け、問題解決を感情論に頼ろうとする社会で、「批評」がはたして生きられるのか。現代における相対主義の問題に加え、課題は二重になってくる。
 いや、この書評にしてからが、はたして「批評」たりえているだろうか。著者の語り口は時に軽妙であるが、その含む指摘はとても怖ろしい。」(苅部 直 氏)

高田康成 著
税込4,180円/本体3,800円
四六判・上製・466頁
ISBN978-4-8158-0630-9 C3098
在庫有り


毎日新聞[2010/3/14付(日)]から(評者:富山太佳夫 氏)

接続された歴史
インドとヨーロッパ

接続された歴史

三田昌彦・太田信宏訳『接続された歴史』が、毎日新聞(2010/3/14付)にて紹介されました。

 「本を読むことの醍醐味は、そこで知らないこと、理解できないことにぶつかって、立ち止まってしまうことである。
 少し気取ってそんな私的な格言を作ってみるのもいいのだが、問題はそのあとである。そのあと、どうするのか。読みやすく、分かりやすい本の方に手をのばすのか、それともその理解しづらい本とにらみ合いを続行するのか……(中略)……
 スブラフマニヤムの『接続された歴史——インドとヨーロッパ』は、私にとってそんな本の一冊であった。……(中略)……
 ……翻訳の巻末につけられた地図と系図を見ながら、もう一度、もう二度と、ゆっくり読み始める。理解できなかった本の生み出した当惑が興奮へと変わる瞬間である。私にとって、それは本を読むことの最も大きな喜びの瞬間でもある。
 そうしてこの本をゆっくりと読んでいると、唖然とする一節に出会ってしまった。「有名な事例は、黒澤明の1980年の映画『影武者』に見ることができよう。映画の舞台は日本の16世紀戦国時代であり、盗人が処刑を免れる代わりに、強大な戦国大名である甲斐の武田信玄……の替え玉となることに同意する様子が描かれている」。著者は「替え玉」をテーマとするアレクサンドル・デュマの『鉄仮面』、アンソニー・ホープの『ゼンダ城の虜』、ジョゼ・サラマーゴ(ノーベル賞作家)の『生き写し』にも触れながら、17世紀の歴史的事例を解読して見せる。見事である。
 いずれにしても、東西の文献を精読しながら、サイードの『オリエンタリズム』の発想を拒否してゆくこの本は、ブローデルやトドロフの歴史学の手法にも疑問を突きつけ、実に読みごたえのある一冊となっている。」(富山太佳夫 氏)

S. スブラフマニヤム著/三田昌彦・太田信宏 訳
税込6,160円/本体5,600円
A5判・上製・392頁
ISBN978-4-8158-0614-9 C3022
在庫有り


民団新聞[2010/3/10付(水)]から

「在日企業」の産業経済史
その社会的基盤とダイナミズム

「在日企業」の産業経済史

韓載香著『「在日企業」の産業経済史』が、民団新聞(2010/3/10付)にて紹介されました。エスニック・マイノリティの経済発展を可能にするものとは何か? 在日韓国・朝鮮人による製造業・土木業・パチンコ産業などへの集中と、迅速な産業転換によるダイナミックな発展過程を、差別など既存の説明を乗り越えて鮮やかに解明、世界的視野で移民の経済理論に新たな展望を拓きます。

韓載香 著
税込6,600円/本体6,000円
A5判・上製・450頁
ISBN978-4-8158-0631-6 C3033
在庫有り


『週刊読書人』[2010/3/5付(金)]から(評者:蘭 信三 氏)

「満洲」の成立
森林の消尽と近代空間の形成

「満洲」の成立

安冨歩・深尾葉子編『「満洲」の成立』が、『週刊読書人』(2010/3/5付)にて紹介されました。

 「なんとも気宇壮大な本が出たものだ。これは満洲における森林の消尽と近代的空間の形成をシンボリックにクローズアップし、生態史、経済史、政治史、心性史を駆使して近代「満洲の成立」を大胆に解き明かす「安冨・深尾の満洲史観」とも言える見事な作品である。本書を読み終え強い衝撃を受け、満洲研究者の端くれとして完全に打ちのめされた。と同時に、本書に出会えた幸せを噛みしめている。本書は間違いなく新たな満洲研究を切り拓く本だからだ。満洲研究・満洲認識は本書と共に新段階にはいった、と断言できよう。……(中略)……
 ……本書は、スキナーの定期市論を踏まえた安冨の県城経済論と深尾の独特の生態史研究を根幹とする見事な共同研究の展開のなかで、従来の諸研究を大胆に合流させ、見事な一本の大河の流れをなしたのである。
 本書は重厚で緻密な専門書であるが、明快で読みやすい。満洲研究者を中心とするアカデミックな世界はもちろん、歴史ブームにある一般読者にも広く読まれよう。本書を起点とする新たな満洲研究・満洲認識の展開が大いに期待される。」(蘭 信三 氏)

安冨 歩・深尾葉子 編
税込8,140円/本体7,400円
A5判・上製・576頁
ISBN978-4-8158-0623-1 C3022
在庫有り


朝日新聞[2010/2/21(日)]読書欄から

原典 イタリア・ルネサンス人文主義

原典 イタリア・ルネサンス人文主義

池上俊一監修『原典 イタリア・ルネサンス人文主義』が、朝日新聞(2010/2/21付)の読書欄にて紹介されました。文芸から政治論・教育論・家族論・宇宙論にわたる、ルネサンスの多彩な思想は、ヨーロッパ文化そして近代世界の血肉となって今なお息づいています。古典の教養を通して徳ある市民としての生き方を模索したイタリア人文主義思潮の精髄を集成、見通しよい解説を加えて、人文知の新たな再生を期した空前にして待望の邦訳選集です。

池上俊一 監修
税込16,500円/本体15,000円
A5判・上製・932頁
ISBN978-4-8158-0625-5 C3010
在庫有り


中日新聞[2010/2/18(木)、夕刊]から

国分寺瓦の研究
考古学からみた律令期生産組織の地方的展開

国分寺瓦の研究

梶原義実著『国分寺瓦の研究』が、中日新聞(2010/2/18付、夕刊)にて紹介されました。

 「……奈良時代の八世紀半ば以降、各地に建てられた国分寺跡から出土した瓦は朝廷の強い影響下で造られた、という定説を覆して話題となっている。……(中略)……
  梶原さんは、全国の国分寺瓦の文様などの違いを調査。都にあった東大寺などに使われた瓦の文様を踏襲した瓦が多いという定説に対し、『中央の系譜を直接引くものではない』と結論付けた。」

梶原義実 著
税込10,450円/本体9,500円
B5判・上製・354頁
ISBN978-4-8158-0628-6 C3021
在庫有り


『みすず』[2010/1・2合併号]「2009年読書アンケート」から(評者:外岡秀俊氏、栗原彬氏)

近代書史

近代書史

石川九楊著『近代書史』が、『みすず』(2010/1・2合併号、みすず書房刊)の「2009年読書アンケート」にて紹介されました。

 「独自の文明史観に基づき、中国と日本の書史を編んできた書家による三部作の完結編。書家に限らず、西郷隆盛や福沢諭吉、安田善次郎ら各界著名人の書を博捜して一画ごとの筆の運びを克明に分析し、近代精神の健やかさと歪みを壮大なスケールで描き出した。宮沢賢治や立原道造らの硬筆原稿から文学の佇まいを解析するなど、従来の文学史の常識を覆す力技で読者を圧倒する。書史のかたちをとってはいるが、近代の精神史を深く耕して実った09年最大の収穫と思えた。」(外岡秀俊 氏)

 「77人の近代書家の冒頭に「近代性とは書が書であること(自己同一性)を描き出すことに安住しないで、表現上に書として新しい意味を載せること」という視座から「近代への序曲」として良寛を取り上げている。偏愛する良寛の思想像の転換の予兆。」(栗原 彬 氏)

石川九楊 著
税込19,800円/本体18,000円
A4判・上製・776頁
ISBN978-4-8158-0600-2 C3071
在庫有り


『みすず』[2010/1・2合併号]「2009年読書アンケート」から(評者:柿沼敏江氏、野崎歓氏)

