書籍の内容
植物の光合成を例に挙げるまでもなく、光で起こる有機化学反応は非常に重要な反応である。本書は物質が光を吸収することで開始する光化学の基礎から、ベンゼン類などの有機化合物が光特有の反応を起こす仕組みまでを丁寧に解説しており、有機光化学の入門として最適の書である。
書籍の目次
まえがき
第Ⅰ部 光化学への誘い
第1章 太陽の恵み
1-1 自然の美しさと科学
1-2 自然を育む太陽光
1-3 太陽のエネルギー
1-4 太陽エネルギーの利用
第2章 光を利用している自然科学分野
2-1 幅広い応用、利用分野
2-2 「実り」の多い「光化学」の樹
2-3 主な具体的実例
第3章 光化学学習のためのシラバス
3-1 光化学のプロフィールと学習手順
3-2 各手順の学習目的と内容
第Ⅱ部 光化学の基礎
第4章 光の吸収で何が起こるのか
4-1 光の種類と光源
4-2 物質を構成する分子内での電子移動
4-3 短い寿命の不安定な状態の生成
第5章 電子の動き
—— 電子遷移
5-1 エチレン(H2C=CH2) をモデルとして
5-2 電子遷移に関係する2つの重要な事項
5-3 電子遷移のモード
5-4 2つの電子状態 —— 一重項状態と三重項状態
第6章 励起状態がたどる過程
—— ジャブロンスキー図
6-1 エネルギー状態図と諸過程
6-2 ジャブロンスキー図から予想できること
第7章 励起エネルギーの移動
7-1 消光(quenching)と光増感(photosensitization)
7-2 エネルギー移動の一般的機構
第8章 光化学反応の効率
8-1 反応効率の尺度である量子収率(quantum yield)
8-2 光子数の測定と光量計(actinometer)
8-3 反応の基礎的な解析: Stern-Volmer 式
8-4 相対量子収率測定のための簡便な照射装置
第Ⅱ部演習問題
第Ⅲ部 有機化合物の基本的光化学反応
第9章 単純オレフィンの光化学反応
—— π、π* 状態の反応
9-1 直鎖状オレフィンのE–Z 光異性化(E–Z photoisomerization)
9-2 立体化学的にE-体ができにくい環状オレフィンの場合
9-3 π、π* 励起以外の励起 C=C 二重結合での光に特有な反応
9-4 環化付加(cycloaddition):シクロブタン環の生成
第10章 ポリエンの特異的光化学反応
10-1 非共役 1,4-ジエンの反応
10-2 共役ポリエンの協奏的特異反応
—— 環状電子反応(electrocyclic reaction)
第11章 カルボニル化合物の光化学反応
—— n、π* 状態の反応を中心にして
11-1 カルボニル基の電子配置(electronic configuration)
11-2 カルボニル基の n、π* 励起状態
11-3 n、π* 状態での主な光化学反応
11-4 π、π* 状態での還元反応
11-5 α、β-不飽和環状ケトン(共役エノン)の光化学
—— 2-シクロヘキセノンの光化学
11-6 共役ジエノンの光化学 —— 2,5-ジエノンと2,4-ジエノン
第12章 ベンゼン類の光化学反応
12-1 芳香環の結合組換え反応 —— 原子価異性(valence isomerism)
12-2 ベンゼン環へのオレフィン環化付加
—— 1,2-環化付加(1,2-cycloaddition)
12-3 原子価異性による見かけの転位反応
12-4 光化学的芳香族置換反応
第三部演習問題
主な参考書とあとがき
索 引
コラム
位取り接頭語 /光源の「明るさ」/光化学スモッグ /ホタルの光の仕組み /イソプレン則 /PNC 法 /9-ニトロアントラセンの光化学的転位