書籍の内容
<善>の存在論 ——。人間という主体についての近代的な理解、すなわち<近代的アイデンティティ>の複雑さと豊かさ、偉大さと危うさがいかに形成されてきたかを、隠れた道徳的立場とともに明らかにし、その真価を救出。共同体主義・多文化主義で知られるテイラーの主著、待望の邦訳。
【原書名】
Sources of the Self: The Making of the Modern Identity, Harvard University Press, 1989.
訳者一覧
下川 潔 (学習院大学文学部教授)
桜井 徹 (神戸大学大学院国際文化学研究科教授)
田中智彦 (東京医科歯科大学教養部准教授)
担当者より
マイケル・サンデルのハーバード大学での講義が昨今話題になっているようですが、本書は、その師であり共同体主義・多文化主義の中心的理論家として著名なチャールズ・テイラーの主著の邦訳です。
本書でテイラーは、自我を〈善〉と分かちがたく結びついているものと捉えた上で、人間という主体、人格をもった存在についての近代的な理解の総体、すなわち〈近代的アイデンティティ〉の、複雑さと豊かさ、偉大さと危うさを、内面性の感覚、日常生活の肯定、自然についての表現主義的な考え方、という三つの要素の形成史から明らかにし、〈近代〉の真価を救出する、みごとな哲学的人間学を打ち立てています。本書は、狭義の哲学のみならず、幅広い方面に影響を与えつづける現代の古典であり、長らく邦訳が待たれていました。
なお、テイラーは「歴史・伝統・文化を異にする人間同士が、複合的アイデンティティを保持しつつ、幸福に共存しうる社会哲学を構築し、その実現に向けて努力してきた傑出した哲学者」として、2008年には京都賞も受賞しています。
書籍の目次
第Ⅰ部 アイデンティティと善
第1章 不可避の枠組
第2章 道徳空間における自我
第3章 不明確な倫理
第4章 道徳的源泉
第Ⅱ部 内面性
第5章 道徳の地形学
第6章 プラトンの自己支配
第7章 「内なる人に」
第8章 デカルトの距離を置いた理性
第9章 ロックの点的自我
第10章 「人間の条件」の探究
第11章 内なる自然
第12章 歴史的説明についての補足
第Ⅲ部 日常生活の肯定
第13章 「神は副詞を愛し給う」
第14章 合理化されたキリスト教
第15章 道徳感情
第16章 神意による秩序
第17章 近代の文化
第Ⅳ部 自然の声
第18章 砕かれた地平
第19章 ラディカルな啓蒙
第20章 源泉としての自然
第21章 表現主義的転回
第Ⅴ部 より繊細な言語
第22章 ヴィクトリア朝に生きたわれらが同時代人
第23章 ポスト・ロマン主義時代のヴィジョン
第24章 モダニズムのエピファニー
第25章 結論 —— 近代の対立軸
書評紹介
『図書新聞』 (2011年4月2日号、評者 : 森田明彦 氏)
讀賣新聞 (2010年12月26日号、評者 : 野家啓一 氏)
『週刊読書人』 (2010年12月24日付、評者 : 高山宏史 氏、阪根正行 氏)
『図書新聞』 (2010年12月25日号、評者 : 青木孝平 氏)
朝日新聞 (2010年12月19日付、評者 : 姜 尚中 氏)
『週刊読書人』 (2010年12月3日号、評者 : 辻 康夫 氏)
讀賣新聞 (2010年11月14日付、評者 : 片山杜秀 氏)
朝日新聞 (2010年11月7日付、評者 : 姜 尚中 氏)