プルースト 芸術と土地

プルースト 芸術と土地

小黒昌文著『プルースト 芸術と土地』が、『みすず』(2010/1・2合併号、みすず書房刊)の「2009年読書アンケート」にて紹介されました。

 「……若きプルースト研究者が、文学と美術とモニュメントを繋ぎながら、この作家と土地との関わりを読み解いた力作。教会や大聖堂の崩壊の先にプルーストが見ていたのは、記憶を喚起するものとしての土地ではなかったという。さまざまな土地やモニュメントの写真も興味深い一冊だった。」(柿沼敏江 氏)

 「……プルーストが、いわばラスキン経由の「土地」概念の誘惑を振り払う形で独自の美学を培っていく経緯を、鮮やかに描き出した。著者の端正な文章をたどること自体が魅力であり、専門外の読者にも豊かな示唆を与えてくれる研究だ。……」(野崎 歓 氏)

小黒昌文 著
税込6,600円/本体6,000円
A5判・上製・312頁
ISBN978-4-8158-0618-7 C3098
在庫有り


讀賣新聞[10/2/5(金)]文化欄から

国分寺瓦の研究
考古学からみた律令期生産組織の地方的展開

国分寺瓦の研究

梶原義実著『国分寺瓦の研究』が、讀賣新聞(10/2/5付)の文化欄にて紹介されました。

 「……国分寺瓦については従来、どの地域でどのような文様の瓦が出土するか、また、どの窯で造られたか、瓦が使用された地域を確認する研究にとどまっているのがほとんどだった。本書ではそういった研究成果を踏まえたうえで、一歩踏み込んで、全国の事例を九州、中国・山陽、東海など、具体的な地域ごとに分け、工人集団の性格、文様の相互影響関係を迫った。
  中央と地方、さらに地方間の瓦生産組織を比較した結果、中央からの直接的な影響が実は少なく、瓦の型は地方独自のものであったとし、その上で、国分寺造営について、国の財源でなく、地方財政のなかで行われたとの見方を示している。」

梶原義実 著
税込10,450円/本体9,500円
B5判・上製・354頁
ISBN978-4-8158-0628-6 C3021
在庫有り


『エコノミスト』[2010/2/9号]「Book Review」から

海の富豪の資本主義
北前船と日本の産業化

海の富豪の資本主義

中西聡著『海の富豪の資本主義』が、『エコノミスト』(2010/2/9号、毎日新聞社刊)の「Book Review」にて紹介されました。

 「近世を代表する遠隔地取引の担い手、北前船商人の経営展開と日本の産業化を描いた約500ページの大著。滋賀、石川、青森、新潟、富山、福井各県の北前船主を3タイプに分けて比較するなかで、さまざまな資本主義の種が混在していた時代の姿が浮かび上がる。日本の近代が「明治」とは違った形になる可能性を秘めていたことを経済史から導き出した労作ともいえる。」

中西 聡 著
税込8,360円/本体7,600円
A5判・上製・526頁
ISBN978-4-8158-0626-2 C3033
在庫有り


『みすず』 [2010年1・2月号、2009年読書アンケート] から(評者:小谷真理氏)

男同士の絆
イギリス文学とホモソーシャルな欲望

男同士の絆

イヴ・K・セジウィック著『男同士の絆』(上原早苗・亀澤美由紀訳)が、『みすず』(2010年1・2月号、みすず書房発行)の「2009年読書アンケート」で紹介されました。シェイクスピアからディケンズにいたるイギリス文学の代表的テクストを読み解くことによって、近代における欲望のホモソーシャル/ヘテロセクシュアルな体制と、その背後に潜む「女性嫌悪」「同性愛恐怖」を掴み出し、文学・ジェンダー研究に新生面を拓いた画期的著作。

“…… ゴシック理論、ホモソーシャリティ理論、独身者論と、いずれも日本近代文学を読み解くのに有益と思う。”(『みすず』2010年1・2月号、p.108)

イヴ・K・セジウィック 著
上原早苗・亀澤美由紀 訳
税込4,180円/本体3,800円
A5判・上製・394頁
ISBN978-4-8158-0400-8 C3098
在庫有り


毎日新聞[10/1/17(日)]読書欄から(評者:山内昌之 氏)

原典 イタリア・ルネサンス人文主義

原典 イタリア・ルネサンス人文主義

池上俊一監修『原典 イタリア・ルネサンス人文主義』が、毎日新聞(10/1/17付)の読書欄にて紹介されました。

 「……イタリアでは、芸術に先立って中世的な枠組を転換した文献学やそれを基礎にした人文主義という思潮があったにもかかわらず、ペトラルカやマキアヴェッリなどを除くと、独創的な思索の産物は日本で知られてこなかった。池上俊一氏はじめ専門家たちが協力して20の原史料を訳出した『原典』はその名に恥じず、ヨーロッパ人の文芸や政治、教育、家族に関する歴史的考察を豊かにする伽藍ともいうべきものだろう。
  しかも、収められた作品は闊達な人文主義者らしく、その主張はいまでも色あせないものが多い。たとえば、フィレンツェでペトラルカの理想を引き継ぎ、14世紀後半から15世紀初頭に市政の中枢で働いたサルターティの『僭主論』(米田潔弘訳)はすこぶる示唆に富んでいる。……(中略)……このような僭主論は政権交代後の日本政治の本質を考える時にも参考になるだろう。理想的な統治とは何か。この問いに答えた人文主義者の議論として、他にもブルーニの『ナンニ・デッリ・ストロッツィに捧げた追悼演説』の政体論も本書に収録されている。……(中略)……
……ルネサンス期の言説が今の日本政治を考える上でも参考になるのは何故だろうか。それは、かれらが政治に理想や高い道徳律を求めるだけでなく、現実に立脚したリアリズムを要求しているからではないだろうか。……(中略)……政界やその周辺にいる人びとにも、時にはじっくり腰を据えて西洋政治の一源流たるルネサンスの古典を読んでほしいものだ。」(山内昌之 氏)

池上俊一 監修
税込16,500円/本体15,000円
A5判・上製・932頁
ISBN978-4-8158-0625-5 C3010
在庫有り


日本経済新聞[10/1/17(日)]読書欄から(評者:国分良成 氏)

中国返還後の香港
「小さな冷戦」と一国二制度の展開

中国返還後の香港

倉田徹著『中国返還後の香港』が、日本経済新聞(10/1/17付)の読書欄にて紹介されました。

 「……本書は、返還時に大学生であった新しい研究世代による、返還後の香港に関する精緻な実証分析にもとづいた力作である。
  返還前の言説には、中国大陸・香港(中港)関係の将来を悲観するものが多かった。とりわけ香港政治に関して、大方の見解はそれまで享受していた自由と民主が後退するであろうというものであった。しかし、それらの予想は外れた。なぜ中央政府は露骨な政治的干渉を行わなかったのか、なぜ香港住民は中央政府を信任するようになったのか、著者の問題意識はそこにある。……(中略)……
  本書は、主として香港側の視点から、香港の資料を駆使して、返還後の香港の実相を解明した研究である。著者の倉田徹氏は今後の日本の現代中国研究を担う一人である。であるがゆえに、今後は香港問題をめぐって、中央のなかでいかなる議論と利益政治が展開されたのかを共産党の側からも分析してほしい。」(国分良成 氏)

倉田 徹 著
税込6,270円/本体5,700円
A5判・上製・408頁
ISBN978-4-8158-0624-8 C3031
在庫有り


讀賣新聞[10/1/17(日)]読書欄から(評者:片山杜秀 氏)

「満洲」の成立
森林の消尽と近代空間の形成

「満洲」の成立

安冨歩・深尾葉子編『「満洲」の成立』が、讀賣新聞(10/1/17付)の読書欄にて紹介されました。

 「20世紀前半、世界最大級の環境破壊が起きたのは? 満洲だった!
  満洲は19世紀まで大森林地帯。自然が手つかず。虎もいっぱい。
  そこに日露が鉄道を敷設。枕木等に膨大な木材が消費される。列車が通れば、奥地からの材木搬出も可能。人口も急増する。満洲での鉄道以外の交通手段は馬車。その用材として木々の伐採が止まらない。満洲を走る馬車は最大時50万台以上だったとか。馬車は農産物を運び、特に満洲大豆は世界市場を制してゆき、その地に繁栄をもたらす。
  すべてはあっという間。ほんの何十年かで太古からの自然は徹底的に収奪され、森も虎も激減した。
  束の間の繁栄は取り戻せない自然破壊と引き換えだった。満洲の森林喪失は現在の地球環境異変とも無関係ではあるまい。政治や軍事の昔話ではない。経済と環境を通じ、今日的な課題に迫る満洲本の傑作。」(片山杜秀 氏)

