書籍の内容
善意に頼った運動だけでは行きづまりつつある環境保全・自然再生にとって、切り札といえる「生態系サービス」。本書は、従来の枠を大きく超えたスタイルで、世界各地で自然保全に取り組む人々を、ピューリッツアー賞作家らが鮮やかな筆致で描き出す。自然を経済に組み込む新しい試み。
【原書名】
The New Economy of Nature: The Quest to Make Conservation Profitable, Island Press, 2002.
著者・訳者一覧
【著者】
グレッチェン・C・デイリー (Gretchen Cara Daily)
スタンフォード大学生物学部教授。生態系サービスや自然資本という概念の構築・発展に、最初期より重要な貢献を果たしており、近年立ち上げた「自然資本プロジェクト」は、世界各地で展開されている。2009年には「コスモス国際賞」を受賞して来日している。編著にNature’s Services: Societal Dependence On Natural Ecosystems (1997) がある。
キャサリン・エリソン (Katherine Ellison)
ジャーナリスト。世界各地での取材をもとにした記事には定評があり、フィリピンのマルコス大統領に関する記事でのピューリッツァー賞(1986年)をはじめ、数々の賞を受賞。近著にBuzz: A Year of Paying Attention (2010), The Mommy Brain: How Motherhood Makes Us Smarter (2005) がある。
【訳者】 (所属は刊行時のものです)
藤岡伸子 名古屋工業大学大学院工学研究科教授
谷口義則 名城大学理工学部准教授
宗宮弘明 名古屋大学名誉教授
担当者より
生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が本年10月に名古屋で開催されることもあり、「生物多様性」に対する世間の関心は日ましに高まっています。
では、なぜ生物多様性を守ることが必要なのでしょうか。それを根拠づける一つの視点が、本書の正題にも使われている「生態系サービス」です。
生態系サービスは、生態系から我々が享受するこのできるサービス全般のことで、いわゆる「自然の恵み」と言われるものに近いものですが、より定量的・金銭的に評価づけられています。そして、この生態系サービスを成り立たせているものが生物多様性です。生物多様性が衰えれば、我々が享受できる生態系サービスも、やせ細ってしまうことになるのです。
したがって、生態系サービスの価値を、市場ベースで経済的にきちんと評価することこそが、生物多様性を含めた環境を保全する上での切札となる、本書はそう主張します。
TEEBの最終報告書の発表が話題になるなど、「自然の恵み」を経済に組み込む胎動が、今まさに聞こえつつあります。従来の善意に頼った環境保全・自然再生運動の枠を大きく超えた先駆的なスタイルで、世界各地で環境保護に向けて取り組む人々を、ピューリッツアー賞作家らが鮮やかな筆致で描き出した本書は、非常にホットな本と言えます。
書籍の目次
プロローグ 自然の財産
1 オーストラリア ニューサウスウェールズ州カトゥーンバ —-雲上に夢を描く—-
2 二酸化炭素排出権取引の夜明け
3 ニューヨーク —-清らかな美味しい水の作り方—-
4 カリフォルニア州ナパ —-川の自然再生で復興を遂げた町—-
5 バンクーバー島 —-プロジェクト・スナーク—-
6 ワシントン州キング郡 —-巧みな交渉術—-
7 オーストラリア —-民間野生生物保護区の挑戦—-
8 コスタリカ —-利用されて活きる母なる自然—-
9 テレゾポリス —-モーターはもう回っている—-
10 鳥、ミツバチ、そして生物多様性の危機
エピローグ 来るべき革命への希望
受賞紹介
書評紹介
信濃毎日新聞 (2011年3月6日付、評者 : 鬼頭秀一 氏)