安冨 歩・深尾葉子 編
税込8,140円/本体7,400円
A5判・上製・576頁
ISBN978-4-8158-0623-1 C3031
在庫有り


『比較文明』 [第25号、2009年] から(評者:三浦伸夫氏)

アレクサンドロス変相
古代から中世イスラームへ

アレクサンドロス変相

山中由里子著『アレクサンドロス変相』が、『比較文明』(第25号、2009年、比較文明学会編)で紹介されました。大王が征服した広大な地域に流布した伝承を、宗教・政治・歴史の分野にわたって、アラブ・ペルシアの多様なテクストにたどり、語りや図像の担い手たちが求めた「真実」に迫ります。アレクサンドロスが内包する本質と、古代世界の遺産を受けいれ再解釈していくムスリムの精神史をみごとに浮かび上がらせた力作。

山中由里子 著
税込9,240円/本体8,400円
A5判・上製・588頁
ISBN978-4-8158-0609-5 C3022
在庫有り


『現代詩手帖』[2010/1号]「特別対談」から

近代書史

近代書史

『近代書史』の著者である石川九楊先生と詩人の吉増剛造氏の対談「詩の地面が生れる」が、『現代詩手帖』(2010/1号、思潮社刊)に掲載されています。『近代書史』を軸にして、白川静氏をめぐる対談に始まり、副島種臣の書、谷崎潤一郎、正岡子規、宮沢賢治、高村光太郎、河東碧梧桐、……多様なテーマについて、静謐な哲学的思索からさまざまなことばが紡ぎだされていきます。独特なリズムと文体で、まるで詩を詠んでいるかのような吉増氏のことばと、明晰にして厳かな石川氏のことばの絡み合いが、書論と詩論との交錯地点へといざないます。

石川九楊 著
税込19,800円/本体18,000円
A4判・上製函入・766頁
ISBN978-4-8158-0600-2 C3071
在庫有り


『科学』[2010/1号]「編集部に届いた本から」より

アジアの在来家畜
家畜の起源と系統史

アジアの在来家畜

在来家畜研究会編『アジアの在来家畜』が、『科学』(2010/1号、岩波書店刊)の「編集部に届いた本から」にて紹介されました。野生動物と近代品種とをつなぐ在来家畜は、家畜化過程の本質を考える上で重要であるとともに、品種造成の遺伝資源としても大変有用です。本書は、永年のアジア全域での実地調査を軸に、農学以外にも人類学・考古学等の知見を盛込み体系的に記述した、世界に類を見ない書となっております。

在来家畜研究会 編
税込10,450円/本体9,500円
B5判・上製・494頁
ISBN978-4-8158-0620-0 C3061
在庫有り


『ふらんす』[第85巻第1号]「書評」から(評者:坂本浩也 氏)

プルースト 芸術と土地

プルースト芸術と土地

『プルースト 芸術と土地』(小黒昌文 著)が、『ふらんす』(2010/1号、白水社刊、評者:坂本浩也 氏)にて紹介されました。

  「プルースト研究の現状はどうですか?と尋ねられたら、まよわず本書の味読を薦めたい。
  なによりも「芸術と土地」という問題設定が卓抜かつ有効。射程が広いのだ。
  プルーストの愛読者なら、土地の名をめぐる色あざやかな夢想を思い出すに違いない。パルムと呟くだけで、薄紫色のこぢんまりとした住まいの安らぎに心が満たされる、あの疑似的な共感覚——。
  ところが本書を読めば、プルーストにとっての「土地」の問題が、幼年時代の幸福な幻に限られないのがよくわかる。いや、それどころか「土地」は、作家と時代をつなぐ魔法の言葉、世紀転換期のフランスにおけるさまざまな美学的・政治的・社会的論争のキーワードなのだ。……(中略)……
  やはり面白い研究書は一種の探偵小説のように読める。最終章にいたって読者は悟る。土地と芸術をめぐる一連の議論の隠れた争点は、ほかでもない「記憶と書物」だった。歴史的コンテクストの探索をへてテクストに回帰し、プルーストと記憶という古いテーマを新たな光で照らす、近年の最も刺激的な成果である。」(坂本浩也 氏)

小黒昌文 著
税込6,600円/本体6,000円
A5判・上製・312頁
ISBN978-4-8158-0618-7 C3098
在庫有り


朝日新聞[09/12/27(日)]読書欄から(評者:天児 慧 氏)

中国返還後の香港
「小さな冷戦」と一国二制度の展開

中国返還後の香港

倉田徹著『中国返還後の香港』が、朝日新聞(09/12/27付)の読書欄「書評委員お薦め『今年の3点』」にて紹介されました。香港は本当に中国に飲み込まれたのか?——返還以前の多くの悲観的予測を裏切り、安定した中国・香港関係が生み出されたメカニズムを、一国二制度下の政治・経済・社会情勢の推移から明快に分析、「高度な自治」と中港融合の実像を鋭く描き出しています。中国政治と香港の行方を考える必読の1冊です。

「……香港返還前後を扱いながら、香港を軸にアジアの冷戦の意味、中央・地方関係、中国の民主化などを考えさせてくれる豊かで新鮮な書である。……」(天児 慧 氏)

倉田 徹 著
税込6,270円/本体5,700円
A5判・上製・408頁
ISBN978-4-8158-0624-8 C3031
在庫有り


東京新聞[09/12/27(日)]読書欄から(評者:齋藤愼爾 氏)

近代書史

近代書史

石川九楊著『近代書史』が、東京新聞(09/12/27付)の読書欄にて紹介されました。東アジアの文化の根幹をなす「書」は、近代にいかなる軌跡をたどったのか? 日本の近代・現代の書の歴史を、専門書道家だけでなく文学者や画家など知識人の書跡、生活者の日常書字や印刷文字までも含めて、表現された書の丹念な解読により初めて全体として捉えた、石川九楊の絢爛たるライフワークです。

「『中国書史』『日本書史』に続く書史三部作、ついに完成。現在に至る近代百数十年の書の表現史が初めて全体として捉えられた。稀有な文明批評の書でもある。……」(斎藤愼爾 氏)

石川九楊 著
税込19,800円/本体18,000円
A4判・上製函入・766頁
ISBN978-4-8158-0600-2 C3071
在庫有り


図書新聞[09/12/26(土)]「’09年下半期・読書アンケート」より
(評者:藤沢 周 氏)

近代書史

近代書史

石川九楊著『近代書史』が、図書新聞(09/12/26付)の「’09年下半期・読書アンケート」にて紹介されました。

「書家の緻密な観察力と壮大な歴史構想力にはいつも瞠目していたが、この大部な著書において書表現の発生から現在まで書道史が完全に網羅されたといっても過言ではない。これまで書史研究といえば、聖徳太子の「法華義疏」から江戸時代の良寛くらいまでで、近代のものといえば書壇人物史くらいだったのである。良寛から西田幾多郎、井上有一、あるいは詩人の吉増剛造の文字までを一つ一つ丁寧に解読し、その筆蝕から近現代の深層に横たわる日本人の心性の転移を浮き上がらせた。世界唯一の書物。」(藤沢 周 氏)

石川九楊 著
税込19,800円/本体18,000円
A4判・上製函入・776頁
ISBN978-4-8158-0600-2 C3071
在庫有り


『図書新聞』[2009年12月26日号] から(評者:崎山政毅氏)

野蛮から秩序へ
インディアス問題とサラマンカ学派

野蛮から秩序へ

松森奈津子著『野蛮から秩序へ』が、『図書新聞』(2009年12月26日号、図書新聞)の「2009年下半期 読書アンケート」で紹介されました。大航海時代を拓いたスペインにおいて、非ヨーロッパ地域の「野蛮」な人々との関係をめぐり支配の正当性や征服戦争の是非などを問いかけ、新たな政治秩序を模索したサラマンカ学派。ラス・カサスにいたるその思想の展開を丹念に跡づけ、主権国家論に連なる近代の政治思想を見直す力作。

“……先住諸民族の征服・植民地化をめぐっての「インディアス問題」にかかわる、サラマンカ学派の法学論争を緻密に追った労作。ラテンアメリカをラテンアメリカだけで論じる、などという馬鹿げたことはすでに不可能だと記述そのものが語ってくる。……」(『図書新聞』2009年12月26日号、第6面)

松森奈津子 著
税込5,500円/本体5,000円
A5判・上製・392頁
ISBN978-4-8158-0612-5 C3031
在庫有り


毎日新聞[09/12/20(日)]読書欄「2009年『この3冊』」より
(評者:藤森照信 氏)

近代書史

近代書史

石川九楊著『近代書史』が、毎日新聞(09/12/20付)の読書欄「2009年『この3冊』」にて紹介されました。

「……そんなものがあったのか、と疑う読者の方が多いだろうが、この大冊を読むなら、書にも実りと波乱に富んだ近代のあったことが分かる。書という表現の味わい方も教えてくれる。書はこの一冊より入れ。……」(藤森照信 氏)

石川九楊 著
税込19,800円/本体18,000円
A4判・上製函入・776頁
ISBN978-4-8158-0600-2 C3071
在庫有り


毎日新聞[09/12/20(日)]読書欄「2009年『この3冊』」より
(評者:山崎正和 氏)

アレクサンドロス変相
古代から中世イスラームへ

アレクサンドロス変相

山中由里子著『アレクサンドロス変相』が、毎日新聞(09/12/20付)の読書欄「2009年『この3冊』」にて紹介されました。

「……古代の英雄が神話化され、ササン、ローマ、イスラムと文明を超えて伝承されるなかで、価値と意味を変えながら、その文明に与えた影響の歴史。学問が高度の専門性を保ちながら、面白く記述されうることを示す好個の模範である。……」(山崎正和 氏)

山中由里子 著
税込8,800円/本体8,000円
A5判・上製・588頁
ISBN978-4-8158-0609-5 C3022
在庫有り


毎日新聞[09/12/13(日)]読書欄「2009年『この3冊』」より

近代書史

近代書史

石川九楊著『近代書史』が、毎日新聞(09/12/13付)の読書欄「2009年『この3冊』」にて紹介されました。

「……石川九楊のように書の奥義に達した人は、書体を見るだけで時代や人となり、特徴、性癖までわかるらしい。西郷隆盛、中村不折、岡本かの子、現代金釘流……。全77章が推理小説のようにサスペンスにとみ、「アッ」という明察があった。……」(池内 紀 氏)

「……「書」を通して、文学や言葉を考えた力作。書というものを絵画的に見る一般常識を、一掃させる力がある。筆先が生み出すものを徹底的に言葉で追いかけ、書の味わい方を新しく示した。」(髙木のぶ子 氏)

「……近代の書道史は日本のみならず、東アジア漢字文化圏においても初めての試みだ。しかも、書家より政治家、企業家や文化人の書に多くの筆墨を費やしている。筆ざわりを読み解く眼力の鋭さにはもはや驚嘆するしかない。書道史にとどまらず、独特の文化史にもなっている。……」(張 競 氏)

石川九楊 著
税込19,800円/本体18,000円
A4判・上製函入・776頁
ISBN978-4-8158-0600-2 C3071
在庫有り


『中央公論』[2010/1号]から

近代書史

近代書史

『近代書史』の著者・石川九楊先生のインタビューが、『中央公論』(2010/1号、中央公論新社刊)に掲載されています。書とは何かということから、書の歴史を追い続けてきた理由、個々の書についての言及に至るまで、幅広く収録されています。

—— 『中國書史』(1996年)『日本書史』(2001年)に続く三部作の完結篇『近代書史』をさきごろ(09年8月)刊行されましたね。
石川 「……私が書の評論あるいは書の歴史に入っていったのはなぜかと言うと、ひとつには、自分が明らかに表現できているという確実な手ごたえがあるにもかかわらず、自分がやっている書がなかなか理解されなかったためです。もうひとつは、自分が書に捉えられ、魅せられるのはいったいなぜなのか、そこを知りたいと考えたのです。
  書を始めてから、ずいぶん書の理論の本を読み漁り、学者の説明に耳を傾けてきたのですが、どうもしっくりきませんでした。要するに、言葉の問題がすっぽり抜け落ちていたからです。……(中略)……言葉を書くことと書の美とがどう関わっているか、まったく明らかでなかったのです。……」
……(中略)……
—— 書には書き手の人となりが表れる、ということでしょうか。
石川 「よく「書は人なり」と言われますが、これは誤解を生みやすい言い方です。100パーセント否定することはできないにしても、「書は人なり」と言ってしまうと非常に危ない。
  書というのは、結局、言葉の書きぶりです。筆を持って世間と渡り合う、その渡り合い方というものが書の姿となって現れる。……(中略)……
  よく「あの人はこう」「この人はこう」などと言いますが、ではそのときの「人」とは何を指すのかと言えば、それはその人の言葉ぶりではないでしょうか。……(中略)……人、つまりその人の生きているスタイルは、字を書くスタイルと濃密な共通性を持っている。
  したがって、「書は人なり」の代わりに、「書はスタイルなり」という言い方をしたいと思うのです。……」
——最初に良寛が登場するのは、意外であり、同時に新鮮でした。
石川 「市河米庵、巻菱湖、貫名海屋は幕末の三筆と呼ばれていますが、彼らの書と並べてみると、良寛の書はずっと身近で、今見ても生きている感じがします。……(中略)……
  では、幕末の三筆などと比べてどこが違うかと言うと、気張って中国風に筆をしっかりと押し付けて書いていくことをしない。良寛は筆先を使って細い線で書いています。その細さが表しているのは距離の遠さです。
  普通の人が5の力で書いていくのに対して、良寛はそれを1で書く。そこに新しさがあります。
  5のときには、筆が紙にしっかり当たり、これを安定的に摑みますが、1のときには絶えず遠ざかるように筆を使っていく。その距離の遠さが、対象の見通しをよくする。そこにある種の近代的批評眼が育つのではないかと思うのです。……(中略)……
  いつも遠くへ下がって、世間との距離を遠くしている。そのことによって、逆にそこで起こっていることもよく見える。また、それが自分自身をよく見つめることと密接する。それが近代の距離というものだと思います。……」

石川九楊 著
税込19,800円/本体18,000円
A4判・上製函入・776頁
ISBN978-4-8158-0600-2 C3071
在庫有り


『季刊「銀花」』[第160号]「書物雑記」から

近代書史

近代書史

石川九楊著『近代書史』が、『季刊「銀花」』(第160号、文化出版局刊)の「書物雑記」にて紹介されました。

 「……近現代の書を政治家、実業家、作家、詩人、歌人、俳人から中央省庁の看板文字までをもカバーする広大な視野と、一本の線、一つのはらい方をも見逃さない微細を極めた分析・評価をもって論じきり、いささかも緩みを見せない構想力、筆力は希有である。内容は独自だ。「書とは書字の別名」であり、「硬筆の書を抜きに近代の書が語れようはずがない」とする筆者から見た「現代文筆家の三筆」は、中上健次、草森紳一、吉増剛造の三氏であるが、彼らを含め、個々の書を分析し、論じるにあたっては、中国・日本の書史的知見を惜しげもなく総動員したうえで、「○○は書を書くことによって○○自身の『人間』を表現した」式の「正しいといってもいいが、思想的にきわめて怠惰な論」は厳しくこれを退ける。通説や通念に対しては論争的ともいえる書史三部作が出そろったわけだが、本書はとりわけ熟読、吟味、格闘しがいのある一冊となった。」

石川九楊 著
税込19,800円/本体18,000円
A4判・上製函入・776頁
ISBN978-4-8158-0600-2 C3071
在庫有り


朝日新聞[09/11/15(日)]読書欄から(評者:高村 薫 氏)

ものづくりの寓話

ものづくりの寓話

和田一夫著『ものづくりの寓話』が、朝日新聞(09/11/15付)の読書欄にて紹介されました。

「……本書では、昭和初期の近代工業が家内工業の手仕事の「ものづくり」から脱却して、戦後の高度成長期に世界に誇る大量生産システムを構築してゆく過程が明らかにされる。それはそのまま「ものづくり」概念の更新の歴史でもある。
  しかし著者は、その輝かしい歴史を懐かしむのではない。一般の通念を解体して、この百年間、製造業が何を追求し、それをどう実現してきたのかを再検討するのである。それなくしては、先人の知恵の継承はないというのが著者の信念である。
  本書はまず、大量生産時代の幕を開けたフォード・システム=移動式組立ラインという「寓話」を解体する。……(中略)……このシステムで生産効率の向上と大量生産を実現するためには、ラインに供給される部品の仕様と品質が一定であることや、各工程の作業時間の平準化が達成されていなければならない。つまりキーワードは、コンベヤーよりも、生産工程全体の有機的な流れと、それを可能にする互換性部品だったのである。……(中略)……
……「流れ作業」の実現のために、数万点もの部品供給に日々生じる過不足や、各工程に滞留する部品と仕掛品の山をいかに解消するか。必要なときに必要な部品が供給されるジャスト・イン・タイムのシステムをいかに構築するか。戦後の60年代まで続くその挑戦と試行錯誤の過程の検証は、本書の白眉である。とくに、工作機械から人間まで、その作業のすべてを時間で計測して「標準作業」を設定してゆく過程に、かつてフォード・システムを観察し、作業とは何かを見抜いた日本人の眼があると著者はいう。
  最少のコストで一定の品質の製品を大量生産する二十世紀のシステムは、労働者の身体と生活をもそこに組み込みながら、規模の経済性を求めて、今日までひたすら拡大し続けてきた。トヨタが先導した日本のこの「ものづくり」が岐路に立ついま、次世代を担う人たちが、本書をぜひ、読み込んでほしいと思う。」(高村 薫 氏)

和田一夫 著
税込6,820円/本体6,200円
A5判・上製・628頁
ISBN978-4-8158-0621-7 C3034
在庫有り


讀賣新聞[09/11/08(日)]読書欄から(評者:松山 巖 氏)

近代書史

近代書史

石川九楊著『近代書史』が、讀賣新聞(09/11/8付)の読書欄にて紹介されました。

「……書も西洋思想と出会い、変貌を余儀なくされたわけで、その視点から著者は『近代書史』を描く。書を美と文化の中枢においた東アジアの、日本人がいかに近代と対決し、新たな表現を生んだのか。そこで明治初頭では政財界人の書、明治末から大正期には文学者美術家の書が検討される。漱石、子規、大観、玉堂、与謝野晶子、高村光太郎、啄木、宮沢賢治などの書も詳細に見て、人を論じ文学を考える。戦後を含め、壮大なドラマを見るようだ。……」(松山 巖 氏)

石川九楊 著
税込19,800円/本体18,000円
A4判・上製函入・766頁
ISBN978-4-8158-0600-2 C3071
在庫有り


南信州新聞[09/11/07(土)]「書考」から(評者:村澤 聡 氏)

近代書史

近代書史

石川九楊著『近代書史』が、南信州新聞(09/11/7付)の「書考」にて紹介されました。

  「……石川さん自身、この著書が特異化した理由について、こう語っている。「書の問題は、知識人だけにとどまらず、字を書く人全員にさまざまなかたちで関係しているので、日本の近代化の全体像を象徴しているところがあります」(雑誌「墨」200号)。つまり、ここに記された書史は、決して私たちの教養・生活水準から隔たった次元での内容ではないということだ。……(中略)……
  ……石川さんはなぜ、……(中略)……副島と不折を、それほどまでに評価するのか。これは、えこひいきではない。近代日本史的な意味からの理由である。
  副島という人物について、比喩的に「二人存在した」とする石川さんは、政治家としての副島が死んだとき、書家・詩人としての副島がよみがえる――という、歴史ドラマに着目した。
  さらに副島の書世界については、筆蝕を頼りに明晰な分析をしてみせる。「副島種臣の書は、書の作品『世界』自体が、時代や状況の『世界』に等価で対峙している」と。
  一方の不折については、傑出した作品として一部の知識人から”奇怪”と批判された「龍眠帖」を取り上げる。「無限微動」の姿を描き出している、とする不折の書世界には西欧の精神、つまり近代の精神が溶かし込まれているのだと。
  「龍眠帖」は明治41(1908)年に発刊された。石川さんは、それを必然化させたものは「二十世紀初頭の日本の精神状況である」と言い放っている。つまり副島や不折の書は、近代日本が受け止めた時代の様相そのものだったということになろう。……(中略)……
  石川さんは完成した自著を眺めながらこう記す。「これによって近代文学史や、近代美術史にその再考を迫る新たな視野も提供できたのではないか」(後記)。……」(村澤 聡 氏)

石川九楊 著
税込19,800円/本体18,000円
A4判・上製函入・766頁
ISBN978-4-8158-0600-2 C3071
在庫有り


『書道界』[2009/11号]「今月の本棚」から(評者:臼田捷治 氏)

近代書史

近代書史

石川九楊著『近代書史』が、『書道界』(2009/11号、藤樹社刊)の「今月の本棚」にて紹介されました。

 「……明治以降では、西郷隆盛や副島種臣らの近代政治家の書が真正面から読み解かれる。西郷らによって「流儀に終始した日本書史上において初めて作者の情念が書に描き出されたのである」と。そして、副島では、著者の論説に親しんできた者にとって、この征韓論を唱えて下野した元勲の書業への熱いまなざしはよく知るところであるが、本書においてもその分析は精彩に富んでいて圧巻。副島は「書史によって育まれてきた文字の構成法を解体し、人工的に新たに再構成した」のであり、その「作品『世界』自体が、時代や状況の『世界』に等価で対峙しているのである」。最大級のオマージュである。
  同様に著者の評価が格別であることでおなじみの画家中村不折と俳人河東碧梧桐の解析が冴える。旧来の書の自明性への反旗に、次の段階へと牽引する独自の力を見出すのである。
  近代を特徴づける鉛筆や万年筆の浸透が与えた影響を、石川啄木や高村光太郎、宮沢賢治らをとおして解析したり、また、近代印刷の導入にともなうタイポグラフィへの問題に踏み込んだりと、書字全般にわたる著者の広い目配りも注目される。
 最終章は自身の書作のバックボーンを書き下ろしている。前衛書の行き詰まりに象徴されるような、現代における書作の困難さにたじろぐことなく、かつてない斬新な世界を開くことができたのは、本書でも示されている、著者ならではの歴史認識を踏まえたものであることが説得力豊かに披露されている。
  独自の用語「筆蝕」(ひっしょく:書の書きぶり)を軸に、微視と巨視を自在に響き合わせながら、理路を尽くして、現在にいたるパラダイム(規範)の変移を時代ごとに見届けることで、近代書史の全体像を立体的に詳らかにした金字塔といってよい。」(臼田捷治 氏)

石川九楊 著
税込19,800円/本体18,000円
A4判・上製函入・776頁
ISBN978-4-8158-0600-2 C3071
在庫有り


日本経済新聞[09/10/25(日)]文化欄「語る」から

近代書史

近代書史

『近代書史』の著者・石川九楊先生が、日本経済新聞(09/10/25付)の文化欄「語る」にて紹介されました。

  「近代以降の書の歴史、成り立ちを説いた大著『近代書史』をこのほど名古屋大学出版会から刊行した。『中国書史』『日本書史』に続く書史三部作が13年を費やして完成した。というよりむしろ、『近代書史』を書くために前2作はあったと言うべきかもしれない。現代の書を読み解くには、一人ひとりの人格、社会の有り様と深くかかわってきた書の歴史を細部まで確かめる必要があった。
 「近代になり西洋の絵画を見る目で書をとらえようとしてきたことが間違いだった」。その誤りが書を「文化の片隅」に追いやり、「鑑賞者が一瞥するだけで足早に通りすぎる愚劣で不可解な芸術ジャンルに貶められた」。だから創作活動の一方で、書の美の構造を具体的に明らかにしようと研究・評論を積み重ねた。92年の『筆蝕の構造―書くことの現象学』はその一里塚。以来、20年近くに及ぶ研究の結果、「書とは触覚の芸術である」と断言できるところにたどり着いた。
  一点、一画を書き進んでいくプロセスが書の魅力であり、書く力の強弱や速さ、深さ、角度などの「書きぶり」を感じ取るのが書の楽しみ。それは絵でもデザインでもなく「言葉」そのものであり、書=文字の集まりは文章へ、文学へと発展していく。その根源が書である。「良い書とはどんな書か。書はどう書くべきかといった議論も可能になる」
  『近代書史』では、近代への「序曲」となった良寛の書の魅力や、明治の政治家、副島種臣の書の素晴らしさを詳細に論じた。「2000年前の書がどのようにして書かれたか、まるでVTRを見るかのように再現することさえ可能」という。明治から百数十年を経て改めて、書の再興を目指す。」

石川九楊 著
税込19,800円/本体18,000円
A4判・上製函入・766頁
ISBN978-4-8158-0600-2 C3071
在庫有り


日本経済新聞[09/10/25(日)]読書欄「フロントライン」から

アジア法ガイドブック

アジア法ガイドブック

鮎京正訓編『アジア法ガイドブック』が、日本経済新聞(09/10/25付)の読書欄「フロントライン」にて紹介されました。法整備支援プロジェクトで注目を浴び、社会主義法・イスラーム法・伝統法なども取り込みながら、多様な発展を示すアジア各国の法状況を、各国地域の法専門家が最新の情報にもとづき詳細に解説、アジア地域の法制度の展開をダイナミックに捉えた、わが国初の本格的ガイドブックです。

鮎京正訓 編
税込4,180円/本体3,800円
A5判・並製・444頁
ISBN978-4-8158-0622-4 C3032
在庫有り


『週刊エコノミスト』[2009/11/3号]「Book Review」から

アジア法ガイドブック

アジア法ガイドブック

鮎京正訓編『アジア法ガイドブック』が、『週刊エコノミスト』(2009/11/3号)の「Book Review」にて紹介されました。

 「類書はない。中国、韓国、台湾、モンゴル、インドネシア、ベトナム、カンボジア、タイ、マレーシア、ラオス、ミャンマー、インド、パキスタン、バングラデシュの14国・地域の法制度概論だ。大東亜共栄圏などといいながら、日本は戦前も戦後もアジア法の本格研究はしていない。政府開発援助(ODA)で法整備支援が始まったが、各国研究の蓄積は全くない。道を開く出版は貴重だ。」

鮎京正訓 編
税込4,180円/本体3,800円
A5判・並製・444頁
ISBN978-4-8158-0622-4 C3032
在庫有り


『出版ニュース』[2009/10上旬号]「ブックハンティング」から(評者:齋藤愼爾 氏)

近代書史

近代書史

石川九楊著『近代書史』が、『出版ニュース』(2009/10上旬号)の「ブックハンティング」にて紹介されました。

 「石川九楊氏の渾身作『近代書史』が圧巻。今年度の出版界、最高の巨篇であろう。刊行案内に曰く、「すべては本書への助走だった」。この「すべて」は石川氏の二十四、五冊にも及ぶ既刊書を指すともとれるし、大冊『中國書史』(50万字)、『日本書史』(70万字)に限定して言っている風にも受けとれる。書名から言っても、『近代書史』(90万字)は二著と合わせて書史三部作の完結篇にあたることになるのか。
  ……(中略)……書に関する私たちの既成概念を根柢から衝つ。「鋭い洞察力と長大な射程を備えた恐るべき書物」(高階秀爾氏)だ。すべてが目から鱗、納得の連続だ。たとえば、書道家の間で、書は”言葉”を書くものではないかと気づかれ始めたのは、1970年代に入ってからとか、底辺の書、底辺の造形への注目と試行を行った「前衛書道家の井上有一、池田水城、新井狼子等(略)、しかし、この底辺的手法は、オノマトペを多用したり反復語の多い初形をすくって成立している詩にはよく似合うが、戦後の高次な透明性と抽象性をもった、たとえば黒田三郎、田村隆一、鮎川信夫、谷川雁、吉本隆明、清岡卓行等の詩は書けなかった」などの断言は衝撃以上のものを感じる。石川作品には田村隆一、谷川雁、吉本隆明の詩を書いたものが多数あるからだ。……(中略)……また私が難解な石川作品を前にして、何が書かれているか判読出来ないと周章狼狽したことにも、「十年ほど前に書壇で、読めるか読めないかという可読性論争があったが、これもまったく不毛な論争で(略)書というのは、字画を描き、文字となし、文を構成していく筆蝕の出来事である。何の詩が書かれているかどうかが書の問題なのではない。どのような筆蝕でどのような世界が描かれているかを読むことが書を読むということであり、それ以外に書を読むことなど存在しない(略)〈読めないものは文字ではない〉〈読めない文字は書ではない〉というのは、書の表現を誤解した誤謬の論である。この論では”鯉”を描いているとわかれば絵画であり、何を対象として描いているかわからない抽象画は絵画ではないという議論とおなじことになってしまう」とやんわり啓蒙してくれる。
  第七十四章「生への〈情(おもい)〉と言葉――江口草玄」や七十五章「棲むべき場を求める書――尾市有成」は、〈書の現在〉(書の再生、未来の声)を語って余りあるものがある。そして七十七章は石川氏の自註、自書自解(解説)というか、自ら辿る書の表現の歴史である。この章のラストの私は、「『書の究極のゴールは、誰もが普通に書いて、どの字も美しい』時代への到達であると考えている」と、「後記の「ずっと遠くから一筋の筆尖が旋回してきて、白い紙に『一』という字を書く。その『一』字が我々が今生きている時代を捉えたと言い切れる作品になれば、どんなに幸福なことであろうかと夢想する。しかし、その『一』字は、時代と衡り合うひとつの作品というよりも、時代を捉えるための補助役なのだろう」が、よく釣り合っている。吉本隆明なら、〈非知〉への凝視、還相志向というだろう。永遠の座右の書となる大冊を持ったことを幸せに思う。」(齋藤愼爾 氏)

石川九楊 著
税込19,800円/本体18,000円
A4判・上製函入・766頁
ISBN978-4-8158-0600-2 C3071
在庫有り


『週刊朝日』[2009/10/23号]「週刊図書館」から(評者:海野 弘 氏)

近代書史

近代書史

石川九楊著『近代書史』が、『週刊朝日』(2009/10/23号)の「週刊 図書館」にて紹介されました。

 「実のところ、書の歴史など私には無縁であると思っていたのだが、この本を読んで、私のやってきたモダン・アート、モダン・デザインの歴史に深く関わっていることに目を開かれた。これは、書道界だけの問題でなく、〈書〉が世界の認識と表現であることを明らかにしている。私たちは〈書〉によって世界を見えるものにしていくのだ。本書は孤立した書史を私たちに広く開いてくれる試みなのである。
 『近代書史』というなにげない題が実は大きな意味を持っている。書道史は数多いが、近代書史はこれまで書かれていなかったからだ。……(中略)……
 近代書史が書かれなかった理由として、書は西欧文化にない、東アジア文化圏のアートであったから、西欧近代の美学であつかえなかったことをあげている。東アジア固有の文化でも能や歌舞伎、茶道などは日本的として評価されたが、書と生花ははずされたというのである。
  この指摘は私には面白い。なぜならこのところ生花の近代について考えていて、戦前のいけばな運動を調べているところだからだ。前衛いけばな、といえば勅使河原蒼風がまず浮かぶが、蒼風は書をよくし、海外の展覧会でも書のパフォーマンスを行っている。
  私は前衛いけばなと前衛書道の関係が気になっていたのだが、この本はそれに大きなヒントを与えてくれそうである。書の近代史のパースペクティヴは、書以外のアートにも新しい光を当ててくれる。……」(海野 弘 氏)

石川九楊 著
税込19,800円/本体18,000円
A4判・上製函入・766頁
ISBN978-4-8158-0600-2 C3071
在庫有り


朝日新聞[09/10/11(日)]読書欄から

アジアの在来家畜
家畜の起源と系統史

アジアの在来家畜

在来家畜研究会編『アジアの在来家畜』が、朝日新聞(09/10/11付)の読書欄「情報フォルダー」にて紹介されました。野生動物と近代品種とをつなぐ在来家畜は、家畜化過程の本質を考える上で重要であるとともに、品種造成の遺伝資源としても大変有用です。本書は、永年のアジア全域での実地調査を軸に、農学以外にも人類学・考古学等の知見を盛込み体系的に記述した、世界に類を見ない書となっております。

在来家畜研究会 編
税込10,450円/本体9,500円
B5判・上製・494頁
ISBN978-4-8158-0620-0 C3061
在庫有り


『墨』[2009・9・10月号、200号]「著者インタビュー」から

近代書史

近代書史

『近代書史』の著者・石川九楊先生のインタビューが、芸術新聞社刊『墨』(2009・9・10月号、200号)の「著者インタビュー」ページに掲載されました。東アジアの文化の根幹をなす「書」は、近代にいかなる軌跡をたどったのか? 日本の近代・現代の書の歴史を、専門書道家だけでなく文学者や画家など知識人の書跡、生活者の日常書字や印刷文字までも含めて、表現された書の丹念な解読により初めて全体として捉えた、石川九楊の絢爛たるライフワークです。

石川九楊 著
税込19,800円/本体18,000円
A4判・上製函入・766頁
ISBN978-4-8158-0600-2 C3071
在庫有り


毎日新聞[09/9/27(日)]読書欄から(評者:藤森照信 氏)

近代書史

近代書史

石川九楊著『近代書史』が、毎日新聞(9/27付)の読書欄にて紹介されました。

 「おそるべき一冊と言えばいいか。今や喪われた”書”の世界の魅力と魔力を語りながら、745ページを費し、67人もの字を書く人の字を取りあげ、特徴を指摘し、造形的意味を論じ、歴史的に位置づける。……(中略)……
  『中國書史』(1996)、『日本書史』(2001、毎日出版文化賞)につづき、東アジアの、ということは世界の書の歴史の三部作がここに完成した。13年がかり。それにふさわしい格調と量をそなえながら、同時に、書など知らぬ人にも分かるように、一字一画の見方を具体的に手ほどきしてくれる。究極にして入門の一冊。おそるべきと言ってもかまわないだろう。……(中略)……
  パノフスキー以後の西洋絵画の読み方を思い出したが、絵画以上におそるべきは、黒い線一本の動きから、人生や思想や性格まで読み解いてしまうのだ。字のヘタな人は『書は人なり』の言葉を思い出して嫌な気分になるし、ここまで深読みしていいのか心配にもなるが、著者の想いと力が書の世界の固く閉じた門を開いてくれるのは間違いない。
  近代の書を代表するのは誰か。
  維新の元勲副島種臣と大正の洋画家中村不折の二人。……(中略)……副島の「奇想の書」を継ぎ、新たに展開したのが不折の書で、明治41年(1908年)、おそるおそる世に問うた「龍眠帖」には、その後現在にいたるまでのすべての書の動向が込められているという。
  「龍眠帖」の存在を知るだけでも、一読のかいがあるというもの。書など贈られても分からないし、今の室内には合わないと思うような人でも、「龍眠帖」ならだいじょうぶ。
  ……(中略)……書は、線、形、動運、構成、色などの要素を統合して生れるが、その統合の核をなす何かが、「龍眠帖」において消失した。そして以後は、著者がいうように、それぞれの要素が自己運動を開始し、線だけの、形だけの、動運だけの、構成だけの書へと突き進む。その結果が戦後の前衛書だった。
  書は解体して終り、そして後にはこの三部作が残った。
  と、私には思えるのだが、書家の石川九楊は違うらしい。「現代に書することの困難」を深く認めたうえで、書に「言葉以前の意識」を「盛る」ことで、書は再び生命を取りもどす、と語る。文字が生れる以前の人類の心や意識にまで立ち帰るつもりなのか。」(藤森照信 氏)

石川九楊 著
税込19,800円/本体18,000円
A4判・上製函入・766頁
ISBN978-4-8158-0600-2 C3071
在庫有り


東京新聞[09/9/20(日)]読書欄から

アジアの在来家畜
家畜の起源と系統史

アジアの在来家畜

在来家畜研究会編『アジアの在来家畜』が、東京新聞(09/9/20付)の読書欄「出版情報」にて紹介されました。野生動物と近代品種とをつなぐ在来家畜は、家畜化過程の本質を考える上で重要であるとともに、品種造成の遺伝資源としても大変有用です。本書は、永年のアジア全域での実地調査を軸に、農学以外にも人類学・考古学等の知見を盛込み体系的に記述した、世界に類を見ない書となっております。

在来家畜研究会 編
税込10,450円/本体9,500円
B5判・上製・494頁
ISBN978-4-8158-0620-0 C3061
在庫有り


朝日新聞[09/9/13(日)]読書欄から

近代書史

近代書史

石川九楊著『近代書史』が、朝日新聞(9/13付)の読書欄「情報フォルダー」にて紹介されました。東アジアの文化の根幹をなす「書」は、近代にいかなる軌跡をたどったのか? 日本の近代・現代の書の歴史を、専門書道家だけでなく文学者や画家など知識人の書跡、生活者の日常書字や印刷文字までも含めて、表現された書の丹念な解読により初めて全体として捉えた、石川九楊の絢爛たるライフワークです。

石川九楊 著
税込19,800円/本体18,000円
A4判・上製函入・766頁
ISBN978-4-8158-0600-2 C3071
在庫有り


「中日新聞」 [2009年8月30日付] から

疑似科学と科学の哲学

疑似科学と科学の哲学

伊勢田哲治著『疑似科学と科学の哲学』が、「中日新聞」(2009年8月30日付)読書欄の「ロングセラー」で紹介されました。占星術、超能力研究、東洋医学、創造科学 ……… これらはなぜ「疑似科学」と言われるのだろうか。はたして疑似科学と科学の間に線は引けるのだろうか。科学のようで科学でない疑似科学を考察することを通して、「科学とは何か」を解き明かしてゆくユニークで真っ当な科学哲学入門。

“占星術、超能力、創造科学(聖書の天地創造に関する記述を事実とみなし科学的に証明できるとする考え)—— こうした、一般に「疑似科学」とされるテーマを通して「科学とは何か」を問いかける。科学哲学者たちの仕事を比較、検討しながら、科学と疑似科学との間の線引きについて提起した。…… 全体を通して流れるユーモラスな筆致が読者を引きつける魅力ある内容になっている。”(「中日新聞」2009年8月30日付)

伊勢田哲治 著
税込3,080円/本体2,800円
A5判・並製・288頁
ISBN978-4-8158-0453-4 C3010
在庫有り


日本経済新聞[09/8/9(日)]読書欄から(評者:川北 稔 氏)

最初の近代経済
オランダ経済の成功・失敗と持続力 1500-1815

最初の近代経済

  「……金融や情報を基礎としてグローバル化を定義すれば、その起点は、17世紀オランダあたりに置くことが可能となる。工業化のイギリスではなく、商業・金融を主体とした近世オランダ経済こそが、「持続的成長」の開始という意味で、「最初の近代経済」であったと定義したJ・ド・フリース、A・ファン・デァ・ワウデ著『最初の近代経済』(大西吉之・杉浦未樹訳、名古屋大学出版会・09年)は、この立場の典型である。本書は、様々な意味で、20世紀経済史研究の到達点を示している。

 

もともと、ウォーラーステインでも、近代世界システム史上、生産と流通での世界的優位に加えて、金融面での圧倒的優位を含む「経済覇権」の最初の例は、オランダとされている。イギリス史に金融グローバル化の起源を求めた「ジェントルマン資本主義」論者たちも、17世紀末の「財政革命」をその画期としたから、金融グローバル化の見地からは、17世紀にその起源を求めるのが、ひとつの通説となりつつあるといえる。……」(川北 稔氏)

J・ド・フリース 他著  大西吉之 他訳
税込14,300円/本体13,000円
A5判・上製・760頁
ISBN978-4-8158-0616-3 C3033
在庫有り


「朝日新聞」 [2009年7月26日付] から(評者:苅部直氏)

野蛮から秩序へ
インディアス問題とサラマンカ学派

野蛮から秩序へ

松森奈津子著『野蛮から秩序へ』が、「朝日新聞」(2009年7月26日付)で紹介されました。大航海時代を拓いたスペインにおいて、非ヨーロッパ地域の「野蛮」な人々との関係をめぐり支配の正当性や征服戦争の是非などを問いかけ、新たな政治秩序を模索したサラマンカ学派。ラス・カサスにいたるその思想の展開を丹念に跡づけ、主権国家論に連なる近代の政治思想を見直す力作。

“主権国家というものについては、さまざまな批判が従来加えられてきた。それは、支配領域の外に対して働きかけるとき、自国の利害しか念頭におかない。その利害の内容も、政府当局者の判断に左右されてしまう。トマス・ホッブズに代表される、近代主権国家の理論の主流がはらんでいた難点である。
しかし、西欧中世の神学と教会による支配から、主権の理論が生まれる過程からは、これと別の「もう一つの国家論」がわかれ出ていた。それが、この本の扱う、十六世紀前半のスペインで展開された諸議論である。…… 重要でありながら、日本ではきちんと扱われなかった思想潮流についての、本格的な研究書である。単純な近代西欧批判の言説が見落としてしまう、政治思想史の多様性と、その豊かな果実を、改めて教えてくれる。」(「朝日新聞」2009年7月26日付)

松森奈津子 著
税込5,500円/本体5,000円
A5判・上製・392頁
ISBN978-4-8158-0612-5 C3031
在庫有り


日本経済新聞[09/5/3(日)]読書欄から

企業家ネットワークの形成と展開
データベースからみた近代日本の地域経済

企業家ネットワークの形成と展開

 「これまで企業の勃興はファミリービジネスの力によるものだったとされ、資産家たちの企業家ネットワークの重要性については研究が遅れていた。 本書は明治期の人名録を手がかりに膨大な手間暇をかけ、全国にいくつぐらいのネットワークが存在し、どんな役割を担っていたかを分析した。本書 によると、それぞれのネットワークは複数の会社設立に関与し、長く続いたものは主に地方の中核都市を拠点としていたという。」

鈴木恒夫・小早川洋一・和田一夫 著
税込7,260円/本体6,600円
菊判・上製・456頁
ISBN978-4-8158-0613-2 C3033
在庫有り


毎日新聞[09/4/19(日)]読書欄から(評者:富山太佳夫 氏)

帝国日本の植民地法制
法域統合と帝国秩序

帝国日本の植民地法制

【日本は外地でどう公権を得たか】「……国内だけで通用する法律ならまだしも、外地、外国人、外国との交渉に関わる法律がどうなるかとなると、その複雑さは誰にでも想像できるはずで ある。さらに台湾にいる日本人、朝鮮にいる日本人、満州にいる日本人にはどんな法律が適用されるのか。さらに、さらに、そうした法律と現地の既存の 法律の関係はどうなるのか。…(中略)…明治期に西欧から押しつけられ、やっと振り払った「治外法権」を、今度は日本が周辺地域に押しつけられるのか。 …(中略)…「帝国日本の植民地法制」というテーマのもとで、20年間かけて資料を読み、このような本をまとめるというのは、とてつもなく大変な…… いや、学者冥利につきることであろう。……」(富山太佳夫 氏)

浅野豊美 著
税込10,450円/本体9,500円
A5判・上製・808頁
ISBN978-4-8158-0585-2 C3032
在庫有り


日本経済新聞[09/4/12(日)]読書欄から

近代製糸技術とアジア
技術導入の比較経済史

近代製糸技術とアジア

「日本をはじめ、アジアの経済発展の背景には西欧からの技術導入があった。ブレイクスルーとなったのが「西欧の衝撃」である。衝撃は技術にとどまらず、生産方法の形態や組織、社会制度、合理主義的な文化など実に幅広い分野に及んだ。アジアや日本の技術発展や工業化を長年研究してきた著者が近代製糸業をテーマに技術の定着過程を、比較経済史の視点を用いて跡付けた。労作とはまさにこういう書籍を指すのだろう。」

清川雪彦 著
税込8,140円/本体7,400円
A5判・上製・632頁
ISBN978-4-8158-0611-8 C3033
在庫有り

年度別書評一覧

近刊案内

2024年4月16日出来予定

愛・セックス・結婚の哲学

R・ハルワニ 著
江口 聡・岡本慎平 監訳
A5判・上製・576頁
税込6,930円/本体6,300円
ISBN 978-4-8158-1154-9
Cコード 3010

2024年4月16日出来予定

在日フィリピン人社会

高畑 幸 著
A5判・上製・330頁
税込6,380円/本体5,800円
ISBN 978-4-8158-1153-2
Cコード 3036

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重版案内

2023年4~5月

2023年 春の一斉増刷

2024年1月19日出来

アメリカの人種主義(第2刷)

竹沢泰子 著
A5判・上製・516頁
税込4,950円/本体4,500円
ISBN 978-4-8158-1118-1
Cコード 3022

2023年12月22日出来

進化倫理学入門(第2刷)

スコット・ジェイムズ 著
児玉 聡 訳
A5判・上製・336頁
税込4,950円/本体4,500円
ISBN 978-4-8158-0896-9
Cコード 3012

2023年11月30日出来

派閥の中国政治(第2刷)

李 昊 著
A5判・上製・396頁
税込6,380円/本体5,800円
ISBN 978-4-8158-1131-0
Cコード 3031

2023年11月17日出来

消え去る立法者(第3刷)

王寺賢太 著
A5判・上製・532頁
税込6,930円/本体6,300円
ISBN 978-4-8158-1120-4
Cコード 3010

2023年10月27日出来

統計学を哲学する(第5刷)

大塚 淳 著
A5判・並製・248頁
税込3,520円/本体3,200円
ISBN 978-4-8158-1003-0
Cコード 3010

2023年10月23日出来

質的研究の考え方(第7刷)

大谷 尚 著
菊判・並製・416頁
税込3,850円/本体3,500円
ISBN 978-4-8158-0944-7
Cコード 3036

2023年8月28日出来

対華二十一ヵ条要求とは何だったのか(第4刷)

奈良岡聰智 著
A5判・上製・488頁
税込6,050円/本体5,500円
ISBN 978-4-8158-0805-1
Cコード 3021

2023年8月24日出来

世界史のなかの東南アジア【上巻】(第2刷)

アンソニー・リード 著
太田 淳・長田紀之 監訳
A5判・上製・398頁
税込3,960円/本体3,600円
ISBN 978-4-8158-1051-1
Cコード 3022

2023年8月21日出来

客観性(第4刷)

ロレイン・ダストン/ピーター・ギャリソン 著
瀬戸口明久・岡澤康浩・坂本邦暢・有賀暢迪 訳
A5判・上製・448頁
税込6,930円/本体6,300円
ISBN 978-4-8158-1033-7
Cコード 3010

2023年8月10日出来

宇宙機の熱設計(第3刷)

大西 晃 他編
B5判・上製・332頁
税込19,800円/本体18,000円
ISBN 978-4-8158-1042-9
Cコード 3053

2023年7月28日出来

中央銀行はお金を創造できるか(第2刷)

金井雄一 著
A5判・上製・234頁
税込5,940円/本体5,400円
ISBN 978-4-8158-1125-9
Cコード 3033

2023年6月21日出来

キュビスム芸術史(第2刷)

松井裕美 著
A5判・上製・692頁
税込7,480円/本体6,800円
ISBN 978-4-8158-0937-9
Cコード 3071

2023年6月15日出来

科学アカデミーと「有用な科学」(第3刷)

隠岐さや香 著
A5判・上製・528頁
税込8,140円/本体7,400円
ISBN 978-4-8158-0661-3
Cコード 3040

2023年5月25日出来

統計力学の形成(第3刷)

稲葉 肇 著
A5判・上製・378頁
税込6,930円/本体6,300円
ISBN 978-4-8158-1036-8
Cコード 3040

2023年5月24日出来

明代とは何か(第2刷)

岡本隆司 著
A5判・上製・324頁
税込4,950円/本体4,500円
ISBN 978-4-8158-1086-3
Cコード 3022

2023年5月12日出来

消え去る立法者(第2刷)

王寺賢太 著
A5判・上製・532頁
税込6,930円/本体6,300円
ISBN 978-4-8158-1120-4
Cコード 3010

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